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ブルーブラッド  作者: 人間性限界mohikan
一章『流されるもの』
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二十話、流された先

随分と時間が空いてしまいましたが生きてます、エタりません。

これも全部納期のデーモンって奴の仕業なんだ。


「さっさと歩け屑!」


背後に停車していたトラックが都市の内部に入る事無くどこかへと走り去っていく中、怒鳴るボースに鎖の着いた手枷を無理矢理引っ張られ、Rはモルフォの襲撃の終わった砂に飲まれかけた廃都市へ向けて進んでいく。


居住するならば街の外周部にあるべきであろう防壁は未完成なのであろうか、廃材を用いた申し訳程度の壁がまばらに設置されているだけらしく、目に見える範囲にある通路や出入り口ですらも全てを塞ぐには至っていない。


通りに関しては都市に存在する諸々の機械や家具、建物の残骸や廃材が点々と転がっている。

人が通るだけならばまだしも、車両が侵入するのは難しいという塩梅だ。

トラックが都市に入らずに移動したのはこの為だろう。


或いは車両の進入を阻止する事だけを意識しているのかもしれないが、単純に彼らの怠慢や資材不足の線もありえそうだ。


少なくとも分かる事は目的地までは徒歩で行く必要があるという事だ。


当然、ここでただ言われるがままに進むだけでは状況は改善しない。

何よりもまずすべきは情報収集、現状で頼れるのは目と耳と鼻、そして皮膚の感覚だ。


五感の全てでこの環境がどういう物かを把握し、今後の展開を考える判断材料とせねばならない。

強化外骨格(エクソスーツ)という最大の優位点を喪失している以上、最早己の感覚しか頼れるものは無い。


大気は相変わらず埃っぽく、不快な匂いとして感じられる。

どうやら空気中に水分はほぼ無いようだ、何もしていないというのに呼吸をするたびに渇きを覚えてくる。


強い日差しが容赦なく素肌を焼き、荒い砂が汗ばんだ肌にこびりつき、身を揺らす度にジャリジャリと不快な音を立てている。


素足で踏みしめる地面は熱く、砂利を含んでいるのか足の裏に突き刺さり痛みを覚える。

砂漠というよりは乾燥地帯の荒野という方が近いだろう。


荒い土と火傷を起こしそうな熱い砂利は着実に足にダメージを蓄積していっているのがRにははっきりと理解できた。

何かしらの靴を用意せねばそう遠くない内に足が駄目になってしまいそうだ。


鼻と皮膚がそういった情報を収拾している間、目と耳もまたRに判断材料を伝え続けている。


降車後の襲撃を防ぎ、この街の中に移動する頃には戦闘は既に終結した様であり、発砲音や怒号は僅かな物を残して無くなりつつある。


今も戦っているとすれば飛行種であるモルフォを相手にしたものではなく、彼らによって作られた死体が屍者となって動き出して二次被害を発生させているが故だろう。


ミュータントという物は己の特性をよく理解している種が多く、機動力の高い飛行型はそれほど一つの狩場に長居する事は無い。


つまり、餌を襲ってそのまま巣に攫う。

或いはその場で素早く食事を終えて縄張りへと離脱するのだ。

長居するという事はそれだけ反撃を受けるリスクがあるという事を本能的に理解して回避しているのだ。


知能や知性は低くとも、その行動と習性には一定の合理性があり決して馬鹿では無いというのが彼らがかつて正常だった世界の生物から受け継いだ数少ない特徴の一つだ。


故に強化外骨格(エクソスーツ)を装備していたとしてもミュータントというのものは決して舐めてかかって良い物ではないのだ。


例え単体相手ならば決して損害を受けない装甲がこちらにあるとしても集団で襲われれば最悪の事態を想定せねばならなくなる事もRの戦闘経験の中では少なくは無かった。


生身で当たるとなれば尚更警戒せねばならない。

実際に、今回の襲撃でもこの地の地上人たちは少なからぬ損害を受けただろう事が察せられた。



そうした考察を行いながら、Rを含む集団は周囲を警戒しつつも歩みを止めずに都市の内部へと侵入する。


都市内部に至り、一度は止まっていた発砲音が再度聞こえ、屍者との戦闘が続いている事が察せられる。

ここからの泥仕合は長くなるだろう、彼らの再活性化はタイムラグがあるのだ。

早ければ死亡後即座に起き上がるが、遅ければ数時間、半日、或いは数日や数週間後に起き上がる事もある。


この時間差こそが彼らの厄介さだ。

一度掃討を完了したと判断した土地でも撃ち漏らしが発生する事は遠征軍でも問題になっていた。


領域を確保しても地上の汚染された人間が死ねば再生成されると考えれば完全に土地を壁や柵で囲い込まない限りは外からの流入は阻止出来ず、そして囲い込めば内部発生した際の対処に手間取る様になる。


