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ブルーブラッド  作者: 人間性限界mohikan
二章『自由の荒野』
98/101

三十七話、死闘の果てに

月一投稿を余裕で未達成していますが私は生きています

2025/09/01

後半の戦闘が若干完成度が低い感じがしたので修正しました。

過程の若干の変更と戦闘を盛っただけで結末自体は変化なしです。

誤字修正を除き、これ以上の改稿は行わないので今後も作品をお楽しみください。




人払いが済んだ廃墟において、白銀の甲冑を着込んだ長身の騎士リュナと、それすらも凌駕する程の巨躯となった赤錆びた装甲服の兵士レオが激突する。



明確な対格差がありながら、両者の力は互角。

否、レオの方が僅かに優る。


剣と剣が激突する度にリュナの纏う白銀の鎧の表面に魔法陣めいた蒼く輝く幾何学模様を浮かび上がり、装着者の筋力と耐久力を嵩増しする。


だが、それで持ってもレオの重い一撃を防ぎきれずにリュナは強く地を踏みつけながらも後退を余儀なくされる。


踏みしめた地面が削れ、足がめり込み、それでもなお力に負けて強引に後ずされば、後に残されるのは戦車の履帯に踏み荒らされたようなでこぼこの激しい荒廃した大地のみ。


汚染された雨以外降らぬ乾燥した土地で繰り広げられる人外の戦闘は剣を交える毎に荒廃を引き起こし、不純物を大いに含んだ汚染された砂塵を大気中へと巻き上げていく。



自然、舞い上がった土埃が煙幕の如く舞い上がり、視界は狭まり、双方の姿が曖昧になっていく。

だが——————。



濛々と巻きあがる粉塵の中、双方がまるで相手の位置を完全に把握しているかの如く再度剣を激しく叩きつけ合う。


空を暗くするほどの砂塵が舞う中、剣と剣がぶつかり合い発生する蒼い火花の如き閃光が迸り、プラズマ火球の炸裂が砂塵すらも吹き飛ばして二体の怪物の戦いを露わとする。



そうであっても、遠方より戦いを見守るリュナの信奉者たちから見て感じられるのは巻き上がる砂塵と時折輝く蒼の閃光と緑の炸裂、そして硬質な金属同士が激突し合う絶叫の様な音のみ。



数度斬り合い、互いに距離を取り、そして再度ぶつかり合う。

リュナが視界不良を利用し、相手の側面や背面へと機動を試みては迎撃され、正面から突撃を試みるレオの一撃もまた強固な守りに受け止められる。


時折牽制で放たれるレオの乾いた血の散弾は防壁で対応され、速度の遅いプラズマ弾は回避され、決定打になりえない。


対するリュナは投射兵器としても用いれる槍を喪失し、近接一本での戦闘に甘んじている。



故に、戦いの勝敗を決めうるのはやはり剣同士による近接戦闘であった。


レオの力任せに振るわれる一撃は相手を斬るというよりも、相手の武器を破壊し、捻じ伏せる事を主眼としたかのような乱暴な剣戟の連打であった。



それを動じることなく防壁で逸らし、盾で弾き、剣で受け止めつつ距離を取り、純粋な力の勝負となる鍔迫り合いを避けた機動戦へと持ち込みつつ、兜の中でリュナが笑う。



この男は強い、素晴らしい。

一撃ごとに剣がより重く、より鋭く、より早くなっていく。


殺意の感情だけが乗った一つ一つが致命傷となりえる強烈な一撃の乱舞、まさしく無我の境地。

純粋な殺戮者の到達すべき完成された姿がここにある。



高速機動の刹那、土煙で閉ざされた視界の中、それでもレオの殺意に満ちた瞳が己を捉えて離さない。

こびりつく敵意に惹かれて目を向ければ、互いの兜越しに目と目が合う事を嫌でも理解するに至る。


暗い情熱に満ちた視線だ。

やり場の無い怒り、苦しみ、憤怒の感情の全てをぶつけんという強い情動と共に己の動きに追随し、緑の炎をまき散らしながら行われる姿勢の強制変更でもって即座に死角からの攻撃に対応してくるレオに対する評価が今まで以上に高まっていく。



「素晴らしい…ッ!」


無意識に口から漏れるのは感嘆の言葉。

その技量、狂気、そして純粋なその在り方への賞賛の言葉。


対するレオより発せられる物は高速機動によって急速に消費されて行く酸素とエーテルの不足に苦しむ息遣いと憎悪に塗れた唸り声のみ。



最早なんら躊躇も思考もなく、相手を滅ぼす事のみを念頭に置いた己への損害を一切考慮しない全力戦闘による暴走じみた衝動に突き動かされている。



「がぁああッ!」


叫びと共に更に重みを増したレオの一撃が、己の筋力、そして鎧の保護機能で強化されたエーテル操作を遂に上回ってリュナの握る剣を弾き飛ばす。


構えを崩された、そう理解した頃には更に加速したレオの剣が既に己の首目掛けて迫っているのが嫌にゆっくりと己が紫の瞳に映る。



「…ッ!」


おそらくは父祖の鎧、そして己のエーテル操作による斥力場と防壁の複合防御でもってしても防ぎきれぬ一撃。

避けねば、死ぬ——————!



