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~ 第八話 命を懸けて得たものは ~

 無事に二人揃ってクラスチェンジを終え、クエストを受ける為にギルド会館を訪れていた。

 レベル10になった事により、フリークエストを受けられるようになったので、早速掲示板に貼ってある依頼内容を確認すると、駆け出し用のクエストに比べかなり難易度が上がっている。


 例えば、町外れにある遺跡の中より光り茸の胞子を採取してくるとか、南の沼地からキングトードの舌を取ってこいだとか。

 最低でも三人以上のパーティーじゃないと厳しい内容ばかりだ。


 やはり本格的にパーティーメンバーを勧誘しないと先に進めない事を痛感した。

 セリスと話し合った結果、まずは前衛で、剣士か闘士を勧誘しようという事になった。


 ギルド会館の待合所で勧誘待ちらしき人に片っ端から声をかけてみると、中には興味を示して話しを聞いてくれた冒険者もいたが、セリスの特殊なレベルの上がり方を説明すると、命のかかった冒険でよく解らない不安要素を抱えたくないという理由で断られた。


 セリスと二人で一日中頑張ってみたが、誰も仲間にする事は出来なかった。

 仕方が無いので今日のところは諦めて帰ろうとした時、勢いよくドアを開け一人の男が入ってきた。


 銀髪の長髪、ピンと尖った耳、整った顔立ちのエルフだ。

 年齢は見た感じ若そうだが、エルフは見た目じゃわからない。


 っと、こっちを見てるな。ってか、こっちに来てる?うおっ、何か怒ってるっぽい。


「ここにいたかっ!セリス!」


「と、父様?!……なぜ、ここに……」


「そんな事はどうでもいい! さぁ、帰るぞ!」


 セリスの父親というエルフがセリスの腕を掴みギルド会館を出ていく。

 一瞬の出来事に呆気に取られてしまったが、俺も慌てて追いかけると、広場で言い合う二人を見つけた。


「離してっ! 私は帰りません!」


「ふざけるな! お前ごときが冒険者になれるものか!」


 俺は父親の勢いにちょっと気圧されたが、仲裁に入った。


「少し落ち着いて下さい! 話だけでも聞いてもらえませんか」


「何だ貴様……もしや娘をそそのかしたのは貴様か!」


 一瞬で俺は胸ぐらを捕まれ殴られそうになる。


「やめてっ! レオに手を出したら父様でも絶対に許さない!」


 セリスが父親の振り上げた腕にしがみついた。

 その必死な表情をみた父親は、ようやく落ち着きを取り戻してくれた。


「……取り乱してすまなかったな、人属の青年よ。」


「い、いえいえ、家族の事ですから、仕方無いですよ。とりあえず、ここではなんですから家に来ませんか」


「あぁ、すまない、そうさせてもらえると助かる」




 さて、セリスと父親は黙ったままテーブルに向い合わせで座っている。俺は急いで紅茶を三人分淹れてテーブルについた。

 セリスの父親は紅茶を一口飲み、俺の方を見た。


「先程は取り乱してしまって申し訳なかった、改めて謝罪する」


「い、いえ、大丈夫です。気にしないで下さい。」


「私の名は、レイモンド・ミーティア。セリスの父親だ。」


「あ、俺、じゃなくって、自分はレオ・ファルシオンと申します!」


 突然の父親からの自己紹介に慌てて立ち上がって畏まってしまった。恥ずかしい……


 レイモンドはフッと笑ってセリスを見た。その顔には既に笑みはない。


「セリス、一体どういうつもりだ。父さんに何も言わず里を飛び出すとは、どれだけ心配したことか……」


