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筆箱ショートショート

クリスマス・メッセージ

作者: GHK

"Merry Christmas"。それが誰から送られたのかわからない、でも自分に宛てた祝言葉だと確信する瞬間。そんなショートショートです。

 街が輝く12月25日。妖精は店先のクリスマスツリーのてっぺんで往来を見下ろしていた。


 1人の男がアーケードの電飾に誘われるようにして店にやってきた。

 店先のツリーの根元にはプレゼントや赤リボンのクッキーの缶が、山ほど積み上がっている。

 男はそれを眺めて、ツリーを避けて店に入ろうとした。そのとき正面から、ワインボトルとケーキを積んだカートが向かってきた。右へ一歩避けて道をゆずる・・・しかし、足が電飾のコードに躓いてしまい、コードにつられてクッキーが一缶、ツリーの下から飛び出し店の外へと転がっていった。

あわてて追いかけたが、どこにも見つからなかった。

 今のを誰かに見られていなかったか。

 男は周囲を見回し、人々がこの出来事を見ていなかったようだとわかり、それでも用心して別の入り口から店に入った。

 買い物を済ませた男は、電飾をたどるように店から離れていった。


 帰り道、うしろから何かが転がるような音がして男は振り返った。

 クッキーの缶がカラカラと軽快な音を立てて、ひとりでに転がってついてきたのだ。

 空っぽのような音を立てて後ろを転がってくる赤リボンの缶。言いようのない恐怖を感じて、向こうへ蹴り離そうとした。しかし、自分が店から紛失したのだと思うと蹴ることができなかった。


 しばらく睨んだ後、男は恐る恐る缶に近づき、リボンを解いた。

 "Merry Christmas"

 そう書かれたカードが一枚、缶の中に入っていた。

「自分にクリスマス・メッセージが来た。」そう思った。

 振り返ると、閉店した店先にはツリーの灯りが見える。ツリーの下に缶を戻しても、誰にも気付かれない。

 しかし、男はカードを缶にしまい、大事に抱えて家に帰った。

 翌日、男は昨日の店に行き、

「この飾ってあるクッキーの缶を1つ譲っていただけませんか。」

 と店主に頼んでその缶を譲り受けた。


 12月26日もクリスマスツリーは変わらず光っている。

 昨日クッキーの缶を転がしていた妖精は、今日もツリーのてっぺんから街を眺めている。

男は誰からメッセージをもらったのか知りません。しかし、その体験は1つの奇跡に思えるのでしょう。

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