死に近づく毎にリュナの心臓が高鳴り、戦士としての高揚感が増していく。

ああ、まさに今ここに。

生が漲り、溢れている!


戦闘種族として作り上げられてきた先祖の血統が脳内物質を限界まで放出する事を強い、時間がねばついたように鈍化していく。


そして、それとは反比例する様に脳の中での思考の処理速度は平時のそれとは比べ物にならぬほどに加速していく。



対処手段、あり。

まだ死ぬには、早すぎる——————。



首元を狙った横一閃が直撃せんとする刹那、鎧が幾何学模様の輝きを発しながら魔導防壁(バリア)を自動展開し一秒に満たぬ間、死の一撃を受け止める。


その僅かな間隙を縫い、リュナはまるで人の関節の動きを無視する様に上体を急速に反らして赤い一閃を避ける。

大型種が自重で潰れる事を避けるために用い、時には実体弾すら逸らす斥力場を周囲ではなく己自身に向けた強制的な姿勢変更。


自然、重力に捕らわれた肉体が背中から地面へと落ちていく。

だが——————。


体が地に着くよりも先にリュナは腰から生えた黒翼を強くはためかせて地を滑る様に加速し、距離を取りつつ体勢を回復する。


まるで水中を泳ぐ魚の如く、数度の羽ばたきでもって地面スレスレより上昇して一般的な物理法則を無視した不自然な戦闘体勢への復帰を遂げる。


翼を僅かにはためかせて姿勢を制御し、地面へと着陸すると同時に両腕で剣を握り締める。

その直後には砂塵の煙幕を突破した鉄錆色の装甲服を纏った悪鬼が刺突の構えで砲弾の如く突進してくる。


受け止めるには相手の速度が乗り過ぎている。

迎撃は下策と判断して即座に地を蹴り、翼を広げて空へと舞い上がると同時にリュナは剣に己が力と意思を流し込む。



殺すには惜しい、この男が欲しい。

己が命が危機に瀕する中にあっても、リュナの中にあるのはレオに最初に語り掛けた時以来の所有欲にも似た親愛の感情であった。


レオから得た血は微々たる物、その在り方の全てを理解できるほどではない。

だが、そこに我が子デュラと伴侶たるクロエの言葉と洞察、そして実際に交わした言葉が加われば十分な輪郭が浮かび上がってくる。



似た出自、似た境遇、そして拮抗した実力。

共に滅びた種の末裔、この地獄(地上)をさ迷った者だけが持つ視座、クロエを容易く超え、己すら上回りかねない高い戦闘力。


何よりも、悪魔憑きとしては破格の安定した精神性と理性すら持っている。


交渉する事すら出来ずに失ってしまったエンキの穴埋めに都合が良い存在。

今後の展望の為に必要な即戦力となりえる優秀な個体、これほどの人材がこれ以後見つかるとも思えない。


そして何よりもその出自こそが重要とすら言える。

この男を逃せばおそらく次に『人類』と出会う時は完全なる敵対となるだろう。

手足の二、三本は切り落としたとしても生かして捕らえたい欲望が未だ心の中にくすぶっている。


全力での殺し合いを宣言しておいてこの体たらくだ。

己の未練がましさにリュナは鎧の中で僅かに苦笑いすら浮かべて見せる。



だが、このまま純粋な白兵戦を繰り返したところで埒が明かないもまた事実。

何よりも——————。


空中へと離脱しつつ、リュナは輝きを増していく剣を先まで己がいた地に向け振り降ろす。

その軌跡に合わせる様に刀身から分離した光波が大地へと突進し、届かぬ筈の斬撃を疾走させる。


光波斬撃(フォースブレード)天頂(ゼニス)の騎士が振るった物理装甲を無視する戦車殺しの一撃。


エーテルランスと並び恐れられた人類にとっての恐怖の象徴をリュナは躊躇なく二度、三度と連続して大地に残るレオに向けて斬り放つ。



輝く光刃が三度、地を抉って炸裂する。

筈であった——————。


光刃が黒い斬撃に切り裂かれ、闇に貪られるように消えていく。

衝撃で砂塵が吹き飛び、顕れるは黒い剣を握る血錆の幽鬼の姿。


瞬間、全身に襲い掛かる悪寒と緊張感。

そして、それ以上に己の内でアレを滅ぼせという使命感と敵意が感情とは無関係に湧き出してくるのをリュナは自覚した。


アレこそがレオという男の根源に根付いた悪意そのものだ。

血の中に眠る父、そして祖たちの全てが拒絶し、否定しようとする何か。

人類との間にある100年程度の因縁などよりもなお深い、古代よりの仇敵。


己に再寄生しようとした祖たるスーラが抑え込んでいた物が顕現しているのだろう。

二度も殴り、休眠に追い込んだが故にアレを抑制しうるものは最早存在しない。


その力にレオは取り込まれたのか。

