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想いの先にあるものは  ‐語られざる物語‐  作者: きりゅう
〇三章,激動の末に・上
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十三回

〇三章,激動の末に・上/十三回


 あれからどれくらいの時が経っただろうか。

 消滅という死が訪れない限り永久に生き続けるアーサー達にとって、時間の観念は希薄である。

 それでも世界の仕組みは、大きく異なっていた。

 孵化はすべて根絶しており、膨大な背丈であった森林は、以前の三分の一にも満たない。

 だが代わりであるかのように、様々な動植物は増していた。

 もっとも大きく変わったのは、アーサー達とは異なる、妖精と呼ばれる存在が生まれ、生活しているということである。


 妖精達は最初から肉体をもって生まれてくるため、アーサー達のように体の形状を自在に変化させることができない。

 だがそれぞれ特化した能力や技術を持っていた。

 ある者は翼を持って空を駆け回り、ある者は音で気配などを察知し、ある者は様々な鉱石を使って武器や装飾品を作る技術などが一例である。

 彼等に共通していることは、男女という性を生まれながらに持ち、子を産み、育て、そして死んでいく。

 肉体は朽ち果てても、魂は新たな命として生まれ変わり、未来へと還っていく。

 そうやって親から子へ、子から孫へと、次世代に命を繋いでいる。


 他に特徴といえば、どの種族も自然と共存し、生きているということ。

 そのため生活するための必要以上の改築や破壊はしていない。

 だが自然とは調和しても、それぞれ特有の文化等により別種族とは折り合いがつかないこともある。

 そのため多かれ少なかれ、諍いを起こしている。


 もちろんアーサー達の側にも変化はあった。

 レンドの側につく者、アーサーの側につく者、どちらにも属さずに中立を守る者。

 三つの派閥に分かれていたのである。

 孵化に取り込まれることを望んだ者もいたが、すべてが戻れたわけではない。

 中にはレンド達に殺された者、決心がつかず、結果的に生き続けていた者がいた。

 生き残った彼等は孵化がなくなった今、行き場を失ったためか身を潜め、または中立を保っていた。


 妖精達は、派閥があると知りながら、アーサー達すべてを神と呼称した。

 とくにレンド側は混沌と破壊と不和を司る神々、アーサー側は真理と秩序と調和を司る神々とされていた。

 そして自分の理念に基づいて、いずれかの神々を崇拝する。

 そのため現在行われている大きな抗争は、崇拝故のものである。


 しかも土地によって、それぞれの勢力が幅を利かせている。

 大まかに分けると北は中立派、西はアーサー派、東はレンド派となっている。

 そのため境目では、とくに混戦が起きていた。


 そんな中、アーサー達は自分達を崇める種族の多い土地に身をひそめていた。

 他の場所では、アーサーの命を狙う者が多かったため、必然的にそうなったのである。

 だがいざ戦闘ともなれば、時も場所も関係ないため、油断はできない。

 そのため本拠には一時しのぎにせよ、結界を張ることで身を守っていた。


 だが同胞達の手にかかれば、どれだけ保てるかかわからない。

 そのため妖精の一人から血を借りて、結界に織り込んだのである。

 理由は、力の差によって差異はあるもののアーサー達同胞の力の源は、ほぼ同質。

 同胞ではなく、まったく異なる種族の血を織り交ぜて結界を作り出すことによって、容易に侵入できない効果をもたらす。

 だが同族の血では成り立たず、使われた本人か、血を直接受け継ぐ者でなくてはならなかった。

 そして血族は、男女問わず正統後継者の神官として本拠を守っていた。


「だいぶ世の中が様変わりしたもんだ」


「一体いつまで続くんだろうね」


 ガリックとミレイアの口から、自然と疲れのこもった息が漏れる。

 時代は大きく移り変わったものの、レンドとアーサーの間に進展はない。

 一度決別してから再度顔を合わせて話をしていないということが、最大の要因となっているのかもしれない。

 同胞、妖精に関わらず、現在様々な者達を巻き込んでいるため、事態はさらに深刻さを増しているといってもいい。

 回避できないほどの規模に膨れ上がっているそれに、いつ終わるのか、はたして終わりなどあるのかと思わせられるほどだった。


 そのことはアーサー自身が、一番よくわかっていた。

 けれど踏ん切りがつかず、二人の言葉に、なにも言えずにいた。

 いい加減に決別し、行動に移さねば、不必要に同胞や妖精達の命が、これから先も数多く奪われていくことになる。

 できることならば、すぐにでも会い、互いの意思を確認したかった。その上でケジメをつけたかった。

 けれど互いが派閥の代表であるため、一人で行動する機会はほとんどない。

 二人で会おうとすれば、いがみ合う双方の同胞達が黙ってはいないだろう。最悪過激派によって命を落としかねない。

 それを予期してか、ミレイアとガリックは一概にアーサーを批判できないのだろう。


「どうやったらレンドと会えて話をして、なおかつ向こう側の同胞と和解できるんだろうね。もう争うのは嫌だよ」


「それとて我も同じだ。やはりここは我が一人で、直接レンドに面会しよう」


「だから馬鹿正直に行ったところで、無理だって言ったろ。レンドの力を半分受け取っているお前の命を狙っている輩は大勢いる。それにレンドだって、お前と同じ気持ちとは限らない。むしろ悪化の一途を辿っているかもしれないんだぞ」


