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Around The World

第1部 第9話  Toradora!


 

 シャルンホルスト・タワーは、近代化されたセキュリティシステムによって強固に身を固めている。先日、魚屋の山田さんの家に空き巣が入った時も、隣に住んでいる八百屋の元さんが発見し、確保してくれた。


 「前略、母上殿。大事な話があります。僕の愛する人がさらわれてしまいました。僕は彼女を助けに行かなくてはなりません。とても危険な旅になると思います。もしかしたら、もうみんなには会えないかもしれません。それでも僕は行くのです。そうする事が、僕が僕である事の証明だから。では、いつまでもお元気で。かしこ」


 とは俺の友人、扶桑の手紙だ。扶桑の愛する若宮ちゃん。扶桑はその笑顔に何度救われたことか。次は扶桑が若宮ちゃんを救う番だ。

「蒼龍、僕は行くよ!」

「おい、待てよ!」

「これが黙って見ていられるかよ!」


 そんな争いを繰り広げていると、店の奥からシャルンホルスト・カットのマスターが現れた。

「一体どうしたんだい?」


 「実は、こんな手紙が届いたんだ」

扶桑は手紙をマスターに手渡した。


 「どれどれ。『お前の愛する人は預かった。返して欲しければ以下の場所まで来い。決闘だ。このまま争い続けても埒が明くまい。次で決着を着けよう。』か」

過去一度しか争っていないような気はするが。


 「ごていねいに地図まで付いてるじゃないか。それで、どうするんだい?」

「行くに決まってるだろ!」


 俺は扶桑を制する。

「今のお前じゃ勝てない」

「じゃあ、どうしろって言うんだ!?」


 俺は人差し指を突き出して言った。

「まだ時間はある。修行だ。『超平和バスター』を教えてやる。来い!」


 俺は扶桑を連れて、修行場である秘境へと向かった。果てしなく厳しい修行が続く。やがて長い時が過ぎた。


 扶桑は地面を叩いて言った。

「わからない。僕にはできないよ。こんなんじゃ、若宮ちゃんを助けられない」


 扶桑がうちふしていると、何処からとも無く声が聞こえてきた。

「頑張ろうぜ」

「諦めないでよ!」

扶桑が振り返ると、そこにはグナイゼナウ・ライダーと神鷹中尉の姿があった。

「いつの間に、そこに?」


 ライダーは親指を立ててうなずいた。神鷹中尉も微笑んでいる。扶桑は一番大事なことを忘れていたのだ。扶桑には、こんなに素晴らしい仲間がついてるんだ。


 ライダーは1歩前に出ると、こう言った。

「私も、一緒に頑張るぜ。それで、どうやってやるんだ。あの変な力は」


 俺も笑顔で受け答える。

「よし、あそこに岩があるだろ。あの岩に対して、超平和バスターするんだ。余計な事は考えずに、意識をあの岩に集中する。俺は竜だ。お前は虎だ」


 「ふーん、何だか小難しいな。こういう感じかな?」

ライダーはそう言って岩に手をかざした。しかし、何も起こらない。やはり、一朝一夕で身につく物ではないのだ。ライダーは手を下ろして座り込んだ。その時だった。すさまじい破裂音とともに、岩は粉々に砕け散った。


 「凄いじゃないか、ライダー!」

扶桑があんなに頑張ってもできなかったのに。扶桑には才能が無いのだろうか。


 扶桑が苦悩していると、神鷹中尉が飛び出してきた。

「すごいじゃない。私も、私も!」

そう言うと、神鷹中尉は別の岩に向けて手をかざした。


 「こうかな?」

神鷹中尉までもが成功させてしまうと、扶桑の立場というものが無くなってしまう。扶桑は、いつの間にか失敗を願っていた。


 次の瞬間、神鷹中尉の正面に正対する岩は、跡形も無く弾けとんだ。

「私にもできた!」

神鷹中尉も無邪気に喜んでいる。扶桑はなんて男なんだろう。自分ができないからって、人が失敗することばかりを考えてしまっていた。扶桑は最低の人間だ。そんなんだから何もできやしないんだ。そんなんだから……。


 扶桑はふと、立ち上がった。

「次は僕の番だ!」

そう言うと、扶桑は2人が破壊した岩の10倍はあろうかという巨大な岩の正面に立ち、手をかざした。


 「ま、まさか、あんな大きい岩をやるって言うのか!?」

俺もこれには驚いた。扶桑は目を閉じ、精神を統一した。辺りは静まり返る。聞こえるのは風の音だけ。扶桑は超平和バスターした。縛られた魂が解き放たれて行くのを感じる。心地が良さそうだ。扶桑はゆっくりと目を開けた。扶桑の目に写ったものは……、写ったものは……、ものは……。


 やっぱり扶桑には無理だったんだ。岩は微塵も破壊されること無くせせら笑いを浮かべていた。扶桑はうなだれ、その場に崩れ落ちた。アンタはっ、ただの臆病だっ。


 俺等は諦め、シャルンホルスト・タワーに戻った。


 これはとらえどころのない、ドラマ。略してそう、とらドラ! 


 「僕にはできないんだ。できないんだよ。なあ、マスター」


 マスターはプリントゴッコで年賀状を作りながら、微笑んで言った。

「アドバイスをあげよう。君は若宮ちゃんを助けたいんだろう。なら、若宮ちゃんのことを強く思うんだ。余計なことは考えずに。すると……」


 「すると、なんだい?」


 「すると、段々と見えてくる。若宮ちゃんの裸が」


 「そっちかよ、このエロオヤジが!!」

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