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Homerun

第2部 第9話  Attack on Titan



 リーン、リーン、リーン。

「ねえ、マスター電話だよ。ねえ、マスター」

俺の友人、扶桑は痺れを切らせて言った。


 「扶桑君、代わりに出てくれないか」

シャルンホルスト・カットのマスターはそう言った。


 「ここはマスターのお店でしょ」

リーン、リーン、リーン。ベルは鳴り止まない。


 「いい加減誰か出たら良いだろう」

俺も、眉間に皺を寄せて言う。


 「そういう蒼龍が出ろよ!」

扶桑がそういうと、俺はしぶしぶ立ち上がり、よろよろと電話へ向かった。電話まであと1センチ、という所で電話のベルは鳴り止んだ。


 「くそっ!」

俺はそう叫ぶと怪しい踊りを披露した。扶桑は面白がって尋ねてくる。

「おっ、蒼龍。マイケルジャクソンのものまねかい?」

それを聞いた俺は扶桑をきつく睨みつけ、こう呟いた。

「殺すぞ」


 扶桑等は、生駒さんが開いた書道教室によって足の痺れが限界点を突破していたのだ。


 再び電話が鳴った。俺は、発狂しながら電話を取った。その瞬間、俺の顔色が変わった。俺は暫く会話をし、電話を切った。


 「蒼龍、どうしたんだ?」

グナイゼナウ・ライダーが口を切って言った。


 俺はお立ち台に登ると、詳しい解説を始めた。

「決闘だ。戦いは膠着状態に入り、このまま埒が明かない事を悟った益田はついに決闘を申し込んできた。時間は明日午後5時、場所はこのタワーの屋上だ」


 「それで、どうしたの?」

血気盛んな神鷹中尉が尋ねる。


 「もちろん受けたさ」


 そしてついに決闘の時はやって来た。夜のライトアップが施されたシャルンホルスト・タワーの屋上には、しとしとと雨が降っていた。ローターが回転する音が聞こえ、やがて怪しい雲の中からヘリコプターが現れた。

「ずいぶんと大層なお出ましだな」

ライダーがそう吐いた。


 縄梯子から降りて来たのは、益田とその息子だった。

「待たせたな!」

益田のその言葉に、俺が反応した。

「それで、決闘の方法はどうするんだ?」


 扶桑等が神妙に回答を待っていると、どこからか女性の悲鳴が聞こえた。見ると、いつの間にか益田は雨に濡れた若宮ちゃんに抱きついていた。

「あっ、またパパの病気が始まった!」

益田の息子はそう言うと、懐から怪しい薬瓶を取り出した。


 「パパ、この薬を」

そう言うと、益田の息子は樹脂を投げつけた。薬は益田の顔面めがけて一直線に走った。しかし、益田の口は閉じている。どうなるんだ、と思って益田の息子を見やると、益田の息子はニヤッと笑った。雨に濡れたその樹脂は、何と益田の鼻の穴にホールインワン。


 「お見事!」

思わずそんな言葉が扶桑の口をついて出た。


 ゴクリ。益田は薬を飲み込んだようだ。その瞬間、益田の目つきが変わった。


 嵐が吹き荒れる。


 益田は言った。

「さあ、始めようか」


 扶桑達は息を飲んだ。

「多勢に無勢って奴だろ。できたら1対1の真剣勝負を望みたい。立体機動装置の使用もなしだ」

 益田は扶桑を指差し、こう言った。


 「立体機動装置とは何のことかわからないが、いいだろう」

扶桑は1歩前に出て答えた。


 「扶桑、お前には無理だ!」

俺は扶桑を引き止める。


 しかし、扶桑は耳を貸さなかった。ここで引き下がっては末代までの恥だ、と背中が言っている。扶桑は言った。

「どうした、かかって来いよ!」


 雨が少し強くなった気がした。


 益田は一瞬の内に間合いを詰めた。扶桑は慌てて身をのけぞらせる。

「お前、いい秘密基地を持っているな」

益田はそう言いながら右の拳を突き出して来る。扶桑は紙一重でその拳をかわした。

「だが、お前の秘密基地に集まるメンバーは、まだチーム名がついていないようだ。こんなによいものを持っているのに。つまらん」

そう言って、益田は再び距離を置いた。益田は怪しい構えをとった。


 「扶桑、そいつは何かを企んでいるぞ、気をつけろ!」

俺は扶桑にアドバイスしたが、それも遅かった。気付くと、扶桑のみぞおちには大きな塊が打ち込まれていた。扶桑は、絶望した。


 「扶桑!」

皆が扶桑を呼ぶ声。そうだ、扶桑はここで倒れる訳にはいかない。気づくと、益田の息子が扶桑にも樹脂を飛ばしてきた。かわしたつもりだったが、それは扶桑の鼻にもホールインワン。


 いつの間にか、扶桑は妙にすがすがしい気分になっていた。


 「どうだ、秘密基地に集まるメンバーのチーム名を命名された気分は?」

ふと、益田がそういった。益田は続けてこう言った。

「お前、武術の心得があるだろう?」


 武術の心得……。扶桑にそんな物があっただろうか。


 「では、第2ラウンド開始といこうか」

益田が飛びかかってくる。そうだ、扶桑は小学生の時、スポーツチャンバラをやっていたんだ。扶桑は目に入った棒状の物を拾い上げ、益田の蹴りを受けとめた。


 「それがお前のチームか。ならばこれはどうだ!?」

益田は間合いを大きく取り、謎の波動を打ち出して来た。しかし、今回は違う。見える。皆が使っていたあの攻撃は、球状に形作られた魂だったのだ。今まで見えなかったあの攻撃が、扶桑にはスローモーションに見える。扶桑は次々に飛んでくるそれらの球をすべて切り捨てた。


 「見える。お前の攻撃は見切ったぞ!」


 益田は、攻撃をやめ不敵な笑みを浮かべた。

「まさかここまでやるとは思わなかった。だが、残念だったな。俺の力はまだまだこんなものではないぞ」

益田はそう言うと、自らの手を噛んだ。巨人化するのかと思ったが、そうではないようだ。そして、空高く手を振りかざした。


 雷雲が立ち込める。次の瞬間、けたたましい轟音とともに益田の手の平に稲妻が落ちた。その電気は球となる。

「くらえ!」

益田の声とともに、その電気の球が放たれた。一瞬にして扶桑の体を包み込む。


 「ぐあああぁぁ」

「扶桑ー!」

扶桑は、そのまま意識を失った。


最終回に続く

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