否、これは——————。


幽鬼が地を蹴り、ただその脚力のみによってリュナの眼前まで即座に到達して見せる。

同時に放たれた下段からの右切り上げの一撃に剣が悲鳴を上げ、刀身にひびが浮き上がり、衝撃で右手の感覚が麻痺し、ほんの一時ながら自由が奪われる。



「…ッ!」


剣を手放しこそせねど再び重い一撃に構えを崩され、空中にて無防備になったリュナの上方へと陣取ったレオが剣を反回転されて逆手に持ち両腕に力を込めて振り下ろす。


刹那、再び合った目を見てリュナは確信する。

今にも消し飛びそうな自我を食いつなぎ、力を振るう殉教者の気迫がそこにある。

乗っ取られてはいない、正気だ。


正気のままに、己が最も憎む力を受け入れ解放している。

そこにあるのはここで神格に侵食されきり燃え尽きても良いという覚悟、そして誇りと矜持すらも捨てて確実に殺すという固い決意。


そうせねば勝てぬ相手だと理解したが故に、一切の躊躇なくそれを行っているのだ。

砂塵の中、こちらの気配を感じ取り的確に攻撃したカラクリもこれであろう。

内なる真の邪悪に譲歩し、その知覚を得たからこそ、見えぬものを見て先手先手で動けるのだ。


そうまでしてでもこの命を奪いたいか。

僅かでも血を奪い、その記憶と意思の断片を味わったからこそ分かる感情。

これは、愛だ。



執着であれ、敵意であれ、強い感情とはすなわち、愛だ。

この男は愛に満ちている。


顔も知らぬ先祖の為にこれほどまでに義憤に燃え、今現在の己の生に無関係であろう古代の因縁に突き動かされ、この男は全力の殺意と憎悪を剣に込めているのだ。


今を生きる者の思考ではない。

未来を見ようとしている者の在り方ではない。

この者には過去しかない。


だが、それが故に——————。

この男は孝行者だ、尽きる事無き先祖への崇敬の念がこの狂気を作り出したのだ。

先祖を思うが故に、今ある全てを狂った産物と否定し、無念の象徴とみなし、破壊するしかないと結論するに至ったのだろう。


この男は、愛深き故に狂っている。

とても好ましい。


己と同じ狂気を持っている稀有な逸材だ。

戦いながら、リュナの中に好意と好感が増していく。



これほどまでに求められては応えたくなるという物。



「がぁああああああッ!」


絶叫とも咆哮ともつかぬ叫びと共にレオの剣が振り降ろされる。

どれほどに脳を高速回転させ、主観時間を鈍化されたとて、剣の速度そのものは鈍化しない。


与えられるのは次の行動を選択するまでの刹那の時間、最早剣での対処は間に合わない。

己の体を守る様にリュナはまだ動く左腕を動かし、剣との軌道の間に小盾を滑り込ませる。


黒い剣は鎧と小盾が展開した防壁を障子でも破る様に瞬時に容易く貫通し、籠手と小盾で構成された最も強固な装甲防御を突破し、狙い通りにリュナの心臓を左腕ごと貫いた。




——————————————————————————————



勝利した。

己の剣が敵の腕ごと心臓を貫いた感触をレオは確かに味わい、燃え尽きそうな意識の中で歓喜した。


だが、直後に襲い掛かったのは頭部への衝撃。

そして地へ落ちてく感覚だった。


一瞬遠のいた意識が回復すると同時に悟る。

殴られたのだ、何に?



『上だ、アレを我らに献上せよ』

『喰らえ、喰らい至るのだ』

『血肉を得て再臨せよ、汝こそ我らの至高の器』

『お前が全てを終わらせるのだ、その為にアレを喰らえ』



耳元で数多囁かれる不快で邪悪な声に導かれ、対象を見やればそれはまだ生きていた。


貫かれた左腕は肘から先を小盾ごと切断され、最早皮と僅かな筋繊維で繋がっているにすぎぬほどに損壊している。

胸には黒く濁った剣が突き刺さり、致命傷の筈だ。


だというのに、あの騎士は自分を殴り飛ばしたというのか。

緑に輝く濁った日の光の下、未だ力強く羽ばたく黒翼から羽根を振り落としながら、胸に黒き剣を生やした騎士が誇示する様に握り拳を作った右腕を掲げる。



己の心臓を貫かれた瞬間、既に剣の距離ではないと判断して自らの剣を投棄し、拳でもってこちらの攻撃に反撃して見せたのだ。



なんという生命力、なんという闘志。

憎悪がさらに増すという物だ。

さっさと死んでくれれば良い物を、こちらにももう時間は無いというのに。


邪神の妨害で思うように動かぬ体を浪費とも言える程のエーテルを消費して稼働させた末にラペナから続く連戦、邪神が離反した事で枯渇しつつあったエーテルを回復剤一本で持ち直すのは不可能だった。


