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ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
ドワーフの国へ

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45 ドワーフの工房

◆登場人物紹介(既出のみ)

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。

・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者

・ゴードン…ドワーフの鍛冶師。リリアンの前世とは知り合いらしい。

 夕暮れになる前に、南の国境を越えてすぐにあるドワーフの町に入った。

 王都からここまで馬車なら五日はかかる距離を、どうにか二日で着く事ができた。出立してすぐの頃のデニスさんの様子では、思うようにスピードを出せなくて、ちょっと心配していたのだけれど、ちゃんと話が出来てからはしっかりと遅れを取り戻せた。

 デニスさんのトラウマの事は聞いていたのに、私が不安を与えてしまうような事をしてしまった。自分の気の利かなさが情けなく思えた。


 門脇にある見張り台からからの視線をくぐり抜け、町の中央に向かう大きな通りを進む。建物の間から奥へ続く道へ入り、さらに進むと職人通りに変わった。店先にはそこで造られた武具や道具が沢山並べられていて、どれも目を引くものばかりだ。

 デニスさんはたびたび立ち止まり、それらを気にしている。うん、気持ちはわかる。

「先に用事を済ませちゃってから、ゆっくり見ましょー」

 そう声をかけると、思い出したように「ああそうだな」と、でも後ろ髪を引かれているような返事が返ってきた。



 通りの奥まった場所にある工房に入り、「ゴードンさん、こんにちは」と声をかけると、店の奥手で作業をしていた壮年のドワーフがこちらを振り返った。

「おお、嬢ちゃん来たな。注文の品は出来ているぞ」


 私の後から入って来たデニスさんが頭を下げると、ゴードンさんは意外そうな顔をしてみせた。きっと、私がまた一人で来ると思ったんだろうな。

「私の先輩冒険者なんです」と、簡単に紹介をしながら、中央にあるテーブルの上にお土産を広げはじめると、すぐにゴードンさんの興味は酒瓶に移ったようだ。


 リクエストのお酒セットは、前回のラントの町で(あらかじ)め買ってあった。それにまた半頭分のワイバーンの肉と、少しだがミノタウロスの肉を付けた。

「ワイバーンは、来る途中にデニスさんが狩ったんですよー」

 そう言ってデニスさんの方に視線を向けてみせると、そのデニスさんはどうやら壁際の台の上に並べてあった武器に興味を惹かれたようで、熱心に眺めている。

「おお、あのにーちゃんか」

 その熱心な様子を見て、ゴードンさんが少し大きめに声をあげた。


「嬢ちゃんが来てから、すっかり刺激されちまってな。久しぶりに気合いが入ったわ。これから嬢ちゃんの武器の調整をするから、その辺りは好きに見ていて良いぞ」

 あの台に並べてあるのは、どうやらゴードンさんの新作武器たちらしい。デニスさんが早速剣に手を伸ばすのが見えた。気になるものがあったのだろう。


「良かったらまた竜皮も置いて行ってくれ。その分はちゃんと引いとくから」

 先日渡していた竜皮は、私の鉤爪(クロー)と新作の武器に使い切ってしまったそうだ。

「はい。特に使う当てはないので、買い取っていただけると助かりますー」

 そう言って、バッグからワイバーンの皮も出して並べた。


 ゴードンさんが持ってきた新しい鉤爪(クロー)は、予想以上に素晴らしく仕上がっていた。相変わらず腕は確かな様だ。籠手部分に狼を抽象化したようなエンブレムが描かれており、それも嬉しかった。

「ありがとうございます!」

「普段は刃が仕舞える様に、軽く魔力を流し込めば刃が出る仕様にしておいたぞ」

 早速鉤爪(クロー)を装備し、先日のようにゴードンさんに調整をしてもらう。


 私の腕を確認しながら、ゴードンさんは首を傾げた。

「嬢ちゃん、ちょっと背が伸びたか?」

 ああ、そういえばドリーさんのところで色々と調整してもらったせいか、ちょっとずつ色々と成長したような気はしていた。

「まあ、これから伸びる年頃なら、それを見込んでの調整をしておこう。たまに見せに来い」

 そう私に言いながら、また鉤爪(クロー)と腕の合わせを確認する。


「ここまで来るのは大変だろうがな」

「新しく特殊な魔法が使えるようになったので、今までよりは来やすくなると思います」

「ほほう…… 獣人はあまり魔法は得意じゃないと聞いてたが……」

「神の加護を得ましたので」

 それを聞くと、ゴードンさんは少し考えるように手を止めた。


「……そういや、先日嬢ちゃんが来た後に、妙な夢を見てな。山の神……俺らドワーフの神に、良い武器を作ってくれ、と告げられてな。それからはやたらとやる気が出てなあ…… この鉤爪(クロー)もあそこの武器なんかもそれで作った物なんだが……」