協力的な市民兵すらも潜在的な敵としてみなさねばならなかった一因がこの屍者という存在なのだ。

出来る事と言えば起き上がった相手を完全破壊するか、或いは起き上がる前に事前に死体を破壊するしかない。


こうして戦闘が続いているという事から彼らの装備が死体を破壊するには威力不足であると考える事が可能かもしれない。


そんなRの考察を強化する材料が既に目に見えていた。

それはようやく都市内で確認できるようになってきたボースの仲間と思しき彼らの装備の雑多な事だ。


これまでのゴミ漁り(スカベンジャー)やボースらの装備していたショットガン、ボルトアクションライフル、レバーアクションライフルに短機関銃などの雑多な小火器。

これらの時点で既にRの視点から見れば二線級装備と言っても良い粗末な物ですら、彼らはあまり装備していない。


銃器を装備している事は装備している、しかし銃と言っても前時代的な―――いや、もはや博物館入りの代物と呼んでも問題ない物を彼らは装備している。


木と鉄で作られ、長い銃身と嫌でも目に付く原始的な点火装置を備えた、申し訳程度の針金の様な銃剣を取り付けた旧式銃。

いわゆるマスケット銃やリボルバー拳銃の前身となった前装式多銃身のペッパーボックスピストルの様な博物館で埃をかぶっていてなければいけない様な物すらも平気で装備として運用している。


腰には無いよりはマシとばかりに自家製と思しき粗末なナイフや短い鉄パイプなどを各々が皮袋に入れて携帯している。

あんな物が予備の武装だとでもいうのだろうか…?

Rは平静を装いつつも困惑を禁じえなかった。


何人かに一人、ニシが持っていた弾倉付きのボルトアクション式ライフルと同じ物を持っている者がいるが、あれは火力支援要員といった所なのだろうか、これでは高速で機動するモルフォに対抗できるわけがない。


砂に飲まれ傾いたビルの残骸、朽ちたコンクリートジャングルの壁に背を預け、或いは座っている歩哨役らしき彼らはまともな火器すらも装備していない者が大半であった。


そして、どうやら士気や統制もあまり良くは無いらしい。


行く手に見える何人かなどは戦闘が続く味方の支援に行くわけでもなく、かといって周辺の警戒も疎かで訓練がまるで行き届いていないのが見て取れる。


最早脅威は去ったとでもいう様に直射日光から逃れる様に日陰に座り込みパイプで煙を吹かしたり、武器を適当に放り投げて仲間と何やら雑談を決め込んでいる。



「酷いもんだ、うちのやる気のない市民兵だってもっとしゃっきりしてるぞ」


そんな小言をRはうっかりと口走ってしまった。


そして、ボースも同じ事を考えていたのか部下の一人にRの手綱を握らせると日陰でタムロしている集団に怒鳴り散らしながら近寄り、尻を蹴り飛ばし、責任者らしき男を殴り飛ばしてから更に何事かを怒鳴り散らした後にこちらに戻ってきた。


やはり、地上の人間達の質は高くはなさそうだ。

こんな奴らと長く付き合う事になるのかと思うと―――或いはすぐに始末されるかもしれないが―――Rは色々な意味で絶望を拭えなかった。



―――



街に入ってそれなりに歩いた後、Rを連れた集団は一つの朽ち始めている高層ビルの前で行進を止めた。

どうやらここが終点らしい。


ここに至るまでの道中はやはり整備が行き届いておらず、防備も不十分なように思えた。


歩きながらではあるが確認した感じでは今までいた街とは大きく状況が違うようだ。


まず、ここには以前いた街程の人口は存在していないようだ。

あんな雑多な街でも数千人程度はいるという感じで大通りはごった返していたが、ここにはそれほどの人間はいないようだ。


まず商店と思しき物がまるでなく、あの雑多で混みあったゴミ溜めがまともな街に見える程に都市由来の残骸がそこかしこに散らばっている。

気を付けねばコンクリートから飛び出た鉄骨に足をぶつけて深手を負いかねない。


人がまばらにしかいない通りに存在する物はみすぼらしい服を着て労働に従事する人間と、通りをうろうろと歩き回る武装した人間の二種類だけだ。


前者はこの炎天下の中で刃が欠け、その機能を十全には発揮出来ないであろうくたびれたツルハシや斧、ハンマーを都市に残されたコンクリート塊や電柱などに振るい、破壊したそれらの残骸を通りに放り投げるという不毛な作業を延々とさせられている。