長くは戦えそうにない。

そこまで見越して一本だけよこしたならば、むしろ悪辣まであるだろう。


この騎士気取りは戦いに公平さなど最初から求めていない。

公平感を求めているだけだ、勝てる戦を用意した上で演出している外道だ。



何よりも、邪神スーラが引っ込んだ事でまたアレらが湧き出してきたのだ。

完全なる拒絶と共に肉体を破壊してまで追い出したと思った物が未だに残っていたこと自体が酷く不快だ。


だが、同時に理解も出来てしまった。

己が人間である限り、これは永遠に自らの根底にあり続けるものであるのだと。

解放されるにはそれこそ死ぬしかないのだと。


しかし、死ねるならばとっくに死んでいる。

あの日、朽ちた地下鉄にて自決に失敗して以来、自らの意思で死を望んでも得られぬ事にレオは薄々ながら気づいていた。


エンキとの戦いに勝利し、邪悪なる人の根底にある物が目覚めて以来それはより確信を増していった。

拳銃で、小銃で、重機関銃で、時折戯れにそれを試すたびに火薬は湿気り、弾丸は詰り、銃身が爆ぜ、怪我を負う事すらなかった。


剣を試せばまるで己の意思を無視した様に体がそれを拒絶する。

それはスーラの意思と妨害であったのかもしれないし、人の神の導きであったのかもしれない。

救済は戦いの中にしか無いと悟るまでそう時間はかからなかった。


ならばこそ、ここが死に場所なのだ。

そうでなければ、まだ生きねばならぬのだ。

そんな事は許されない。許せない。



全ての因縁は自我が健在な内に己の死によって全て完結せねばならない。

だからこそ、この邪悪の力を今一度使うのだ。

確実に殺し、そして死ぬ為に、燃え尽きる為に。



先までとの一心不乱の戦いの反動か、酷く思考が散漫になっていく。

俗にいえばこの時、レオは勝利に焦っていたのだろう。


レオは憎悪と根底に潜む自滅衝動に任せ、疑似スラスターを最大にして落下を相殺して再上昇をかけ、リュナへととどめを刺すべく突進する。


剣はリュナに突き刺さったままだ。

思えば、強固に掴んでいた筈の剣の柄を殴られた程度で手放すであろうか——————。

否、最早思考は不要だ。


今一度アレを掴み、そのまま両断してしまえば良い。

あと一手、あと一撃で究極の勝利が待っている。


使える力はすべて使う、だが自我は手放さない。

内なる者たちの都合通りになるつもりもない。

奴も自分も、ここで滅びるのだ。



「ぐ…ッ!ガハァアアアア!」


あと僅かで剣の柄に手が届くという刹那、レオはリュナの行動に目を見開いた。

自ら、心臓に突き刺さったレオの剣を吐血混じりの叫びと共に容易く引き抜いたのだ。


馬鹿な、鍔がぶつかるまで深く刺した剣を片腕で抜けるはずが——————。

引き抜かれたと同時に放たれた一閃がレオの思考を中断する。



極至近にて放たれた光波斬撃(フォースブレード)の一撃が咄嗟に防壁(バリア)で対応したレオを弾き飛ばす。


硬質なエーテル同士の激突による金属音めいた絶叫が響き渡り、巻き起こされたエーテル爆発に押し返され、レオはリュナへと至る為の速度を失った。

そして、それが勝敗を決定づける事となった。



「父祖の(つるぎ)よォッ!我が血を捧げんッ!」

「ッ!?」


リュナが剣を掲げ叫び、その光景にレオは思わず目を見開いた。


剣の刀身が、半ばから失われている——————。

それはレオの血によって再鋳造される以前の姿、蝕まれる前の清浄なる蒼き剣の残骸。


理解に至る。

あの剣はリュナに突き刺さると同時に、己が刺した相手が刃を向けてはならぬ同胞であるという事に。

突き立てられると同時に機能を強制停止し、レオの血で構成された刀身を排除したのだ。


殴られた程度で手を離したのは、何よりもここまで自ら振るってきた剣がレオを拒絶し、自身を構築する生体金属の流体移動でもって掴んでいた手をすり抜けさせたが故であったのだ。


生体金属(ミスリル)、生ける金属によって鋳造されし異世界の騎士の為の剣。

より相応しき継承者の手に帰還した剣の元へと腕と胸より漏れ出すリュナの血がまるで意思を持つ粘体の如く寄り集まり、欠けた剣をかつてあった伝説的な姿へと生まれ変わっていく。


