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アイアンハート  作者: 安心
必然たる偶発
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巡合1

「――その眼球は売れるときが来るときまで持っておいた方が良いだろう」


それもそうだな。もう少し信頼を勝ち取るための地位を手に入れないとだな。真面目に働けということか。そのためには鉱石、剣を手に入れ盤石な布陣を築いてからだ。


「それじゃあ俺たちはこれで」

「ばいばいー」


『ありがとな!じゃあ当日現地集合で』


城塞都市に付いたハートはザック達と別れた。

ザック達は城塞へ戦争に参加するために向かうと言っていた。ハートは細かいことはわからないのでザック達に任せて宿に戻ることにした。マイヤーは大通りの屋台を片っ端から食べようと手を伸ばすがザックに頭を叩かれ注意され泣く泣く一つの肉だけ買うことにしていた。相変わらずの兄弟だ。


大通りから右に曲がり細い路地に入り更に突き当たりの角を曲がればそこは宿。ご機嫌で走っていくハート。眼球の入った袋は軽快にハートの足取りに合わせて揺さぶられていく。黒スーツで大通りを走る姿は異様な光景だ。角を曲がろうとして――


「ん…」


『ほげっ』


ドンっと音を立ててぶつかる。

そのままその人を押し倒す形になった。

前方不注意の事故だ。

加害者ハートはぶつかった相手よりも眼球を気にしていた。


やばいご機嫌で走ってたらぶつかっちまった。

お気にのお目々ちゃんをどこかに落としたか?

どこだ?ん?しっかりと手に握られている感触。

良かった無事だ。しっかりとした弾力もある。

弾力?柔らかい?あれ?


ハートの下から女性の声――


「その‥手を退けてくれないかしら?」


言われたままにハートは目を向けると手にはしっかりと女性の大きな乳房が握られていた。そうこれは眼球ではなく乳だ。はっと気づいて慌てて手をどけ立ち上がる。何事もなかったようにハートはぶつかった謝罪のために女性に声をかける。


『すみません‥怪我とかないですかね?』


「ええ‥大丈夫よ。気にしなくていいわ」


声の主――

色黒の地肌。耳が細く尖っている。身長はハートよりも低いが女性にしては高い。顔はとても美しい。そして何よりも目を向けてしまうのが仕方ないという言葉が相応しい大きな乳が。よくよく見ると服装も独特で露出している部分が多い。2本の剣を下げている。


コスプレの痴女モノ?


そのような馬鹿なことを考えている場合ではない。

辺りに眼球が落ちていないか探す。

地面に座り込んだままの女性の横に――


「あら?これ」


女性は落ちていた眼球を手に取り眺める。

その様子は興味を持ったというより元々知っていたという具合だ。


『それ‥綺麗でしょう?はっは。偶々手に入ったんで売ろうと思って――』


眼球を90度回転させ下部を見ていた女性の手が一瞬だけ光る。ハートはそれに気づかない。魔法に長けた者ならば気づけただろう。



「偶然ねえ‥お返しするわこれ」


女性から眼球を返される。ハートはすぐに袋にしまい込む。

まるで何かを観察しているかのように女性はハートの足先から頭まで見ている。いや見ているというよりも舐められているといったそのような感じが正解か。


『・・・なにか?』


「貴方とは‥いえ、なんでもないわ」


女性は歩きだした。大きな乳房を揺らしながらハートの横を通り過ぎようとすれ違う。女性は顔、口をハートの耳元に。そう一言だけ――


「それじゃあね。()()ね。黒のお兄さん」


また?とはなんだろう。疑問に思いつつもハートは紳士的に会話合わせておく。こういう所をノリで合わせておくのが大人のお兄さんの立ち振る舞いだ。若い者は見習い給え。


大きな声で手を上げ返事を。


『はい。またお会いしましょう美人なお姉さん』


キマったな。紳士的に。

見る人が見ればモテること間違いなし。

まあ、あの美人さんこっち見てないんだけどな。


それにしても美人だったな。そして素晴らしい体だった。新手のハニートラップかと思わせるぐらいだ。いつかあのような女性を横に連れて歩いてみたいものだな。どこぞのバカたちと違って俺はハニートラップには引っかからないがな。



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