21話:実験
さて、昨日のトンデモ騒動から一日明けた朝。皆様おはようございます。
今現在私の左腕はと言うと、まぁ、ちゃんと硬いものと一緒にしっかりと固定してあるんですね。これが正しい治療法かは分かりませんが。なにせ骨折なんて初めてでして。
でね、私が今日朝起きて真っ先に気づいたことがあるんですね。
なんとね、私の左腕の感覚が完全に元通りなんですね。いやね、これどういう事なんでしょうか。
いや、もしかしたらね?なんか魔力の流れがどうのこうので怪我の治療が早まった、なんてのはありそうなんですが・・・、流石に半日もせずに治るなんて、ねぇ。
でね、私ふと頭に一つの可能性がよぎったんですね。
「ああ、これが俺の特殊能力か」
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まだアスモが起きない時間帯に、少し試したい事をしてみるとしよう。
俺は今、自分の左腕に包丁を押し付けている。これで俺が何をしようとしているか分かったね?
え、分からない?それじゃただのクレイジーサイコパスだって?
全くその通りですよ。
朝目が覚めると、腕の痛みは完全に消えていた。これがおそらく、神様の言っていた『潜在意識によって引き出される能力』というやつなんだろう。
とすると、俺の能力は超再生能力である。普通、腕の骨折は半日足らずでは治らない。
という訳で、しばらくは俺の体の限界を知るために色々と実験をしてみようと思う。多々マッドサイエンティスト的な要素が垣間見えるかもしれないがご了承を。
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case1:切り傷
手始めに、腕の切り傷がどのくらいで治るのかを検証した。
正直、リスカをするのは若干怖い。これで俺の能力が再生じゃなかったらそのまま昇天してしまうことだろう。
自分で自分を殺すとはこの事か。
まぁ、骨折が半日足らずで治るぐらいだからこれぐらいはすぐに治りそうだけどな。
という訳で。
「ソイヤッ」
勢いよく包丁を引き、腕の皮膚を切断する。もちろんすごく痛い。
だが、痛みは徐々に収まっていき、傷口も塞がれ・・・。
あれ?傷口が一向にして塞がらない。どうしてだろう。
血は依然として溢れ続け、少し貧血気味になってきた。
ヤバ、これ逆の意味で死ぬわ。
傷口を布で急いで縛り、流血を防いだ。
case1・・・観察
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俺が教室の扉を開けると、一つの違和感に気付いた。
「へぇ、まだアイツ来てないのか」
俺の席の隣が空席だった。いつもはそこにリーナが座っているはずなんだが・・・。もしかして休みか?
「よう、ってなんだその腕?」
扉の前で立ち止まっていると、後から来たウルスに左腕の事を質問された。
流石に「リスカで出血しました」なんて言えないよなぁ。
「ちょっと派手に転んだ」
「派手にって、一体どうしたらそんな擦り傷が出来るんだ?」
確かに擦り傷にしては規模が大きいかもしれないな。
腕に一直線で引きましたからね。
「後でサクラに治癒魔術かけてもらうか」
「治癒魔術?」
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この世界での魔術とは、七つの系統に分類されている。
まず、俺が今の所いつもお世話になっている『火炎球』が炎系統に分類される。
炎系統の魔術は、他の系統と比べると比較的多くの魔力を消費するが、その分他の系統と比べると威力が高めである。
次に、昨日の青髪が使っていた『激流弾』が自然系統魔術、の中の水系統魔術。
自然系統は、自然の地の利を活かす場合が多いので、その場その場で魔術の火力などが変わったりする。
例えば、昨日の激流弾は水系統であるが、この魔術はおそらく水辺、海や湖付近で使うと威力が上がったり魔力消費が少なく済むという恩恵を受けれる。
自然系統では、またいくつかの分類があるのだが、今回はそれは省くとしよう。
ちなみに、炎系統は何故自然系統に含まれないかと言うと、自然系統の中に『火系統』という系統があるからだ。何が変わるのか?知らん。
多分、メ〇ゾーマとべギ〇ゴンぐらいの違いだろう。
次に、電気系統の魔術。
電気系統は、魔力を込めてからの魔術の完成までの工程が他の系統より速く、主に白兵戦や短期戦で運用される。ただし、火力は他の系統に劣る。
ここからは攻撃系では無い魔術、支援系の魔術系統について。
代表的なのが、白魔術と黒魔術だ。
白魔術はその名の通り、バフを撒ける感じの魔術だ。主なバフに、魔術火力減少(ダメージ減少)、身体能力上昇などが挙げられる。
黒魔術は、白魔術と対の効果、所謂デバフをもたらす。主に防御力を下げたり、魔術の火力を下げるなど。
そして、他の魔術系統より習得が難しいと言われているのが、残った治癒系統と系統外魔術だ。
治癒系統は、主に傷を即座に治したり、状態異常の症状を治癒したりする。
ちなみに、風邪とかインフルなどの『病気』とかはこの系統では治せず、しっかり医者に薬を処方してもらう他ない。
普通に衰弱とかの状態異常は無いのですかねぇ・・・。
