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ブルーブラッド  作者: 人間性限界mohikan
一章『流されるもの』
24/101

十五話、梱包作業

主人公は出荷よ~


いつも投稿が遅くなって申し訳ありません。

納期や、全部仕事と納期が悪いんや。

という事で一章もようやく本番に入る段になってまいりました。

遅筆andスローテンポ展開ですが、これからもよろしくお願いします。


トレーラーの中で横になり、眠りに落ちてどの程度の時間が経ったのだろうか、Rは何度目かの既視感のある現象に襲われていた。


全てを現実同様に認識し思考出来ていながら、体は己の思い通りに動かず、何かが己に介入してくる様な感覚。

それが再び自身を襲っているのだ。


今回の舞台は、宇宙だろうか?

重力を感じぬ暗い闇の中で己の感覚器官だけが存在を許され漂っている様なそんな感触の中、恒星の様に赤く輝く何かがRに語り掛けてきた。



「またしくじったようだな、我が肉体(ボディ)よ。貴様は本当に期待外れでがっかりさせられる。まあ、コメディ映画としては見れない事も無いといった所か」


その声には聞き覚えがある、ほんの数日前のあの地下鉄での小人達との戦いをしたあの夜にもこの存在は自分に何か語りかけてきた様な気がするのをRはしっかりと覚えていた。

その機械音声じみた男の様であり、女の様でもある不明瞭な声の主にRは臆する事無く返事をする。


「精神汚染体の類かと思ってたけど、ここまで離れて介入してくるっていうと新種のミュータントかな君は?」

「ほう、あの夜はあれほどの醜態を晒していたというのに随分と態度がでかくなったな。我が肉体(ボディ)よ」

「こう何度も似た様な怪奇現象と遭遇していれば誰だって慣れるさ、人間は馴れていく生き物だからね」


夢の中で合う度に徐々にこの怪奇現象の時間が伸びてきているのは何か要因があるのだろうか、そもそもこの声の主は一体何者なのか。


以前も言われた『我が肉体』とはどういった意味なのか。

大まかな仮説を立てように判断材料が少なすぎる。


少なくとも、この存在が何者であれ、人類の味方であるという事は決してないだろう。

ならばこれに譲歩、交渉、庇護を求めるのは敵を利する行為であり人類への裏切りとなりかねない。


自分は兵士なのだ、たとえ最後の一人になっても人類の敵には命乞いなどしてはならないという強迫観念にも似た義務感がRにその存在への対抗意識を燃え上がらせる。


そうする間にも、言葉を交わす毎に自分が死に損なったのはこの得体の知れぬ何かのせいであろうという確信がRの中で高まっていく。


確証は無い。だが分かるのだ。

己の中の何かが『これは敵だ』と強く主張してくるのをRは感じていた。



「まあいい。だが、ならば分かっているのではないか?」

「ああ、そうだね。君が現れると大体その後目が覚めてクソッタレな状況になってるね。だけど今回は無理だ、そうだろう?」


湧き上がる敵意のままに恒星にRは言葉をぶつける。

これは会話ではない、言葉を介した戦いだ。

終始見下した態度をしてくるこの謎の存在に遅れなど取ってはならない。


そう、今回は何も問題ない筈だ。

今回はミュータントもアノマリーも無しだ、何も問題は―――。


「果たして、そうかな?」


何かが引っかかる、何も失敗していない筈だ。

だが、何かが…。


そんな喉に小骨が刺さった様な拭いきれぬ不快感と不安感に襲われるRに対して何かを見透かす様な侮蔑と嘲笑を含んだような声が恒星から響き渡った。


「起きれば分かる。お前は今まで通り無意味に時間を浪費し、もがき苦しむが良い」


その言葉を最後に燃える恒星は消え去り、闇の中にRの意識が覚醒に向って薄れていく。

これも前回の通りだ。


「残りの時間は少ない、精々楽しむが良いぞ我が肉体(ボディ)よ」


Rの意識が遠のいていく中、声の主のそんな言葉が聞こえた気がした。



―――


「んっ…」


自身を苛む息苦しさによってRは目を覚ました。