「わかっている。だがいつまでも、このままでは何も変わらぬ」


「いいや、わかってねえな。わかってたら、そうほいほいと迂闊な行動をしようとは考えねえはずだ」


 アーサーもガリックも口では反発しているが、互いの意見を理解はしている。

 それでも引けないのは、お互いに譲れないものがあるためである。

 二人の意固地さに呆れたのか、ミレイアは息を吐いた。その点においては、ミレイアも同様なのだが。


「とりあえずレンドと会って、今の考えを確かめた方がいいっていうのは賛成だよ。昔のままなのか、暴走しがちの同胞の舵がきかなくなっているのかね」


「だからって、こいつを一人で行かせる気か? これまで話し合いのための使者を何度か送ったが、無駄だったんだぜ」


「わかってる。だから僕が行くんだよ」


 キッパリと告げるミレイアに、二人は目を丸くした。ややあって、言葉の意味を理解する。


「なに言ってんだ!」


「そうだ。なぜそなたが行く必要がある!」


 二人の剣幕に動じず、ミレイアは手で制した。眼差しは、真剣そのものである。


「わかってる。僕にはアーサー達のような力はない。けど側近中の側近だということは、相手にも知られてる。これまでの使者のような真似はできないはずだよ」


「だからってな、あいつが決別したときのままかもしれねえんだぞ。それだったら俺が行く」


 俺なら少なからずなにがあっても、逃げて帰る自信はあると、ガリックは息巻いた。

 けれどミレイアは首を左右に振る。


「ガリックは今のレンドと対等に渡り合える、貴重な戦力なんだから駄目だよ。ガリックになにかあったら、アーサーや同胞を守る人がいなくなる」


「ならば我が行くと……」


「それが駄目だって言ってんだろ」


「そうだよ。それができるなら、最初からそうしてるって」


 二人の叱咤に、アーサーは小さく唸る。けれど意思は固く、譲れない。

 それが仲間や相手を思いやり、諍いを終結させたいという思いからきている。これ以上、被害を拡大させたくはないのである。

 強く握る拳を、ミレイアは優しく手に取った。


「大丈夫。なにがあっても、僕はちゃんと帰ってくるよ。ずっと傍にいるって言ったじゃないか」


「だがそなたを、危険に晒すことには変わりない」


「ならちゃんと無事を願ってて。ガリック、あとのことはよろしく頼むよ」


「わかった」


 ガリックが力強く頷くと、ミレイアは満足げに微笑する。そして羽を形成し、空高く舞い上がる。


「それじゃあ、行ってきます」


 遠のいていくミレイアの姿を見ながら、やはり一人で行かせることが忍びなく、追いかけようとする。

 だがガリックに肩を強く掴まれ、共に行くことができなかった。

 ミレイアはそのやり取りを一瞥しながら、颯爽さっそうと東へ向かう。

 境界がしっかり立て分けられているわけではないが、行けば行くほど彼等の領地に近づくため、さして悩む必要はなかった。

 だいぶ進んだ頃、数人の同胞の姿があった。


「あんた達、レンド側に組みする同胞?」


 ミレイアの問いに、同胞達は言葉の意図を瞬時に読み取れなかったようだ。訝しそうにミレイアを見やる。

 ややあって同胞の一人が察したようだ。目尻が、やや吊上がる。


「お前は、アーサーの側近か。俺達の領地に、なんの用だ」


「もちろんあんた達のリーダーに会いに来た。とても大事な話をしにね」


 堂々と言い放つミレイアに、彼等は目を瞠る。だがすぐに怒りを発した。


「ふざけるな。会わせると思うのか」


「会う、会わないを決めるのは、あんた達じゃない。レンドだよ。それに僕は戦いに来たんじゃなくて、話をしに来たと言ったはず。敵味方はあるけど、内容を確認せずに無抵抗な同胞に刃を向けるの? レンドはそういうことも許してるの?」


