第28話
アルケはハガネに倉庫内の改装を任せたので村娘ちゃんたちの方に専念する。顔役に聞いた限りだとここと同じように倉庫に集めているのが3箇所、南西の集団も似た感じではあるか。
「顔役、北の偵察が戻ってくるのはどのぐらいかかる?」
西及び南は地理的に回り込むことが困難であったりここまでの道中での探査結果に引っかかっていないので除外している。東は肉食種の竜(肉食爬虫類)がいるためここも除外、念のためにクルスが偵察にでているが。
「そうですなぁ、村から近い集落跡の往復で2日ほど。何もなければ更に樹海と山越えに向かうよう指示しておりますがこれが4~5日ではないかと。途中でワーキャット族等の獣人国の残存部族にであえれば情報交換するよう指示してあります」
ミルストニス川に沿い東西に広がるモータリス村、その北は樹海から流れ込む細かい支流を集めるニティニーネ川が境界となっている。ニティニーネ川は境界部を西から東へ流れ、村の最東部でミルストニス川に合流し樹海へ呑まれる様に流れ込む。樹海の奥にある山脈を抜ける峠道はその支流に沿ってあり、東西の2本が回り込むようにして北の獣人国につながっていた。
ちなみに聖龍の山は北西にあり、その麓にもいくつかの国や村があった。真南にあった聖龍を祀る国とその西にあった獣人国(人牛の国)は森にのまれて消滅。北の獣人国(人猫の国)も森にのまれたが狩猟にたけた者はいまだに樹海の中で暮らしている。むろん、それぞれ純血の国であったわけではないのでかなりの数が南東へ逃げることになった。
村のハンターの多くがワーキャット・ハーフであり、極わずかではあるが廃集落を利用して交易を行なってもいるためつながりもある。時期がずれているので落ち合えるわけではないが手土産も持たせているので悪いようになることはないはず、とのこと。
「んー、早い段階で各拠点に人集めちゃったほうがいいかなぁ、なんにもなかったら祭りにでもしちゃう方向で。ソレ、村にあげるってことで誤魔化せない?」
今、動いていないのは乳幼児を抱える母親と顔役などではない高齢者とみたアルケ。村長から首飾りを受け取っている娘たちの中には赤子を背負っている者は二人しかいない。
「中央のここが一番大きな倉庫群ってことでいいのかな? 肉体労働に不向きな人とか赤子かかえた女性はここに食料持ってこさせて炊き出し要員。動けるけど首飾り受け取ってない娘も全部あつめて掘削作業させて」
顔役に全村民に動員要請を出す、さらに今集まってる娘たちに向かい。
「ちゅーもくーっ」
顔役から離れ、村民Aさんの肩をまた抱きかかえながら。
「受け取ったからよりわかると思うけど、ソレがナニでどれだけのものかってのはいいかな」
ざわざわ、あらためて言われて。
「やっぱり龍の……」
「ドラゴンのウロ……」
中には涙目になってる娘も。
「はいはい、口には出さないっ。いいね、何かわかるだろうし凄いものってのもわかるよね。
ソレが他でなら国王クラスでないと持てないものってのはわかるよね?」
というかここにあるのが知れたら奪いに来るバカがいても不思議じゃないほどの物なのだが。
「で、ソレは村にあげました。うん、代表してあなたたちに持ってもらってる。村長、その娘たちが手放さない限り取り上げたらダメよ。一家で引き継ぐのか村で管理するのかは後で決めなさい」
モノがモノだからね。ぐるりと見回し最後に村長に目を合わせて念を押す。
「何事もなく終わったら一家に一つぐらい何かあげられるかもしれない、もう少しもってて気疲れしないものとかかもね。その辺は後で村長と相談で決めるかな」
「今受け取ったあなたたちには伝令として働いてもらいます。ソレ見せ付けて皆を動かしなさい顔役、だいたいでいいから斑分け。ここでやってること、これからやろうとしてることを各拠点に伝えさせなさい。家に残ってる人を集める斑もよろしく」
***
ハガネが倉庫からでたときにはすっかり日が落ちていた。
倉庫前の広場は周囲に篝火が焚かれ、かなりの村民が集まってきている。酒と食事も振舞われているようではあるが酒飲みは隅でちびちびやっているようだ。一番目立つのは、首飾りをもらった村娘を囲む娘にご婦人の塊。というか男女比が1:3? なかなかにかしましい場となっている。中でも村民Aさんの周囲は雰囲気が違うが。いまだに強い光を放つ首飾りをつけているせいでご年配の婦人に囲まれて崇めたてられてるだけですが。
「ハガネ、ずいぶん時間かけたね、お疲れ様」
アルケがハガネを抱え上げながら。ハガネもすぐに繋げて来る。
「見てわかるとおり女性が大半みたいでね、モノで釣るのは効果的みたいなのでいっきに動員することにしたよ。モノで釣るけどウロコはこれ以上はストップね、その上でアクセサリーとかちょっとしたものはまだ作れる?」
モノがモノなので多すぎるのは問題ということらしい。既に首飾り他で40個はばら撒いているけれど。
「宝石で釣られるのはどこでも変わらないですしね」
