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ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~  作者: 都鳥
故郷へ向かう旅

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14 疑惑

◆登場人物紹介(既出のみ)

・リリアン…主人公。前世の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。前世では冒険者Sランクの人間の剣士だった。完全獣化で黒狼の姿になれる。

・デビット…ワーレンの町冒険者ギルドマスター

・ジェス…冒険者。ミノタウロスに襲われたCランクパーティーの生き残り

・ザック…Bランク冒険者パーティーのリーダー

・リタ…Bランク冒険者パーティー剣士

・アンナ…Bランク冒険者パーティーの魔法使い

・ビリー…Bランク冒険者パーティーのメンバー。アンナの弟

 近所の人気店から届けさせたというランチプレートは、メインがオークのローストだった。しっかりとハーブを効かせた豚肉はとても美味しく、お腹が空いていたのでぺろりと食べてしまった。

 ドワーフの国を出てからずっと走っていて、食べるのも適当に干し肉を(かじ)っていた程度で済ませていた。だからこういうちゃんとしたご飯が、余計に嬉しい。


「昨日のミノタウロスの一件だが、いくつか不自然に思える点があってな」

 食後の茶を飲みながら、ギルドマスターのデビッドさんがそう切り出した。

「あのジェスと名乗った冒険者。まずは彼について不透明な点が多すぎるのだよ」


 そういえば、昨日の一行から一人足りない事は気付いていた。あの時は彼は冒険者仲間の一人だろうと思っていたのだけど、そうではなかったみたいだ。

 ここでようやく、昨日皆があの場に駆け付けた経緯を聞く事が出来た。


「彼はミノタウロスが戦斧(せんぷ)を振るっていたと言ったのだが、あの場にはそんなものはなかった。あと彼本人についても疑問がある。彼のパーティーが受けていたと言うクエストについて、どうもはっきりしないのだ。少なくともこの町でクエストを受けた記録はない。なら他の町なのだろうが、それもはぐらかそうとしている様に思える。少なくとも彼らは昨日からこの町に滞在していた。これだけは事実なのだがな」

 財布の負担が少ない方の宿屋に宿泊した記録はあった。しかし冒険者ギルドに立ち寄った記録はなく、またギルド員たちも見かけた記憶がないのだと。


 さらに王都出身の冒険者だという事で、王都にも照会をしたけれど、何か怪しいらしい。現在、彼はこの建物内の一室で、怪我の治療と称した軟禁状態になっているそうだ。

 ついでに私の照会も昨日のうちに済ませてあると伝えられた。だからこの話に同席させてもらえているのだろう。


「これがダンジョンに潜る為にこの町に訪れたと言うのなら、クエストを受けていなくても不思議はないのだが、やはりダンジョンの受付にも彼らの記録がない」

 だとすると、何の為にこの町を訪れたのか、どうしてあの場所に居たのか。

「さらに言えば、この辺りでミノタウロスが目撃されたという情報が今まで当たらない。居てもおかしくはない魔獣ではあるのだがな。それにしても色々と」

 気になる点が多すぎるのだよ、と言って、デビットさんはザックさんの方を見据(みす)えた。


「少し辺りを見回って確認してみますか?」

「お願いしたい。勿論(もちろん)依頼料は出す」

 まだ昼なので時間は十分にある。この食事の後にすぐに出掛けるそうだ。


「そうだ。あのミノタウロスだが、私の方で預からせていただいている。止めを刺しただけと言ったが、それでも倒したのは君という事になる。なので、あのミノタウロスは君のものだ」

 今度は私の方に向き直したデビットさんは、そこまで言って少し顔を曇らせた。

「しかし先に話したように、どうもこの件についてはもう少し調査をした方が良いと思われる。申し訳ないが、あのミノタウロスを少し預からせてもらいたい」


 了承(りょうしょう)の旨を伝えると、デビットさんはさらに頭を下げた。

「あと、重ね重ねの要望になるが、もしあのミノタウロスの肉や素材など、買い取り先に()てが無いようであればここのギルドで買い取らせていただけないだろうか」


 上級モンスターの肉や素材は、冒険者ギルドの重要な収入源になる。ミノタウロスは肉も皮も、特に貴族向けに人気の高い素材だ。

 自分でもいくらか肉は欲しいが、肉の半分を残して他は買い取ってもらって構わない。先の調査が終わってからの解体になるそうなので、帰郷の帰りにまたこの町に立ち寄る事を約束した。


 * * *


 冒険者ギルドを出ると一度宿に向かった。皆さんは準備したらすぐに出掛けるそうだ。

「私も同行させていただけませんか?」

 駆け寄って、見上げながらザックさんに声を掛けた。

「狼族ですから鼻も利きます。少しはお役に立てるかと思うのですが」


 ザックさんは私の様子を見回すと、振り返ってアンナさんに目配せをした。

「さっき診た感じだと体に異常はなさそうよ。スタミナさえ回復してれば大丈夫じゃないかしら?」

 大丈夫!とアピールするように、ぴょんぴょんと跳ねて見せると、皆から小さな笑みがこぼれた。


「でもリリアンちゃん、まだDランクよね」

 今回はクエストという形式ではないから、冒険者ランクの制限もないはずだ。だからリタさんは純粋に私の安全面を心配してくれているのだろう。

 勿論、迷惑をかける可能性はあるので無理は言えない。でも前世の時には無かったこの町、そして周りの環境など、色々と確認をしておきたい。

 昨日の事もあるし、一人で見て回ると言ったらきっと止められるだろう。それならば彼らについて行く方がいい。


「まあいいだろう。今日はあくまでも調査だし、情報は多く得られる方が有り難い。もとより危険には立ち入らないつもりだ。俺たちもまだBランクのパーティーだからな、無理はできない。もし危険があると判断すれば、すぐに退くし、逃げる選択肢も大いにありうる」