 糾弾に近い形で言い募るミレイアに、同胞達は口ごもる。だが苛立ちはミレイアへと向けている。

 この場にいる同胞の力は、ミレイアと同等か、少しばかり上である。

 数の上でも勝っているため、最悪命を落としかねない。

 けれどレンド側の領地に単身乗り込んでいる時点で、命がけである。


 その気迫のおかげだろうか。もしくは身勝手な振る舞いをして、レンドの反感を買っては事だと感じているのだろうか。

 幸いにも同胞達を威圧させることに成功していた。


「仕方ない。引き合わせてやる」


 数瞬の睨みあいの後、同胞は恨めしげに吐き捨てながら身を翻した。

 ミレイアは第一関門突破したことへの安堵と、これから先のさらなる緊張によって、表情を硬くする。

 レンドと再会するのは、ミレイアにとっても久方振りだったのである。

 やがてほどなくして、神殿のような場所へと辿り着いた。

 そこには結界も施されており、妖精や同胞の姿がチラホラ目に映る。

 結界や神殿の造りはミレイア達のものと若干異なるが、基本は同じのようだ。

 神殿へと降り立つと、中へと通された。最奥には、レンドが涼やかな面立ちで座っていた。

 間近に行くにつれ、ミレイアの姿も視界に捉えているはずなのだが、表情を変えることはない。


「久し振りだな」


 声を発したのは、レンドが先だった。

 意図したわけではないけれど、ミレイアの表情は先程よりもやや強張る。


「そうだね、どれくらい振りだろう。できるなら、こんな形で再会を果たしたくはなかったよ」


「そうか? 私はお前達と対峙した時から、こうなるだろうことはわかっていた。ところでお前がこうしてここへ来たのは、ただ世間話をしに、というわけではないのだろう」


 レンドは老獪な笑みを浮かべて、ミレイアを見つめる。

 ミレイアは腰を据えるつもりで息を整えると、同じく座った。目線が並び、必然的にかち合う。


「それはそうだよね。単刀直入に言うよ。アーサーと話し合いの場を設けてほしい。あいつはこういった戦ではなく、話し合いでの解決を望んでる」


「いいだろう」


 渋ると思っていたレンドの即答に、ミレイアは一瞬自分の耳を疑った。思考がすぐに追いつかない。


「……本当?」


「本当だとも。私もそろそろ、力づくという方法に嫌気がさしていたんだ」


「よかった。レンドも話し合いでの方法を考えてくれていたなんて」


「もちろんだとも。早速で悪いが、今宵はどうだろう」


「ありがとう。場所はどこにする。早速アーサーに伝えたいんだ」


 ミレイアは前のめりに嬉々として受け答えるも、レンドは笑みを浮かべるだけだった。

 瞳には、黒く淀むなにかがあった。同じ喜ぶでも、酷く違和感がある。


「会う代わりに、一つ条件がある。ミレイアよ、私のところへ来るつもりはないか。いや、むしろ来るべきだろう」


「……なぜ?」


「誕生する際に、命じられたはずだ。アーサーを惑わし、孵化に戻すことを。けれどそれは叶わなかった。だがお前がアーサーの側についているということは、奴を殺す手駒にだってなれるはずだ」


「なにを、言ってるの」


 ミレイアは瞠目した。けれど同時に、胸の奥がざわめいた。

 言われて初めて、頭の片隅に心当たりがあることに気がついた。生まれる直前、声が聞こえていた。

 今の世界に移行するために、アーサーが邪魔であるということを。そのために遣わされたのだということを。

 だがなぜそのことをレンドが知っているのか、わからない。

 しかも殺すための手駒とは、どういうことなのだろう。話し合いの場を設けてくれるのではなかったのか。

 ただただレンドを、訝しげに見つめる。


「知っているさ。孵化と一体になったレイナが教えてくれたのだ。使命を持って生まれてきたという点においては、ある意味私と同じ。今なら、まだ間に合う。あいつの心を動かせるのは、おそらくはお前だけなのだから」


 だからこそ協力しろと、レンドは語る。

 しかしミレイアは頷けない。けれど断れば、アーサーとレンドを引き会わせることができない。

 とはいえこのような会わせ方は、アーサーを窮地に立たせることに他ならないのではないかと思えてならない。


「会って、話し合いをしてくれるんじゃなかったの。この諍いを終わらせてくれるんじゃなかったの」


「もちろんだとも。すべてを終わらせる。話し合いという場を設けて邪魔立てする者を消してしまえば、もう誰も傷つく必要などない」


 レンドは平然と言ってのける。

 ミレイアはどのようなことがあっても、協力できるはずもない。頑として拒絶をしたい。

 けれどそれを口にすることができなかった。

 レンドと会い、話をしたいというアーサーの望みさえも絶やしてしまうことになる。

 真実を告げたとしても、たぶんそれは変わらない。

 そしてレンドの言葉に耳を傾ければ、アーサーの傍にいることができない。

 同時にそれは、アーサーを見捨ててしまうことになりかねない。逆に傍にいることを選べば、アーサーの想いを叶えることができない。どちらを選んでも、どこまでも悔いが残る。


