十話、肉弾戦
ヴィルさんの戦い方が納得いかなくて三度ぐらい書き直してたら投稿が遅くなってしまった
思えば、俺は少し浮かれ過ぎていたのかもしれない。
期せずして自由を得た事に、明らかな策略が故とはいえ人を超えた力を得た事に、そしてあの忌まわしい気配を啖呵を切って撃ち破った事に。
ここに立ち寄る前の街では他の連中がクソ爺のローにへりくだってる間に新しい兵隊と車を手に入れてみせた。
ここに来るまでは散発的に襲ってくるミュータントどもを身一つで蹴散らして見せた。
久しぶりに手に入れた自由の空気は格別だった。
人を超えた力で持って好きに生きられるというのはこれ以上にない快楽だ。
これを永遠に味わい続けられる。
ただ格下を足蹴にするだけでそんな意識がどんどん肥大していった。
最も肝心な悪魔憑き相手の戦いの経験など無いというのに、どうにでもなると思い込んでいた。
同格であっても軽くひねりつぶせる。
そのおごりがこのざまを生んだのだ。
ボースがそう悟った時には既に敵に組みつかれていた。
反応する間も無かった。
まるで相手の姿が一瞬かき消えたと思った瞬間には目の前に存在し腕を掴まれていたのだ。
ボースの手首に伝わるのは油圧機械の如く一切の躊躇なく肉と骨を握り潰さんという握力、そしてとても人間の肌や筋肉のそれとは思えないヴィルの肉体の感触だ。
人の皮と体温を持った岩、或いは金属の如き感触だけがボースの感じられるヴィルの感触だ。
「ぬぅん!潰れるが良い!『筋肉の抱擁』だ!」
両腕の手首を万力の如く握りしめ上げられ、更にはその腕を引きちぎらんと外側に無理矢理伸ばされボースは十字架に磔られた聖人の如き格好を強制される。
無論、それはお遊びなどではない。
一度限界まで引き伸ばされた腕はそのまま背中側へと押し込められ、稼働範囲を越える事を拒む肩が激痛と共にミシミシと警告の音を発してくる。
ボースの目の前にあるのは小麦色の日焼けした自信に満ちた男の笑み。
男はボースの両腕を掴んだまま抱擁しようとしているのだ。
ヴィルは大柄な男だが、その体躯は変異する前のボースと同程度に過ぎず、変異後に巨体となったボースよりは遥かに小さい男に過ぎない。
だというのに、ヴィルはボースの体をいともたやすく捻じ曲げ押し潰そうと圧をかけ続けている。
それは対象の肉体の限界を無視した行動であり、『抱擁』が完成した時にはボースは圧縮されて奇怪な芸術作品へと変わり果てるであろう。
それがヴィルの得意とする筋力に任せて相手を圧殺する『筋肉の抱擁』であった。
通常であれば体格が大きい方が勝つのが道理。
しかし、エーテルという異常物質によって狂った世界では体の大小などはそう戦闘を左右する物ではない。
かつて小柄なエンキが片手でボースを投げ飛ばしていたように、より小さいヴィルが巨体のボースに力で勝つ事は驚く事には値しないのだ。
外骨格生物が限界を超えた重量をエーテル操作で散らしているとするならば、ヴィルは逆に人の形状を保てない程に肥大化した筋肉をエーテル操作によって押し潰して人の形として形成している異形であるのだ。
外骨格生物がエーテルの補助によってその構造上の限界を無視した重量を支える事が出来るならば、内骨格の生物の筋肉が通常の限界を超えた密度を誇っていようと誰が文句を言えるのであろうか。
限界を超えて幾重にも圧縮されてなお肥大化した筋肉のブラックホール、それがヴィルという存在の正体であった。
「てめぇ…ッ!」
負けじと腕を内側に戻そうと踏ん張り力を込めるが、途端に未だいえぬ脇腹の傷が悲鳴を上げる。
イナゴレイダーに蹴り抜かれた傷が回復しきっておらず、人特有の非常時においても無意味に過度の主張を続ける痛覚がただでさえ不利な力比べに悪影響を及ぼしている。
ボースは人であった時の欠点によって己よりも小柄の相手に押し込まれ、更には無理矢理抱きしめられて体全体で握りつぶされようとしているのだ。
これ以上の屈辱は有りはしないだろう。
ボースの顔に憎悪の念が深まっていく。
「早々に退場して貰おうか!私には救わねばならぬ友がいるッ!」
笑みを崩さぬままにヴィルはボースの眼前で叫び、更に力を込めて来る。
それはまるで全自動で動く作業機械が脆弱な人の抵抗など意に介す事など無く所定の動作を終えようとしている様な絶望感。
「ぬぅおッ!?」
しかし、ヴィルの筋肉式処刑は二発の銃声によって動作を止めた。
キドの的確な射撃がヴィルの側頭部を的確に撃ち抜いたのだ。
無論言うまでも無く悪魔憑きであるヴィルを9mm拳銃弾程度で殺す事は困難だ。
それでも、一瞬の間意識を混濁させるには十分だった。
死の宣告の如く目の前に存在した自信に満ちた笑みが二度大きく揺れ力が緩んだ瞬間、ボースもまた呼応して反撃に打って出る。
「がぁああああああッ!」
最後の力を振り絞ってヴィルに全力の頭突きを敢行、猛獣の咆哮の如き叫びと共に仰け反らせた頭をヴィルの鼻めがけて叩き込む。
「ぐぅうッ!」
拳銃弾の奇襲と頭突きの連撃を受けたヴィルは鼻を抑えて悶えながら数歩後退し、拘束から解放されたボースは辛くも窮地を脱出する。
「ボース!下がれ!機銃で仕留める!」
「ちぃッ!」
キドの指示に舌打ちしつつも状況を素早く判断したボースは顔をしかめがら後方に大きく跳躍する。
その視界の端に映ったのはレオが近接戦に入る為に投棄した重機関銃、その銃身を肩に担いで銃座になった補充兵の一人と照準を合わせて引き金を引こうとする部下レナルドの姿。
「空いたぞレナルド!撃て!」
「了解!ヤク中!しっかり保持してろよ!」
キドの叫びに応じると同時に二人がかりで運用される水冷式重機関銃が火を噴いて7.62mm小銃弾が絶え間なく吐き出されてヴィルへと殺到する。
だが―――。
「モストッ!マスキュラー!」
ヴィルが叫んだ時には既にその構えは完成していた。
腕を前に出しつつ前傾姿勢となり鍛え抜かれた筋肉を強調する奇怪な構えを完成させた瞬間にヴィルの周辺空間に奇妙な陽炎が発生し、殺到する全ての弾丸をはじき返す。
その奇怪なる構えを起点にヴィルを無敵の筋肉要塞へとその姿を変貌させる。
己の筋肉を拘束するエーテルを密集させて強固な防壁へと転換する奥義『ポージング』。
「この鍛え抜かれし私の筋肉と美しきポージングの前には銃弾など効きはしないぞ!」
青い鼻血を垂れ流しながらも余裕に満ちた自信ある笑みを崩さぬヴィルがはきはきとした声で叫び、ボースの額に浮かんだ血管が怒りで更に太くなる。
そして、その怒りは隣までやってきたキドに即座にぶつけられた。
「無事かボース、まだ戦えるか?」
「キドォ!なんだあのふざけた野郎はァ!」
「キッドだ。あれがヴィル、筋肉の化け物、生ける彫刻、無敵要塞、そういう風に呼ばれてる傭兵悪魔憑きだ」
