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22話:帰るまでが合宿

 ―それから。



 三日が過ぎた。











「―本当に乗っていかなくていいのか?」


「うん。

 ミレーア大陸は殆ど歩き尽くしたからね。今度は南の大陸に行ってみるよ」


 俺たちがアイディーナ大陸に来た時に初めて降り立った港、ウェンディ港で、俺たちはエリーに見送られる形で大陸を発とうとしていた。




 この大陸に来てからおよそ二週間。とても長かったような体験をしたように思えたが、実際には大して時間は経過していなかった。

 色んな出来事があったし、色んな事をやらかした。

 色んな人物に出会ったし、色んなピンチに遭った。


 そんな経験は、全て俺の中で成長の糧として昇華されていくことだろう。



「…本当に助かりました。私からも、何とお礼を申しあげたらよいか…」


「いいよいいよ、あの時も空気に流されて助けたようなものだし」


「しかし、その一期一会の出会いのお陰で我々が助かったのも事実。ありがとうございました」


 アルト先輩とアイク先輩の言葉責めに耐えかね、ヘラヘラと流していたエリーも気恥ずかしくなったのか、二人から顔を背けて、



「…どういたしまして」



 と小さく呟いた。




「貴様ら、そろそろ出航の時間だ」


 会長が荷物を積み終え、甲板から降りてくる。



 遂に、この大陸ともお別れだ。

 お土産は買った。忘れ物は無い。やり残したことも無い。

 よし、発つ準備は万端だ。



 生徒会の面々は、港に残るエリーに最後の別れの挨拶を手短に済ませ、一人、また一人、乗船していく。




「…じゃあ、そろそろ行くな」


「キュキュウ!」


 取り残された俺とアスモも、エリーに一言、最後の挨拶を済ませる。


「うん。またどこかで会えるといいね」


「ああ!

 またどこかで、絶対に会おうぜ!」


「キュウ!!」


「…ふふっ、そうだね」


 エリーと再会の約束を交わして、俺たちは船へと乗り込んだ。











 それから、エリーが【針鼠のエリー】として名を馳せているのを知ったのは、後の話である。






 ―――――






「―帰ってきたあああああああ!!!!!」


 帰りの船旅を経ること一週間。

 我が故郷であるエニストルの大地に再び足を踏み入れた。



 大きく息を吸い込み、エニストルの空気を感じる。


 ―うん。やっぱり違う気がするわ。

 あっちの空気は、なんというかムンムンしててむさくるしい感じだったが、こっちの空気は潮の香り仄かに漂ってくる爽やかな感じだ。


 まぁ港だから当然なんだけどね。





「全員、船内に荷物は置き忘れてないな?」


 港の時計台広場。俺たちは、この合宿最後の点呼を取っていた。


 会長、アイク先輩、アルト先輩、シルヴィ、ソーマ、シーナ、俺、アスモ。

 全員この場に健在なのを確認して、会長が口を開く。




「―皆の者、約3週間の遠征合宿、よくぞ耐え抜いた!


 貴様たちがこの合宿で何を思い、何を学んだか。それは今後の人生に大きく影響していくことだろう!

 今回、我はダンジョンの遠征に参加出来なかったが、貴様たちの報告を聞いてその苦労と努力を十分に理解しているつもりだ!


 本当にご苦労、いや、お疲れ様だ!

 本日を以て、『遠征強化合宿』の全行程を終了する!!


 では、解散!!」




「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」


 会長の号令で、長かった合宿は終わりを迎えた。











 ―――――






 それからというもの。




「…レポート終わったぁぁぁ〜……」


 八月二十八日。

 夏休み終了直前に、俺はレポートを終わらせた。


 題材はもちろん『アイディーナ大陸の遠征合宿』について、合宿で経験した色々な出来事を纏めたものだ。



 しかし、一ヶ月二十八日というのは何だか感覚が狂うな。

 八月といえば、三十一日まであるものという固定観念があるからなぁ。そういうのを考えると、やはり一ヶ月の固定というのはあまり宜しくない気がする。


 と、この世界の理に愚痴を言っても無駄だな。



「キュウ?」


「ああ、終わったよ」


 ベッドに寝転がって、夏休み最後の夜をアスモと一緒に過ごす。


 …それにしても、明日から学校か。

 何故か、夏休み明けの学校というのは無性にワクワクするんだよな。異世界とか関係なく。

 で、明けて二日目から一気にしんどくなるんだよな…。


「…まぁ大丈夫か」


 俺も俺で、段々この世界に順応し始めてきている。

 今ならば、学校に通い続けでも「楽しい」と思えるはずだ。


 寮の自室、部屋の電気がプツンと消えた。

 それは、月を跨いだことを意味する。



 明日も早い。今日はもう寝よう。


 そう思い、目を瞑り、腹の重量感を感じながら微睡みの中に落ちた。





















 そして。






 秋がやって来た。

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