「言ったはずだ。アーサーに操を立てる必要などないと。しょせんその想いは、偽りでしかない」


 レンドが、うっすらと笑みを浮かべながら告げる。そんなレンドへと、ミレイアの平手打ちが飛んでいた。

 周囲の同胞達は驚き、ミレイアに制裁を加えようとするが、レンドが制した。

 敵意という名の熱のこもった眼差しを叩きつけるも、レンドは変わらぬ笑みを向けてくる。

 ミレイアは薄ら寒さを感じながらも、けして視線を逸らすことはしなかった。


「…誰がなんと言おうと、僕のこの想いは偽りだなんて言わせない。絶対に言わせない!」


 初めてアーサーと出会ったとき、綺麗な銀の髪に惹かれた。

 話をしてみると、途方もなく大真面目で、馬鹿正直で、それ故にどこか抜けている。

 だから放っては置けなかった。話をすればするほど、惹かれていくのを感じていた。


 けれどミレイアの胸の中で、同時に否定の言葉が押し寄せる。

 どれもこれもすべて、アーサーの気を引くための行為に過ぎない。好意を持つことで、相手に気を持たせる仕草に過ぎなかったのだと。

 違うのだと、自分は本当にアーサーが好きなのだと打ち消そうとする。

 けれど消えて無くなってはくれない。

 胸のずっと奥で、レンドの言葉が本当なのだと本能が告げている。

 それがミレイアの心を苦しめる。目元が滲んで、視界が歪む。


「まったく憐れなものだな。これが最後の質問だ。私と協力関係を築くつもりはないか」


 レンドの言葉に、ミレイアは再び手を出しそうになった。

 けれど緊迫した面持ちを携えながら躊躇った。拳を強く握りしめ、振り上げかけた手を下ろす。


「……わかった。けど、あんた達の傍にいるつもりはない。協力はするけど、このことはあいつに話すよ」


 即座に立ち上がり、来た道を反転するミレイアだったが、同胞達に行く手を阻まれた。

 レンドも同様に立ち上がり、ミレイアに歩み寄っていく。顔は穏やかだが、変わり映えしないそれに寒気を覚えた。離れようとするも、他の同胞達に囲まれて動けない。


「僕をどうするつもり?」


「お前がここにいてくれないのから、協力の意味はない。破棄と同じことだ。拒否さえせずに、ここに止まってさえくれれば、痛い目を見ずにすんだというのに」


 ていの良い人質。結局そういうことなのだろう。

 ここまでくるとさすがに考えずとも、ミレイアにもわかった。先程の発言は、せめてもの温情だったのだろう。

 それでも敢えて問いかけたのは、昔のレンドの面影を追い求めてだった。

 けれどそこには、こうなる以前の見知っていたレンドの姿はない。

 想いは変わらないはずだというのに、レンドの瞳に映るなにかは異なっているように見受けられた。


 当時のレンドは、とても包容力があって、どんな相手だろうと力を行使することはほとんどなかった。

 責任感が強く、けれどいつだって楽しげに、優しげに、皆の行動を見つめていたのである。

 今はその頃の面影はなく、前に立ちはだかる者はすべて敵としてしか見ていないように感じられた。


 切なげに顔を歪ませるミレイアの腕を、レンドは掴もうとする。

 けれどミレイアは、させまいと身を一歩引いた。そして右手を、天井に向けて突き出した。

 すると突風が吹き荒れる。

 建物であるなら吹き抜け部分もあるため、不規則に風が行き交う。

 目晦ましや混乱を招くには打ってつけだと思ってのことである。

 建物内にあった様々な物が風と共に暴れ、同胞達はそれを防ぐために身構る。

 その間に逃げ出そうとするも、ミレイアは腕を強く掴まれた。

 視線を向けると、吹き荒れる風と物など気にせずにいるレンドの姿があった。

 直後ミレイアの体に、電撃のような痛みが走る。力が抜けていく。


「お前程度の力で、私から逃げられると思っていたとはな。だが、まあいい。お前はきちんと利用させてもらう」


 レンドは、唇の両端を薄く上げる。

 レンドの顔を直視しながら、ミレイアの意識は遠のいていく。

 ひたすらに心の内で謝罪する。己の浅はかさ、不甲斐なさと、アーサーの身を案じながら。




 ミレイアがレンドの下へと赴いてから、半日が過ぎていた。

