表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

~ 第七話 新たな力 ~

 めでたくレベルアップを果たしたセリスを先頭に、足取り軽く街へと向かっていた二人。半分程の道程を歩いたところで何気なく話しかけた。


「良かったねセリス、これで治療師になれるね」


 ピタリとセリスの足が止まる。

 突然セリスがクルリと後ろにいた俺の方に振り返った。


「まだ時間はあるし、レオもレベル10まで上げて、一緒にクラスチェンジしようよ」


 目がキラキラしてる……本気モードだね……

 確かにまだお昼前だし、セリスもレベルアップしたから少しは戦闘効率も上がったはずだ。

 よし。


「じゃあ、セリス先輩、付き合ってもらおうかな」


「まっかせなさーい!」


 暫く軽口を叩いた後、マッドラビットやスライムを全力で狩った。その結果、夕方には俺もレベル10に到達した。

 しかし、セリスのレベルはその後上がる事無く10のままだった。理由は解らないが、どうやらレアエルフという種族はある程度まとめてレベルアップするのかもしれない。

 セリスの母親が言うように、確かに特殊で大変だ。


 それでも、タイミングはどうあれレベルアップする事には変わりない。今はそれだけで充分だ。


 昼飯も食べずに一日中狩りをして疲れているはずなのに、二人揃って元気一杯だ。

 クエスト達成の報告を素早く終わらせ、早速クラスチェンジに向かう。


 クラスチェンジを行うのは、ギルド会館の裏にあるギルド会館別館だ。職業毎に受付カウンターがあるので、俺は剣士、セリスは治療術師の受付に向かう。


 剣士の受付担当は元気の良い獣人属のお兄さんだ。

 受付表を渡すと、獣人属のお兄さんは軽く目を通した後、筆箱くらいの木箱をカウンターの上にドンッと置いた。


「それじゃあレオ、水晶が付いてる方の手を箱の上に乗せてくれ」


 俺は促されるままに、何やら怪しげな魔方陣が書いてある箱に手を置いた。

 すると、俺の手の水晶から立体映像のように魔方陣が飛び出してきて、目の前でクルクルと回っている。めちゃファンタジー。


 少し経って魔方陣の回転がピタリと止まった。

 と、同時に魔方陣からトランプぐらいの大きさのカードが出てきた。

 これがレベル10になり、クラスチェンジする事で発行されるギルドカードだ。


 ギルドカードには、名前や職業、ステータス、加護を受けている属性等が記されている。

 写真の付いていない免許証のような感じだ。


「これで今日からお前は剣士だ。ギルドカードは無くさないように、これに入れて首から下げておくといい。」


 獣人のお兄さんから紐の付いた革製のカード入れを貰った。ギルドからの支給品だそうだ。

 冒険の最中に運悪く屍を晒しても、これで身元が判るってことだ。


「おし、出来たようだな。んじゃチェックするからギルドカードを見せてくれ。」


 言われるまま俺は出来立てのギルドカードを渡した。


「んぁっ?!……お、おいレオ、お前さん何モンだ……レベル10のステータスじゃねえぞ。それに【天】なんて見た事のねぇ加護のオマケ付きだ」


 獣人のお兄さんが俺のステータスを見て驚いていた。他の同じレベルの冒険者に比べて、ステータスが倍以上の数値らしい。加えて、見た事の無い加護が付いているらしい。

 まぁ大体予想はつくが……エルフィエールなりに頑張ってくれたのだろう。


 俺は獣人のお兄さんにお礼を言ってカウンターを離れた。


 いかん、どうにもニヤニヤしてしまう。剣士って響きがどうにも強そうじゃないか。

 そんな事を考えていると、五分もしない内にセリスも終ったようだ。セリスもニヤニヤしている。

 うんうん、やっぱそうなるよなー。


「あ、レオ、お待たせー。レアエルフの冒険者が珍しいみたいで、色々聞かれちゃった。」


 ギルド職員曰く、エルフという種族は元々魔力と精神の値が高いのだが、セリスは純血エルフという事もあり比較にならない程の数値らしい。


 さて、無事に二人ともクラスチェンジを終えたところで、急ぎ向かった先は……

 そう、武具屋だ!なんとか閉店前に間に合った。

 駆け出し装備とはサッサとお別れしたいからね。


「おっちゃん、閉店ギリギリで悪いんだけど、装備売ってくれないかな」


