とあるヒーローと悪の戦い
「ふははは!ヒーロー共よ!お前らは今日ここで果てるのだ!」悪の組織のボスが高らかに声をあげた。
「くっ・・・。」ヒーローレッドは悔しそうに顔を歪める。
敵側のボス以外は全滅したのだが、ヒーロー側もブルーとイエローは横たわったまま動かない。敵との戦いで力を使い果たしたのだろう。残るは遅れて登場したレッドのみとなっていた。
「我が憎きヒーローよ、こいつが見えるか?これは爆弾のスイッチだ。お前が一歩でも私に近づいたら、びっくりしてスイッチを押してしまうだろう。そしたら、事前にとある施設に仕掛けた爆弾が爆発してしまう。私もそんなことしたくないからな。潔くここで生贄になってくれ!レッドよ!」ボスは爆弾のスイッチをヒーローに見せびらかしながらそう言った。
悔しそうに立ち尽くしていたヒーローだが、爆弾スイッチを見てあることに気づく。あれ、あのスイッチって、よく見たら人参じゃね?どう見ても人参だよな・・・。
こんなアホいるのだろうか?だがこれなら勝機はあるとレッドは考えた。しかし、本当にあれは人参なのかという疑問が浮かび上がってくる。普通は誤って人参を持ってきてしまった!というようなミスは誰だってしない。もし間違えたとしてもすぐ気付くだろう。ということは、あれは人参型の爆弾スイッチということになる。
レッドは人参型の爆弾スイッチと結論付けた。しかし、それでは現状を覆せず、何もできずに負けてしまう。そこでレッドは、もしかしたら本当に間違えて人参を持ってきてしまい、ハッタリをかましているだけかもと考えた。その可能性はほとんどありえないが、絶対にハッタリだと自分に言い聞かせた。
これは賭けだ。あれは人参型爆弾スイッチではない。間違えて本物の人参を持ってきてしまっただけだ!レッドは改めて自分に言い聞かせ、勢いよく走り出し、ボスとの距離を詰め始めた。
「レッドよ。人の命を犠牲にするのだな。ヒーローらしからぬ行為だ!後悔するがいい!」ボスは爆弾スイッチに目をやったとき、
「あれ・・・?やべ!間違えて本物の人参持ってきちまった!」と焦りながら叫んだ。
・・・あいつ本物のアホだな。だがこれはチャンス!レッドは走りながら剣を抜き、大きくジャンプした。
その瞬間、ボスは不敵な笑みを浮かべる。
「かかったなバカめ!これは爆弾スイッチと見せかけて本物の人参!と見せかけて、ビーム発射装置なのだ!」ボスは人参の先端をレッドに向けた。
ビーム発射装置だと!?マズイ!空中ではビームを避けられない!レッドは勢いよくジャンプしたことを後悔した。
「さあ!死ね!」ボスはビームのスイッチを押した。しかし、何も起きない。
「あ、これ本物の人参だ。」
うん・・・。あいつがアホで助かった。レッドは剣を大きく振りかぶった。
ボスはもう終わったと諦めかけた。しかし、レッドの姿を見てあることに気づく。
「おいレッド!お前が持っているそれ、ゴボウじゃないか!お前も間違えてんじゃねえかバーカ!」
ボスは高らかに笑ったが、レッドは躊躇なくゴボウをボスの脳天に振りぬいた。
「ふん。人参だろうがゴボウだろうが間違えて持ってきてもそれを使いこなすほうが勝つんだよ。」レッドはドヤ顔してそう言った。
いや、ドヤ顔で言われてもカッコ悪くね?ただの凡ミスじゃん。結果オーライじゃん・・・。ボスは薄れゆく意識のなか、そう思いながら気を失った。