序章
「ああ〜〜〜!!!!もう、もう本当にオリアメ最高だわ…!!」
放課後の教室、いつも通りの面子で机を囲みながら私は天を仰いだ。周りの友人たちはあきれた様子で、それでもなんだかんだと私の語りを聞いてくれている。
最近の話題は専ら今ハマっている乙女ゲーム……なのだけれど。
「もうほんっと、男前で快活なオリバーとその幼馴染で優しくてかわいいアメリアの組み合わせがね!最高で!あーー!!!!」
「それ何回も聞いた」
私はその作品の、とあるノーマルカップリングにどハマりしてさまっていたのである。
全寮制の魔法学園モノで、主人公はその世界には珍しい回復特化の属性を持ち心が清い女の子。
時折ライバルの令嬢に意地悪されながらも各属性を持つ男子生徒達と様々な恋をする、というようなもので。
しかし、そんな主人公のことはこの際どうでも良いのである。
私が今どうしても好きで好きでたまらないのはー………
オレンジの髪を持ち、主人公より1学年上のオリバー・フェンデ。快活で明るく実直な雷属性の攻略キャラ。
と、
緑の髪を持ち、主人公と同学年で同室のアメリア・バーンシュタイン。優しく穏やかで主人公の悩みを聞いたりと献身的に接してくれる唯一の味方女性キャラ。
の、2人なのである!!!
一見交流のなさそうな2人ではあるけれど、その実幼馴染という設定があるのだ。
オリバールート以外のその他ルートではお互いが願った末の婚約者同士という。完全両思いカップル!素晴らしい!
しかし…、オリバールートではその婚約も親が決めたもので、2人の仲は単なる友人同士となってしまう。
しかしオリバーとアメリア、どちらのキャラとしての深層に迫るのはこのルートだけで、泣く泣く推しカプを引き裂いたのだったけれど。
「でもほんと…オリバールートは確かに萌えるんだけど、2人の内情とかがわかるんだけど、でも、やっぱり私はオリバーの隣にはアメリアにいてほしい…ああっ…検索が捗る…………」
「もういっそ自分で書いちゃえばいいのに!コミケ、サークルで応募してみようよ…!!!」
そんなくだらない話が続く、ふとした瞬間がどうしようもなく楽しくて、幸せで。
下校時刻を過ぎそうになったところで、私達はカバンを持って校舎を出た。出た先で、小さな子猫が車道に飛び出すのを見て、わたしはーーーーー。