このままでは不味い、ありえべからざる状況の連続に冷静さを欠きつつあるレオは再度疑似スラスターを噴いてリュナへと突撃をかける。

剣が再生するよりも先に一撃を叩き込み、状況を逆転させねばならない。



ふざけるな!(Fuck up!)武器が裏切るなどォッ!」

「元より——————」


蘇った刀身はみるみる間に輝く蒼へと染まり、そしてそれを超えて眩い白い光を放っていく。


レオが硬質化した手刀を叩き込むべく空を突き進むのとリュナが再生させた剣を振り下ろすのはほぼ同時であった。


一手遅い、先にリュナの一撃が来る。



「我らの得物よォッ!」


叫びと共に振り下ろされる頭部を狙った一撃をレオは首を逸らして躱すが、速度まで殺せない。

剣はレオの左肩へと突き刺さり、そして炸裂する。


剣より放たれた蒼き光の槍が刹那の間にレオの左半身を消し飛ばし、それでもってしても有り余った力を地に叩きつけ、穿ち、爆裂する。


エーテルランス、夷敵を討滅する陽神の指。

人類を恐れさせた第二の業、その極限近接射撃であった。


肉体の消滅と同時に多量のエーテルを消耗し、レオの意識が遠のく。

その隙を逃さぬとばかりに肉薄したリュナに頭部への膝蹴りを叩き込まれ、仰け反ったレオは再び地へと堕ちていく。


追撃は無かった。

レオが地に落ちると同時に、リュナもまた限界が来たように地へと降り、片膝をつき剣を杖になんとか姿勢を維持している。



「見事だ、アール…ッ!ここまで私を追い詰めたのは誰以来だったか…。数十年来無い事だ…!」


これまでの無理の反動が来たかの如く苦し気に咳込みながら、リュナは兜を脱ぎ捨て、蒼い血を口から多量に吐き捨てる。

致命傷、否、即死していてもおかしくない一撃を受け、なおも動き続ける怪物がさらに続ける。



「だが、残念であったな…ッ!我が心臓は二つある!我が身未だ死せずッ!」



勝ち誇る様に叫びながらリュナが立ち上がる。

それと同時に、装甲をパージする様にリュナの体から鎧がひとりでに脱落していく。


そして、残された衣服すらも自ら引きちぎり、半裸となって堂々と立ち上がり、レオより奪った剣を握り締め、つきつける。


大穴の開いた胸、そして切断された左腕からの出血は減りつつあれども未だに止まらない。

だがそうであって尚、その顔に張り付いているのは生気に満ちた輝く紫の瞳と好敵手を見つけた蛮族の戦士の如き笑みであった。



「ここより先は騎士としてではなく、ただこの世界に生きる魔なる者としてお相手しよう!」


煩わしい物を脱ぎ捨てる様にリュナは獰猛な本性を露わにする。


先祖伝来の騎士道と防御手段に頼った結果がこれだ。

なまじ信頼しているからこそ、頼りたくなってしまう。


死地においては最も信頼すべきは己自身。

安心を投げ捨て、自ら死に近づく意思こそが、勝利を齎す。



リュナは慢心を命を守る鎧と共に脱ぎ捨てた。

満身創痍、今にも死にそうに見えるにも関わらず、リュナの声には未だ気迫と歓喜の色が残っている。


ああ、呼吸する度に、副心臓の鼓動が起こる度に全身が痛む。

酷く苦しい、これが生の苦しみだ。

素晴らしい、今自分は酷く生きている。


極限状態において命綱を自ら投げ捨て、死に自ら更に近づく事でより強く生を実感し、力と成す。

それがリュナの在り方であった。



理不尽な形で形勢が逆転した事にレオは憤りを覚える。

なぜだ、なぜ死なぬ。

死ななければおかしい、生きてる者の癖に心臓を潰されても死を拒絶するなどおかしいにも程がある。


こちらはこれだけの物を捧げ、犠牲を払ったというのに——————。



「ふ…」


体を再構築しつつ立ち上がり、レオもまた抑えきれぬ感情を言葉として吐き出した。



「ふざけるなぁ!なぜ死なん!早く死ねバケモノがぁ!」

「そうだ!私はバケモノだッ!貴様が人だというならば打ち滅ぼしてみよ!人の語る夢物語の様になッ!」

「…ッ!」



啖呵を切られ、レオは思わず一歩後ずさる。


武器が無い。

血の散弾と拳だけであの剣と渡り合うのは困難だ。

何よりもあの剣の威力を知っているからこそ、焦りが湧いてくる。

いや、あった。


耳元でささやく邪悪な意思が武器のありかを指し示す。

その声に従い見れば、そこにあるのは地面に半ば刺さったリュナが用いていた剣。

その蒼く輝く刀身が嫌でもそのありかを指し示していた。


問題は、剣を手に入れるまでの時間を稼げるか——————。



「構わん。アール、武器を取れ」


リュナは右手に握る剣を地に突き刺し、レオの意図を見透かすように挑発する。



