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ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
ドワーフの国へ

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42 聞きたい事

◆登場人物紹介(既出のみ)

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。神秘魔法で大黒狼の姿になれる。

・デニス…王都シルディスの西の冒険者ギルドに所属する、Aランクの先輩冒険者

 王都を出て、街道を南に進む。

 やっぱり、デニスさんはちょっとだけ様子が変だと思う。いつも通りにして見せてるつもりなんだろうけれど、何か遠慮をしているようだ。


 大狼の姿になった私の背に乗るときには、背を低くして首にしがみつくように掴まってもらっている。その掴まる手も、遠慮をしているようでどうにも安定性がない。これじゃあ、スピードを出すのを躊躇(ためら)ってしまう。


 そして、話しかけても会話も続かない……

 うーん…… 大丈夫かなぁ?


「デニスさん、お疲れですか? 昨日はちゃんと眠れましたか?」

 そう聞いてみたが、もやもやした返事で誤魔化(ごまか)された。


 いくらかの間があって、今度はデニスさんから声がかかる。

「俺、お前に聞きたい事があって……」

「なんでしょうか?」

 聞き返しても、何か考え込んでしまっているようで次に続かない。


 聞きたいけれど、話しにくい。そんな感じなのだろうか。私に上手く聞きだせればいいのだろうけど、そういうのはどうも苦手だ。

 うん、そうだ。


「じゃあ、ゲームにしましょう。交互に一つずつ質問する。わかっている事を聞いてもいいですし、答えにくい事はパスでも構いません。でも嘘はついちゃダメです」

「ゲーム?」

「ちょっとした会話遊びです」

 そんな事を、昔の仲間たちとした事があったのを思い出した。


「私から質問しますね。デニスさん、年齢は?」

「……23歳だ。こんな質問でもいいのか?」

「普通に聞きたい事を聞いてもいいんですよ。デニスさんの質問どうぞ」


「じゃあ…… リリアンの種族は?」

「人間から見たのだと、狼獣人ですね。獣人の間だと『灰狼族』です」

「かいろうぞく?」

「灰色の毛並みを持つ人狼族です。同じ狼獣人でも、さらに住んでる場所や毛並みの色などで種族が分かれます。人間にはあまり知られてないですが」

「でも、お前……黒いよな?」

「私は異端なんです。まあ、黒毛は稀にある事ですし、特に取り立ててどうこう言う事でもないです。では、こちらの質問で。昨日の夕飯は何を食べました?」


「……『樫の木亭』で、お前の土産の串焼肉を。あとエール」

「『樫の木亭』に来たんですね。私がいるうちに見えなかったので、気にしてました」

「ああ…… 今朝は何食った?」

「ニールの家のメイドさんが、ミートパイを焼いてくれました。あとサラダとスープを。デニスさん、昨日はちゃんと眠れましたか?」


 さっき一度聞いた質問を投げると、デニスさんが少し深く息を吐いたのがわかった。

「……ちょっと、考え事をしていて、あまり眠れていない……」

 ……やっぱりなあ…… 昨日もなんか様子が変だったし……

「やっぱり、そうですか…… どうぞ」

「……それだけか?」

「聞きたい事は、また次の順番で聞きます」


「……ニールの家はどうだった?」

「前に話を聞いていましたが、確かにちょっと大きめの普通の家ですねー。確かにお屋敷ではなかったので、余計な緊張はしないで済みました。で、考え事って、どんな事ですか?」


「……」

「言えないならパスしてください」

「……パスで」

「じゃあ、私に聞きたい事ってなんですか?」


 背中に当たるデニスさんの体が、軽く震えたのがわかった。

「……」

「パスしてもいいですけれど。でも、デニスさんはさっき私に何か聞こうとしてたんじゃないんですか?」

「……そうだな……」

 緊張の表れなのだろうか。私の首にしがみつく腕に少し力が入るのがわかった。

「……こうして、俺を乗せるのは嫌なんじゃないか?」

「嫌ではないですよ」

 あっさりと答えると、え……と耳元で小さい声がした。

 ああ、そうか…… もしかして……

「もしかして、私が嫌がっていると思って…… それで気にしてたんですか?」

「……ああ。それも、ある……」

「嫌じゃないです」

 確認するように、もう一度口にした。


 それで、どこか遠慮をしているようだったのか…… なんでそんな風に思ったんだろう? 思わせてしまったのだろう?