 アーサーは落ち着かずに、何度も空を仰ぐ。

 アーサー達の飛行速度は半端なく、レンドの領地へと行って帰ってくるだけならば、半日もかからない。

 だが今は夕刻である。昼時にはいくらか早い頃に向かったにしては、帰りが遅すぎた。

 話が立て込んでいるだけなのかもしれないと思うのだが、気ばかりが焦ってしまう。


「少しは落ち着け。ここで焦れたって、なにが変わるわけじゃないだろ」


「だが、しかし……」


 言い淀み、アーサーは唇を噛みしめる。

 ガリックは呆れたのか、小さく息を吐いた。

 そんなとき上空から羽ばたく音がし、二人は即座に目を向ける。

 だがミレイアではなく、男性型の同胞だった。

 短い黒髪を風に揺らしながら、冷淡な瞳でアーサー達を見下している。

 少なくともアーサー達の側には、このような同胞はいない。どこから来たのかすぐに察し、身構える。


「お前は誰だ。アーサーの命を狙いに来た奴か」


「レンド様からの言伝だ。今宵、月が上空に差し掛かった頃、決別の場所で待っている。必ず一人で来い、と」


「ミレイアは無事に、そちらに話を通してくれたのだな。だがなぜミレイアは帰らず、そなたがここへ来たのだ」


 ガリックの問いを無視して伝言を渡す男に、アーサーは言い募る。

 男は態度を変えることなく、冷ややかな眼差しで見下している。


「貴様の側近は無事だ。しかし一対一で会うということを反故にされては困るため、拘束させてもらった」


「なぜそのようなことをする。そのようなことをせずとも、我は約束を破るつもりなどない」


「レンド様の身の安全のためだ。心配せずとも、その場で引き合わせるそうだ」

「そう言って、お前達は同胞を引き連れてくるんだろ。だったらミレイアを返しても、問題はないはずだ」


 ガリックは食ってかかる。単純な力関係だけでいうならば、ガリック達の方が上であるため、ある意味脅しも含まれていた。

 けれども男は、まったく動じない。それどころか眉一つ動かさない。変わらず冷ややかな眼差しで、上空から見下ろすばかりである。

 よけいなのことを告げぬために、この同胞を選び、伝達として送り届けたのだろう。

 取りつく島もないため、逆にアーサー達の方が戸惑い、切迫する。

 ミレイアになにかがあった、もしくは目的があって拘束している事は容易に察することができたのである。


「一定以上の間を置いて待機はするが、話を終えるまでは介入をするつもりはない」


「約束はできるのかよ」


「できる」


 即座に断言する男に、ガリックは笑む。約束は契約でもあるため、もっとも信頼できる。


「ならその場所に、俺も混ぜてもらおうか」


「いいだろう。だが許されているのは一人のみ。それ以上となると、レンド様は話し合いに同席するつもりはないと仰られた」


「なんだと!」


 異論を唱えようとするガリックを、アーサーは手で制した。一歩、男へと歩み寄る。


「わかった。そなたの言葉に従おう」


「お前も、なに言ってんだ! 相手は大勢仲間を引き連れてくるかもしれないってのに、こっちは一人だけだなん分が悪過ぎる!」


「こんな機会は、今後あるかどうかわからぬ。ならばミレイアが開いてくれた、この機会を無駄にしたくはないのだ」


「けど……いや、わかったよ。だがさっきも言ったように、俺も行く。それだけは譲れない」


 ガリックは怒りのこもった鋭い眼光を、男へと向ける。男は相も変わらずの態度で、小さく頷いた。


「ならば私は、このことをレンド様にお伝えしよう。それでは失礼する」


 男は一礼すると、身を反転させて遠のいていく。

 男の背を見送った後、ガリックはアーサーへと視線を滑らせる。

 やや不服の孕んだ視線を突き立てる。言葉では同意したが、納得はできない部分があったのだろう。

 それを見るや、アーサーは微苦笑する。


「それで、今から行くのか? 決別の場所は、今ではほとんど名残はないけどな。なぜあんな場所を選んだのかね」


「ある意味忘れられない場所だからなのだろう。理由はなんであれ、行かねばなるまい」


「ミレイアの安否も気になるから、だろ」