目を覚ませばそこは見慣れたトレーラーの内部、車は既に到着したのか或いは出発してないのかは分からないが動いていない。


「よぉ、起きたか兄ちゃん?」


いつもの飄々としているようでありながら、どこか悪意を含んだようなアスマの声にRは体を起こそうと試み、しかし立ち上がれず困惑する。

ハッとして自身の状態を確認しRは愕然とした。


足には木の枷がはめられ、手にもまた前手に鎖付きの木枷が嵌められており、ついでに首には奇怪な首輪まではめられていた。

その首輪は彼らの技術水準にしては不自然な程に精巧な作りをしている様に感じられた。

というのも、その首輪からは定期的な電子音が響き、ランプが点滅しているのか定期的に赤い光が地面に反射してRの網膜に入り込んでくるからだ。


ともかく、まずは意図を確認せねばならないとRは地面に転がる自身の前方に立っているアスマに問いを行う。


「これはどういう事かな?」

(わり)いな。慎重に検討したんだけどよ、あんたとこれからも仲良くするよか売った方が金になるってのが分かったんだよ。いや~文無しには世知辛い世の中だ」


悪びれる事無く、やれやれといった様にお手上げのポーズをしながらアスマはRを見下ろしている。

その表情はいつもの曖昧な笑みであるが、親しみというよりは相手を侮蔑しているような下種な雰囲気を醸し出している様にRには感じられた。


してやられた。

それがRの最初の感想だった。

これまで友好的に関係を結んできたつもりだったが、相手にその意思は全くと言って良い程無かったようだ。

むしろ、今までの対応は自分の値打ちを図る為の品質検査、出荷する前の家畜の状態を確認する作業の様な物だったのだろう。

そうなれば、これまでの親切な態度、対話、待遇もつじつまが合う。

自分は売られるためにここまで大切に運ばれてきたのだ。


「今なんと言ったのかな?」

「売るんだよ。この街はな、人も売れるんだ。あんたは良い値段になると思うぜ?なんたってエルクの民なんだからな」


あえて、状況が呑み込めていない風にRは再度問う。

いや、R自身もこの状況を呑み込みたくないと言った方が正しいだろうか。

先日まで協力関係にあった筈の相手にRは奴隷として自分を売り飛ばすと宣告されているのだ。

脳が理解していても、精神がそれを拒絶しそうになる。

だが、ここで折れて取り乱しては一巻の終わりだ。


今すべきことは何か?

狂乱して泣き叫ぶことか?違う、自ら思考を放棄する事は愚か者のする事だ。

この事を糾弾して非難する事か?不毛だ、道理の通じぬ相手にそんな事は無意味である。

相手に媚びへつらって相手の慈悲に期待する事か?却下、奴は笑って自分を売り払うだろう。



「それは決定事項なのかな?僕の装備を融通しよう 。物資は少ないがそれで補填は可能かい?」


突然訪れた理不尽に、しかしRは臆する事無くアスマとの対話を続ける。

現状はまさに非常事態だ、だからこそ取り乱している場合ではない。

冷静に、そして穏便にこの場を収めて窮地から脱出する事こそが肝要だ。


自分にはこれまでに手に入れた情報を資料化して持ち帰るという使命がある、こんな所でとん挫するわけにはいかない。

自分は殺される為に故郷に帰らねばならない、今となってはもうそれだけが自分の残された希望なのだから。


考えてみれば、彼らを無条件に信用した自分にも落ち度はある。


ニシという協力者を抱き込めば一街越すぐらいまでは良好な関係が維持出来るという見通しで動いたのは甘かったというだけの話だったのだ。

少なくとも同行する間も出来る事は協力して点数を稼いでいたつもりだったが、逆に品物として価値を相手にアピールしていただけだったという事でしか無かったと理解したRは逆に『己の買い取り』を試みる。


奴らが商人であるというならば逆に自分の命と身柄を金で買い戻せるかもしれない。

疲弊した頭をフル回転させて短時間で導き出した案、それにRは賭けて粘り強く交渉を試みる。



「ライフルと弾全部で手を打たないか?それで解放してくれ、そうしてくれれば僕は何もせずそのまま消えて後は自分で好きにやらせて貰う。君は懐が潤う、悪い話では無いと思うけどね」