 そんな事で、昨日からデニスさんを悩ませてしまっていたかと思うと、ひどく申し訳ない気持ちになった。


「……えっとですね…… 言葉だけでは説明がしにくいです。ちょっと早めですが休憩の場所を探しますね。そこで話します」

「ああ……」

「デニスさん、王都への帰り道の時には気にする様子もなかったのに…… なんで急に気になったんですか?」

 そう聞くと、デニスさんはまた口ごもった。

「言えないですか?」

「……いや、どう言えばいいかわからん。ちょっと頭ん中整理する時間が欲しい……」


 そう言って黙り込んだデニスさんを待ちながら、考えを巡らせる。

 なんでだろう? 乗せるのを嫌だなんて言ってないのに。聞いてくれれば良かったのに……


 そう思いかけて、気が付いた。思い出した。

 違う、そんな簡単には聞けなかったんだ。


 昔の私にもあった。ずっとずっと、聞くのが怖くて胸に仕舞っていた言葉。

 言いかけて…… でも怖くて、やっぱり聞けなくて……

 聞いたところで、自分の胸に刺さる返事が返って来たらどうしよう……

 そう思って、また口を噤(つぐ)んだ。

 そんな気持ちを私は知っていた。


 デニスさんにも、大なり小なりあんな思いをさせてしまったのだろうか。



 獣道を駆けて行くと、丁度良い程度に開けて日当たりの良い場所があり、そこで軽い休憩にする事にした。森に囲まれて見晴らしは悪いので、念の為に簡易結界を張る。


 お茶と、軽いおやつを出そうとして、思い直してパンを出して来た。火魔法で軽く炙って切れ目を入れ、レタスと燻製(くんせい)肉、チーズを挟んで、デニスさんに差し出す。

「デニスさん、朝ごはん食べてないんじゃないですか?」

 そう言うと、デニスさんはきまりの悪そうな顔をして受け取った。どうやら当たりだったらしい。


 一つ目をデニスさんが食べている間に、二つ目を用意する。デニスさんには一つでは全然足りないはずだ。さっきの話の様子だと、昨日の夕飯も成り行きで口にした程度なのだろうし。

「ロディさんのお店のパンと、マーカスさんの作った燻製肉の組み合わせ。最強ですよねー」

 笑って二つ目を差し出すと、ああそうだなとほっとした笑顔で受け取った。

 お腹が減っていると、心も減っちゃうからね。少しはデニスさんの気持ちが落ち着いてくれると良いのだけれど。



 さて…… ちゃんとさっきの話をしないとよね……

 恥ずかしいけれど、覚悟を決めて声を掛けた。

「……デニスさん、ちょっとそのままで動かないでください」

「ん?なんだ?」

 座り込んでいるデニスさんの膝に触れる程に近づくと、デニスさんが少し身じろぐのがわかった。

「変な事はしないので、そのままで居てください」

 改めてそう言うと、おうと少し上擦った声の返事が返って来た。


 座ったデニスさんの足の間に座り込み、背中を預ける形にして、彼の腕を自分の首に回させる。

 ちょうど背中側から抱きしめられている形になり、デニスさんの心音が少し早まり緊張したのがわかった。

 敢(あ)えて、デニスさんの腕を取り、しっかりと抱きしめさせる。

「こうしていて、どうですか?」

「どう……って……」

 デニスさんも明らかに戸惑っている。

「私は…… なんだか少し恥ずかしいです……」


 多分、私の顔は赤いだろう。それを見られぬよう、顔は向けずに話を続ける。

「デニスさんからしたら、私はただの狼の姿で、しがみ付いていてもどう思う事もないだろうと思いますが、私から見たらずっとこういう状態なんです。今まで誰かを乗せた事なんかもないし…… 慣れなくて…… 意識しちゃうと恥ずかしくなるし……」

 後ろから、ああと小さな声が聞こえた。

「嫌じゃあないんです。でも乗せている間はずっと、デニスさんに抱きしめられてる様で…… 恥ずかしいんです…… 大分慣れてきていましたけど…… こうやってわざわざ言葉にすると、また気にしちゃいそうです……」

 恥ずかしさを押し込めて、精一杯伝えた。

 少しの間があり、デニスさんの肩の力が抜けて、その緊張が解けたのが伝わって来た。

 デニスさんは片手を解いて、私の頭をわしわしと撫でてくれた。

「……ありがとうな……」

 デニスさんのその言葉に、ほっと、安心をした。



「顔を見られると恥ずかしいから、このままで話させてくれ」

 そう耳元から聞こえると、デニスさんは何故かまた両手を添え直してさっきより強く私を引き寄せた。

「本当、恥ずかしい話だが…… ちょっと自信無くしてた……」

 ああ、そうか。この感じを思い出した…… こうして強く引き止めた、あのダンジョンの時のデニスさんだ。


「お前を守る為に俺の部屋に連れて行ったはずなのに、俺がベッドで寝落ちしちまうし。朝練にも一緒に付き添えないし…… あん時だって、お前を一人にするのは危険だったんだ。勝手に行くなよって、思ったけど言えなかった。 この旅に付いて行くって言ったら、お前には要らないみたいで…… しかもニールんちに誘われて嬉しそうなの見ちまったら、俺もしかしたら嫌がられてるんじゃないかって思っちまって……」


 そうか…… 勝手な行動をしてしまった、私のせいだ。

 デニスさんに良かれと思ってした事だったけれど、それが逆に良くなかったのか…… あの時の様に私の身を心配してくれて、守ろうとしてくれた。でも私が勝手な事をしたから、それでデニスさんが不安になって、余計に気にしすぎちゃったのか。


「俺にもちゃんと頼ってほしいんだ」

 デニスさんは相変わらず優しい。そう言って、弱(・)い(・)私(・)が寄りかかりやすいようにしてくれる。

「ありがとうございます。頼りにさせてもらいます。あと……」

 私もちゃんと伝えよう。

「言えてなかったけれど…… 色々とありがとうございます。迎えに来てくれたのも、守ろうとしてくれたのも、部屋に泊めてくれたのも、嬉しかったです」



 昔の自分は死んでしまったから。

 大切な、大切な人たちとは、もう会う事は出来なくて。

 言いたかった事や、自分の気持ちは、もう伝える事が出来なくて。

 そんな事を今更わかっても、もう後悔しかなくて。


 だから、今の自分は言える時にちゃんと伝えよう。

 何かあったら、もう伝えられないんだから……

 お読みいただきありがとうございます。


 端から見たら、なんだかイチャイチャしてますね(笑)

 見てる人は誰も居ませんが(それはそれで問題?)


(メモ)

 (#9)

 ダンジョン(#33)


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一部の話を『『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい』おまけ閑話集』への別掲載の形に変更いたしました。
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