 そう言って視線をむけると、またデニスさんに声を張り上げた。

「気になる物があれば、売ってやってもいいが。俺の銘入りは安くはねえぞ」

 その声でデニスさんの様子がちょっと気になったが、邪魔をしてはいけない気がして背を向けたままで居た。

 「獣人の嬢ちゃんの武器をこさえてる時に、山の神の声を聞くとはな。二つの種族の神が本当は同じ神なんて説もあったなと、ふと思い出しちまった」

 ああ、気を悪くしたらすまんな、と、ゴードンさんは私に謝った。


「なあ、おやっさん。これはいくらになる?」

 デニスさんから声がかかり、ゴードンさんはあちらも見ずに数字を挙げた。ゴードンさんの事だ、見なくてもデニスさんがどの武器を選んだのかをわかっているのだろう。

 挙げた数字は王都の武器屋で見かける相場の3倍以上だった。確かに、安くないどころか、かなりのお値段だ。


 しばらくの間があり、

「……これを、買わせてくれ」

 と、気を張った声が聞こえ、流石に気になって振り返った。

 デニスさんは嬉しそうな顔で新しい剣を手にしていた。ちょっと心配にはなったけれど、でもデニスさんの様子を見て、自分もちょっと嬉しくなった。


 ゴードンさんはデニスさんを私の隣に座らせると、私にしていたように今度はデニスさんの腕や普段使いの手持ちの武器を確認しはじめた。

 ここまでする武器屋はそうはいない。デニスさんも少し戸惑っているようだ。

「剣の減り方で、そいつの技量や癖がわかるんだ」

 昔も言ってた言葉を、今もまた昔と同じようにゴードンさんが言うと、デニスさんが少し目を見張ってああと答えた。

 最初の私たちもこんな風に面食らってたなあと、そっと懐かしく思い出した。


「この時間ならこの町に泊まるんだろう?朝までに調整しておくから、町を出る前に寄ってくれ。他の武器もついでに手入れしておいてやる」

「朝はかなり早いですよ?」

「構わねぇよ。叩き起こしてくれ」

「じゃあ、遠慮なく押しかけますねー。よろしくお願いします」

 私がお辞儀をしてみせると、追ってデニスさんもお辞儀をし、工房を後にした。



 ひとまず用事も終わったし、職人通りの店を覗く話になっていたはずだけれど……

「少し見て行きましょうかー」

 そうデニスさんに訊いてみると、「いや、疲れてるから早めに宿に入ろう」と、目を()らせて言った。

 ああ、やっぱりなあ……

 予想通りだったので、「そうですね」とあっさりと答えてみせると、デニスさんがこっそりとほっと息をついたのが聞こえた。


 多分、さっきゴードンさんが言ったあの剣の金額は、デニスさんにはかなりの負担なのだろう。

 デニスさんの実力はSランクだけれど、あえてAランクで留めている上に、基本はソロ活動か下位ランクの付き合いが(ほとん)どだ。

 下位ランクの付き合いの時には、報酬金の分け前は受け取ろうとしない。お肉とか、現物の分け前なら受け取って…… でもそれは孤児院の子供たちに食べさせてしまう。たまに受けた自身のクエストや、ギルドの世話役としての報酬は、きっと毎朝の子供たちのパン代に多くが消えている。


 デニスさんの事だ。多分この旅でも色々私を気遣ってくれるつもりがあったのだろうけれど。さっきの様子をみると、その辺の店を覗くのにも心配になる程だったのだろう。



 ここは王都ではないので冒険者ギルドはない。いつもならギルドで宿を訊くが、代わりに大通り沿いにあるポーション屋に入った。旅人を相手にしている店なら、宿の情報もあるだろう。

 食事付きで風呂付きの広めの部屋がありそうな宿を尋ねると、心当たりを教えてくれた。


「疲れているなら、わざわざ食事に外出ないで済む方が良いと思いましてー」

 そう言うと、デニスさんは「そうだなー」と言って、私の頭をわしわしと撫でてくれた。

 食事付きの宿なら、宿代と食事代はまとめて払う形になる。別に払う形で、両方とも私から払うと言うとデニスさんは気にしてしまうだろう。

 さらに、宿代にはワイバーンの皮を買い取ってもらった分を充てると伝えると、デニスさんの表情がちょっと緩んだのがわかった。


 * * *


 次の日、朝のトレーニングと出立の支度を終え、それでも大分早い時間にゴードンさんの工房を訪ねた。ゴードンさんはかなり眠そうな様子で出てきたが、私たちの顔を見ると目が覚めたように自慢げな顔に変わり、調整した武器たちを披露してくれた。

 買った武器も預けた武器も、私たちが一番使いやすいように調整され、それぞれの手にしっくりくる様になっていた。


 デニスさんがゴードンさんに剣の代金を渡すと、

「昨日もらった竜肉が美味かったからな、少しおまけしておいてやる」

 そういって、渡した半分を返した。

 やっぱりね。あれは最初の通過儀礼なんだ。デニスさんが、ゴードンさんの作品にそれだけの価値があると思っているかを試したのだろう。


「ゴードンさんは…… 先代の、聖剣を打った鍛冶師ですよ」

 そう言うと、デニスさんは目を丸くさせた。

「そんな良いもんじゃねえ…… 俺は……」

「また来ますので、よろしくお願いします」

 ゴードンさんが言いかけた言葉を遮るように、そう言った。ゴードンさんがどう思っていても、私にとって信頼できる鍛冶師である事は間違いない。


「……そん時は、また土産を忘れんなよ」

 ゴードンさんは頭を掻きながらそう言った。

「いい剣をありがとうございます。俺もまた来ます」

 そう言ったデニスさんと、二人で頭を下げてゴードンさんと別れた。


 今度はちゃんと笑った顔でゴードンさんにお礼が言えた。

 前回の事を少し思い出して、デニスさんが良い剣を買えた事もあって、やっぱりデニスさんも一緒に来てくれて良かったなと、そう思った。

 お読みいただきありがとうございます。


(メモ)

 朝のパン(#9、#40)

 前回(#11)

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