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真里とユエと頼人と…


お待たせしました!


「頼人、頼人!」


頼人の名前を呼ぶ声がする。


「…んー」


頼人はその声に煩わしそうに反応して反対側に身体を向ける。


「頼人ってば!起きて!」


頼人を呼ぶ少女の声が明確になってきた。


「ん?」


頼人が目を開けて起き上がった。


「やっと起きた」


頼人を呼ぶ声は真里だった。


頼人は1度深呼吸して真里と向かい合った。



「羽葉さんか…」


少し寝ぼけた様子で目を擦りながら相手を確認してぼやいた。



「疲れたでしょ?いきなりこんな出来事になっちゃって」


真里は頼人にそう言って、コーヒーの入ったマグカップを渡す。


頼人はそれを受け取った。


「あ、あぁ。コーヒー?」


「うん。ブラックにしたけど、飲める?」


「あぁ」


頼人はマグカップに口をつけて渇いた喉を潤した。

「帰って来てたんだな」


頼人は飲みほしたマグカップをテーブルの上に置いた。


「うん、帰ったら頼人が寝てて吃驚した」


「あぁ、すまん。」


「いいの!疲れてただろうし…」


真里は首を緩く左右に振って気の抜けた顔をした。



頼人はぼんやりと真里を見上げた。


「……なぁ」


「何?」


「あのさ……」


頼人は気まずそうに言葉を詰まらせた。


真里はそんな頼人を見て、首を傾げた。


「…あの本のことが聞きたいの?」


真里は思考し、頼人に尋ねた。


「あ、あぁ。この本は一体なんなんだ?」


頼人は持っていたリュックから鍵となる本を出した。


「その本はもう1つの世界…異世界に行くための鍵なんだよ?異世界との繋がりを持つ本」


真里は頼人が持っている本を見て言った。


頼人は本を見つめた。


ガチャ


「真里ー!頼人さん、目覚ました?」


ユエが部屋に入って来た。


真里と頼人の視線は一気にユエへと向いた。



「ん?どうかした?」


ユエは首を傾げて二人の視線を受け止める。


真里は肩を疎めて、首を左右に振った。


「別に、…ユエが入ってくるタイミングがちょっと悪かっただけよ」


真里は苦笑した。


ユエは少し不満げな表情をして、頼人と真里に近づいて来た。


「何でー、私は別に普通に入って来ただけだよ!」


ユエの言葉に頼人も苦笑した。



「で!何の話してたの?」


ユエは真里と頼人を交互に見た。


「頼人が持ってる本についてよ」


真里は頼人の持つ本に視線を向けた。


「あぁ、鍵のことね」


ユエも本へと視線を向ける。


ユエと真里につられて頼人は持っている本へと視線を向ける。


「その本は鍵なんだよ!もう1つの世界とこの世界の繋がりの1つだよ」


ユエはそう言って、頼人の向かい側にあるソファに座った。


真里はそんなユエの様子を見て、ユエの隣に座った。


「鍵?もう1つの世界なんてあるのか??」


頼人は二人に視線を向けて不審気に見た。


「あるよー!」


ユエが笑ってはっきりと言った。


頼人は信じられないらしく、怪しげにユエを見た。


ユエはそんな頼人の表情を気にせずに言葉を続ける。


「行ってみる?」



真里が慌ててユエの言葉を止める。


「ユエ!」


真里の少し怒った様な表情にユエはそんな真里を見つめた。


「何で?良いじゃん!頼人さんは選ばれたんだよ?この本に」


ユエはそう言って頼人を観察するかの様にマジマジと見た。


真里は額に手を当てて何かを考え始めた。


頼人はただひたすら混乱した。


「選ばれた?」


頼人の疑問が思考からもれて思わず呟いていた。


「そうだよ!だってその本を見つけるのはとーっても難しいことなんだよ?」


ユエは淡々とそう答えた。



「……確かに頼人は行くべきなのかもしれない」


唐突に真里が小さな声で呟いた。


頼人は戸惑いを顕にして、真里を見た。