「……だって、父様に相談しても許してくれないでしょ?」


「当たり前だ! さっきも言ったがお前に冒険者が勤まるとは思えん!」


 セリスがビクッと肩を震わせる。眼には涙が浮かんでいた。


「レ、レイモンドさん、落ち着いて下さい。」


 興奮するレイモンドにセリスはそっと自分のギルドカードを差し出した。


「ギルドカード?……なっ? お前、そういえばその装備、レベルアップしたのか……」


 レイモンドはやれやれといった様子で大きくため息をつき、やや間を開けた後俺に向かって話し出した。


「レオ君、その様子だと君がセリスと行動を共にしてくれていたようだが、この子はレベルアップしなかっただろう? 何とも思わなかったのかい?」


「あ、えぇ、不思議だとは思いましたが、何とかなると思って頑張りました」


「ふむ、それではなぜ普通にレベルアップしないのかは解るかい?」


「いえ、特殊な上がり方をするなぁとは思いましたが、理由までは解りません」


 俺がそう答えると、レイモンドは少し険しい表情でセリスを見た。


「我々レアエルフ属は今や非常に数が少なくなってしまったが、昔はそれなりの勢力を誇っていたのだ。だが、他種族との交わりや冒険者に憧れた若者が里を出たりと、これ以上減ってしまうと種の存続が危ういところまでになってしまった。そこで先々代の長が二つの決まりを作った。一つは外界との接触は極力避ける事、もう一つは冒険者に憧れぬように、子が生まれたらレベルアップの制限をする術を施す事……」


 そこまで話すと、レイモンドはぐいっと紅茶を飲み干した。

 空になったカップをテーブルに置き、レイモンドは立ち上がって俺とセリスを交互に見た。


「セリス、お前は里に戻らずに冒険者を続けるつもりか? もうわかっているだろうが、辛く厳しい道だぞ」


 セリスはレイモンドの眼をしっかりと見て、力強く頷く。


「レオ君、知っての通り、今後もセリスのレベルアップは不安定だと思う。それどころか上がらない可能性すらあるのだが、それでもこの子が冒険者を辞めるまで、行動を共にしてくれるかい?」


 レイモンドは俺の心の中を覗くような眼をして問いかけてくる。

 考えるまでもない。


「はい、むしろセリスに見放されないように頑張りますよ」


 俺の答えを聞いて、レイモンドはやれやれといった顔をし、力無く椅子に座り込んだ。


「……やむを得まい、私の負けだ。」


 そう言うとゆっくりと立ち上がり、セリスに近付き頭に手を乗せて、何やら呪文のような物を唱えた。

 するとセリスの体から黒い霧のような物が出て、すぐに消えた。


「と、父様、今のは……?」


「セリス、お前のレベルアップ制限の術を解いた。精一杯やってみなさい。」


「! と、父様……ありがとう……」


 セリスは泣きながら父親に抱きついた。

 俺は静かに外に出た。

 空の月を見ながら自分の家族の事を考えていた。そういえばこっちの世界に来てから両親の事、思い出すこと無かったなぁ……俺、何か欠けてるのかな……


 暫くボンヤリと夜空を見上げていると、ドアが開いてレイモンドが俺の隣に立って話しかけてきた。


「実はね、今日ここに来た理由はセリスを連れ戻しに来たのではなく、レベルアップ制限の解除に来たのだよ。」


「えっ?そうだったんですか、てっきり怒って連れ戻しに来たものだと……」


「いや、驚かせてすまなかった。実はね、族長の娘として見聞を広める為にも近々旅に出そうかと考えていたんだよ。それを私に相談もせず飛び出してしまうものだから、意地悪もしたくなるだろう?」