「どうした?早く続けようではないか。あまり時間を置くと私の傷が完全に塞がるぞ?」

「…ッ!」


意図が分からない。

なぜ不利になると分かっていながら——————。




「お前の実力は概ね理解した。どうやら殺さずに身柄を手に入れられそうだ。対等な戦いをした方が屈服させた時に満足感が出るという物だ」


全力の殺し合い、自らそう宣言しておいてこちらを値踏みしていた事にレオの最後の理性の糸が切れる音がした。


上等だ、殺してやる。



最早、剣を侵食して支配するだけの力は残っていない。

だが、リュナの剣はレオを拒絶しなかった。


それもそうだろう、レオの中には剣の使い手たちが仕えた最も至高の存在が眠り、血となって巡っているのだから。

同じ血統であるからこそ、受け入れるのだ。


かたや拒絶し、かたや受け入れる。

奴と自分が同じ存在だと言われている様で、それが酷く不快だった。

もう何も考えたくないほどに不愉快だった。


頭の中で響く声が更に大きく、数を増していく。

全てが煩わしい、最早考えるまでもない。


剣を拾い、斬り殺すだけで良い。

他の思考をレオは完全に放棄した。



その有様を見届け、満足したリュナはレオが剣を拾うと同時に無事な右腕で千切れた左腕から滴る血を掬いあげて頭になでつける。

オールバックにかき上げられた銀髪は血と共に凍り付き、隠された額の深い傷が露わになる。



「さぁ、続けようか。殺し合いを!」


リュナの挑発に限界が来ていたレオが弾かれたように地を走り出す。



「……この狂った忌まわしき者(アボミネ―ション)がッ!」

「はははッ!こんな世界で正気で生きてなどいられるかァッ!」


騎士然とした姿から転じて半裸の蛮族と言った装いとなり果てたリュナが切り結ぶ間際に千切れかかった左腕で乱暴にレオの刀身に殴りかかる。


千切れた腕で剣が殴れるか?殴れるのだ。

千切れかかった腕を固定するのは凍らせたリュナ自身の血であった。

接着剤の如く、凍った血で半壊した左腕を固着させ、そして剣を殴ってみせたのだ。

殴った拳が鋭い刀身によって両断されて捩じ切られ、凍れる血は砕け散り、無事であった肘以降の左腕に深刻な裂傷が引き起こされる。


だが、一撃を入れる間隙は十分できた。

剣の軌道は左腕に食いついたことで確実に逸らされた。

壊れた腕一本で剣一本を道連れにする、安い物だろう。



「はははァッ!」


崩れ、千切れ落ちていく左腕を無視する様にリュナは右へと跳躍して剣を振るう距離を確保すると同時にレオの首元目掛けて渾身の刺突を放つ。


再生が追いつかない左腕を犠牲にした決死の一撃をしかし、レオは容易く防壁を展開して防御する。

己の弱点を理解しているからこそ、防御も重点的であった。


僅かな侵徹も許されず、レオの防壁に剣が弾かれる。

リュナの攻撃を防ぐと同時にレオもまた次なる攻撃へと移りつつあった。

逸らされた軌道を強制的に修正しつつ、未だ剣に纏わりつく腕の残骸ごと振り回さんという力任せの愚直なまでの回転切りだ。


既に双方に初期にあった剣の勢いと技術の精細さは無い。

限界を超えた殺しあい、先に力尽きるのがどちらかの我慢比べ。



「ああ、いいな!このままだと死にそうだッ!だがッ!」


剣を弾かれ体勢を崩したリュナに向け放たれた回転切り、それを腰の黒翼を羽ばたかせる事で強制的に発生させた後方への推進力でもって回避。


蒼い剣が虚空を切り裂き、リュナの左腕が幾多もの肉片となり砕け散る。



「腕一本、脚が二本に心臓一つ!剣があるならば命ある限り、如何様にでも戦って見せよう!それこそが我が愛なれば!」


後方への短距離飛翔の最中、リュナが叫ぶと同時に失われた左腕に変化が起きる。

新たな傷より漏れ出していたおびただしい量の血が蠢き、槍を形成し、氷結する。


着地同時に剣を地に突き立てて速度を殺し、左腕に形成された氷血槍を引きはがし、リュナが即座に取るのは投擲の姿勢。



「はぁああああッ!」


レオが距離を詰めようとするよりも早く放たれたそれは自身のエーテルを推進力として消費しながらなおも加速し、APFSDS(高速徹甲弾)の如くレオへと襲い掛かる。



「…ッ!」


防壁のみでは間に合わない、そう判断し剣の腹を盾にした複合防御にて槍を迎え撃つ。

防壁を容易く貫通した槍は剣へと突き刺さり、砕け散って蒼い閃光となって炸裂する。


エーテル爆発の閃光がレオの体を焼き、視界が蒼に染まる。

重く強い、文字通り命を削った攻撃であった。


