【短歌20首】「給料泥棒」の定義を三十一文字で述べよ。
無能でも無策でもない ただ単に自分の立場を考えてるだけ
王様はロバの耳だと言いたいが穴を掘るだけの気力もないのだ
てんぷらの厚い衣にはばまれて海老は全く不可視であった
道端に吐き捨てられたガムの身に何を望むか踏まれる他に
深々とお辞儀する俺 背筋を鍛えていればたやすいことだ
オフィスビルの最上階の角部屋にふんぞりかえるボスザルがいる
またしても二人きりになる会議室これは何かの陰謀なのか
悪いのは君の案じゃなくってさ、君のむかつく態度じゃないかな
真剣な話をしようとするたびに口をふさがれてしまうのはなぜ
すごいねと愛想笑いで言ってみる 社交辞令だ受け取ってくれ
毎回の堂々めぐりに疲れ果て職務規程を投げつける 読め
見たことのない大河だと思うだろう? 流れつくのは排水溝さ
びしょびしょの廊下で摩擦係数は助けにならず尻餅をつく
叫んでももう届かないその時は石を拾って投げつけてみる
あからさまな矛盾も矛盾と認めない それができればどれだけ楽か
とりあえず害はないからとりあえずそういうことにしときましょうか
走るのはそんなに速くないけれど逃げ足だけは自信があります
バカにするつもりはないと言いながらバカにした目で見ないでほしい
できますと言っただけです やりますと言ったつもりはないんですけど
数千の言葉よりずっと雄弁な絶対零度の表情だった