いつもの問答を繰り返すボースとキドをよそに多数の曳光弾を含んだ機関銃の火線がヴィルに叩きつけられているが、それは全てヴィル奇怪な構えと筋肉の前に弾かれて役目を果たす事無くあらぬ方向へと消えていく。
もっとも、ヴィル程の悪魔憑きともなれば『ポージング』をするまでもなく機関銃弾に耐える事は可能だった。
幾重にも圧縮された重厚な筋肉、それも悪魔憑きのそれともなれば銃弾など表皮に突き刺さるだけで貫通など出来はしない。
本来ならば如何に悪魔憑きの肉体がエーテルで強化されているとはいえ、何の策も無く至近での重機関銃の乱打に耐えられよう筈がない。
拳銃弾と小銃弾では火薬の量も弾頭の威力も大いに異なってくる、エンキですら念のために肉の盾を用いる程度には厄介な攻撃だ。
だが、ヴィル程に筋肉を極めた特異点の如き悪魔憑きともなればその表皮の強度は大型ミュータントに匹敵するほどだ。
純粋な防御力、その点だけを見ればヴィルはエンキすらも大いに上回っていた。
そうであってもヴィルは敢えて『ポージング』による絶対防御を嗜好する。
弾丸が筋肉に突き刺さる姿を美しくないと断ずるが故に。
「キッド!腕は錆ついていないようだな!仕事仲間のよしみ、降伏するならば見逃すぞ!」
次々と叩きつけられる機関銃弾を弾き飛ばしながら大地に根を張った大樹の如くそびえるヴィルが親しげにキドに語りかける。
「悪いなヴィル、俺は既に新しい雇用主がいる」
「そうか!ならば仕方ない!お前の事は嫌いでは無かったのだがな!」
提案を断られてヴィルには一切の怒りは無い様であった。
その姿はいつもの自信に満ちた笑み、そして鍛錬によって異様なまでに肥大化した筋肉を強調する奇怪な構え。
互いに本業が傭兵であるからこその割り切った関係、必要ならば敵にも味方にもなる。
それがキドとヴィルの間柄だ。
機関銃弾が直撃するごとにヴィルの体表に絶えず蒼い燐光がまき散らされ、弾丸がワックス塗装されたガラスの上で跳ねる水のように次々に弾かれていく。
その光景をボースは眉を痙攣させながらただ眺めるしか無かった。
思考が追い付かない。
銃弾が効かない装甲を持つミュータントはいた。
防壁を展開して弾いてくる大型種もいた。
だが、これは一体何なのか。
いや、理屈は分かる。
恐らくは防壁の亜種だろう。
あの構えをした時にだけそれが発動するのだろう。
そうでなければ組み伏せられそうになった時にキドの銃弾が効いた理由にならない。
だが、こんなふざけた方法で戦いを仕掛けて来る相手は歴戦のボースをして初めてであった。
「おい副隊長さんよぉ!効いてなさそうだぞォ!」
「分かってるっすよヤク中!お前は黙って銃身保持してろっての!」
その異様な様相に狼狽した補助兵がレナルドに叫び、同じく動揺しつつあるレナルドが引き金を操作して射撃をフルオートから数発ずつの短い連射に切り替えながらがなり立てる。
ヤク中、それがボースが集めた補充兵の中で一番使えそうだと判断された男に与えられた名であった。
ヤク中はその名の通り、この錆雪舞う絶望の雪原においても自身を守る雨具が駄目になる可能性を無視して自家製大麻タバコをキメながら機関銃の銃身を肩に担いで銃架の代わりを勤めている。
「股間狙えや股間!周りのてめぇらも見てねぇで弾幕張れェ!」
ヤク中は青みがかった煙を吐きながら左右を見渡して生き残っている補充兵にも射撃を命じる。
レナルドの指揮権を無視した行いであったが、その所作に慣れた雰囲気を感じたレナルドはあえて自由にやらせる事にした。
生き残っていた補充兵が我に返って連射を続ける機関銃の傍に集まり、手に持った雑多なライフルや短機関銃をヴィルに向けて撃ち放つ。
そして、その全てがヴィルの表皮に突き刺さらんという所で青い燐光と赤い火花を発しながら弾かれて虚空へと去っていく。
言うまでも無く射撃を頭部や股間と言った急所に集中させても効果はない。
そもそも弾丸自体が肉体まで届いていない。
その光景にキドが静かにつぶやいた。
「やはり機銃程度じゃ奴の防壁は破れないか…」
大型ミュータントが形成する強固な魔導防壁、それをヴィルは奇怪な構えと共に発生させているのだ。
本体と距離を離して半球状に展開する従来の形を無視して肌に密着した状態で形成されるそれは、極薄いが故に極限にまで圧縮され強固である。
貫通には最低でも銃ではなく砲がいるだろう。
「キド!ありゃどういう理屈だ!」
「キッドだ。理屈なんて無い、悪魔憑きなんてそんなもんだろ?奴はあの変な構えをしてる時は無敵だと信じ切ってる。だから実際にそれが防壁として展開されてるんだろう」
鍛え抜かれた肉体と磨き抜かれた魅せる技巧、この全てが完璧に機能した時、ヴィルは何者にも負けぬ無敵の魅せる筋肉になれるという狂気の信仰を持っている。
あくまで魅せる事、それが重要だ。
そうでなければ肉体構築者は名乗らない。
その美しさにこそ力が宿るという狂気それがヴィルの力の源泉。
エーテル操作とは出来ると信じ抜く狂信がもたらす狂気の産物。
出来ると信じる事はその最初の一歩であり、出来て当たり前故に考える事無く手足を動かす様に使いこなす事が最上。
そういう意味ではヴィルは無意識に弾丸を逸らし、相手を畏怖させ、自らの身体能力を向上させていたエンキには遥かに及ばない。
むしろ、限定的な条件を課している時点で大きく劣っている。
だが、その条件付けが時には力を特化した存在へと変貌させる時がある。
すなわち、それだけの制約を課しているのだから強くて当たり前という確固たる確信の力である。
ヴィルが選んだスタイルは多数の制約を課した上での一点特化の異能、特定の動作によって発生する超防御であった。
ヴィルの始まりに根ざしたそれはヴィルにとっては当たり前の真実であり、真理であり、故にキドのアノマリー弾の直撃にすら耐えきれるのだ。
「機銃の弾が切れた瞬間に向かってくるぞボース、俺とお前で奴を止める。レオがイナゴレイダーを始末するまで時間を稼ぐんだ」
そして、そのアノマリー弾すらも喪失したキドに出来る事はボースを支援しての時間稼ぎのみ。
残された兵力と装備、そしてボースの力を結集しての持久戦だけが今できる最善であると言えた。
だが、そのキドの言葉がボースの怒りに火をつけた。
「んだと?てめぇと一緒に時間稼ぎ?俺が勝てないって言いてぇのか!?ああッ!?」
「そうだ、冷静になれ。今のお前は消耗していて俺も切り札を失ってる。どっちも万全じゃない以上は次善策をするべき―――ッ!」
会話が終わる前にキドの体は空中にあった。
ボースに投げ飛ばされたと理解した時には既にボースの姿は遥か前方であった。
