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ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
過去を手繰る

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71 留守番/デニス

◆登場人物紹介(既出のみ)

・デニス…西の冒険者ギルドに所属するAランクの先輩冒険者。リリアンに好意を抱いている。

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。転生前は前・魔王討伐隊、『英雄』のアシュリー(アッシュ)。教会の魔法使いしか使えないはずの、転移魔法を使う事ができる。

・シアン…前・魔王討伐隊の一人で、デニスの兄貴分。アシュリーの生前、彼女に想いを寄せていた。

・マーニャ…エルフでBランクの魔法使い。デニスとは古くからの知人。実年齢不詳(かなり年上らしい)。

・アニー…リリアンの家のメイドゴーレム

「一人なんて珍しいわね」

 掛けられた声に顔を上げると、馴染みの顔がそこにあった。


 リリアンはシアンさんと一緒に旅に出てしまって不在だし、今は特別な用事も何もない。そんな時にはこうして冒険者ギルドに来て、面倒な依頼を引き受けたり、若手の相談にのったりしている。

 今日はこれと言った依頼も無いようだし、ギルドのテーブルを陣取ってマイルズから預かった他の町の依頼書に目を通していた。


「よぉ、相変わらずどこかに行ってたのか?」

「それもあるけれど。彼、帰って来てるんでしょ?」

 マーニャはそう言いながら斜め向かいの席に腰掛ける。

「うん? ああ、シアンさんの事か?」

「ええ、ちょっと苦手なのよね」

 そう言って色っぽく足を組んだ。


 マーニャの言葉に珍しいなと感じた。シアンさんは普段はふざけてみせているが、人の嫌がるような事をするような人じゃない。

 とは言っても、人と人なのだから「馬が合わない」なんて事は、ままある事だ。そういう(たぐ)いの事だろう。

 そう思ったところで、マーニャの次の言葉に呆気(あっけ)にとられた。


「彼、胸の大きい女性が好みみたいね」

「は……? なんかされたのか?」

「そういう訳じゃないけれど。以前、一度だけ組んだ事があってねぇ。なんだかじろじろ見てくるから嫌なのよね」

 シアンさんがマーニャの胸元をじろじろと見てたって事か?

「それで、しばらく他の地区のギルドの方に行ってたのよ」


 ああ、シアンさんは二日前からリリアンと旅をしている事になっているからな。

 実際には毎日夜には家に帰ってきているのだが、そんな事を周りに言える訳がない。こっそり帰ってまたこっそり出掛けて、普通に旅の最中と思わせている。

 しっかし、どんだけマーニャに嫌われてるんだ、あの人は。マーニャもわざわざ胸を強調するような服を着ているし、胸に注視(ちゅうし)されるような事も慣れっこだろうに。


 でもそんな事をするシアンさんの様子が想像できない。

 俺の知っているあの人はずっとアシュリーさん一筋だ。もう彼女は死んでしまったというのに、それでもずっと。別の女との色恋話を聞いた事もねえし、まるで他の女は女じゃないと思ってそうなくらいに、目にもくれない。

 女性相手に容姿や能力を褒めるような事はあっても、そこに下心があるような言葉は使わない。そういう人だ。


 いやでも、先輩冒険者たちから聞く昔のシアンさんは、どちらかというと軟派な性格だったようだし、俺と知り合ってからとは違うんだろう。シアンさんも男なんだし。そりゃ、マーニャの胸に目くらいは行くよな。


 マーニャととりとめもない話をしながら、ふと依頼ボードの方をみると、最近見かけるようになった新入りパーティーの姿を見つけた。

「ちょっとあいつらの様子を見てくるわ」

 マーニャに一応断って席を立った。


 * * *


 頼まれたわけではなかったが、同行を申し出るとやたらと感謝された。別に俺が手を出すような事態にはならなかったが、先輩が一緒に居ると言うだけで心強く思ってくれたのだろう。ついでに狩ったワイルドボアの肉は皆で分けた。


 いつもならこのまま『樫の木亭』に行くんだが、今日もリリアンの家で夕飯を食う予定だ。このボアの肉はメイドのアニーに渡しておけばいいだろう。そんな事を考えながら、西の外れにあるリリアンの家を目指した。


