階段と暗黒空間
「あと少しなんだけど・・・くそっ」
そんな独り言を言いながら学園名物の300段階段、通称「地獄の入り口」で
屈みながら上を見上げているのが、この学園に通うアラン・フォン・ラインハルト。
アランは軍参謀を代々務めている由緒正しいラインハルト家の跡取りである。
この時期特有の強い南風が駆け抜ける。
「おっ!」
階段の先を歩く女学生のスカートをその一陣風がイタズラをした。
「ってダメか・・・・」
あともう2m/s強ければアランの期待に応えていたかもしれない。
「ちょっとアンタなにしてるのよ」
アランは背後から唐突に声をかけられる。
「うわっ、あれだよその永遠のブラックホールの中をだな」
「はぁ?私何も言ってないけど?」
「あ!」
しまったという顔で声をかけてきた同級のミカと目が合った。
ミカはこの国防士官学校で常に成績トップの注目を浴びている優等生である。
「何言ってるのこの変態アラン」
という言葉とともに追い越し際にアランの頭をボカッと叩くミカ。
頭部を襲った一発の衝撃に一瞬クラッとしたアランだったが負けていない。
「階段を登る、目の前にスカートの女子がいる。わかるだろミカ」
そんなセリフなど耳に入っていない様子でミカは睨みつけている。
「あの見えそうで見えない絶妙な暗黒空間にだなロマンがあって・・・」
目の前にいたはずのミカが瞬間視界から消える。
ミカが話してる途中のシンジの顎をアッパーよろしく帯刀していたサーベルの柄で一撃したのだ。
不意の一撃であることと、ミカの磨かれた技も相まってその場に悶絶して崩れるアラン。
「そんなこと考えている暇があるってことは、今日の作戦立案演習は余裕ってことね」
「なんだ君たち、また朝からジャレてるのか。本当に仲がかいいんだね」
そこに現れたのはこれまた同級のミーシャだ。
ミーシャは感性に生きるタイプの学生で、学術も実技もなんでもそつなくこなしてしまう天才肌。
その気さくな性格から人気者である。
「アランもいい加減、理解したほうがいいと思うんだけどー」
なんとか痛みが和らぎ立ち上がるアラン
「痛っ・・・理解がなんだって?」
「あのね、私たちが着てるこの制服の下には君が見たいものなんてないのよ」
「!?」
やおら、ミーシャは自分のスカートをめくって見せる。
そこには黒いショートスパッツ。
「え、えーーーーーーーーーーっ!」