殴られたわけではないのは幸いだが、事態は確実に悪化した。
すぐ傍でヴィルめがけて飛んでいく機銃弾など意に返す事など無くボースは力強く茶色の雪を踏みしめて『ポージング』を続けるヴィルへと歩み寄っていく。
「ボース!よせ!全員死ぬことになるんだぞ!」
「黙れキドォ!俺はてめぇみたいに誰かに飼われる犬じゃねぇ!」
ボースは怒っていた。
目の前にいるふざけた男に、弱気になって逃げの提案をするキドに、今この瞬間も戦いを拒絶して痛みを発する己の肉体に、そして、何よりも未だ弱い己に対して怒り狂っていた。
ボースは既に人を逸脱し、人の近縁種としては最上位の肉体と力を得ていると言っても過言ではない。
猛毒のエーテルに順応し、それを操る神器を得、神を拒絶する精神力を有し、終末の世に君臨する覇者に足る資格を得た選ばれし者だ。
ヴィルの抱擁とて、ボースが悪魔憑きでなければキドの助太刀が間に合う事無く抱き潰されていた。
イナゴレイダーの蹴りにも耐えられず上半身と下半身を両断されていただろう。
ボースは既に十分強い存在へと成りあがっていた。
ただ、まだ経験が足りていないだけに過ぎない。
如何に超越者になろうとボースは悪魔憑きとしてはまだ生まれたての赤子の様な物であり発展途上。
だが、ボースにとってそんな事は言い訳にはならない。
上位に位置しようと、その中で下であるならば結局はその者達に支配され、隷属するしか無くなるというのがボースの世界観だ。
ボースにとって、生きるという事は支配するか隷属するかでしかない。
ARK5で市民兵として使い捨てられていた時も、脱走の後の逃避行においても常に他者やミュータントとの壮絶な生存競争の中で生きてきた。
エンキの下で酷使された日々においてもボースは他人を支配する事で生き延び、支配される事で命を脅かされてきた。
そこに他人とかわした友情や愛情などはない。
内にあるのは敵意と害意がもたらす暴力と陰謀と支配の歴史だけだ。
弱いという事は弁明の余地もない隷属の証。
他のあらゆるものが秀でていようと、力が無ければそれは奴隷の技巧自慢に過ぎない。
翻って今の自分は何か。
己の力では悪魔憑き一人倒せず、対等であるはずのレオが敵を倒して加勢に来ることを祈って足止めをする事を小細工しか使えぬキドに提案されるほどに見下されている状態だ。
レオに華を持たせる為の体の良い噛ませ犬、それが今の自分だ。
そう理解に至った瞬間、ボースの中にある最後の何かがキレた。
己への怒りは沸点を超え、全てへの憎悪へと至った。
故にボースの中で全てが白く漂白され、すべき事が明確に浮かび上がる。
「ぐっ…!くそがぁあぁッ!」
痛みを抑えるのではなく吐き出す様な咆哮を上げ、ヴィルを憎しみと敵意に満ちた表情で睨みつける。
「ぶっ殺してやる!」
その叫びはヴィルに対してだけでなく全てに対しての宣言でもあった。
ここで敗北するようであれば自由など得られない。
ならば死んだ方がマシだ、いいや自分の手で自分を殺さねば気が済まないという獰猛なる叫び。
「中隊長!もう弾が切れるっすよ!」
レナルドが叫んだ直後、援護の射撃が止みヴィルの姿が立ち消えた。
機関銃が再装填に入り、射撃が切れた瞬間をヴィルは見逃さなかった。
再びヴィルの姿が立ち消え、不可視と化した筋肉の要塞がボースめがけて突進する。
ヴィルにとってこの場にいる脅威はボースのみ。
アノマリー弾を損耗したキドは深刻な脅威になりえず、重機関銃も弾が切れれば即座には再装填できない。
どちらも短時間で制圧できる。
故に狙うのは最大の脅威であるボースのみ。
ヴィルは最初にそうした様に対処不能な神速の一撃を繰り出す。
『ポージング』によって作り出された絶対防御のために張りつめた自慢の筋肉を一度弛緩させ、移動の為に転用する。
緊張、弛緩、そして緊張。
この連続が生み出す筋肉による立体的な攻防戦術こそがヴィルの真骨頂だ。
ヴィルはただ、一歩前へ踏み出しているに過ぎない。
その一歩は次のポージングへの布石、歩を進めると同時に体を右に四分の一回転しつつ再度の『ポージング』へと至るローテーション。
それはボディビルにおいて実際に行われる『ターンライト』と呼ばれるもの。
ヴィルはこれを極限まで鍛え抜いた筋肉の瞬発力とあくなき鍛錬で作り上げた確信によってのみ成しえるエーテル操作により急加速によって人間には捉えられぬほどの速度にまで向上させた。
ただひとえにポージングが崩れる瞬間を恥じ、他者に見せたくないというプロとしての意地がただの一歩を神速の移動術へと昇華させた。
それを古代の人間が見る事が出来ればこう呼んだであろう。
『縮地』、と。
この二度目の攻撃もボースはかわしきれず、今度こそ握り潰されるであろう。
その筈であった。
「見えてんだよ!」
「ぬぅうッ!」
次に屈辱を与えられたのはヴィルの方であった。
ボースが繰りだしたのは右の拳、それも天めがけて突き出さんばかりに振り上げたアッパーカット。
『ポージング』によって絶対防御を確立する運用を選んだヴィルにとって『ターンライト』中に防壁展開は不可能。
それを加味しての反撃を防ぐための神速をしかしボースは二度目にして看破して見せた。
そうであっても、筋肉の塊たるヴィルへの拳による打撃は金属塊を素手で殴るが如き愚行。
ボースの手がその負担に耐えきれるはずも無く、皮膚は裂け骨はひび割れ砕け散る。
そうであってもそれまでの疲弊が嘘の様なキレのある重い拳の一撃がヴィルの顎を捉え、彫刻のように鍛え抜かれた肉体を宙へと叩き上げた。
「それはもう見切ったからなァ!もう通用しねぇ!分かったかこのホモ野郎が!」
口の端から血を流しながらボースは大口を開け、狂暴な猛獣が自然とするような笑みを張りつけた顔で勝ち誇ったように叫ぶ。
その左手には柄に奇怪な異世界のルーンめいた文字を輝かせる戦槌、ボースが読んだのはヴィルの動きではなく風の流れであった。
ヴィルの神速の『ターンライト』はエーテル操作による加速あってこそ、そうであれば空間を漂うエーテルの流れが操作でかき乱される。
それをボースは背負った戦槌の力で読み取り、半ば勘に頼りつつもヴィルが動くよりも先に拳を突き上げたのだ。
つまり、ボースが殴り飛ばしたというよりはヴィルがボースの拳に突っ込んで吹き飛ばされたという事故に近いのであろう。
新たな主を守ろうとした戦槌の補助あっての一打であった。
だが、それでもこの瞬間だけはボースの勝利に違いは無かった。
俄然、ボースの中に凶悪なる戦意が戻りくる。
その血走った眼はヴィルから決して視線を離す事無く、萎えていた筈の体が弾かれた様に地面を踏みしめて走り出す。
ボースを突き動かす力の源は怒りだ。