 アニーは当たり前の様に、俺を家に迎え入れてくれた。

ご主人様(マスター)のご友人はおもてなしする様に言われております』

 そう言って、茶も食事も出してくれる。


 今日もそんな感じで二人の帰りを待ってたのに、いつもの夕飯の時間を過ぎても、もう休まないといけないような時間になっても…… そして結局朝になっても、二人は帰って来なかった。



 正直に言えば気にはなる。でもシアンさんも一緒だから危険はないはずだ。普段軽い事ばかり言っていても、あの人は強い。皆を守れる力がある人だ。もしもリリアンに何かあれば全てを()して守ってくれるだろう。

 そうだ、昨晩はたまたま戻れない事情があっただけだろう。こうしてうだうだしていても仕方ない。

 良くない事ばかり考えそうになる自分の気持ちに活を入れて、いつもの様に朝の公園に向かった。


 でもやっぱり気になって、昼過ぎにはリリアンの家に戻ったが、アニーしかいなかった。家の主人が不在でも、アニーはちゃんと掃除や洗濯をし、客人が居ればお茶を出す。昨日借りたベッドのシーツも朝イチで洗濯されたらしく、庭で気持ち良さそうに陽に当たっていた。


 勝手に上がり込んだ居間のソファーに座ると、マイルズから預かって来た報告書に目を通す。

 いつも家でしている仕事を今日はここでしているだけだ。ついでに二人を待っているだけで。誰が訊く訳でもないのに、自分にそう言い訳をした。


 * * *


 すっかり日が暮れようという頃に、キッチンで食事の下ごしらえをしていたアニーが、ふと手を止めて玄関に向かった。

 もしや……!

 慌てて後を追いかけた。


「おい、大丈夫か?」

「はいーー、なんとかー」

 二人の元気な声が聞こえて、先ずほっとする。玄関に駆け付けると座り込んでいるリリアンと、彼女の顔を覗き込んでいるシアンさんが居た。


「リリアン! シアンさん!」

「ただいま、デニス。詳しい話は後でするから。ほら、リリアン、ベッドに行くぞーー」

 シアンさんは最初に返事をしただけで、その後は俺の事を無視してリリアンを横抱きに抱き上げた。

 ベッドって…… リリアン、体調が悪いのか?


 が、風呂に入りたいというリリアンの言葉に、俺が洗ってやろうか? と、シアさんが聞き捨てならない事を言った。

「おい! おっさん!!」

 どういうつもりだ? シアンさんがそんなふざけた事を言うのは初めてで、それにも戸惑った。


 リリアンが大丈夫とシアンさんの申し出を断ったが、どうにも油断はならない。それにリリアンの体調も気になる。浴室まで後を付いて行くと、彼女を下ろしたシアンさんが俺に声を掛けた。


「すまねえな、デニス。やっぱりお前の事、応援できねえかもしれねえ」


 応援……? なんの事だ? 俺はシアンさんの言っている意味がわからなかった。


「今のうちに聞いておきたい事がある」

 珍しく真面目な表情で、俺をソファーに誘った。



「まず、昨日は帰って来れなくてすまねえな。あの通り、リリアンが体調を崩して戻れなかった。体調というか、魔力不足だな。転移できるくらいには魔力が回復したから帰って来たんだ」

「何があったんだ?」

「原因は俺らにもわからん。でも今日は体力は普通にあったから、徒歩で少し進んだ。無理して転移するとまたぶっ倒れるんじゃないかと思ったが、お前が心配してるだろうからって彼女が気にしててな、それで帰って来たんだ」

 ……そりゃ心配はしてたけどさ。それであんな風に無理をさせた事は申し訳なく思った。


「で、話は変わるが」

 俺の顔色を(うかが)うように、シアさんが話題を変えた。

「こないだのオーク狩りの時、お前いい剣を持っていたな。リリアンの鉤爪(クロー)もなかなかのものだった。あれはどこで手に入れたんだ?」

「うん? それがどうしたんだ? おっさん」

「ちょっと気になったんだ。それとも何かやましい事でもあるのか?」

「あ…… いや、そんな訳じゃあない」


 なんでこのタイミングでこの事を訊かれるのか、内心疑問に思っただけだ。

 ふぅと息を吐いて、話を続けた。


「ひと月ほど前に、ドワーフの国で買ってきたんだ。リリアンと二人で行って。そん時にはリリアンに乗せて行ってもらったんで、他のヤツには内緒って事になっている。まあ、シアンさんはもう知っているから構わないだろうけどな」

 それについては、かなり悔しい。

 リリアンがシアンさんの事を、俺の兄貴分だからって信頼してくれるのは、すげえ有り難いけど。でもシアンさんまで背中に乗せる事はないんじゃないか?