 俺が声をかけると、ドワーフの店主は察してくれた。


「お、こないだの若いの、その様子だとクラスチェンジできたようだな、良かったじゃねえか!」


 そう言ってドワーフの店主は豪快に笑う。

 閉店前であまり迷うのも申し訳ないので、店主にお勧めを見繕ってもらう事にした。もちろん装備できる範囲での最強装備を。

 魔法のポシエット様々だ。


 さて、ここで問題になるのがセリスの装備だ。

 持ち合わせが厳しいという彼女の分まで買ってあげたいのだが…

 よし、試してみるか。


「おっちゃん、ちなみに今のレベルで装備出来る杖かロッドで一番いいのってどれ?」


「ふむ、そうじゃなぁ、1000クルネと値は張るが、お前さんの横にある癒しの杖じゃな。なかなかのもんじゃぞ。」


 店主の言う1000クルネにチャリンとポシェットから音がした。しかしかなり寂しい音だ。

 中を確認すると、大きめの金貨が二枚入っていた。

 なるほど、500クルネ金貨って訳だ。


 よし、パーティーメンバーの装備は必要経費って訳ね、ありがたし。

 ポシェットの事を知らないセリスは遠慮してたが、強引にフル装備を押し付けた。


 そして俺達の現在の装備がこれだ。


 レオ・ファルシオン

 鋼の長剣

 疾風のバンダナ

 チェインメイル

 ライトバックラー


 セリス・ミーティア

 癒しの杖

 ライトバックラー

 猫耳ポンチョ

 月桂樹の腕輪


 と、おおよそクラスチェンジしたばかりとは思えない装備だ。

 気分は買ったばかりの制服に身を包んだピカピカの一年生ってところか。

 今までの装備を買った時の5分の1で買い取ってもらい、店を後にした。


 すっかり陽も暮れて暗くなってきた。昼飯も食べていなかったのでかなり腹ペコだ。

 向かう先はもちろん、クラスチェンジ祝いで狐の尻尾亭だ。


 店に入ると、今日も盛況で混んでいる。

 席に案内されると、なんと、セリスと組むなと言った嫌味な男のパーティーと隣り合わせになってしまった。


 嫌味男もすぐにこちらに気付いて、唖然とした顔でこちらを見ている。フフフフ、もっと驚け。


「よ、よぉ、レベルアップ出来たんだなぁ、装備もバッチリで、決まってんなぁ。」


 嫌味男がヘラヘラと話しかけてきた。どの面下げて……

 面倒なのでスルーを決め込んだが、尚も嫌味男が話しかけてくる。


「なあ、どうだい、良かったら俺のパーティーに入らないか? そっちも二人だと厳しいだろ? 」


 こいつら……脳ミソ膿んでんだろ……

 さすがに限界だ。


「お前らセリスに何したか忘れたのか?謝罪の一言も無しに勧誘とか、ふざけろよ!」


「ま、まぁまぁ、落ち着けよ、悪かったって、悪気は無かったんだよ、ちょっとしたイタズラだよ、イタズラ。もうあんな事は言わねえからよ、仲良くやろうぜ、な?」


 なんだろう、謝られたのにムカつき度がアップしたぞ。

 まぁセリスの表情を見れば考えるまでも無い。答えはNOだ。

 それにこいつらの装備を見た限りだと、治療師がいないじゃないか。

 セリスが治療師になったのを見て勧誘してきたに違いない。

 セリスの為にもサッサと断ってしまおう。


「残念だが俺達は他に組むメンバーが決まってるんだよ。他を当たれ」


 もちろん嘘だが、俺がそう言うと、チッと舌打ちして背を向けた。


 さすがに俺もセリスも気分が悪くなったので、早々に切り上げて家路についた。


 帰り道にセリスとも話したけど、先に進む為にはいつまでも二人でって訳にはいかない。明日から臨時でもいいからパーティーに入ってくれる人を探す事にした。


 その晩、ベッドに横になり、手に入れたばかりのギルドカードを月明かりに照らして眺め続けた……



 レオ・ファルシオン

 レベル10

 HP 820

 MP 205

 力 135

 敏捷 116

 器用 107

 魔力 80

 精神 82

 加護 炎 風 闇 天




 セリス・ミーティア

 レベル10

 HP 302

 MP 162

 力 34

 敏捷 29

 器用 40

 魔力 83

 精神 102

 加護 水 風 聖

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