Ep.9 好みのタイプ/ルイ(2)
◆登場人物紹介(既出のみ)
・ルイ…神の国から来た『勇者』の少女
・シア…冒険者で一行の『サポーター』。栗毛の短髪の青年
・サム…可愛らしいドレスを着た、金髪巻き髪の少女
・クリス…『英雄』で一行のリーダー
・アレク…クリスの婚約者でもある女性騎士
・メル…一行のメンバー。眉目が良い男性
・アッシュ…一行のメンバー。黒髪長身の美人
「このメンバーってさ、皆イケメンばかりだよねー」
そうアレクさんとサムちゃんに言ってみたけど、イマイチ伝わらなかった。
「イケメン……? って?」
「えーーっと…… イケてるメンズって意味だけど…… ごめん、わからないよね……」
いけないいけない。元の世界の言葉は、単純な物なら伝わるけど、こういった言葉やここに無いものは伝わらない。
どういう仕組みかはわからないけど、話し言葉は日本語で通じているのだから不思議なのよね。ちなみに文字は全然違うので全く読めない。
「カッコいい男性の事、かな?」
「ああ、それならわかるわ。うちのメル様、すっごい美人なんだからー」
サムちゃんは頬に手を当てながら、嬉しそうにメルさんの事を褒めた。サムちゃんがメルさんの事をそうやって褒めるのはいつもの事で、このセリフはもう毎日の様に聞いている。
サムちゃんとメルさんの関係は…… 端から見ると、なんだか男性アイドルとそのファンみたいにも見える。そんな風にサムちゃんはメルさんの事をいつももてはやしている。でもその割にはサムちゃんの方がメルさんに偉そうにしている時もあるし、なんだか不思議。
「やっぱりサムちゃんは、綺麗な人が好きなの?」
「そりゃあね~ あと魔力の強さも大事よね!」
魔力ねぇ…… 元の世界でいうところの、強さとか逞しさみたいな感じなのかなぁ? それとも稼ぎの多さとか?
「魔力は私には無いからわからないのよねえ。アレクさんはどんな男性が好み?」
そうアレクさんに聞くと、彼女は頬を赤らめて、
「私は…… 殿下の婚約者だから……」
そうはにかんでみせる。
「ふふふ、好みのタイプはクリスさんなのね~」
わざと言うと、さらに顔を真っ赤にさせた。その様子がとっても可愛い。
「アッシュさんは?」
あえて彼女に聞いてみる。椅子に座ったままで黙って、でも少し嬉しそうに私たちの話を聞いていたアッシュさんは、突然自分に話を振られた事に驚いた様子で首を傾げた。
「私か?」
「うん、アッシュさんはどんな男性が好みなのー?」
「……そういう事は、気にした事はないかもしれない」
「今まで恋人になった人は?」
「いない」
「えーー…… アッシュさん美人だから絶対にモテると思うのにー……」
そう言うと、彼女は目を細めて微笑んだ。
「私なんかよりも、ルイの方がよほど可愛らしくて男性に好まれると思うぞ」
アッシュさんはいつもそんな事を言う。彼女の方が絶対に美人だと思うのに、それを認めようともしないし、むしろこちらの良いところを見つけて褒めてくれる。
「ルイはこの国の事が気になるから、色々と聞きたいんだろう? おそらくルイの国とは大分違う。先日話した様に、この国には色々な種族の者たちが住んでいる。ざっくりとだが、種族によっても異性に好まれる基準は違う様だ」
そうアッシュさんが話しはじめると、何故かサムちゃんも身を乗り出した。
「そうなの? 私、エルフの国の育ちだから、他の種族の事は全然知らなくて~」
「さっきサムが言ったように、エルフは容姿の美しさと魔力の高さを好むと聞いている。男性にも女性的な美しさが求められるようだ」
「そうね。男性でも女性でも美しい方がいいし、あと魔力も大事だもの」
「人間の好みははエルフよりは多様化しているのだと思うが、男性なら強さや逞しさ、女性には美しさや優しさ。あとはどちらも生活力の高さなんかも求められるだろうか」
多分、その辺りは私の居た世界と同じ様な感覚なんだろうなあ。
「ドワーフはエルフとは違って、美しさよりも逞しさが好まれるな、男性でも女性でも。あとは手先の器用さか」
いつの間にアレクちゃんも横にきて、一緒になって熱心に話を聞いている。そう言えば彼女もあまり王都から出た事が無いって言ってたもんね。
「獣人は……あまりわからないのだが、彼らも強さが基準になるらしい。男性でも女性でも強いものが好まれると聞いた事がある」
「じゃあ、皆強いから獣人にモテるかもねえ~」
私の言葉に、アッシュさんはくすりと笑った。
「そうかもな。でもこの国には獣人自体が少ないからな」
獣人はあまり自分たちの国からは出てこないんだって。確かにエルフやドワーフは町中でも見かけるけど、獣人は少ないかも。
その時、ドアをノックする音がした。
「だあれ?」
サムちゃんが聞くと、クリスさんが名乗る声が聞こえた。ここはサムちゃんの部屋だ。私たちはよく空いた時間には誰かの部屋に集まって、こうやっておしゃべりをしている。
「すまない。アッシュに用があるのだが」
「ああ、わかった」
アッシュさんは私たちに手を挙げて挨拶をすると、部屋を出て行った。クリスさんはアッシュさんを頼りにしているようで、こんな感じで呼び出される事もよくある事だ。
「……アッシュさん、恋人は居ないって言ってたね」
3人になった部屋で、ついぽつりと呟きが零れた。
「あー…… 別にシアとは特別な関係ではないって、前に聞いたな」
アレクさんはよく、クリスさんとアッシュさんが一緒に居るところを見て寂しそうな目をしている。だから、私がそんな事を言った気持ちもわかって、そう教えてくれたのだろう。
「でもあの二人、あんなに仲が良いのにね」
「詳しくは聞いていないけど、アッシュはシアの恩人らしいわね。でもアッシュは気にしてないんだって、そう言ってたわ」
サムちゃんもそう教えてくれたけど、でも私は「そっか……」としか返事ができなかった。
「ねぇねぇ、それよりまたルイの故郷の物語を聞かせて!」
サムちゃんがはしゃぎながらそう言った。私の様子に気遣ってくれたのだろうか。でもそうでなくても、サムちゃんは私のするアニメやドラマの話を気に入っていて、こうして聞きたがってくれる。私が大好きなアニメの話を始めると、アレクさんも一緒に楽しそうに聞いてくれた。
私がそんな話の主人公だったら…… ここみたいなファンタジーな世界で活躍して…… それからその世界の人と恋に落ちるなんて、そんな事もあったのかもしれないのにな……
話をしながら、心の端でそんな事を考えていた。
お読みいただきありがとうございます。
(メモ)
お酒が飲める年齢(Ep.2)
物語(Ep.8)
(Ep.5)
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