チンギス・カンは総司令官であり、且つただの一兵卒だった?
自分が書いている小説で、うすうす感じていた事ですが、スルーしている件についてです。
年明け早々、変な話ですみません。
【クレタ人の嘘】
あるクレタ人が言った。
「全てのクレタ人は嘘つきである」
さて、このクレタ人は嘘つきなのか?
・この言葉を真とした場合:この言葉を言ったクレタ人は嘘つきにならないので、整合性が取れない。
・この言葉を偽とした場合:全てのクレタ人は嘘つきでなくなるので、この言葉を言ったクレタ人も嘘つきでないのだから、やはり整合性が取れない。
【十進法の兵制】
モンゴル帝国が有名ですが、モンゴル高原の騎馬遊牧民は、兵制を十進法で形成していました。
つまり、最小の単位が十人の兵で、次に百人、そして千人の兵と、十倍ずつ規模が大きくなりますね。
これだと「千人隊長」は、部下の十名の「百人隊長」に命を下し、「百人隊長」は、部下の十名の「十人隊長」に命を下せばいいのだから、非常に合理的だと思います。
おや、ちょっと待ってください。上に挙げた「隊長」は兵に入るのでしょうか?
もし入らないのなら、つまり「十人隊長」は十名の部下を持つので、彼らの部隊は合計十一名となります。
そして、「百人隊長」も「千人隊長」も同様なら、ある「千人隊長」が率いるのは、自身も含めて、以下となるはずです。
・10+1=11 (十人隊+十人隊長)
・11×10+1=111 (百人隊+百人隊長)
・111×10+1=1111 (千人隊+千人隊長)
そう、「千人隊長」は自分を除くと、千百十名の部下を率いている事になりますね。
「千百十人隊長」と言うのが正しいでしょう。実態と名称が乖離してますね。
では、「”隊長”とは自分が率いている部隊の兵でもある」だとするのなら、以下となるはずです。
・10 (九名の部下と自身も兵である十人隊長)
・10×10=100 (自身は一部隊の兵であり、且つ十人隊長であり、且つ百人隊長)
・100×10=1000 (自身は一部隊の兵であり、且つ十人隊長であり、且つ百人隊長であり、且つ千人隊長)
これだと「千人隊長」の呼称がしっくりきます。
ですが「千人隊長」が、「百人隊長」を兼ね、「十人隊長」を兼ね、更に一兵卒でもあるというのは、指揮系統上、不合理的です。
この制度で、チンギス・カンが10万の兵を率いる総司令官だとしたら、チンギス・カンは一兵卒であり、「十人隊長」でもあり、「百人隊長」でもあり、「千人隊長」でもあり、「万人隊長」でもあり、そして総司令官となります。
ついでに先に挙げた、「自身は率いる兵卒に入らない」のケースだと、10万の軍は、正確には11万1110となります。
この場合、仮に「チンギス・カンが10万の兵(「万人隊長」を十名か、「千人隊長」を百名)を率いて遠征に出た」、とすると、厳密には11万以上と、1万を超える差異が発生しています。
さて、仮にチンギス・カンが10万の兵を率いていた事例があったとしましょう。
その時、彼自身も一兵卒であった、きっちり10万人の兵だったのか、実は11万を超える兵だったのか?
「カタカタカタ…。”チンギス・カンは、11万1110騎の兵を集め、遠征の準備をした…”、と」
「おい、何だよ、この中途半端な数字は?」
「十進法で、それぞれ率いる隊長を含めると、こうなるんだよ」
「だったら、”約11万”でいいだろ」
「そうだなあ。でも常に”約5万5千”とか、”約1万1千”って、常に一割の数字を含めないとダメなんだ」
「”1万1千”は、もう”約1万”でいいだろ」
「それだと、1万を率いる将軍が一兵卒を兼ねているとも取られてしまう。十進法の兵制なんだから」
「めんどくせー。これだから戦記物や歴史物なんてくだらないな。オマエもっと取っつきやすいヤツ書けよ」
【クレタ人の嘘の解説】
冒頭に挙げた、クレタ人の嘘ですが、これは「クレタ人には嘘つきもいれば、正直な者もいる」、と定義すれば、この「全てのクレタ人は嘘つきである」と言ったクレタ人を、「嘘つき」の方に分類すれば、パラドックスとはならず、整合性は取れます。
つまり、物事の定義。前提条件を明確に、特に自分ルールを作れば、整合性を(無理やりですが)取ることはできるのです。
おしまい……、でいいのかな?
ただの駄文に付き合って頂き、ありがとうございました。<(_ _)>
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