表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blood of Dragon  作者: 居反り
第1章
4/32

第4話

■女戦士■

 洞窟の出口、ずいぶん手前から松明なんていらないぐらい明るかったので火を消して棍棒がわりに持ったまま、出口付近でかがんでそーっとうかがってみる。


 周りを山に囲まれた空間。その中央に首を地面につけている深く透通るような緑の輝くドラゴン。予想したとおり、怒りそして死にかけているようだけどとても美しい。

 きっとここも美しい巣であったのだろうけど、今はずいぶん荒れたどころではない。地面が抉れ山の裾に巨木が倒れ積み重なり。


 そして禍々しさも。


 入り口からドラゴンまでの中間あたりに倒れている二人が見える。サポートさせるのにギリギリの距離なのだろうか、けっして二人の手が届かないように鎖でつながれているのも見える。


 見回すが立っている人影は見当たらない。気配も、感じ取れるのはドラゴンのものだけ。剣士やガーディアン二人はみあたらない。スカウト二人は本気で隠れられたらわからないだろうけど

あれだけの戦い(音)だったのだ、きっと無事ではないはず。


 さらによく見るとドラゴンの足の下に血のシミ?

 左右の山肌にも血と鎧の一部?


 ドラゴンとも目が合いました。


ふんっ


 そんな感じでしっぽがはたかれると何やら肉塊が二つほど。


 数は合う。




■ドラゴン■

「そこの者どもを連れて去ね、まだ死んではおらん。もっとも、その杭を掘り出したところで呪いの首輪に鎖だどうにもならぬかも知れぬがな」




■不定形生物■

 低音の渋い声、ドラゴンだけになんかこう思念波がどーたらとかで来るかと思ったら普通にしゃべりますか。いやまぁそれどころじゃないんですが。おねーさんは硬直してるし。




■女戦士■

 威圧が半端じゃない。

 目をそらすことも、動くこともできない。

 言われたことはわかる。動くべきなのもわかる。

 けど私は硬直したまま。


ふっ


 そんな感じで顔をすこしそむけ、目を閉じてくれた。

『ドラゴンに気遣われた?』

 威圧感から開放された私は彼女らの元に近づいていく。

 本当は駆けて行きたいところだけど。目を閉じてくれたとはいえ、そのはんぱない存在感に意識を向けてしまう。足だってもつれそうだし。




■不定形生物■

『ドラゴン?ほんものー?うぉーでけーかくいーきれーつよそー』




■女戦士■

 お腹の辺りでなにやら騒いでる、心の中でだけどのんきな物だ、威圧とか感じてなかったのだろうか。私の目はいまだドラゴンに釘付けだ。彼(彼女?)が顔の向きを変えたので、その左目がよりはっきり見える。

 左目、閉じるとか以前に潰され、禍々しい槍が刺さっている。白の中にある一点の闇、そんな感じで凄く目立つ。ドラゴンに他のキズとかぜんぜん見えない、まだ距離があるからかもだけど

むしろ、キズらしきものは左目に刺さった槍だけだ。それだけでドラゴンを押さえ込んでしまってるのだろうか。


 呪い?


 何にせよ相当やっかいなシロモノのはずだ。


『右手の治療終わった?終わったならあの娘たちの首輪をどうにかするのと、治療もお願いしたい。それに、アレもどうにかなるだろうか?』

厄介な物、だと思うけどこの子ならあっさり処理してしまいそうな気がして聞いてみた。




■不定形生物■

『えーっとですねぇ。骨とか肉とかぐちゃぐちゃで元がよくわからないので困ってますよ?傷口ぜんぶ覆って余計な物吸収して止血もしてるし神経くるんでるから時間もらえればだいじょーぶ』

 おねーさんの右手の平は人差し指から薬指の部分がぐちゃぐちゃで、肉と骨が粉砕されてて3Dパズル状態ですね。時間かければそこそこのサイズのものは元に戻して、スキマはてきとうに取り込んであるブツで代替しちゃえばいけるとおもうんだけどね。

『おねーさんの仲間の首輪とかはこっちの処理中でもどうにかできると思うのですよ、このままつれてってみて?あと、アレもどうにかできそうな気がするんだけど近づいてだいじょーぶ?』




■女戦士■

 彼女らのそばまでいって包み込まれたままの右手で首輪に触れてみる。実際触れるのはこの子だけだけれど、杭の時と同じように首を覆うとほぼ同時にあっさりと消えうせる。

 鎖と杭もなぞるように触れていくだけで消えていくのでたいした負荷ではないのだろう。


 二人の様子には正直心配なところは無い。おそらく魔力切れのための気絶といったところだろう。それ以外のケガとかはたぶん無い。彼女らを縛り付けたのは杭と鎖と首輪、それに人質の私

それだけだったろう。回復と補助に専念させるのに、それ以外の縛りがあってはまずいだろうし


 なによりあれだけの戦闘の跡地、地面のあれ具合だとか岩肌の肉塊だとかそんな惨状の中で、彼女らの横たわるところだけが元のまま。なにしろ草をベットに寝ているようなものだったから。




■不定形生物■

『こっちのおねーさんたちは気絶してるだけかなー、ちゃんと調べたら何かわかるかもしれないけど、脈とか呼吸とかも安定してるし血が滲んでたりとかもなさそうだしー』




■女戦士■

 首輪や鎖の処理中に調べたのだろうか?