悪魔憑き相手に短い間に二度も後れを取り、手傷を負った恥辱を即座に怒りと憎しみに転換してボースは肉体の限界を無視して全力の攻勢へと出ていく。
怒りのもたらす火事場の馬鹿力、キドとの戦いでも見せたそれはボースの生き方がもたらした肉体本来が持つ力からは分離した魂の力であった。
純粋な怒りの感情が引き出す脳のリミッター解除と脳内麻薬の放出が限界を超えた力を人外と化したボースの力となって神速の一撃すらも捉えるだけの動体視力と筋力を付与したのだ。
ボースは常に激怒する。
己を縛る全てに怒り、自由の為に己すらも砕いて突き進む。
「おらぁああああッ!」
ボースはヴィルのように待ちはしなかった。
未だに空中にあって動けぬヴィルの元へと己が足の跳躍と戦槌の生み出す暴風で接近するとそのまま上を取って戦槌を力の限りに振り降ろす。
「ぬぅん!『ダブル・バイセップス』!」
攻撃が命中する間際、ヴィルは空中において奇怪な構えで持って攻撃を迎え撃った。
構えの型はボディビルの定番であるダブルバイセップス。
完璧に決まったならば決して誰にも打ち砕けないという狂信がエーテルに作用し強固な防壁を展開する。
あらゆる攻撃をはじき返す『ポージング』を主体にした持久戦こそがヴィル本来の定石。
空中で交差するのは奇怪な構えをした自信に満ちた笑みと戦槌を振り下ろす怒りと憎悪に満ちた狂相。
激突の瞬間、ボースの戦槌とヴィルの肉体が互いに青い燐光を迸らせ、エーテル同士のぶつかり合いが不快な音を響かせる。
「な、なんという…ごとばぁ!」
勝利したのはボースの戦槌であった。
戦槌はエーテル制御で風を生み出すという劣った力しか今や残されてはいない。
最早使い手の名すら残らぬ、人に滅びをもたらした種族によって振るわれた古びた伝説の一欠片。
だが、それでも異世界文明たる来訪者の作り上げた生体金属、或いは純正ミスリル合金は健在でありエーテル防御への浸食能力も高かった。
その武具は何よりも、エーテルの守りを砕くために鋳造された武具だったのである。
防壁を突き破った戦槌がヴィルの鍛え抜かれた腹に突き刺さり、めり込みそして―――。
「落ちろォ!くたばれぇッ!」
ボースのフルスイングによってヴィルは地面へと頭から急降下して激突すると同時に堆積した錆雪が砂塵の如く巻き上がり景色が茶色に染まっていく。
迫りくる茶色の有害物質を戦槌の力で弾きながら、ボースはゆっくりと降下し、膝をつく。
怒りによって一時的に忘れていた痛みが甦り、頭痛とめまいが体を襲う。
「がッ!ぐそッ!このカスが…ッ!まだ倒れる時じゃねぇ!」
鈍った感覚をよみがえらせ、動かぬ体を無理矢理動かすだけの怒りは反動も大きく持続させる事も難しい。
結局は肉体の損傷を忘れているだけなのだから、回復が完了しているわけでもない。
これがこの瞬間のボースの攻勢限界であった。
ボースは荒い呼吸を繰り返す。
しかし、その顔には確かな自信が甦っていた。
「あの野郎、これで終わりじゃねぇだろうがな…。奴のやり口は分かった。もう負けねぇ」
無敵の盾は戦槌によって打ち破られた。
古今の歴史において盾と鉾の戦いにおいて勝利は常に鉾の側にあり、敗北した盾の末路は往々にして悲惨なものとなってきた。
その真理は終末の世においても再現されたのだ。
神速の移動も姿が見えないだけでこの世から消えたわけではないのだから機を逃さねばどうにでもなる。
姿が消えてから現れるまでの間、ヴィルは無防備であり、相手の意図さえ分かっていればカウンターで対処できる。
これで対等…いや優位に立ったのだ。
後は相手を打ち負かして足の裏に踏みしめるだけであり、寝ている暇などありはしない。
砂塵の如く舞い上がっていた錆雪の粉塵が弱まってきた事を確認すると同時にボースは立ち上がり叫んだ。
「てめぇ、さっきなんて言った?友だァ?人を超えた人でなしに成っておいてやる事がそんな下らねぇ事だってのか!?」
ボースの荒々しい声には嘲りが含まれていた。
それは挑発であり、同時に本心から出た本音でもあった。
友という言葉にボースが抱いたのは女々しいという感情であり、そんなホモ野郎に一発貰った事が尊大な自尊心に傷をつけたのだ。
それは即座に怒りとなって解放され、力として、言葉として、嘲りとして、存在否定の一撃としてヴィルへと叩きつけられた。
それでもヴィルもまた折れてはいなかった。
「そうだ!イナゴは私が初めて得た『生きている友』だッ!」
「人間辞めて執着するのが人間ごっことは随分とイラつかせやがるなてめぇ!」
再び湧き上がる怒りが体の痛みと倦怠感を和らげる。
この力に頼る程に反動は苦しく厳しい物となるだろう。
だが、苦しむ時間はこの後ならばたっぷりある。
今を生き延びねば明日など気にする事も出来ないならば、明日の命も力も大いに前借するしかないのだ。
砂塵はまだ晴れない。
休息にはなるが、それは相手にも同じこと。
戦意の塊であるボースにとっては強制的なおあずけが何よりも精神をイラつかせるものであった。
だがそれにもまして、ヴィルの甘えた言葉がボースを憤慨させる。
「私が狂乱し数多の人を喰らってきた中で生き残ったのは奴だけだ!そして奴は私を許し友と呼んでくれたのだ!」
「はッ!そんなくだらな――――――」
だが、なおも罵ろうとしたボースの言葉はヴィルの放った言葉によって妨げられた。
「我が内に宿りし筋肉の妖精さんたちよ!これより『筋肉品評会』を開幕する!」
叫びと共に残された砂塵が一斉に吹きとばされ、奇怪な構えを取ったヴィルの姿がボースの前にさらけ出される。
ボースが戦槌の力で吹き飛ばしたわけでは無かった。
それを成したのはむしろヴィルだ。
エーテルの奔流が奇怪な構えを取るヴィルから迸り、周囲を陽炎の様なもやが包み込んでいく。
構えを取るヴィルの周囲におびただしい影の様な人の群れが蠢き、霊魂の如き尾を引く彗星が飛び交い、ヴィルと同じような筋肉質の人型の幻影すらもヴィルと同じ構えを取っては次々と出現していく。
それは亡霊の軍団の様ですらあった。
亡霊たちは何かを囁き、それがボースの脳に直接響く。
酷く精神を揺さぶるその言葉の数々をボースはしかし、聞き取れない。
幾つかの単語は聞き取れるが、その多くは意味不明な音の奔流にしか思えない。
だが、ボースには心当たりはある。
少なくとも幾つかには、だ。
「英語に幾つかの古代語の複合、随分古い亡霊どもを引き連れてるじゃねぇか」
人類に文明があった頃には多様にあったと言われるあらゆる言語がヴィルの幻影たちから飛び交っている。
この頭に直接響く様な不快感は精神汚染のそれを思い起こさせる。
これがヴィルの切れる最後の手札であると理解した。
「『我が友たち』よ!私に力を貸してくれ!今生きている新たな友の為に!」