「そう、そうだよね。頼人!私達と一緒にもう1つの世界…"fantasyworld"へ行きましょう!」


真里は頼人を真っ直ぐに見て、そう言った。


「fantasyworld…?」


「もう1つの世界の名前だよ?」


ユエはニコニコと笑って頼人の呟きに答えた。



「………。」


頼人は本へと視線を戻して考え始めた。


真里とユエはただ頼人を見つめている。


「fantasyworldに行けば、貴方の力も覚醒するし仲間も居るわ!」


真里は考えこむ頼人に決定づけるかの様に言った。


「頼人さん……行こうよ!」


ユエは無邪気に笑って頼人を行くべきと勧める。


「考える時間が欲しい」


頼人は二人へと視線を向けた。



「分かった。今日1日、考えてみて!」


真里は苦笑してそう言い、ソファから立ち部屋の外へと出ていった。


パタン



「頼人さん…これはチャンスなんだよ?」


ユエはそう言ってソファから立ち上がった。



「朝食持ってくるね!あ、ここにある物なら何でも自由に使って良いからね!」


ユエの元気よく明るい声が部屋に響き渡った。



そして、ユエも真里の後を追うかの様に部屋から出ていった。



パタン

「はぁ……どうなってしまうんだろうか」


頼人はそっとため息を吐いて持っていた本をリュックへと戻した。



「このまま、護られるだけ…なんて嫌だしな」


頼人はソファから立ち上がり、本棚へと近づいた。


すると、本棚にある1冊の本が光った。


頼人は自然とその本に視線を移す。


「…?」


頼人が右手でその本に触れた瞬間…


バチッ



火花を散るような音がし、頼人の右手が発光した。


「くっ!?」


悲鳴じみた声が思わずもれた。


光りがおさまると、頼人の右腕に呪文の様な紋様が絡み合っていた。



「?!な、」


頼人は驚いて、右腕を凝視する。


触れていた本が床に落ちる。


ドサッ



「……」


頼人は本へと視線を向けて、落ちた本を拾った。


「特殊能力"武具召喚"?」

本の題名を読んだ頼人はその本を持ってソファに戻り座った。



ガチャ


「頼人さん!何かあった!?」


ユエが荒くドアを開けて部屋に入って来た。


「…は?」


頼人は思わずきょとんとした。


ユエは頼人の右腕と持っている本を見て目を見開いた。



「それ…どうしたの?」



ユエは頼人へと勢いづけて近づいた。


「見せて!」


頼人の右腕を掴んで引き寄せた。


「おわっ」


頼人は前倒しになりそうになった身体を何とか足で踏んばった。



ユエはマジマジと右腕の紋様を見つめる。



「これは……」


ユエは頼人の右腕の紋様を険しく見つめた。


「どうかしたのか?」


頼人は少し不安げにユエの顔色を窺う。


ユエは少しだけ目を瞑ってから、右腕から目を反らして頼人へと視線を向けた。



「解る人には解る紋様なんだけど…、もしかしたら頼人は……」


ユエはその言葉を告げるのに躊躇して、止めた。


「何でもないよ!ただ、この紋様があるってことは頼人は覚醒具持ちなんだね」


ユエは明るい調子でそう頼人に告げた。


「覚醒具…?」


頼人は覚醒具という言葉に聞き覚えがないらしく、首を傾げた。



「あ、そっか…頼人は知らないのか」


「覚醒具とは…ていうか、私も良くは分からないから追々説明するよ、真里が」


ユエは投げやり気にそう答えて持ってきた食事を頼人に差し出した。



「残り物で悪いんだけど」


差し出された食事はプレートの上に皿とお椀、コップが乗せられていた。


コップには水が注がれていて、皿にはオムレツにレタスとミニトマトが飾られていた。

お椀にはホカホカのご飯が並盛りにつがれていた。


「うまそーだな」


頼人は渡された箸を持ってそう呟いた。


ユエはそんな頼人を見て笑った。


「えへへ、おいしーよ!召し上がれ!」


「あぁ、頂きます」



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