第8話
■アルケ■
重い部分もあったけど、互いのことを話しきったと思う。お茶はすっかり冷めてるし固焼きビスケットもあんまり手がついてないけどやっぱり重いわよね、限度超えてるわ。
二人が起きる頃はまだ明るかったけど、もう日が傾いてる。今日はここで一泊した方がいいかしら。できるだけ早めに離れた方がいいとは思うけど山ひとつははなれてるわけだし大丈夫よね?
「お茶、温めなおそうか? それともちゃんと食事とってみる? 私たち1日半はまともに食事とかしてないし」
二日は前の水だけど沸かせば大丈夫でしょ、干し肉はあったし黒パンも十分以上残ってるし。
「それとも寝ちゃう? お酒も残ってるよ」
■サマサ■
「おなか、減るのね。あんなに凄いことがあっても」
■クルス■
「生き残った、ならばちゃんと帰れるよう食事はとるべき。水に余裕があるなら朝の分のこして馬に与えた方がいいね」
■アルケ■
「さて、二人とも動けるかしら? 動けるなら何かした方がいいね。そうねぇサマサには食事の準備お願いしようかしら、簡単でいいよ。クルスは馬見てきて?そのあと荷物チェックたのめるかな簡単にはやってたとこなんだけど、まとめなおした方がいいと思うし」
二人とも頷くと、立ち上がって動いてくれた。思ったより大丈夫そう。
では、私の方も厄介な問題の解決を考えますか。さっきまでのことからするとどうでもいいことなのだけどレディとしてはこだわらなきゃダメな問題。下半身の装備は大丈夫なんだけど上半身がね。下着、それもおなか周辺に大穴あいちゃってて膨らみの下半分見えてんじゃない?
もーなんというかまずいわ、まずすぎるわ。
ということで荷物整理という名の服探し。
ぶちまけてるだけともいうかも。
ハガネは話の途中からかなり真剣な顔? で固まってたから置いておく事に。話は聞いてたみたいだけどなんか考え事?
***
■クルス■
「馬のほうは大丈夫そう、サマサと相談して水はあげておいたから川までここから半日かからなかったはずだし。朝の移動後そこでもう一泊すればいいと思う」
カバンというカバンをひっくり返して並べてるアルケの後ろに立って報告。
「さすがにこれはぶちまけすぎ。帰りに必要な荷物まとめるとかではないの?」
■アルケ■
「女の子の危機なの、非常事態なのよ」
振りかえって上着の大穴ぱたぱたさせてアピール。上着、というかリネンのタンクトップなのでそもそも露出過多。
屋外任務で長距離移動だと換えの服の優先度は非常に低い。水と食料が大半、それに天幕とか薬品とかでかなりの量になる。さらに今回は重装備が三人分はあったからいろいろギリギリ
食料だって狩で補ってるぐらいだ。もっとも5人減ったので余裕できてるけど。
■クルス■
「わかるけど着替えとかあるわけないし。街に入る前に毛布でも巻きつけるしかないでしょ。そのままだといい晒し者すぎる」
ぷにぷにの下半分丸見え、トップもくっきり丸わかり。しかも穴ギリギリなので注目度ばつぐんですか。
■アルケ■
「じー」
■クルス■
「見つめてもないものはない。だいたい一番でかいんだから私たちの服とかも無理でしょ」
まぁどっちみちまとめなおして不要物は埋めるとかしないと。なので、ぶちまけるのはいいんだけど。
■アルケ■
「そうそう、荷物はぜんぶ持ち出すよ。少なくとも森から抜けるまで、できるだけ跡のこさない」
いろいろ考えられるけど、とにかく辿れるのはまずい。街からは竜(大型爬虫類)と樹海をさけて森を縦断してきたけど。獣道というより元街道―もっとも木が茂り下草生え放題で大変だった―それづたいにたどり着かれても困るし。なんせ別ルートで来たゴブリンもいたことだし。
洞窟埋まってるとはいえ用心はしておいた方がいい。
「あと、ゴミは残すなって言われてる」
これは巣の中だけかもしれないんだけれど念のため。一応、ハガネに全部任せたけど洞窟内のイロイロなもの全部吸収してもらってる。ぼろっちい革鎧とか欠けた剣だとか棍棒だとか、生々しいナニカとかも全部。その辺はあきらめてくれてたみたいで助かったけど。
イヤナニ、私だって見たくはないし触れたくなんてないんだけどね。
あと、ピーだとかプーだとかはあれだ。ここにも動物はいることだし深めに穴ほればだいじょうぶかなー。いやなんかぜんぜん気配ないから明日の朝の問題だと思うのだけどね。
深くは語らないけど察して?
■クルス■
「そう、馬は余裕できてるわけだしドラゴンの言いつけじゃ従う以外ないか、ここも汚したくはないし」
実際、重装備がなくなってる分余裕できてるし。
■サマサ■
「ごはんできましたよー。干し肉のスープにあっためた黒パンですよ」
まともな食事は久しぶり、ちょっと少なめだけどこれでいいでしょう。私たちの分としてはね
ハガネって何食べるのかしら?
というか食べるの?