 この子がそう思うなら大丈夫なんだろう、ここまでの治療とか解呪とか見てきたので疑わずに受け入れることにした。




■不定形生物■

『あとはあっちかな?なんていうかね、ドラゴン?の気配というかそういのがだんだん薄くなってる気がする。んでイヤな感じが変わりに濃くなってるの』

 ほんと、なんとなくなんだけど。

 なんていうかね、槍はやっぱり呪い付きなのかな、それがドラゴン食らって大きくなってるというかなんというか。

『急いだ方がよさそうなのでつれてって?』

とお願いしてみる。




■女戦士■

 確かに、そうなのだろう。

 最初に感じた威圧感、ドラゴンの威厳というかそういう感じ。

 プレッシャーが薄くなっている。


 それに、槍そのものより槍の刺さった周辺から禍々しさが溢れ始めているような、刺さった槍を中心に、なにか黒い物が渦巻いているような感じがする。

 近づくまでの間にも膨れ上がっているようだ。


 どのみちこうするしかないかな?

 包まれたままの右手を黒の渦の中心へむけてかざす。



ぷるぷるぷるぷる

ぷるっ

ぷにょーん



 いやもう何がなんだか。とにかくこの子の体?手?が伸びてぴとっと槍に触れ、刺さったままの目に覆いかぶさって。



kじゃjうぇfんかsdl

wdじょjfqk

qwk

おをlgwrうぇ

えfえ

えwくぇf

おおkをふぇkぇfmぇえ



 吹っ飛ばされました。




■ドラゴン■

「人間…ではないな、槍ごと我を食らったか」




■女戦士■

 吹っ飛ばされてはいるもののうにょーんと伸びたこの子は私の右手とドラゴンの左目を繋いでいる。そう、つながってる。そのおかげか右手のひらの穴が急速に塞がっていくというか包まれた右手首から先が作りかえられているような?




■ドラゴン■

「治そうとでも言うのか。かまわぬ、槍が食らった力ごと、貴様が吸い取った目玉も肉も骨もくれてやるわ」




■不定形生物■

 とか言ってますよ?

 いやいや、吸収して再生するつもり。刺さった槍ごとなんとなく汚染されてる感じの周辺もごっそり吸収してみましたけど吸収して再生するときに汚染原は切り離せると思うから問題ないと思ったけど。


 というかおねーさんに繋がったままで、そっちも治療中だったのでドラゴンの肉やら骨やらが流れてってるような?


 というか再生力すげー

 勝手にケガのほうに食らいついて無理やり治してる気がしなくもない。というか包んでる右手首全体に食らいついて作り変えてる?

 人間の体は不完全?ドラゴンからすれば脆すぎる?

なんかそんな感じでごっそり強化してるというかされてるというか。

『ていうかコントロールできない力とかこまるー、かえすー戻すから振り回さないでー』




■ドラゴン■

「こやつらは力を欲しここまでしたというのに、いらぬと言うか」




■不定形生物■

 血肉でつくられた華のようなシミを見ながらいうセリフではないと思いますよ?

 というか呪いの武器だとか呪いだとかは分離できるというか分解できるというか、とりあえず取り込むと発動してないみたいなので保留中なんだけど。ドラゴンの力はしゃれにならんですよ?

 まだ繋がってるから、流れ込んでも戻せばどうにかなってるけど切り離されたら破裂するんじゃない?ていうかとにかく強すぎ。

 マッチの火でいいのにナパーム弾ぶちまかれてる感じ、いやこれだとわからんか。とにかく過剰すぎてしゃれになりません。

『過ぎたるは及ばざるが如し、どころじゃないー、もらったら破裂しそうなのでむりー』




■ドラゴン■

「何やら偉そううな物言い、だが真理ではあるな。力が要らぬならその辺のウロコとか全部もっていけ。どこに入ったかわからぬが、槍のように収納できるのであろう?ついでにその辺のシミと付随物も掃除していけ。シミはともかく付随物はそれなりの物であろうしな」




■不定形生物■

 交渉成立。

 なんとか返せるだけ返しますよ。じっさいそう意識しているだけで勝手に帰って行ってるような? 治そうとかもうそういうの関係無しに傷とか塞がってるし潰れた目がどうなったかとかわかんないけど。逆に食い取られそうなのであわてて離れましたよ、なので解析とかさっぱりです。

 少し残った気がする肉と骨はおねーさんのほうにぜんぶ行っちゃってるし、どうなのかな?

 外見はそのままっぽいので問題なさそうなんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