レイモンドさんは少し恥ずかしげに指で頬をかいている。


「まぁこれでセリスも更に覚悟が決まっただろう。レオ君、この事は内密に、そして改めてセリスを宜しく頼む」


「わかりました。」


「さて、ボロが出ない内に厳格な父として帰るとしよう。ではな、レオ君、君はもう家族同然だ。何か困った事があったら里を訪ねてきなさい。」


「えっ、あの、今日はもう遅いですし、泊まっていきませんか?」


「気遣い感謝する。だが今日は帰らせてもらうよ。これでも一族を束ねる身だ。あまり長く里を空ける訳にはいかんのだよ」


 そう言ってレイモンドは帰っていった。

 俺はその背中が見えなくなるまで見送って、家に入った。

 中ではセリスが泣きながら手紙を読んでいた。恐らくは里の家族からの物だろう。


「あれ? レオ、父様は? 」


「あぁ、帰ったよ。」


「そっか……」


「セリスのお父さんは族長なんだね」


「うん、だから長く里を離れたら駄目なの。父様、里に戻ったらおばば様にたっぷり絞られるよ……」


「いいお父さんだね」


 セリスは黙って、こっくりと頷いた。

 その後セリスは里の事や家族の事を色々と話してくれた。

 ひとしきり話したセリスの表情は、とても晴れやかになっていた。


「レオ、明日から勧誘頑張ろうね!」


 そう言って帰っていった。

 思い返すと色々と恥ずかしい事言ってたな、俺。何か娘さんを下さい的なノリになってたし、家族だとか言われちゃったし……

 ま、まぁ考えすぎか、やめやめ、丸く収まったんだし良しとしよう。




 次の日、セリスは用事があると言うので、一人でギルド会館に行くと、入り口の前で行ったり来たりとウロウロしている一人の男がいた。

 あれは確か、俺が剣士になる時に受付にいた獣人属だ。

 その獣人属は俺を見るなり凄い勢いで駆け寄ってきた。


「こないだ剣士の受付した青年、いいところに来た!頼みがあるんだ」


「……レオです。レオ・ファルシオン。とりあえず落ち着いて下さい」


「あ、あぁすまねぇ、俺は知っての通りギルド職員やってる、ガウラ・ジェラルドだ。よろしくな。」


 まるで早送りのようにまくし立て、強引に握手される。興奮しているせいで握手に力が入りすぎてて痛い。


「よ、よろしくですガウラさん。それで頼みってなんです?」


「おぉ!実はな、俺の可愛い妹にエゼル村まで使いを頼んだんだが、昨日からまだ帰って来ないんだ。街道沿いの雑魚に殺られる程弱くは無いから大丈夫とは思うんだが、嫌な予感がするんだよ……頼む!様子を見てきてくれねぇか」


「ガウラさん、強そうなのに自分で行かないんですか?」


「行けるなら行ってるさ、だがこの後城に呼ばれててな、どうしても行けねぇんだよ。他の奴にも頼んだんだが過保護すぎだって馬鹿にされる始末だ……レオ、後生だ!この通り」


 うーん、正直面倒臭い。エゼル村までは歩いて二時間くらいか、街道沿いに進めば敵も弱いし一人でも余裕だ。

 まぁ今後を考えると、ここはギルド関係者に恩を売っておくのもありか……


「わかりましたよ、ガウラさん。妹さんの名前は?」


「おぉ!行ってくれるか!恩に着るぜレオ!」


「ガ、ガウラさん、わかっ、わかったから、肩掴んでガクガクしないで……爪、爪食い込んで痛いし……」


「お、おぉ、悪りぃ。んで、妹の名前はアイラだ。早く帰ってくるように伝えてくれ。必ず礼はするから頼んだぜ」


 そう言って城の方へ走っていった。



 そういえば一人で街の外に行くのは初めてだな。何があるか分からないし、しっかりと準備して行こう。

 俺は回復や解毒等のポーションを買い足して、遅くなるかもしれないのでセリスの泊まっている宿屋にも伝言を頼んでおいた。


 距離はさほどでも無いにしろ、初めての一人旅で緊張していた。それでも何度か戦闘すると、レベルも11に上がり、すっかり緊張も解け周りの風景を楽しむ余裕すら出てきた。

 綺麗な小川に架かった橋を渡ると、遠くにエゼル村が見えてきた。ん?何やら騒がしい感じがしたので、急いで村に向かう。


 村に入るとすぐに異常な光景が飛び込んできた。赤茶色の毛を逆立てた狼が二匹、怪我をして片膝をついた獣人の女の子に牙を剥いて唸っている。

 これはマズイ、今にも飛びかかりそうだ。俺は狼に気付かれないようにサイドに回り込んだ。


『ガァァァァァァッ!』


『ガウッ!?』


 一匹の狼が獣人の女の子に飛び掛かった瞬間、体を滑り込ませギリギリのところで盾で防いだ。


「これを飲んで!」


 俺は腰の道具入れから素早くポーションを取りだし、獣人の女の子に渡した。


「すまない、助かった! だ、だがブラッドウルフ二匹はアタシじゃ勝てる気がしない。アンタ、レベルは?」


「11だけど、この狼はそんなに強いのか?」


「くっ、無理だ、二人がかりで一匹倒せるかどうか……」


 そんなに強いのか……不味いな、どうする、この状態じゃ逃げるのも無理だ。後退りしながら辺りを伺うと、家の陰で暴れる茶色の子犬を抱えた子どもが怯えた様子でこちらを見ている。