「ははは!やっぱあんた面白れぇな!この状況でも取り乱さずに冷静に状況に対処しようとしてると来た!」



拘束され、地面に転がされているというにも関わらず、あくまで冷静な態度を崩さないRにアスマは大笑いをする。

嘲笑ではない、単純にRの器の大きさに感嘆し、好意を抱いたからこそアスマは笑ったのだった。


これまで出会ってきた人間達の中でもここまで高い理性と度胸を同居させた人間はそうは多くないだろうとアスマは考える。

半日ほど語り合ってその人間性はほぼ理解できていた。


兵士として培われた理想に殉じる覚悟を持った、短時間で恐怖を克服できる精神の強さ。

何人か失ったとはいえ、ガキどもを何人か連れて帰ってきた指揮能力。

軍の下士官だったというだけあって頭がキレて腕も立つし、若干のユーモアもある。

副官として使っても戦闘要員として使っても役に立つだろう、少し要求する物品を渡して勉強させれば自頭も良いから技術者としても使える可能性が高い。

人材として見れば最高級の逸材だ、掘り出し物とはこういう物に言うべき物だ。

きっとエルク、いやアークという場所しっかりで勉学と戦闘訓練を積んだのだろう。



個人的な感情としてはRの様な男は好きだ、売るのは惜しい。

だが、だからこそなのだ。


『ここ』に頭の良い人間、それも『大人』は必要ない。

故にアスマの答えは変わらない。



「ほんと秀才さんなんだな。だが、それならば余計に理解してるんじゃないのか?てめぇはもう『詰み』だ」

「そこをなんとかして貰いたいんだけどね。僕なんて大した値段じゃ売れやしないさ」

「自分を過小評価するなよR、てめぇは良い値段で売れる。俺が保証してやんよ」

「そんな保証は願い下げだよ。事を荒立てる気はないから解放してくれると助かる」


Rはアスマとの交渉を続ける中で己の状態を身をよじって確認する。

幸い、前手に拘束されているお陰て上手い事やれば立ち上がって体当たりぐらいは出来そうだ。

それで状況が好転する事はないだろうが、何かに役立つかもしれない。


「悪いな、俺たちもカラッケツでよ。あんたと仲良くして得られる銭とあんたの諸々を売っ払った値段じゃあ後者の方が遥かに利が良いんだ。あんたは持ち物も良いからな」



そう言ってアスマは外套の懐に手を入れ、とある物を取り出した。

それはRにとって見覚えのある物、今は無き悪友の遺した45口径の旧式自動拳銃だった。

それを見たRの表情がこわばり、態度が若干変化したのをアスマは見逃さなかった。

煽る為のネタはいくつか用意していたが、初回から当たりを引いた事に幸運が味方に付いている事をアスマは心の内で喜んだ。


触れてはいけない物に触れた時、人は冷静さを失う。

アスマはそれを理解し見抜くのに長けていた。


そして、それによって岩の様に頑なな相手が取り乱し、無様に感情をさらけ出す瞬間を見る事がアスマにとっては何物にも代えがたい快楽であった。


既に捕まえた以上は、この様な問答はそもそも必要ない。

これはアスマが捕らえた獲物の精神を嬲り楽しむ為の儀式なのだ。


「本当に良い装備ばかりだ。どれもこれも高く売れるぜ?あんたをこのまま放っておいたらこいつらを無為に全部使っちまうんだろ?そりゃあ資源の浪費ってもんだ」


拳銃を舐める様に見回し、Rの目の前でトリガーガードに指を突っ込んで器用にくるくると回して見せる。


「叩きつけたみてぇな傷はあるが、まあ問題ねぇな。こいつも高く売れる。高品質の自動拳銃なんて貴重だからな」

「……返してもらえるかな?それは僕にとって、とても大事な物なんだ」


あくまで冷静を装っているが、その表情と言葉には憤怒が渦巻いている。

損得を抜きにして、よほど大事な物なのだろう。

なぜならば、Rの放つ雰囲気には物資を全て取られた事に対する怒りは含まれていないのが察せられたからだ。


この拳銃が提供すると宣言した物品に含まれていなかった事からもそれは明らかだ。