 若干悪戯っぽく笑うガリックに、アーサーは気まずそうに視線を逸らした。

 その思いは、少なからずあるためである。

 ややあって二人はほのかに笑い合うと、目的の場所へと向かうべく飛翔した。

 道中、見知らぬ同胞の姿がいくつかあった。レンド側の同胞なのだろう。


「ここからはアーサーだけだ」


「油断するなよ」


 通行止めを受けたガリックは、言葉を投げかける。

 頷くことで、アーサーは応じた。一抹の不安を感じながらも、目的の場所へと近づいていく。

 空を見上げると、月は上空にやや満たない頃合いだった。

 だがほどなくして、二つの影がアーサーの目に飛び込んできた。

 一人は久方振りにみる、元相棒。もう一人は常に傍らにいてくれた同胞。

 だがミレイアの様子がおかしかった。哀しげに口を動かすも、声はアーサーへと届かない。

 距離があるというわけではなく、結界によって閉じ込められているためだ。


「……ミレイアに、なにをした」


「こうして久々に対面したというのに、あんまりな挨拶だな。なにもしてはいないさ。ゆっくりと話がしたくて、一時的に閉じ込めさせてもらった。話が終われば開放するさ」


「そのような方法をとらずとも、我はそなたと対面した」


「お前の性格なら、そうするだろうな。だがそれでは納得しない同胞もいる。無暗に刺激したくはない。お前の所も、そうではないのか」


 だからこそ否応なく、このような手段を講じたのだと告げる。だから察してくれ、と。

 そうでもしなければ、ただ会うというだけでは反対が多いのは確かである。

 アーサーにとってしてみれば、レンドは旧知の仲なのだが、互いはいがみ合う勢力のリーダーなのである。行動はどうしても制限される。


「そうだとしても、このようなやり方は解せぬ」


「言ってくれるな。私も心苦しいんだ。だがそんなことを言うために、話し合いを求めたわけではないだろう」


 本題へと促され、アーサーは小さく唸る。

 本来の目的は、双方のこれからを話し合うために、レンドを招いたのである。言い募りたい気持ちを抑え、改めてレンドを見やる。

 直立する姿や黒髪は月に照らされ、清冽ささえ窺えた。

 哀しげに笑む面立ちは、出会った当初を彷彿とさせる。

 今なら話を聞き入れてくれるのではないかとさえ思う。


「ずっとそなたに話したいことがあったのだ。我々と異なる種族は生まれたが、孵化はすべて消滅した。我々の同胞が生まれることはないが、減ることはない。これ以上争えば、無暗に互いの命を落とすだけだ。今こそ我々全員で、今後のことを考えたい。そのためには、そなたの協力がほしいのだ」


 アーサーはレンドへと懇願する。ただ真直ぐに見やる。

 レンドは目を閉じ、ややあって開いた。それがアーサーを捉える。


「私もそろそろ紛争は、無意味な頃合いだと考えていた」


「では、応じてくれるのだな」


 アーサーは嬉しさのあまり、レンドへと近づいていく。手を取り合えるのだと思ったためだ。

 けれどレンドの眼差しに、冷酷さと刃のような鋭さが宿る。瞬時にアーサーの背筋が凍る。


「無意味だという意見においては、だ。お前の思考は、あの頃となにも変わっていない。ミレイアに敬意を評して話を聞くだけでもと思ったが、やはり無駄でしかないようだ」


「無駄…。なぜ無駄だと言えるのだ」


「結局私とお前との考えは、けして交わることはない。そういうことだ」


「そんなことはない。やってみなくてはわからぬ」


「それが平行線になる理由だと、なぜわからない。その傲慢さが、今私達がこうして争っている原点になったということを知れ」


 アーサーは口を噤んだ。罪悪や後悔があるわけではない。

 けれど決別した日、アーサーは同胞達に説明を促した。

 そうすることで今後の身の振り方を、自分の意思で決断してほしかったためだ。

 遅かれ早かれ諍いが生まれただろうけれど、そうすることで各々の意識が高まり、派閥が生まれたことは事実なのである。


「それにだ。たとえ話し合うつもりだったとしても、お前はもう別のリーダーだ。背負って立つべきお前が、自身の感情を優先してこのようなことをしている。そんな相手と向き合えると思うのか」