後者の武装した者達は、労働に従事している者達が手を休めたり、或いは倒れたりした時に近寄っては怒鳴り散らし、或いは殴り倒している光景がそこかしこで見て取れた。


つまり、ここにいる人間は大きく分けて二種類という事を察する事が出来る。

すなわち、支配者と奴隷だ。


この時点でRは非常に嫌な予感を覚えていた。

この様な待遇を受けている時点で、そもそも奴隷として売り飛ばされた時点で自分が支配者側に配置される事はまず無いだろう。


「着いたぞ屑野郎、ここがてめぇの終わりの場所だ」


ボースは向き直ると不機嫌そうにRにそう吐きかけた。


目の前のビルは朽ちているとはいえ、他に比べると整備が行き届いている。


恐らくは良好な状態で残っていた戦前の建物を修繕して使用しているのだろう、長年にわたって放置されていたにしては状態は悪くなさそうだ。


ビルと周囲を隔てる境界には崩れ始めてはいるものの、高く頑丈そうなコンクリートの壁がしっかりと周囲を囲み、出入り口にはスライド式の重そうな錆びた鉄製の門扉がしっかりと配置され、これまでと違ってしっかりとした装備の警備兵が油断なく周囲を見張っている。


中でも目に付いたのが、土嚢で作られた簡易的な陣地に据え付けられた水冷式の重機関銃だ。

市民兵に支給している重量のある旧式機関銃と同じモデルのそれが二丁、扉を守る最後の壁とでもいうかの如く銃身を強烈な日光に反射させて輝いている。


恐らく間違いなく、ここは権力者の住居だ。

そうで無ければこの蛮族共の司令部だろう。


「いいな、余計な事は一切その汚ねぇ口から吐くんじゃねぇぞ」


Rは静かにそれを聞き流す様に黙っている。

下手な事を言ってこれ以上殴られるのは御免だからだ。


無駄な体力の消耗も肉体の損害も受けている場合ではない。

これまでに集めた情報からして、これからが一番過酷な状況であろうから消耗を避けねばならない。


「チッ!行くぞ!」


ボースは吐き捨てる様にそう呟くとRを引っ張って部下たちと共にビルの内部へと入っていく。

そのいらただしげな口調のどこかに焦りと若干の恐怖が混じっている様になぜかRには感じられた。



―――



ビルの内部に入り、Rの予感は確信へと変わった。

一歩踏み入れただけでこれまでと違う事が一瞬で理解できた。


外の野放図な惨状とは異なり、この建物の内部は清掃が行き届いている。


ゴミなどは転がっておらず、電気は通っていない様ではある物の燭台に載せられた蝋燭の光や窓から入る光で内部は明るさが維持されている。


「こっちだ」


徐々に口数が少なくなってきたボースに急かされてエレベーターと思しき扉の前に一同は集まる。


当然、動いてはいない。

当たり前だ、電気が無ければこれらの機械は稼働しない。


そうして眺めていると、ボースの部下たちが数人がかりで扉を無理矢理こじ開け、ボースは近くにおいて行った金属の板と金槌を拾い上げて何度も叩く。


「ボースだ!今帰った!エレベーターを降ろせ!」


その音と声が合図になったのか、動くはずの無いエレベーターがゆっくりと音を立てて降りてくる。

何か別の物を動力に使っているらしい、人力だろうか。


そうして考えている内にエレベーターは到着し、ボースの部下たちは仕事は終わったとばかりに無言でその場から離れていく。

恐らくはここより上には許可されない限りは登らないという決まりでもしているのだろう。


「乗れ、さっきも言ったが黙ってろよ」


ボースはそう口にするとRとキドを伴ってエレベーターの中へと入った。

その顔色は初めて会った時に比べて確実に悪くなっているようだった。



地上人の武器のグレードが更に下がるとは以前に言及した通り、今回の連中は完全に原始人一歩手前といった感じに仕上げています。

何と言っても、銃弾などが調べれば調べる程高等な技術を使っていてそれらの産業を維持していないと文明崩壊後の世界では生産できないという感じで自分の中で結論が出てしまったからこうなった感じですね。


無煙火薬ならば硫酸と硝酸とセルロースで~と気軽に言うにしろ、まずまともな機材無しに硫酸作れないじゃないかという感じで頭を悩ませた結果、ギリギリ作れそうな黒色火薬とマスケットに落ち着いた感じです。


化学薬品作るとして、原料集めて施設稼働させて完成品をまた弄ってという感じで人と電力をしこたま使って設備を動かすという感じで、中々に難しいのです。

この辺を魔法とかチート使わんとやってられんというのが分かりますね、技術喪失が骨子の一つのうちでは出来ないのでこうなってしまうのです。


要は知識だけあっても道具が無いと物って作れないんですね、世紀末にはその物品も生産手段自体も無くなってしまってますので必然的に持っている連中からの鹵獲品や横流しで手に入れない限りは武器のグレードは下がってしまいます。


一応、主人公の故郷以外にも文明らしい物が残っている勢力も出しますので、あくまで復興に失敗した一勢力の装備という感じで見て頂けると幸いです。

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