 それを聞いて、何故かビリーさんが嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振った。ザックさんの言葉を聞いて安心したのかな。


 確かに、昨日のミノタウロスのような高ランクの魔獣に出くわす可能性もあるから、無理はしない方がいいよね。と私が思ったところで、昨日無謀にもミノタウロスに立ち向かって行ったという(てい)の小娘の口からは何も言えない。

「よろしくお願いします!」

 そう言ってザックさんに頭を下げた。


 * * *


 出立の前にパーティーメンバーの登録を行う。登録といっても、冒険者カードをパーティーリーダーに確認してもらうくらいだ。

 本当はカードを出さなくても、双方の意思の確認だけでも完了するのだが、やはり形式的なものがあった方がやりやすいという事で、この方法が通例になっている。

 カードに主要なスキルを表示させてザックさんに渡した。こっそり『偽装』の魔法石を発動させているので、一応Dランク()()()見えるはずだ。


 パーティー加入が完了した途端、私とザックさんの全身に光が薄く(まと)わりついて、すぐに消えた。周りに居た皆が目を見張って見ている。(わず)かにスキルが上がったようだ。この感覚は覚えがある。

「ザックさん、『獣使い』持ってるんですね」

 そう確認すると、ザックさんはちょっと気まずそうに視線を()らせた。

「あー…… 昔付き合ってた女がな、獣人だったんだよ」


 済んだ過去の事、さらにザックさんの雰囲気からすると、余計な話を聞くのは良い事ではないだろう。

「そうだったんですね」とだけ言い、そしらぬ顔で荷物を背負い出立の雰囲気を作った。

 さっきリタさんがザックさんの言葉にちらりと反応したのが見えたし、ここはさらりと流した方がいい。



 まずは昨日のミノタウロス戦の現場まで、歩いて向かう。パーティーの荷物持ちを申し出たが、各々(おのおの)が荷物を持つ事になっているらしく、一応下っ端なのに雑用仕事は全くなかった。

 それどころか何故かビリーさんはひどく驚いて、不思議そうな顔をした。もしかしてまだ体調が戻ってなくて無理をしてるとか思われたのかな? もう大丈夫なのに。


 ビリーさんとアンナさんの姉弟は、かなり私の事を気遣ってくれているようだった。道中も色々と話しかけてくれたり、そんなビリーさんの言動にアンナさんがツッコミを入れてたり。

 そんな様子がとても楽しくて嬉しい気持ちになったし、明るい雰囲気にザックさんとリタさんもさっきの変な緊張がなくなったようで、内心ほっとした。


 昨日の場所に着くまでには1時間もかからなかった。こんなに町の近くだったのか……

 あの時「町が危険にさらされる」と言ったのは、咄嗟(とっさ)についた嘘だったけど、あながち間違いではなかったらしい。

 昨日のうちに辺りを浄化してくれたのだろう。血の跡などは一切見あたらない。でも路上に残る踏みしめた足跡と、踏み荒らされた道端の草たちが、ここで何かがあった事を訴えかけていた。


 そのまま町とは反対の方向に歩を進める。そちらの方向からこちらに向かうように続く足跡を見ると、ミノタウロスの蹄の跡だけではない。明らかに複数の人間の靴跡も入り混じっている。

「追われたんだな」

 ザックさんが低く呟くのを聞いて、ビリーさんの顔色が少し曇った。大方(おおかた)その様子を想像してしまったのだろう。

 四半(しはん)時間ほど道を進むと、足跡が道沿いから森の方へ()れた。


 森に入ってからは下草が多く、足跡を辿(たど)る事は出来なくなってしまった。

 先を警戒しながらさらに奥へと進む。所々に手折(たお)られた木の枝の跡を確認できる。おそらくあのミノタウロスが通ったのだろう。


 しばらく進み、森がさらに鬱蒼(うっそう)とした様相(ようそう)を見せ始めた頃、やや湿り気を帯びた風が僅かに不快な臭いを運んできた。

 おそらくまだ私にしか嗅ぎ取れていない。この臭いは……

「ザックさん、多分こっちです」

 指を差した先は森のさらに奥。いつの間にか辺りに漂い始めた霧が、さらに行く先を覆い隠そうとしていた。

 お読みいただき、ありがとうございます。


 毎回、サブタイトルに悩みます。

 後でシーンを探しやすいようなものを付けたいのですが、でも読む前に先が予想できそうなのは嫌だし……

 後にいつの間に変えてたりするかもしれません。


(メモ)

 『獣使い』スキル(#7)

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一部の話を『『ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい』おまけ閑話集』への別掲載の形に変更いたしました。
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