 もしかして……


「そこの子ども! 狼の子を放すんだ! 早く!」


 怒鳴り付けられた子どもは慌てて狼の子を手放した。狼の子は二匹のブラッドウルフに走り寄ってじゃれついている。

 やはりこの二匹の子どもか……臭いを追って村に取り返しにきたんだな。


 二匹のブラッドウルフは暫く威嚇をしていたが、子どもをくわえてゆっくりと踵を返し、村から出ていった。


「た、助かったぁ……」


 俺は力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。


 その様子を家の中から見ていたと思われる村人達からも歓声が上がった。


「いやー、助かったよ! アンタすげぇな! マジでもう駄目だと思ったよ」


 そう言って獣人の女の子は抱き付いてきた。反応に困る俺を見て、獣人の女の子はケラケラと笑っている。嬉しいが照れるよな……


「おっと、まだ名前も言ってなかったね、アタシはアイラ、アイラ・ジェラルドっていうんだ。よろしく!」


「俺はレオ・ファルシオン、ガウラさんから君の帰りが遅いから、様子を見てくるよう頼まれたんだ。」


「なるほど、兄貴に頼まれたのかー。そっかそっか、いつもなら過保護なバカ兄貴って文句の一つも言うところだけど、今回ばかりは助かったな……」


 アイラの話しによると、昨日村を訪ねた時に、村のどこからか変な獣の鳴き声がするので調べて欲しいと村長から頼まれて、今に至るとの事だ。


「冒険者殿、よろしいですかな」


 ふと声をかけられ振り向くと、一人の老人と、その後ろに隠れるようにさっきの女の子がいた。


「ワシはこのエゼル村の村長ですじゃ、この度は孫の軽率な行いにより大変迷惑をかけしてしまい、誠に申し訳ない。お礼といっては何ですが、宴の準備をさせます故、今日は是非とも泊まっていってくだされ。」


「聞いたかレオ、宴だって、う・た・げ、キャッホー!」


 アイラは両手を上げてクルクルと回って喜んでいる。


「ア、アイラ……ほら、ガウラさんが心配してるから、すぐに帰らないと駄目だよ」


「えーっ!いいじゃんかー、宴だぞ?ごちそーだぞ?」


「駄目だってば、ガウラさん、めっちゃ心配してたんだぞ。という訳で、村長さん、俺達はすぐに帰りますので、気持ちだけ受け取らせてください」


「ほっほ、そうですか、残念ですがそれならば仕方ありませんな。では道中気をつけて。」


 がっくりとうなだれるアイラを引きずって、村を出ようとしたところで村長の孫の女の子が駆け寄ってきた。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、あの……ありがとう。これ私が作ったの、あげる!」


 そういってアイラには小さな花を編み込んで作った花冠を、俺には同じ花で作った腕輪をくれた。

 目の前でモジモジする女の子の頭を自然と撫でていた。


 ……なんだよ、この気持ち……言い様の無い気持ちがグッと込み上げてきて、涙が出そうになった。


 お陰でアイラもすっかり元気になって、村人達に見送られて帰路についた。帰り道での戦闘は、アイラがレベル12の闘士だった事もあり、とても楽だった。



 空がオレンジ色に染まる頃、エストレアの街に着いた。

 ギルド会館に向かうと、凄まじい勢いでガウラさんが走ってくるのが見えた。


「アイラ! 大丈夫なのか? 何ともないか? 」


「ちょ、兄貴、心配しすぎだって、大体兄貴は過保護すぎるんだよ。まぁでも今回は、兄貴の過保護に助けられたよ。レオが来てくれなかったら、アタシは今頃ブラッドウルフの腹の中だったかもなー」