「そのふざけた亡霊どもがてめぇの本気って訳か…。面白れぇ、ぶっ潰す!」
『品評会』がいかなる力を持つのか、ボースには最早そんな事を考えてなどはいなかった。
目の前にいるのは強力な敵、倒すべき敵だ。
湧き上がる亡霊たちを見たせいであろうか、ボースは既にヴィルを見ていなかった。
己の前に立ちふさがる強大な理不尽なる異形の敵、そこに見えているのはヴィルを通して幻視するエンキの影だ。
己が倒すはずだった男、倒さねばならなかった男。
対峙するのは永遠にボースを苛み続けるであろう死者の幻影だ。
ヴィルの笑みがエンキのそれに重なり、ボースの戦意は否が応にも高まっていく。
それはただの逆恨みであり、被害妄想である。
或いはこれがボースに対する精神汚染の症状であったのかもしれない。
ボースは己の全身を阻むすべてに己を嘲笑するエンキの幻影が見えている。
だがボースもまた人から逸脱した狂人の列に加わった者であるならば、既に正気などはありはしない。
怒りの感情は極限に達し、肉体を律する全てがはじけ飛んでいく。
一度は膝をついた体に再び活力が甦り、全身から力が湧き上がる。
この男を地面に跪かせ、最も尊いと思っている物を目の前で踏みつぶさずにはいられなくなったのだ。
熾烈な戦いは、そこから始まった。
――――――――――――
想定外の事とは常に起こりうる。
一人で突出してくる筈であったイナゴレイダーが仲間を連れてきたという想定外。
肝心な場面で切り札の大型拳銃を損耗するという想定外。
首を刎ねた敵が戦闘を継続し、戦況を五分まで押し戻すという想定外。
これだけ想定外が続くのであれば、今は敵となった見知った相手が本来のあり方を放棄した積極的攻勢に出てきたとしても最早驚く事ではないのだろう。
だが、そうであってもキドは参戦する事となった二体の悪魔憑きの戦闘に驚きを隠す事が出来なかった。
キドの眼前では茶色の錆びた雪が降る中で二つの巨躯がぶつかり合う。
振り下ろされる鉄槌とそれを受け止めはじき返す鋼鉄の如き筋肉の躍動。
その二つが激突する度に互いの纏ったエーテルが削り合いを起こしてガラスが擦れるような音と共に周囲を舞う錆雪を吹き飛ばす。
気を付けねば吹き飛ばされた錆雪が雨具の隙間に入り込んで体を蝕みかねない程の突風と衝撃が絶えず巻き起こり、折りしも強まり出した雪の勢いも相まって吹き荒れる暴風と化し、湧き出る無数の亡霊の呪詛と精神を錯乱させる乱舞が冒涜的な茶色の雪と相まって終末の風景を幻視させる。
「驚いたな、まさかヴィルにあんな戦い方が出来るとは」
キドは手で顔を守りながらサングラスの内にある目を細めて戦いの流れを見極めようとする。
キドの射撃は撃てば勝手に当たるのではない、敵がしっかりと見えていればこそ必中の確信と共に射撃するのだ。
吹き上げられ荒れ狂う錆雪は最早吹雪というよりは砂嵐のようですらある。
人為的に死の暴風を引き起こす二人の悪魔憑きの死力を尽くしたぶつかり合い。
それは敵を己の憎む相手と重ねて叩きのめそうとするボースと、友を救うためにひたすらに前に進もうとするヴィルの保身無き白兵戦だ。
防御を主体とし、手に余るならば即座に撤退を選択する筈であるヴィルが一歩も引かずに攻撃をしているという事が既にキドにしては異常な事態であった。
支援しようにも迂闊に間合いに入り込めば二人の戦闘機動に巻き込まれて肉塊や肉片に成り果てる事はいやがおうにも分かってしまう。
更にはヴィルの『品評会』が発動した今となっては自分はともかく、レナルドらの精神が保つかが怪しい所だった。
実際、そのキドの懸念は即座に現実の症例となって現れる。
「はははっ!すげぇ綺麗な風景だな!俺今日はまだヤクをキメちゃいねぇのによ!」
レナルドの率いる補充兵の一人が狂ったように笑いだす。
その者はレオが投棄した機関銃をここまで運び込んで支援射撃を行っていた男だった。
集めた中で一番戦いに使えるとボースに判断された男が高笑いを上げながら空めがけて無意味に機関銃を乱射している。
「当て放題!当て放題だ!綺麗な血しぶきまき散らしやがって!」
いや、男は亡霊めがけて乱射しているのだ。
ヴィルとボースの戦場周囲を乱舞する亡霊が銃弾がかする度に一度揺らぎ、そして再度結合して宙を泳ぎ回っている。
「ああああッ!入って来る!声が頭に入って狂ぅウウウッ!」
笑い始めた部下の隣にいた別の者が今度は頭を押さえてうずくまり、悶え始める。
精神汚染が始まった、同士討ちが始まる前に処理する必要がある。
キドはおかしな行動を始めた味方に両手の拳銃を向けて引き金を引こうとする。
しかし、それは直前になって目の前に飛び出してきたレナルドによって遮られた。
「キッド!何が起きてるんすか!?」
部隊を率いる古参のレナルドですらも頭に手を当てて苦しげである。
それでも何が起きているのか把握するために平然としているキドに当たりを付けて事情の説明を求める。
「……ヴィルが精神汚染アノマリーを展開した。奴の肉体には大量の残留思念が宿ってる」
「は?精神汚染アノマリー?迂闊に入ったら狂っちまうアレっすか!?」
「理屈は分からん、だが奴はそれが使える。気を強く持て、取り込まれて発狂するぞ」
ヴィルを唯の筋肉を見せつけてくるだけの変人ではなく恐ろしい悪魔憑きたらしめている最強の技、それが『品評会』だ。
ヴィルを起点に周囲に精神汚染領域を展開し、意志薄弱な者を狂わせる。
キドが共に仕事してきた中でかわしたヴィルとの会話やその戦いぶりを見て得た結論がそれだ。
「レナルド、お前は発狂してる奴らを処理して下がれ。動けないなら殺すかシバくかしろ。こうなったら下手に介入しても死ぬだけだ」
「キッドはどうするんすか?」
「ボースを手伝えってのが命令だからな、やれるだけやってみる」
「……幸運を祈るっすよ。こいつらをどうにかしたら援護するっすから」
「お互いに、生き残れたら儲けものだと思っておこう」
会話を終えたキドは錆雪と亡霊が荒れ狂う死の戦場を見据え、二丁の拳銃を強く握りしめて歩き出した。
戦いにどの程度関われるのか、意味を成すのかは分からない。
与えられた仕事を果たす、それが傭兵としての誇りであるが故に。
「全く、今日はやる事なす事上手くいかないな」
それを最後にキドの体は荒れ狂う茶色の吹雪に包まれた。
―――――――――
己の生は全て筋肉の為にある、その筈であった。
なぜ、ここまで他人の為に戦おうと思えるのかヴィル本人にすらおぼろげで明確な理由が思いつかない。
だが、己を急き立てる焦燥と友を救わねばならぬという意思だけは本物であり、故にヴィルは自分よりも巨大な悪魔憑きに立ち向かう。
神速の筈の一歩前進はしかし、ボースの操る戦槌からは逃れられず致命打となりえる重い一撃を避けられない。