凌げはしたが、強固に張った防壁が破壊された事がレオを更に追い詰める。



「さぁ、舞い踊れ!我が命よ!」


閃光が晴れたと同時にレオの視界に移ったのは血の氷で形成された幾本もの蒼いナイフと同時に突撃してくるリュナの姿。


どこか見覚えのある光景だ、これはかつてどこかで——————。

そうだ、あの地下鉄でジョンソン少尉が戦った騎士がやっていた事に——————。


幾本もの高濃度エーテルを内包したナイフ型の自爆兵器が鋭角な高速機動を繰り返しながらリュナに追随してレオに迫ってくる。


思考はそこで中断した。

迎撃が先だ。


しっかりと大地を踏みしめ、剣を右手で握りしめながら、レオは制止を求める様に左手をリュナへと向ける。

無論、降伏の意思表示などではありえない。


掌からせり出すのはマスケットの銃身。

放たれるのは乾いた血の散弾。


散弾の面制圧でもってのナイフの撃墜、それがレオの試みた事であった。

目論見通り、剣の距離に至るまでに数本の迎撃には成功するが、それでも二本のナイフが防空網を突破し、本体たるリュナとの同時複合攻撃を慣行してくる。


防壁を再展開する時間と余力は既に無い。

死守すべき首と頭部以外、顧みる必要なし。


レオは脚を狙った一本は無視し、首を狙う一本を一閃で撃墜し、僅かに遅れたリュナと最後の一騎打ちを試みる。



剣と剣の打ち合い、そう判断していたレオの目に映ったのは白い輝きを放つ眩い刀身を構えたリュナ。

剣を振り降ろしながら放つは超至近距離での自爆覚悟の光波斬撃(フォースブレード)


剣自体を防いでなお、止め切れなかった光波の残滓がレオの装甲ヘルメットを吹き飛ばす。

視界がエーテル爆発の閃光で焼かれ、咄嗟に後方へと跳躍したレオへ、リュナの更なる追撃が迫る。


己自身も爆発に巻き込まれ、火傷を負いながらリュナは一切の躊躇なく肉薄攻撃を試みる。

防御を捨てた上段からの全力での袈裟斬り、防御は間に合う。


筈であった——————。



「…ッ!?なっ!?」


蒼い剣同士がぶつかり合った瞬間、レオの握る剣が限界を迎えたように硬質な金属音の絶叫を上げながら半ばから折り砕ける。


対応が間に合わない、後退も防御も最早遅——————。

思考するよりも先に体が動く、まるで己の意思を無視した様に。


斬撃が袈裟掛けの如く肩口から首の真下を裂く。

だが僅か一歩の後退が功を奏し、首の切断は避けられた。



「ッ!?」


内なる声が叫ぶ、まだ死んではならぬと。

戦い、喰らい、肉を得よと叫ぶ。

ここに至って体の操作にすら介入してくるか。



「ふざけるな…ッ!これは俺のたたか——————」


気を散らす声に苛まれながら、レオは距離を取るべく後方へと跳躍しつつ左掌を突き出して散弾を放とうと試みる。

だが、それよりも早く袈裟切りからの返しで放たれる下段からの切り上げが更に胴を切り裂きつつ、左腕を斬り飛ばす。


体が重い、反応速度が落ちている。

距離を取った筈なのに既にリュナが目前まで迫ってきている。


あと一撃、あと一撃で勝てたというのに——————!



「ぐ…ッ!売女(ばいた)がァアアアアアッ!」


ヤケクソ気味に放った半壊した剣による精彩を欠く横一閃を潜り込んで躱したリュナがそのまま剣を水平に構えてレオの真横を通り抜ける。

不快な、硬質な金属同士が激突するが如き悲鳴が大気に響き渡った。


同時に、完全に両断された胴がずり落ちて右腕のみが残ったレオの上半身が汚染された大地へと叩きつけられた。

結局はこれか、人から逸脱しても最後は死に損なった時の如く穢れた土の上か。

内なる存在に翻弄され、怨敵の一つも道連れに出来ぬのか。



「…なんとか、勝てたようだな。私の勝ちだ、アール」

「ぐ…っ!」


己の意思とは関係なく、再び接合しようと蠢く左腕と下半身がリュナに蹴り飛ばされる。

残っているのは右腕一つと折れた剣が一本。


力を使い過ぎてこれ以上は肉体を保持できそうにすらない。

明らかに戦闘の後半にガス欠を起こしていた肉体が形を維持できるのはあとどれ程の時間か。



最早、眼前から見下ろしてくるリュナを睨み返す事しか出来る事は無かった。

リュナの肌は血色を失い、肉体を欠損し、美貌を損なうほどに血と泥と化した土埃に塗れながら、それでも生気に満ちた紫の瞳をなおも爛々と輝かせている。



「なまじ剣戟が強すぎるというのも考え物だな、あの剣はお前の一撃で既に半壊していた。あえて自動修復しない様に命じて手放させてもらった。私を斬っても使えるようにもしてやったのだから文句はあるまい」


