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12話:なぞの たまご

「ここら辺りは貴君のような若者に狙い目をつけて金を巻き上げる悪党どもがわんさかしているのだ。次からは気を付けて街中を歩くのだぞ」


「ああ、助かったよ。・・・クラウド?」


「誰だそれは。我の名はキュリエス・ストライフだ」


「そうだった、ありがとうストライフ」


 俺はあの後、キュリエスと名乗る魔族の少年と共に街中を歩きながら注意を受けていた。


「ふむ、では我は別の用事があるのでな。さらばだ」


「ああ、またどこかで」


 その会話を最後に、俺とストライフは別れた。

 さて、これから何をするべきか。



 ―――



 あれからしばらくは、露店を見て回った。俺ももうこの世界の人間の立派な一人であるのだから、何か武器の一つを買っておこうと思ったからだ。


 だが、露店に飾られている見本品はどれも重く、なんの訓練も受けていない俺が扱うには少々危ないような気がして中々良い物が見つからない。

 なんかこう、軽くて強いみたいな武器は無いのだろうか?


「・・・そういえば、俺って魔導士学校に通ってるんだよな」


 そうだ、魔導士ならわざわざ重い剣などを持って前線で戦わなくてもよいはずだ。軽い杖でも持っていれば十分戦力になりうるはず。

 でも、魔法剣士なんてものも憧れるなぁ。


 ・・・しょうがない、今日のところは帰って後日考えるとしよう。別に今日決めることはしなくてもいいはずだ。


「・・・帰るか」


 そう思って魔法陣の元まで戻ろうとした道のりの最中。


 俺は一つの物体を売っている婆さんに話しかけられた。


「・・・おい若造。これを持ってみろ」


「は?」


 そう言って婆さんが差し出してきたのは、売り物のはずであろう丸っこい謎の物体だった。

 なんだ?強引に試させて売る悪徳商売か?


 だが、婆さんの顔は特にそんなワルの顔をしている感じはしない。


 ・・・騙されたと思って一回持ってみるか。


「・・・持ちましたけど、どうかしましたか?」


「何かを感じるか?」


 何かを感じる?

 う~ん、そう言われれば少し小宇宙コスモを感じる気が・・・しないな。


「・・・なんか、神秘を感じますね」


 とりあえず適当に言ってみた。本当は何も感じないが。


「・・・若造、それをやる」


「え、これ売り物・・・」


 婆さんは俺に謎の物体を押し付けると、早々に椅子と机を片付け、どっかに消えてしまった。


 ・・・一体なんなんだ?


 不思議な婆さんに渡された物体を抱えて、学生区まで戻った。

 ちなみに学生区の名称はマルトッカと言う。



 ―――



「・・・ん、あれは」


 帰り道で街道を歩いている途中で、ウルスとサクラの後ろ姿を見つけた。

 ウルスは何やら買い物袋を抱え込んでいる。


 なるほど、デートの帰りか。羨ましいねぇ。


 声をかけようかと思ったが、ここはいい男の逢坂お兄さん。友人の邪魔はしませんよ。本当はメチャクチャ邪魔したいけどね。


 前方にいるウルスとサクラを無視すると決めたその時、ウルスがこちらの方を振り返った。


「お?ユウマじゃねーか!」


 お前少しは空気読めや・・・。


 結果的に、俺はウルスとサクラと一緒に帰る形となった。




「で、お前らは一体何をしてたんだ?」


「サクラが杖の素材が欲しいって言うから付き合ってやったんだよ」


 杖の素材とな。女子高生が欲しがるようなものでは無いと思うけどな。

 この世界では普通なんだろうか。だとしたら少しつまらない世界だな。


「うちのクラスでは来週に魔法のテストがあるんだよ。それで炎属性の魔法を強化するための杖が欲しくて・・・」


 成程、杖には魔法の効果を増幅させるということが理解できた。


「杖の素材・・・、ということは自分で杖を作るのか?」


「ああ、店の物は一般人用に作られていて私には扱いづらいんだ。一応獣人用に整備された杖なんかもあるけど、一学生には手を付けられない値段なんだよなぁ・・・」


 獣人や人では杖の使い勝手が違うのか。不便なものだな。


「それより、ユウマは一体何をしていたんだ?」


「俺は商業区にいたんだ。そこでこの変な球を貰った」


 布の包みから球体を取り出す。


「球?・・・って、お前これタマゴだぞ?!」


「は?タマゴ!?」


 驚きのあまり球を落としそうになった。それを慌ててウルスがキャッチする。


「へぇ、アイサカ君は育成の趣味があったのか」


「いや、変な婆さんに押し付けられたんだけど」


「変な婆さん?」


 ウルスとサクラに今日の経緯を説明した。


「へぇ、確かに変な婆さんだな」


「このサイズのタマゴと言ったら、金貨50枚ぐらいの価値はあるはずだが・・・」


 サクラの言葉に驚愕して危うくタマゴをまた落としそうになる。


「き、金貨五十?!」


「・・・まあ、もし君が将来的に金を稼ぎたいなら、今売らずに成長させてから売るといい。きっと君の曾孫の代まで遊んで暮らせる額になると思う」


 お、俺の曾孫とか・・・。スケールデカすぎやしやせんかね?


「良かったなユウマ、お宝が手に入って」


 ・・・育成の餌とかどうしよう。



 ―――



「へえ、ここがユウマの家か」


 三人で駄弁っているうちに俺の家まで着いていた。


「大きな一軒家だな。ご両親は何の職業なんだ?」


 両親か・・・。なんて言えばいいんだろう。

 父親が一企業の社長なんて言ったら後々めんどくさいことになりそうだし・・・。


「・・・ふ、二人とも冒険家だよ」


 とりあえず、適当に誤魔化す事にした。


「冒険家か!相当ランクが高いんだろうなぁ」


 どうやらこの世界には冒険家という職業があるらしい。

 いや、魔法があるぐらいなのだからそういうのもあるのかもな。


「・・・でも、だったら何でお前あんな魔法なんだ?」


「あの魔法?・・・ああ」


 演習場のあの火炎球(ファイアボール)の事か。

 確かに、親が出来るやつなら子も出来るやつってのが定番か。


「親が優秀だからって、子が優秀とは限らんぜ」


「ふーん、そうなのか」


「ウルス、世間話している時間は無いのだが・・・」


「おお、そうだな。じゃあ、俺達は杖の作成があるからそろそろ帰るわ」


 ウルスとサクラは通ってきた道と反対の方向に歩き出した。


「ユウマ、また明日な」


「おう、またな」


 そう言って、俺は家に帰宅した。











 ・・・・・・・・・タマゴ、かぁ。

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