ボースは極度の興奮状態になる事でヴィルの一挙手一投足を見切り、かく乱として展開する亡霊ごと肉薄するヴィルに正確な一撃を繰り返す。
視界を遮り目測を誤らせる筈の幻影も脳を冒して精神を錯乱させるはずの呪詛の声も今のボースにはまるで効果がありはしない。
そうした小細工への返礼は叫びと共に放たれる全身全霊の破壊の一撃。
絶対防御の筈の『ポージング』すら打ち砕く一撃がヴィルの体に突き刺さる。
「らぁああああああッ!」
「ぬぅ!サイドチェストですら打ち破るか…ッ!」
己の肉体に備わる筋力の全てを、巨体が故に武器を振り回す事で発生する遠心力の全てを、そして暴風を操る戦槌の力を収束しジェットエンジンの如き噴射によって得た加速と破壊力。
それが『ポージング』と共に防壁を展開するヴィルに一切の躊躇なく叩き込まれ、ガラスが砕ける音と共に肉へと撃ち込まれて美しく整った筋肉の彫像に無惨な痣と鮮血が増えていく。
強固なる筋肉をもってしても無視できぬ破壊力を戦槌は秘めている。
一撃を受けるごとに揺らぐはずの無い強固なる確信の壁が揺らいでいく。
『ヴィル!このままでは筋肉資産価値が大暴落してしまうぞ!』
地に伏したヴィルを守る様に周囲に出現した筋肉質な幻影がヴィルに次々とまくしたて、しかしボースの一撃によって霧散する。
『守りに注力するのだ!打ち砕かれてしまう!』
ヴィルと同じ様にポージングをして再度立ち塞がった異なる幻影は戦槌を振りかざして突進してくるボースの体当たりを受けてあえなく砕けて消え去っていく。
怒りの感情で突き進むボースの前に精神汚染は通用しない。
或いは、既に怒り狂っている事が汚染の効果であるのかもしれない。
狂っているという意味では既にボースは発狂状態だ。
元より精神汚染は他のアノマリーとの混成により殺傷力を持つようになる存在であり、その攻撃を担う筈のヴィルがボースに押されている以上は補助以上にはなりえない。
『潮時だ!退くのだ!』
『本来の在り方に戻るのだ!これは美ではない!』
『お前はボディビルダーだ!ファイターではない!』
現れては蹴散らされていく亡霊たちの声は徐々に切羽詰まった物へと変わっていく。
『お前が失われては我らの悲願はどうなる!』
立ち上がるヴィルの周囲でせわしなく荒ぶる人影や火の玉の幻影たちがヴィルに勝てぬ戦いをせずに退く事を命じている。
いや、幻影だけではない。
叫んでいるのはこのヴィルの周囲を囲む空間そのものだ。
『俺たちはまだ…!まだ消えたくない!消えたくないんだよ兄ちゃん!』
死して尚、消える事を拒みヴィルに縋りついた数多の残留思念の総意の慟哭がヴィルの行動を批判し、弾劾している。
いついかなる時もヴィルと共にあり、時に励まし、時に叱咤して終わる事無き肉体改良と筋肉の増築を求めるその数多の声の正体はヴィルが悪魔憑きに変異した時に彼を蝕んだ精神汚染アノマリーに存在していた強力なる精神汚染体。
そして、これまでにヴィルが殺し、或いは捕食衝動に駆られて喰らってきた数多の人間達の成れの果ての融合体だ。
本来であれば喰らった相手を恨み、蝕むはずの彼らの残留思念はヴィルの純粋な感謝の念によって絆されヴィルに憑りつく精神汚染体に受け入れられ統合されていったのだ。
ヴィルはこれまで奪ってきたあらゆる命に感謝してきた。
戦いで殺した相手は鍛錬に付き合ってくれた良き相手として、餌食となった物は筋肉を成長させる為の貴重な糧として、ヴィルは常に笑みを絶やさず感謝した。
それは捕食者の行う傲慢なる一方的な感謝であったかもしれない。
だが、ただ意味も無く生まれて死んでいく無情な世界だからこそ、なんら救いも価値も無く死ぬ事に耐えられぬ者達が残す残留思念をヴィルは感謝によって意味を与えて肯定し、己の内に取り込む事で力へと変えていく。
救われぬ者達は感謝するが故に、ヴィルという筋肉の煉獄に囚われていく。
この取り込まれた者たちこそが今のヴィルを支え、ボディビルという概念と筋肉信仰を与えた真なる元凶たる『筋肉の妖精』たちであった。
彼らの願いはあくまで宿主たるヴィルの生存と更なる筋肉の発展。
心残りが形となった残留思念は何よりも残る事、消えない事を重視する。
当初はあった僅かな自我も心残りもいずれは霧散し、一つの願いへと統合されていく。
すなわち、自分達の究極の成果物たる老いぬ筋肉の彫像であるヴィルの永遠の生を望むのだ。
故に強敵への対処と指示は亡霊である自分達を解放する『品評会』を展開しての持久戦、そして防御が貫通されるならば撤退の二つのみ。
筋肉の妖精たちは死の危険を賭してまで戦う事を望まない。
ヴィルが戦うのはあくまで報酬を得る為、終末後の世では筋肉を維持する食料はそう手に入らないが故にヴィルは戦いに赴いているに過ぎない。
人を喰らうのもそれが故、容易く手に入る食料は人かミュータントしかいはしない。
戦いは二の次、主目的は鍛錬と筋肉の成長。
これまでそうであったように、これまでもそうであるように彼らは変わる事無くヴィルを導くはずだった。
その導きを拒み、ヴィルは前へ前へと踏み出していく。
その度に打ち据えられ、後方へ吹き飛ばされようとも体勢を立て直しては食らいつき続ける。
『我らこそがお前の友!お前の家族であろう!』
再びボースの反撃を受けて吹き飛ばされるヴィルを見て亡霊の一体が絶叫する。
その言葉に偽りはない。
彼らがヴィルのコーチであり、友であり、家族である。
であるからこそ、ヴィルは一人であっても決して孤独ではない。
錆雪の中に一人取り残された時も、キドのアノマリー弾に囚われて火球の中にいた時も彼らは常に寄り添い励ましてくれた。
だからこそ空腹の時には彼らは親愛なる存在からヴィルの精神を蝕む本来の在り方に立ち返る。
怠惰や食糧の不足によって筋肉が衰える事を彼らは決して許さない。
それは喰われた己たちの犠牲を否定し無とする行為であるが故にヴィルの精神を捻じ曲げてでも『プロテイン補給』を強制する。
ヴィルは一人で完成された存在であり、友などはいらぬ筈であった。
ヴィルの友は妖精たちだけであり、関わった者の大半は短い期間で消えていくが故に。
ただ、筋肉を鍛え続けるという事だけがヴィルの願いであったはずだった。
しかし、イナゴレイダーと出会いそれが少し変化した。
イナゴレイダーは悪魔憑きである己を目の当たりにして大いに喜んで友と呼んでくれた男であり、空腹で暴走した後でもまだ生きていた初めての『盟友』であったのだ。
それだけですら希有であるというのに、イナゴレイダーはヴィルに己の皮すらも差し出した。
己に食らいついた相手を許し、自らの一部を施すという大いなる度量にヴィルは精神的な筋肉が豊かなタフガイを見い出したのだ。