剣を捨てたのは意図的だったのか、そしてあえて拾わせたのも全てはこの盤面への布石。

リュナにとって、剣の状態に意識を向けさせずに斬り合いを継続させた時点で勝利は決まっていた。


血の槍も、血のナイフも、至近での光波斬撃(フォースブレード)も、全ては純粋な物理攻撃を成功させるための布石。

半壊した剣を消耗させる事と、それを悟らせない為の目くらましに過ぎなかった。


或いは鎧を脱ぎ捨てて見せた事すらも演出。

剣が壊れるまで続ければ良い出来レースだったのだ。


全てが手遅れになってからレオは憎悪に満ちた表情でリュナを見上げる。



「私が勝てたのはただ単に運が良かっただけであろうな。次戦えば勝てるは怪しいという物だ。こういう場合、殺してしまえばすぐにでも問題は片付く」


地に這いつくばるレオにリュナが蒼い剣を振り上げ、振り下ろす。


蒼い剣が迫ってくる。

決して目は閉じない、最後の瞬間まで諦めてはならない。


だが、そうか。

これが死か——————。


振り降ろされた剣はレオの顔面、右目と鼻の間を縦一線に引き裂きつつ、眼前の地面に突き刺さった。


汚染された土煙がまき散らされ、不快さに顔をしかめる中でレオは気づく。

顔に鋭い痛みと熱さを感じるが死んでいない、生きている。


トドメの一撃は無かった。

突き刺さった剣を引き抜き、鞘に収めながらリュナは静かに口を開く。



「我が娘の顔の傷の礼はそれで済まそう。私は寛大を自負しているのでな」

「ふざけるな…!生き残るのは片方のみだ!それ以外など許さ——————」

「それを決めるのは勝者の特権だ。お前は負け、私は勝利した。単純な図式だ。私はお前を生かす」


既にリュナの顔には平静が戻り、先までの蛮人の気配は消えている。

出血は止まり、倒れる気配もない。

このままでは確かに敗北だろう。



「お前は強い、やはり殺すには惜しい男だ。今一度機会を与えよう、私と共に来るつもりはないか?」


おもむろに近づき、片膝をついたリュナが付きつけてきたのは剣ではなく、右手であった。



「お前はあまりにもこの世を知らぬ。私がお前にこの世界の在り方と力の使い方を教えてやろう。その身に沁みついた呪いすらも共に手を取り合えば、いつかは解いてやれるかもしれない。人と魔が共に歩めばこの終末の世程度などすぐ我らの物になる。どうだ、人の子よ。我が同盟者となるならば、残るお前の種族も救ってやろう」


勝利してなお、奪わない。

それこそがリュナの最も傲慢なる悪魔憑きらしさであるのだろう。

それはある意味で最も戦士の尊厳を傷つける行いだ。


だが、純粋な戦士ならば死闘の末にこれほどの強者に手を差し伸べられれば堕ちる事は不可避であっただろう。



この期に及んで断るわけがあるまい、そう勝利を確信したリュナが柔らかい笑みを浮かべている。

レオは何とかまだ体が動くことを確認し、体を仰向けにすると僅かにため息を吐き、そしてリュナに応える様に右手を伸ばす。


手と手が絡み、握手が成される——————事は無かった。

その間際に素早く動いたレオの右手がリュナの腕を掴み、引き倒す。



「お断りだ…ッ!」


そして、レオは倒れ込んだリュナの首筋に喰らい付いた。

レオは戦士ではなく、兵士であった。


たとえ誇りを捨て、恥を選んででも己に課した任務を遂げん。

敵を滅ぼすという目的のみが残ったレオの捨て身の一撃であった。



「ほう、そう来るか」

「…ッ!」


だが、そこまでしてなお驚愕したのはむしろレオの方であった。


首筋に喰らい付かれ、血を噴き出すリュナの顔に驚愕は無かった。

そこにあるのはむしろ、関心や好機の相。


何かがおかしい、まずい、危険だ。

途端に湧き上がる凶兆の気配にレオはリュナの手を離し、吸血を中断しようとする。


だが、それに反応する様に素早く動いたリュナの右腕がレオの頭を抱擁する様に固定する。

最早逃がさぬとばかりに、強く、硬く抱き留める。



「良いだろう、確かにこの方が早く済む!味わえ、我が血、我が命、そして我が記憶を!」


レオの内に力と同時に流れ込んできたものは悍ましきものであった。

戦いが終わろうと、悪夢は決して終わらない。

言うなれば、周回前提のゲームで初見で裏ルートのトゥルーエンドルートを引いたような境遇、それがこの作品のアレコレです。

通常エンドならば魔王系メインヒロインことリュナさんとの戦いがクライマックスでその後世界の真実が分かるバッドエンドがノーマルエンドみたいな塩梅ですね。

どうバッドなのかは次話で分かると思いますので申し訳ないですが、またしばらくお待ちください。

ちなみに通常エンドだと一章で主人公がエンキくんと遭遇しないし、変異も遅めになる楽々ルートになる代わりにリュナとエンキくんがマブダチになるのでフラグが折れる感じで考えています。


今回はここまで


今回の話の脳内BGM

Mozart - Dies Irae Requiem | EPIC VERSION (Epic Classical Music)

https://www.youtube.com/watch?v=XuVON1vXjEE&list=RDI002lT7Q_Lk&index=2

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