そう推察し、故にアスマは最後の追い打ちを仕掛けた。


「駄目だ。俺らが有効に活用させて貰う」


これまで見た事も無いような満面の笑みのアスマがぶつけてきた冷淡な拒否の言葉にRの中で何かが切れたようだった。

それまでの冷静な態度と口調が一変し、理性が抑え込んでいた鉄火場にぶち込まれた時に兵士が見せる攻撃的な一面が一気に噴出する。


「この糞野郎が!それを返せ!それは僕のっ…!」


事前の確認通り、前手で縛られた事で上手く体を動かせば立ち上がる事は可能だ。

それをアスマと会話を行いながら確認していたRは腕を起点にして体を勢いよく起こし、そのまま立ち上がりアスマに迫った。


枷によってまともに歩けないが故に、足を曲げてバネとして跳躍しアスマへと飛び掛かろうとする。

手足が動かなくても頭は動く、頭突きを食らわせ、首に食らいつく。

後のことなど知った事か、こいつに一発喰らわせねば気が済まない。

そんな感情がRを支配し、鍛えられた肉体がそれに追従して反射的に行動に移らせた。


だが、その直後にRは後頭部に衝撃を受けて昏倒し、再び地面に倒れ伏した。


「ぐっ!」


一瞬、視界が暗くなり、そのまま体が地面に落ちて冷たい床に顔をこすりつける感覚。

それと同時に頭部を何かに踏みつけられるような衝撃がRに襲い掛かる。


「おいプーミ、やり過ぎるなよ。商品が駄目になるじゃねぇか」

I HATE YOU(オレ、コイツ嫌イ)


止める気配などまるで無いアスマの気の抜けた制止の声と、先日共に行動していた獣人の少年がたどたどしい発音の英語が聞こえ、同時に頭部に更なる衝撃が加えられる。

実際止める気など無いのだろう、アスマは英語の分からぬプーミに英語で話しかけているのだから。


後頭部に鈍い痛みが走る。

恐らく蹴られたのだろう



「もう気が済んだだろ伍長殿、大人しくしてくれや。反論も抵抗も無しだ。そしたらこのまま優しく出荷してやる」

「糞喰らえだ、屑野郎…!」

「行くぞプーミ、出荷の時間だ」


Rの罵りを無視したアスマはプーミにそう指示するとトラックの荷台を開けた。

どうやら、トラックは既に街の中に入っていたようだ。


周囲には複数の大型車両やピックアップトラックが並んで止まっており、少し先の視界の開けた場所では雑多な品物が取引されていると思しき市場が見える。


Stand Up(立テ)


短く切り揃えていた髪を無理矢理掴み、プーミは無理矢理Rを立て上がらせた。

そして手枷の鎖をしっかりと握ると子供とは思えぬ力でRを外へと引きずり出してみせた。


「さぁ、売られるまでの短い付き合いだが一緒に観光でもしようじゃねぇか。俺がガイドしてやるぜ」


アスマはこれから手に入る大金を想像してか、終始ご機嫌そうに二人を先導して雑踏の中に歩き出した。


この世界のゴミ漁りはリスペクト元であるFalloutのスカベンジャーほど平和的でも無ければ友好的でもありません。


世界が終わって100年、廃墟からの無節操な収奪の結果として手近な無人都市の物資が枯渇し、サルベージが出来なくなったゴミ漁り達は徐々に野盗、奴隷商、傭兵などの他業種との兼業化が進んでいます。


彼らは城塞都市の外という人類の勢力圏外で活動を行う為にこの世界の水準では比較的重装備を整えているので、その武力を他の事に転用するという方向に動いて生き残りを図っています。


要は売れるジャンクが無いならば自分らで売り物を作ってしまえという精神ですね。

一章は彼らの副業の一つに主人公が巻き込まれるというのがテーマの一つみたいなもんです。


つまりは前書き通り、ここからが一章の本番です。

ここまで持って来るのに相当時間が掛かってしまいましたが、ここからはテンポ上げていきたいところです。

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