許し、讃え合える生きている友が得難い貴重な物であると知ったのだ。
そして友が命の危機に陥ったこの時、己が何の為に人を辞めたのかという原初の記憶。
「分かっている!だが、新たな友を見捨てる事も私には出来ない!」
絶叫する亡霊たちに喝を入れる様にヴィルが叫ぶ。
その体は既に戦槌に幾度となく打ち付けられて限界が来ているのは明白。
しかし、それでもなお気力で持って立ち上がりボースへと固まった笑みを向ける。
激痛の中にあってもヴィルの笑みは絶える事が無い。
悪魔憑きと成り果てて以来絶やされる事無かった笑みこそがヴィルの覚悟の証であった。
既にヴィルの表情筋は笑顔のまま固まり切っており、これを崩せるのは最早、空腹による捕食衝動だけである。
「筋肉こそが私の全てだ!だが、筋肉とは魅せるもの!称賛されてこそのもの!私は私を認めてくれる友や家族を守る為ならば幾らでも戦えるッ!」
自ら叫んだ言葉にヴィルは己の成したい事を理解した。
そうだ、己がこの様になったのは家族を守りたかったからだと。
未来など無いどん詰まりの城砦の都市の裏路地に捨てられた孤児の集団の中で育ち、彼らを腹違いの兄弟として愛していた事を。
ヴィルは生まれた時には既に未来の無い存在であり、常に飢餓と病魔に蝕まれる日々の中で糧となる食料や燃料を求めて彷徨い続けていた。
その日も燃料になる物を探して危険を承知で街の外に出て拾ったのが戦前のポスターの残骸であり、そこに飾られた絵に衝撃を受けたのだ。
肥大化した筋肉を誇示して自信に満ちた笑みを浮かべる一人の日焼けした男。
背の伸びる事の無かったヴィルにはない長身、骨と皮と成り果て痩せこけてなお残った内臓で膨れたヴィルの腹と違ったしっかりと肉が詰まった引き締まった腹筋、埃で薄汚れ体中に湿疹や瘡蓋に塗れたヴィルとは違い過ぎる光り輝く艶のある小麦色の肌。
この肉体を作り上げる為にどれ程の物を食べ、体を鍛えたのかヴィルには想像する事すら出来なかった。
その光景はヴィルにとってはまさしく古代の叡智の輝きであった。
燃料が無ければ夜の寒さと闇には抗えない。
しかし、ヴィルはこれを焼く事は出来なかった。
この様になりたい。
強く美しい姿になりたい。
何より、これほど強固な肉体を得れば家族を守れるだろう。
ヴィルの筋肉への憧れはこの時、一枚の色褪せたポスターの破片から始まったのだ。
その日からヴィルは憧れに近づくためにささやかな努力を開始した。
盗み出した粗雑で砂や石が混じった泥の様なパンを必死で喰らい栄養を得ようとした。
一部の裕福な大人がそうしている様に鍛錬の真似事をして筋肉を付けようとした。
その全ては児戯であり、徒労に過ぎなかったがヴィルにとってその日々は幸福であった。
ポスターの男の様になれば家族にも良い家を与えられて良い物を食わせてやれると信じた。
そして運命の日、ヴィルは一念発起して仲間と共に物資を求めて廃都へ向かい濃いエーテルの立ち込めるスポーツジムの精神汚染アノマリーに囚われた。
怨念の如き残留思念に精神を汚染され、肉体がエーテルの許容限界を超えた時、ヴィルは神と謁見した。
そして己の中の神にも等しい存在となっていた筋肉に縋り、その果てに家族の全てを食い殺した事を。
萎えた体は変異に耐えるだけの余剰が無く、筋肉を得るのに必要な栄養、プロテインは近場には家族しかいなかったが故に。
良い物を喰わせてやりたかった家族はヴィルの『良い物』となって喰らいつくされた。
そして、喰らったものが家族であったからこそヴィルの中に生まれたのは感謝であった事を思い出したのだ。
ヴィルの中には守るべき家族が全て揃っている。
胸を張って生きねばならない。
糧となった家族の全てが見ているのだから。
だからこその筋肉、そしてそれを誇示するための品評会。
自信ある笑みで筋肉を見せつけ、鍛え続けるのは何よりも喰らいつくした家族への贖罪であり感謝を忘れぬためである。
すなわち、ヴィルの起源は『家族愛』という他者への献身であったのだ。
それが今、友を守るという強い意志となってヴィルを動かしていた。
助けられなかった家族の代わりとして友へ向けられる『家族愛』がヴィルに限界を超える最後の一押しとなった。
「そうだ!筋肉は…!筋肉は称賛される為に存在しているのだ!」
おぼろげであった原初が確信をもって甦る。
明確な目的が覚悟を促し、強固となった防壁が戦槌の一撃を遂にははじき返す。
「ちぃッ!まだ俺を見下すか猿がァ!」
頭に直撃した戦槌を薄く強固な防壁が受け止める。
映る姿は戦槌を振り下ろす巨漢とそれを無防備にも見える奇妙な構えをしつつ頭で受ける筋肉質の男。
ボースは狼狽えなかった。
あるのは更なる怒りだけだ。
「時間がないッ!今ここで新しい筋肉の境地に至らねば!」
既に時間がない。
友たるイナゴレイダーは頭部を失い、肉体を大きく損壊し、敵が新たに展開して増援と協働する悪魔憑きと交戦を続けている。
イナゴは決して弱い男ではない、だが既に肉体が限界に近い以上は敗北しかねない状況。
それを救えるのは己だけだとヴィルは奮起する。
『それが新しい魅せる筋肉の境地を切り開くならば、それも良いのかもしれないな』
その思いに応えたのはやはり、彼を慕い呪う亡霊たちであった。
『ヴィル!ターンライトを活かせ!』
『武術とポージングの融合だ!お前が新しい筋肉の魅せ方を示す時だ!』
『魅せる筋肉こそが勝利への道!』
声援と応援を続ける亡霊たちの内の何体かが消え入りそうな幻影で持ってヴィルに武術のあり方を伝授する。
ヴィルはそこに古代武術の震脚を見い出した。
ヴィルの中で家族と同じく最も古いスポーツジムに宿る原初の精神汚染体、その残留思念の内の一つが自我を失って尚持ち得ていた技術をヴィルに示したのだ。
「これだぁあああッ!」
「ぐうぅッ!?」
叫びと共にヴィルは一歩前へと強く踏み出し、ボースの鳩尾に肘を叩き込む。
その構えは変則的ではあったが古代の武術における八極拳に近しい物となった。
厳密には大きく異なる。
あくまで悪魔憑きの筋力と能力を前提とした粗削りなる技、しかし武術とは王道であり、王道とはつまり突き詰めればそこに至るという証である。
ヴィルは独学で一つの王道へと到達した。
守りに特化し、魅せる為の速度を求めて作り上げた完璧なる基本の型、それらが効かぬ困難に正面からぶつかる事で型を破り新たなる境地へと昇華させたのだ。
全てがしっかりと形となって収まっていく感覚と空気を破裂させたような痛快な音が響き渡り、周囲を舞う錆雪が再び荒れ狂いながら吹き飛ばされる。
「これだ!これこそが魅せる筋肉と武術の融合!」
「がぁああああアァッ!エンキィイイイイッ!」