 辛辣なレンドの言葉に、アーサーは先程とは別の意味で閉口する。

 自分達の理念などを守るために、レンド達の側の同胞を追い返しもした。

 短いようで長い時の中で確執が生まれ、溝となって立ちはだかっている。

 アーサーの考えをむ同胞もいるが、完全に敵対している同胞もいるのである。

 そんな彼等に、なにも感じないわけではない。むしろ申し訳ないと思っている。

 けれど自分のケジメをつけるためには、引くことはできなかった。

 レンドは冷笑を浮かべながら、短い嘆息をする。現在は別離の道を歩んではいるが、付き合いは長い。

 瞳に映し出された感情の色を、察したのかもしれない。


「そこまで愚かだったとは、失望したよ。そんなだから目の前で、大切な者を失うことになる」


 アーサーはとっさにミレイアへと視線の矛先を変えた。

 結界内にいるミレイアは、荒い息を吐き、前のめりに座り込んでいる。

 あきらかに力を消耗している。

 考えられることは限界を超えるような力を使ったか、修復不可能なまでの傷を負ったかである。

 死に装束ともいえる光の粒子は出ていないが、時間の問題だろう。


「ミレイアを解放してくれ!」


「できぬ相談だな。もし開放したいのなら、お前の首を差し出すか、私を倒すしかない」


「なぜ…なぜそこまで頑なに、力を取り戻したいのだ。同胞を救いたいだけならば、もう果たされたはずだ!」


「すべてを壊し、すべてを守る。もう一度やり直すために。さあアーサー、私と戦え。でなくば、お前に与えた力を返してもらおうか」


 アーサーは憤りと悲しみとで、目元を細めた。

 ミレイアを人質として引き合いに出したこともあるが、それと同等に許せない事がある。


「守りたいことがあるのは、我とて同じ。なのになぜ話し合いではなく、力づくで物事を進めようとする。我はそんなに信用がないのか!」


「言ったはずだ。私の覚悟も決断も、お前のそれとは交わることはないと。さあどうするか、この場で決めろ」


「……我はそなたと話し合いに来たのだ。それは曲げられぬ。そしてミレイアも、放っては置けない。どちらも同等に大切なのだ」


「そうか。ならば仕方ない」


 言うとレンドは、結界の周囲につむじ風を発生させる。その中でミレイアは荒い息を吐いている。

 見下ろすレンドの目は、戦えと促しているように見受けられた。それでもアーサーは、承諾できなかった。


「戦わぬ。そなたと話をするまでは。戦わぬ強さがあると、我はそなたから教わった」


 アーサーは睨み据える形で、レンドを見上げる。

 心のどこかで、レンドが本気で誰かを傷つけるはずがないのだと思っていた。だからミレイアは大丈夫だと。

 けれどレンドは鬱然とした、周囲の深い闇に負けないほどの眼差しを向ける。

 口端は薄く吊りあげられ、白い歯が僅かに覗いた。


「戦わない強さ、か。そんなもの、とうの昔に忘れたよ」


 呟くようにレンドが語ると、ミレイアの周囲に張り巡らされていた結界は消えうせる。

 そのため、つむじ風がミレイアを取り囲み、刃物でつけられたかのような傷が無数にできていく。

 徐々につむじ風は縮まり、縛り上げていく。

 ミレイアはレンドよりも格段に力が劣る。それだけでも不利な状況下である。


「やめるのだ!」


 アーサーは止めるべく、レンド達へと猛烈な速度で飛翔する。

 刹那、アーサーの胸元に衝撃が走る。なにか起こったのかわからなかった。

 ただとてつもない衝撃と痛みが、胸元を中心に全身へと駆け抜けたのである。

 なにをされたのか確認しようにも体が動かない。重力に引かれ、地面へと急降下していく。

 瞳はただ、レンドを捉えていた。


 レンドの手は、アーサーへと向けられている。眼差しは、興味を失い、見下すものでしかない。

 それにより、レンドに攻撃されたのかと妙に納得した。

 おそらくミレイアを囮にすれば見境なく近寄ってくるという憶測により、実行に移したのだろう。

 むしろこのときを狙っていたのではないだろうかとさえ考えた。ミレイアを使えば否応なく現れるだろうと見越し、確実に仕留めるために。


 同時になぜと、アーサーは胸の内で問うた。だが答えが返ってくるわけでもない。

 ああ、と心の内で嘆いた。切望は、願いは、レンドに届かない。

 いつからだろう。決別の日か、それとも最初からだろうか。

 ずっと昔、レイナとどのような想いで約束したのかを知らない。

 一人きりで約束を守り続けていた想いを知らない。

 けれど傍にいたという事実。ガリックやミレイアの励まし。それらがあったからこそ、前を向いてやってこれた。


 だがそれは思い違いや惚れでしかなかったのだろうか。レンドにとって、アーサーはなんの感慨も起こさせないほどの存在でしかなかったのだろうか。

 そうではないと信じたいが、先程の眼差しが絶望の淵へと追いやっていく。

 ミレイアも、同胞も救ってはやれない。不甲斐ないと、アーサーは自責の念に駆られた。


「アーサー!」


 ミレイアの声が轟いた。直後、ミレイアの手が落下するアーサーへと延びていく。

 地面に叩きつけられる直前、二人の体はふわりと浮いた。

 おかげで草原の絨毯の上に、優しく舞い降りる。

 つむじ風という檻の中に閉じ込めていたはずのミレイアが、思いがけない行動に出たことに、レンドは目を瞠る。

 周囲の状況など省みず、死に間際に発する粒子の光がアーサーに取り巻いていき、ミレイアは急いで回復を試みる。

 傷は深いが、回復役の力量と、処置が早ければ命を取り留める可能性は大いにある。

 ミレイアの力は強い方ではないが、先程の突発的な瞬発力さえなければ不可能ではない。

 レンドの目が、鬱蒼と細められる。