 リリアンは……シアンさんに抱きしめられても、嫌じゃあないって事なんだよな……


「もしかして、ゴードンか?」

「ああ、そうか。あのオヤジさん、聖剣を打ったって言ってたよな。だからシアンさんも知ってるのか」

「ああ、良く知っている。って、聖剣の事はゴードンが自分で言ったのか?」

「いいや、リリアンが教えてくれた」


 そう言うと、シアンさんは眉間に(しわ)を寄せて考え込んだ。

「……どうした?」

「なんでそれを知っているんだ……? うん…… いや、ダメだな。やっぱりわかんねえ」

 言葉の途中で、さっきまでの真面目な雰囲気が崩れ、いつもの感じのシアンさんになった。


「いったい何があったんだよ」

「いや、ちょっと、色々考えたい事があってな。でもやっぱダメだ。俺にゃあわかんねえ」

 苦い顔をしながら頭を掻く。そんな風に言われても、俺にも全くわかんねえんだけどな。


「なあ、デニス」

「なんだよ?」

「お前、アッシュが生きてたらどうしてた?」


 ……そんな事を、シアンさんから聞かれるとは思わなかった。

 あの日、俺らが知り合った、アシュリーさんの葬儀の日からずっとずっと、シアンさんが心で泣いているのを知っている。そんな彼にとって『生きてたら』が、どんなに酷な言葉なのだろうかも。

 でも、魔法使いの隠れ家を訪ねる旅の中で、過去を思い出す中で、何か別の気持ちでも沸いているのかもしれない。


「そうだなあ……」

 彼女が死んだ後に、俺はやっとアシュリーさんがすごい人だった事を知った。そんなすごい人に戦い方を教わっていたのだと。


「冒険者になって、一緒にクエスト行きたかったな。もっと色んな事を教えてもらいたかったし。一緒にメシ食ったり、旅をしたりもしたかったな」

 本当は、彼女を隣で守れるような男になりたいと思ってたとか、そこまでは流石にシアンさんには言えねえけど。

「お前、アッシュの事好きだったんだろ?」

「ああ……」

 その時の幼い俺が「好き」という感情を持っていたのかはわからない。けれども、先輩としての憧れと別に、異性として憧れ以上の気持ちを持っていた事は確かだ。

 だから、大人の姿になったリリアンの姿や雰囲気に、幼い頃の思い出のアシュリーさんを浮かべてしまって…… それに惚れたんだけどな。


「お前には渡さねえからな」

 そうシアンさんが言った。

「そんなの、わかってるよ」

 死んでからもここまで想われていると知ったら、彼女はどう思うんだろうな。


 そう思った時に、風呂場から俺らを呼ぶベルの音が響いた。

<おまけ>

(二日目の朝)


アニー『申し訳ありません。差支えなければ魔力を少し分けていただけませんか?』

デニス「ああ……(いつぞやのリリアンとアニーのキスを思い出す) いや、流石にキスは……」

アニー『キス、ですか?』

デニス「魔力分けるのって…… ええと、口から、なんだろう? ゴーレム相手でも流石に……」

アニー『いいえ、少し手をかざして魔力を頂ければ、それで大丈夫です』

デニス「(ほっ)なんだ、それくらいなら構わねえよ。ほら(手をかざす)」

アニー『ありがとうございます』

デニス「(独り言)リリアン以外とキスしたくないしな……」

アニー『マスターへの伝言ですか? お帰りになったらお伝えしておきます』

デニス「待った! 違うから! やめろ!!(真っ赤)」

アニー『承知いたしました。しかしマスター不在の間の出来事は全て記録しておりますので』

デニス「○×□▲……!?(真っ赤になって項垂れる)」


 記録してあってもわざわざ確認はしないので、危機は免れました。

 防犯カメラの録画を何もなければ見ないのと同じイメージですね。


 デニスはこの事で心配する気持ちがちょっと紛れたのかも?



(メモ)

 ドワーフの国、ゴードン(#11、#45)

 葬儀の日(Ep.1)

 大人になったリリアン(#33、#34)

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