得心がいったとばかり笑みを浮かべるヴィルに対し、ボースは叫び声を上げながら吹き飛ばされた体を戦槌の力で無理矢理反転させて宙を飛んで戻りくる。
ボースもまた限界が近かった。
ここまで怒りの力で体の損害を無視して戦ってきたツケは確実に出てきている。
怒りと脳内麻薬で痛みを消して尚、動きが明確に悪くなりつつある体を戦槌の発する風の力で補正しながら戦い続けるのも最早限界に近かった。
いよいよ持って正気を失いつつあるボースは品評会の影響もあって既にヴィルが見えていなかった。
二つの業深き生き物は互いに限界を超えた所で最後のぶつかり合いへと至る。
ジェットエンジンの如く轟音を上げながら風の力で推進しつつ槍のついた戦槌の切っ先を刺突槍の如く突き出すボース。
対するのは友のために高密度の筋肉を用いて己を高速の弾丸と化して必殺の一撃を放つ新たな境地を切り開いたヴィル。
ボースがミサイルであるならば、ヴィルは弾丸の如くであった。
元より研鑽を積んだ『ターンライト』がヴィルの体を現世から瞬間的に消失させ、ボースへと突き進ませる。
大気を切り裂く金属音が響き渡り、エーテルのぶつかりが一瞬の間世界から色を奪った。
再び、二人の姿が現実に再生成された時には既に決着はついていた。
「感謝する、名は何というのだ?」
全身を血に塗れさえながらも自身に満ちた声で相手に語り掛けたのはヴィルであった。
戦槌は紙一重でかわされ、ヴィルの肘鉄はボースの腹を捉えて突き刺さり貫通まで果たしていた。
「言うかよ、ホモ野郎…ッ!」
対するボースも未だ絶命には至っていなかった。
強靭な悪魔憑きの肉体がボースに死を許さなかった。
或いは、怒りの感情が死を拒絶したのかもしれない。
「そうか、お前らしいな!」
ヴィルは優しく、しかし素早く貫通した肘を引き抜くと力尽きて倒れて来るボースの体を抱きとめた。
そのまま傷口を抉る事も抱きつぶす事も出来た。
だが、そこまでする必要はないとヴィルは考えていた。
殺すつもりで心臓を狙って肘を撃ち込んだが、相手は生き残った。
ならば、後は生きるも死ぬもこの男の気力次第に任せよう。
元より下手人を殺さねば報酬は出ない、ヴィルは必要ならば殺すだけであり無駄に殺す趣味は持ち合わせていなかった。
ヴィルは自然と理解していた。
自分程度と対等の相手が彼の瓦礫の王エンキに勝てるはずがないと。
ならば、ここまで強くしてくれた相手を無碍に殺す必要はない。
ヴィルの中にあるのはあくまで感謝であった。
「しかし、狙いが逸れたと思ったがお前の仕業だったか。キッド…」
ボースを地面に丁寧に横たえるとヴィルは振り返って地面に目をやった。
そこにあったのは地に伏してなんとか右手で拳銃を握りしめるズタ袋の様に成り果てたキドの姿。
ヴィルとボースのぶつかり合う事で巻き起こった雨具など無意味とするほどの錆雪の嵐に身を蝕まれながら強行突破し、最後のぶつかりの際にボースを援護すべく一発の弾丸を放ったことが結果的にボースの命を救ったのだった。
それは小さい差異でしか無かった。
しかし、弾丸一発分の衝撃は未だ稚拙であったヴィルの一撃を急所から逸らすには十分だった。
錆雪に冒されながらも銃を撃つ右手だけは守りながら前進し、最大の好機に攻撃を放つまで耐えたキドの執念はしかし、ヴィルの前には届かなかったのであった。
「俺の……今の雇用主、ばあッ!仕事に厳しく、てな…」
「そうか……。キッド、介錯はいるか?」
キドは喋りながら吐血し、息も絶え絶えであった。
骨と肉を崩す錆雪に浸食された状態で放った弾丸の衝撃は確実にキドの命を縮めていた。
そうであっても契約に従って責務を果たしたキドをヴィルは改めて仕事仲間として尊敬する。
故に聞くのは苦痛なき死を望むか否か。
この世で人が決められるのは死に方だけであるならば、それを奪う程ヴィルは冷酷では無かった。
「いや…良い。俺の、仕事はァ…!足止め、だけだからな…」
サングラス越しで見えないキドの表情が僅かに微笑んだようにヴィルには見えた。
その直後、背後に立ち上ったのは巨大な緑の柱。
それが天から倒れて来るように振り下ろされる瞬間であった。
その先にいるのは複数のミュータントに組み伏せられた盟友イナゴレイダーの姿。
キドの笑みの正体をヴィルは理解して叫びながら『ターンライト』を用いて姿をかき消す。
キドは受けた命令を果たす為にあえて会話に応じたのだ。
「出来る…事は、果たしたぞ…レオ」
「イナゴォオオオッ!」
叫ぶ間にも盟友の姿は炎へと呑まれて行き、それを救わんとヴィルもまた炎へと飛び込んでいった。
ヴィルは原初の時点で筋肉に魅入られ、更にスポーツジムで鍛錬中に死んで未練を残した残留思念を核とした精神汚染体に蝕まれた結果として悪魔憑きに変異したタイプの個体です。
スポーツジムをねぐらとして器具を狙ってきた人間を精神汚染してスポーツジムに縛り付け死ぬまで鍛錬させるという行為を繰り返していくうちに強大化していった汚染体をヴィルは変異した際に肉体に抱え込みました。
変異が少ないタイプであるにも関わらず精神に偏重が多いのも精神汚染体を筋肉に飼っているが故です。
精神汚染体と実質的な共生関係にあり、敵陣深くに入り込んでから品評会を展開して敵軍を精神汚染で崩壊させるという芸当も可能であり、個で軍に対抗するという悪魔憑きの在り方からは逸脱していない個体でもあります。
品評会はヴィル本人というよりは汚染体が展開しているという塩梅です。
その汚染体も既にヴィルに主導権を奪われるほどにヴィルの存在に魅せられているので品評会は文字通り死んだビルダーたちがヴィルと競う為に現れ、外野はヴィルたちを応援しているという体で荒れ狂っています。
ただそこにいるだけで常人の精神を狂わせる、故に精神汚染体。
ヴィルが耐えられるのも既に狂っているが故です。
悪魔憑きとは狂人、神という最も強固な汚染に耐えきった異形ども、故に精神汚染には逆に強いという仕様です。
傭兵をしているのは食糧確保のため、筋肉を育てる為の食料を得る為に戦っているというのが実情です。
今回の参戦も褒賞として食料を大量確保する事が目的でした。
人を喰らうのも食糧事情が悪いのが一番に来ています。
だからこそヴィルは感謝を欠かしません。
誰かが糧になるからこそ自分が高みにあれると理解しているのです。
今回はここまで
関係はないけど今回のヴィルさんの脳内テーマ
Broken Thunder: Project Thunder Force VI - 19 Stand Up Against Myself
https://www.youtube.com/watch?v=YaMsoIU4DoM&t=19s