 それをアーサーは、傷を負いながらも見て取ることができた。おそらくミレイアも気づいているに違いない。


「…やめ、る、のだ。我を置いて、逃げてくれ」


 言うもミレイアは、治療を続ける。だが上空では、レンドがアーサー達へと向けて詠唱する。


「ミレイア、頼む」


 それでもミレイアは離れようとしない。聞く耳を持たないと言っているかのようである。

 頼む、逃げてくれと、アーサーは心の内で懇願する。ただでさえミレイアは力を消耗している。かまわず酷使すれば、確実に命は危うい。

 しかもレンドの手には、炎と風の織り交ざった魔法が出現していた。

 それが地面にいるアーサー達へと放たれる。


 なんとかしたい。ミレイアだけでも助けたい。けれど体は思うように動かない。

 こんな状況では、守ることすらできない。歯痒さの中、魔法が目前へと迫ってくる。

 諦めかけていたとき、体格のいい背中が現れ、結界が張り巡らされた。

 見慣れた背中に、アーサーは助かったと思った。心の底から安堵が沸き上がった瞬間、意識は闇へとまどろんだ。


「大丈夫か!」


「よかった、ガリックが来てくれて……」


 いつもより気弱な物言いであるミレイアに、ガリックは肩越しに振りむいた。

 するとアーサーが重傷で倒れており、ミレイアが回復させている姿が飛び込んできた。


「アーサー! 相当やばいな。治療はひとまず後回しだ。まずはこっから逃げるぞ」


「……駄目だよ。今治さないと、手遅れだもん」


「なに言ってんだ。本拠地に戻って、総出で治療をすれば何とかなるはずだ」


「だからもう…手遅れなんだよ」


 ミレイアの口から、切なさのこもった声が小さく漏れる。

 レンドの攻撃を防ぎながら、ガリックは改めて二人を見やる。

 大量の粒子を取り巻いていたのは、アーサーよりもむしろミレイアの方だった。

 代わりのように、アーサーからは粒子が消えていく。


「お前…」


「うん、ごめん」


「本当に逃げるぞ。お前が死んだら、アーサーは…」


「いやだ!」


 ガリックの言葉を遮り、ミレイアは決死の面持ちでアーサーの治療を続ける。


「もう間に合わない。アーサーも本拠地まで間に合う保証は、なに一つない。ならせめて、この粒子が消えうせるまで続けるんだ」


「なに言ってやがる。いつも一緒にいるんじゃなかったのか。好きなんだろ、そいつのこと」


「好きだ、大好きだよ。だからなんだ」


 共にいることができないのは寂しい、哀しい、けれど後悔などしていない。

だがミレイアは絶対に死なせたくないのだ。むしろなにかできるなら、とても幸せなのである。


「恋人として傍にいたい。それが叶わないなら、友として傍にいよう。ずっとそう思ってきた。それさえ無理なら、命がけでアーサーを守ろうって決めてたんだ」


「馬鹿野郎! それでお前が死んだら、元も子もないだろう。お前等二人は死なせない。回復してやるから手を出せ!」


「駄目だよ! そんなことしたら君の体力が消耗する。回復まで時間がかかるんだぞ。その間、誰がアーサーを守るの。誰が今、この状況を打破するのさ」


「そんなもん気にしている場合か!」


「冷静になれ。いつもそう言ってたのは、君だろ。それにね草木や風や大気となって、変わらず傍にいれる。いるんだって、今決めた。だから安心してよ」


「いいのかよ…それでいいのかよ!」


「うん。だから、後は任せた」


 ミレイアはそれで満足だと、笑顔を向ける。

 悪態をついて笑い飛ばすことで、なかったことにしたかったのかもしれない。

 けれどガリックは開きかけた口元をきつく結び、言葉を呑みこんだ。逆になにも言えなかったのだろう。


「……任された」


「ありがとう」


 ミレイアは安堵の息を洩らすと、アーサーを改めて見やる。

 泣きたくなるほどに愛おしい。

 たとえそのために生まれてきたのだとしても、この想いが偽りでも、育んできた想い出は嘘ではない。

 心残りがあるとすれば、アーサーとの子供が欲しかった。

 孵化がない今、魂の再生を行ない、生まれ変わることができない。けして叶わぬ願いなのである。

 けれど文字通り命懸けで、アーサーを救いたい。生きていてほしい。

 それがミレイアの中で、なによりも優先された。

 ミレイアの唇が、そっとアーサーの唇に触れる。


 ――愛してるよ、アーサー。


 声ではなく、直接心に触れるような想いが、アーサーに注がれる。

 刹那、ミレイアの体はすべて粒子となって、飛散する。

 応急処置のような段階でしかないが、アーサーの死の光は消えていた。

 ガリックは防壁を解くと、アーサーを担ぎ、一度も振り返ることなく本拠地へと全力疾走した。

 逃げられたことに、レンドは軽く舌打ちする。だが追いかけようとはしなかった。


「いいのですか。今なら彼等の息の根を止めることも可能でしょう」


「かまわない。ミレイア亡き今、体制を整えるまで時間はかかるだろう。今の内に、奴らの本拠地を叩く」


 アーサーの体力までは回復まではしていないため、処置を施すには、それなりの手練が力を注がねばならないだろう。

 レンドの力を半分持っていることが、逆に仇となっていると言っていい。その分力は削ぎ落とされており、体力回復までに時間がかかる。

 なによりミレイアを失った痛手が、目に見える傷よりも大きな打撃を受けるだろう。

 その間に攻撃を仕掛ければ、少なからず打撃を与えられると踏んだのだ。


「できるなら、これで終わりにしたいものだな」


 攻撃命令の伝達をしている同胞を目にしながら、そっと呟いた。

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