「な、何だそれ、エゼル村で何があった? あぁ、いや、待ってくれ、俺も仕事が終わったし、レオにお礼もしたいから飯でも食いに行こうぜ」


 ガウラは逃がさんとばかりに俺の肩に手を回し、狐の尻尾亭へと流れ込んだ。


「さぁ、レオ!今日は俺の奢りだ、好きなだけ飲んで食ってくれ!」


「じゃあ遠慮無く、いただきます!」


『かんぱーい!』


 三人で無事を祝して乾杯し、出てきた肉にかぶりついた。


 二杯目の酒を飲み干そうかという頃、ふいにガウラさんが話しを切り出した。


「さて、アイラ、レオ、食いながらでいいから、村で何があったのか詳しく聞かせてくれ。事によってはギルドに報告しなくちゃなんねぇからな。」


 俺とアイラは村での出来事を全てガウラさんに話した。


「ふむ、なるほどな、ブラッドウルフか……」


「何か気になる事でも?」


「あぁ、今日俺が城に呼ばれたのもそれに関係がある。実はな、今世界中で魔物が凶暴化している上、数こそ少ねぇが高ランクの魔物が街の近くまで現れるようになっちまった。そこで、その原因を城の騎士団とギルドが協力して調査する事になったって訳よ」


「なるほど、それでエゼル村にブラッドウルフが……」


「そうだな、本来ブラッドウルフはエゼル村からかなり離れた山奥に生息する魔物だ。この件もギルドに報告しねぇとな……」


「まぁ、そういうこったからよ、レオ、クエストに行く時は充分気を付けるんだぞ。お前さんの捜索依頼なんて出したくねぇからな」


「了解です。ポーションとか多目に持っていく事にしますよ」


 俺がそう答えると、ガウラさんは満足げにウンウンと頷いた。


「そんな訳で兄貴、アタシはレオのパーティーに入る事にしたからな」


「おぉ、そうかそうか……って、はぁっ? アイラ、お前何言ってんだ! レオ! お前、何で黙ってた!」


「えっ!いや、黙ってたも何も俺も初耳ですよ! アイラ、どういう事だよ」


「なんてゆーかさ、こう、ビビッと来たんだよ、レオが颯爽と現れて助けてくれた時にさ、アタシの中身、全部持ってかれたっつーか……言わせんなよ、恥ずいだろ! と、とにかくだ、兄貴に何を言われようとも、もう決めたんだ、レオについてくって」


 俺はまだ何も言ってないんだが、獣人兄妹はパーティーに入る、駄目だと揉めている。やれやれ……獣人属って種族はこうも豪快なのかねぇ。


 結局兄妹の話し合いでは決着が付かず、俺の判断にまかせると丸投げしてきた。二人の視線が痛すぎる。


「正直に言うと、ガウラさんには申し訳ないけど、アイラがパーティーに入ってくれると非常に助かるかな……」


 チラッとガウラさんを見ると、手を顔にあて、天を仰いでいる。


「さっすがレオ! アタシは信じてたよ! 」


 アイラはフサフサの尻尾をブンブン振りながら俺に抱き付いてきた。


「お、おい、お前ら離れろ! 」


 ガウラさんが慌ててアイラを引き離した。

 ご機嫌のアイラをよそに、ガウラさんはやれやれといった様子だ。


「ったく、仕方ねぇな、アイラの事だ、無理に止めても飛び出して行くだろうしな……」


「ははっ、さすが兄貴、アタシの事わかってるじゃん」


「おいレオ、俺達の両親は結構前に死んじまってよ、アイラは俺のたった一人の家族なんだ。連れて行く以上しっかり責任取れよ……」


 ガウラさんの目が笑ってない……何だこの展開、着いていけないぞ、獣人属恐るべし。


「ガウラさん、責任ってどういう……もしもし、ガウラさん?」


「あー、何かもう酔っちまった、俺はもう帰る! お前らもあんま遅くなるなよ」


 そう言って俺の話しを全く聞かず、ガウラさんは帰ってしまった。何このデジャヴ……

 俺も二人の飲むペースに付き合わされて、結構酔っていたので帰る事にした。

 帰りにアイラに家を教えて別れた……のかな? 記憶が曖昧になるほど飲まないぞ、と誓った夜だった。



 アイラ・ジェラルド

 レベル 12

 HP 810

 MP 110

 力 121

 敏捷 130

 器用 65

 魔力 55

 精神 41

 加護 風










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