系統外魔術は、特殊な魔術が多すぎて一括りには出来ないので作られた系統であり、状態異常の魔術が代表的である。
ストリエス先輩は幻術使いであるが、その幻術もこの系統に含まれる。
何故、急に魔術の分類の話をしたのかと言うと、習得の難しい治癒系統をサクラが使えるという事だからである。
ちなみに参考人はウルス。
さて、それはさておきまずい事態になった。
「アイサカ君、早く左腕を出すんだ」
「い、いいってば。これぐらいに魔力を使うべきじゃねぇよ」
いつもの時間に、俺はサクラに迫られていた。
そもそも俺は、自分の再生能力について知ることが目的で自傷したんだ。ここで無理やり傷口を塞がれたら、どれ位の能力か分からなくなる。
すぐに傷が塞がらなかった時点でお察しだとは思うけど。
「・・・ええい!ウルス、アイサカ君を捕まえろ!」
サクラはどうしても俺の腕を治療したいらしく、ウルスに確補の命令を下す。
「お、おう」
ウルスはいきなりの事で驚くも、俺の背後に回り両脇を腕でしっかりと固定する。
「やぁめろお前、離せコラ」
「全く・・・、じっとしてるんだぞ」
サクラは俺の左腕を固定すると、右手に魔力を込め始めた。
ああ、結局ダメだったよ・・・。
それにしても、治癒系統の魔術って、なんか暖かみがあるな。まるでヒーターで暖まっている感じだ。
・・・自分の語彙力の無さに改めて驚く。なんですかヒーターて。
「・・・ふぅ、もう大丈夫だろう」
しばらく俺の腕に魔力を込めていたサクラは、掴んでいた左腕を離し、右手の魔力を発散させる。
「包帯を取ってみてくれるか?」
サクラに指示される通り、雑に巻いていた左腕の包帯を取ってみる。
そこに、俺が朝付けたはずの切り傷の跡はどこにも見当たらなかった。
おお、これが治癒魔術の力か!
「うん、どうやら大丈夫のようだ」
「・・・まぁ、ありがとな。サクラ」
「礼には及ばないさ」
治してくれたことには感謝するのだが、正直邪魔された感も少しはある。
まぁ、親切でわざわざ魔力まで使ってくれたんだからそんな事は気にしない方がいいか。
にしても、治癒魔術の力ってすげぇなぁ・・・。
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さて、次の実験をしようか。
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case2:落下
「キュキュイ?」
隣にいるアスモは「なんで屋上に?」と言うような表情をしている。
「アスモ、後で保健室の先生を呼んできてくれ」
一応念のために、保険を掛けておく。保健だけに。
・・・今から自殺紛いの事をするせいか、ちょっと寒気がした。
今から俺は、校舎四階の上、計五階から地上に向かって飛び降りる。
前世では、これは所謂『飛び降り自殺』と呼ばれているものだ。普通の人間には縁はなく、自殺願望を持つ人間がよくやっているであろう行為だ。
いやね?怖いよ?正直自分でも何してんだって思う。
でも、多分この体なら耐えてくれるんじゃないかな〜なんて、軽い気持ちで考えたりして。
という訳で、落下防止のために取り付けられたフェンスを飛び越え、後一歩で落ちる手前の状態を作る。
「キュウ!?」
後ろから静止の声が聞こえるが、そんなのは気にしない。
現在時刻は、授業が終わった直後だからおそらく四時半ぐらいか。
目が覚めた時の時間が楽しみだ。
覚悟を決めて、足場から飛び降りる。
体が浮遊感に包まれる。落下が始まった。
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「・・・・・・・・・ん」
目が覚めると、白い天井だった。
どっかで見た事あるシチュエーションだ。
「おや、気が付いたかい」
やっぱり、ここは保健室のようだ。どうやら、アスモが俺の状況を知らせてくれたようだ。
アスモは、前のように先生に抱き抱えられている。
「全く・・・。嫌な事があったのかは知らないけど、死ぬなら校外で死んでくれないか?」
自殺の事を咎めているのだろう。保健室の先生は困ったような口調で指摘する。
体を起こし、窓の外の明るさを確認する。
「・・・あれ?」
割と明るい。どうやら俺が飛び降りてからそこまで時間は経っていないようだ。
「先生、今何時ですか?」
念のため、現在時刻を確認しておく。
「なんで時間なんだ?・・・今は5時ちょうどだよ」
五時、ということは三十分で完治したと言うわけか。
「はぁ、人に無駄な魔力を使わせるんじゃないよ」
「魔力?」
・・・まさか。
「治癒魔術に使った魔力だよ、全身の骨折を治すのにどれだけの魔力を・・・。いや、あんたのあの状態で生きている方が不思議だよ」
・・・やっぱり、これも魔術で治されたわけか。これだと能力の力が正しく測定出来ないな。
だが、五階から飛び降りて生存出来ることは分かった。正直回復が間に合わなくて死ぬこともあったかもしれないからな。
「とにかく、起きたならもう帰りな。私はこれから職員会議があるんだ」
「へーい」
鞄を持って、アスモと一緒に保健室を後にした。
魔術の力ってすげー!
case2・・・失敗
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結論:魔術でいい