散歩から戻ったサマサに突付かれながら。目は娘さんの胸元に釘付け。アスターは足元で睡眠中なのでおとなしいこと。
『龍の巣産の石と神木ならそこそこあるから全員分ぐらいはできるよ? 男の人用にこんなのとかも配ってみる?』
ぽろっと出したのは大型のタワーシールド。ベースは木製で表面に石材コーティング、当然カーボン繊維強化済み。持ち手はD字型とU字型の二つあり左手だけでの保持も可能、最下部にフットバーのようなものをつけてあるので踏みつけての維持も可能なもの。重量が10kg近いのはご愛嬌、部分的に石製なのでこのあたりは仕方が無い。
宝石でも出るのかと思っていたサマサの手を掠め、ゴスっと地面に突き立つ。
「さすがにちょっと重そうね」
音から判断するアルケ。
「ま、男に飾りは無いと思いましたが」
と若干、期待はずれな様子を隠さないサマサ。アスターは軽く尻尾振ったようだけれど寝たまま。
「こういうのは最後でいいかもね、まずは砦化をしてからでいいと思うし」
アルケが、盾が突き立ったままだと危ないので倉庫の壁にもたれさせる。
『そっちの方はすすんでるの?』
つながったハガネから。
『配り終わってからすぐ始めたよ、今は北面を掘り終わったぐらい』
答えるアルケ。
『底は突き固めてある?』
『ソレっぽい道具あったからやってもらったわよ、壁面は手付かずだけど』
「目で会話中? 置いてかれるのはちょっとさみしいかも」
ちょっとだけ、ふくれてるサマサ。
「ゴメン、つい繋がるのクセになってきたかも」
「ごめんなさい、なんかね、繋がると説明とかそういうのはやいからつい」
あやまるアルケとハガネ。
「わかってもらえたらいいです、それより倉庫がどうなったか見たいですね」
「それは私も見たいね、村長とかはって飲みに行っちゃってるからいいか」
ハガネを抱えるアルケとアスターを抱くサマサが倉庫内へ。
《ライト》サマサが明かりの魔法を使う。頭のすぐ上ぐらいに光球が一つ、二つと出現。普通なら光球一つを浮かべる魔法、維持するのにもちょっとした集中力と魔力を必要とするので戦闘時には不向きではあるが魔法としては初級なもの。それが12個ほど浮かんだ。
「サマサ、えらく豪勢ね」
なんとなく否定的な言葉を避ける、出しすぎとは思うが精霊がらみだとマイナスはよくない。ハガネは右手だけで抱えているので空いた左手で光球の一つを撫でるようにしているので眩しすぎるとかやりすぎ、だとかは思っていないようだが。
「イメージはいつも通り一つだったんだけど。というか今光ってるのこの近くにいた精霊さんみたい」
「そういや好かれてたものね。見やすくてちょうどいい」
光球はサマサだけでなくアルケの周囲にも浮かんでいる。光源が複数あるおかげで影が出来にくく、足元も見やすいのでかえってありがたい。
薄いベージュ色のレンガブロックで構成された壁面や天井、中二階というべきか? そこへは中央の階段から上がれる、上は壁もなく吹き抜けなので元の倉庫のままなのが見て取れる。
壁で区切られた右手にはかまどが並び、中央には大きな石の机もある。
奥の半分は壁で区切られ左手と中央の入り口が見える。
「ずいぶん大掛かりになってるね、奥のは井戸?」
いまだ繋がりっぱなしではあるのでイメージだけで全体を伝えられているアルケ。
伝えられているのは透視図っぽい3DCG風の画像、全体をゆっくり回転させて全部を見せているのはいいが螺旋部分はわかりにくかった模様、というか下手に意識すると3D酔いするかも。
「サマサ、この奥全部井戸みたい、それに横穴もあけたみたいだから見に行こう」
光球(光る精霊さん)の半数が井戸への降り口に先回りしてぐるぐる舞っている。螺旋階段の巾は約1m、すれ違うには少々狭いが地下道とするなら充分広い。ハガネの案内で、レンガブロックのことや明かり置きなども説明され最下部へ。
「ここから井戸の中に渡してある橋で水はここで手で汲む事もできるよ。上から桶を落としても大丈夫なように屋根はつけてあるし。あと登るのは反対まで行けば降りる人とぶつからずに上がれるようになってる。そっち側の途中に横穴も開けてみたけど」
レンガの橋や側面の壁を見る限り厚みは50cmほど、上の倉庫の壁は30cmほどなのでそれより分厚くしてある。水は掘り出したばかりなのでまだ濁りが残っているが普通より澄むのが早いかもしれない。
「掘り出すというか取り込む、だからね。泥とか滲み出した細かいものなんかも一旦全部取り込んだので明日にでも使えるんじゃないかな?」
反対側の螺旋階段を上がり、横穴へ。
「なんとなく思いついたから掘ってみたんだけど。何かになるかな?」
「井戸に繋がる空洞なので湿気とかが気になるかな? 果実酒を寝かせるのに丁度よさそうですが」
アスターを抱えながら撫でるサマサ。
「人が篭るには向かないね、井戸がわの入り口だけだと息苦しくなるかも。通気口あければいけそうだけど」
こちらはアルケ、繋がったままなので海の向こうの大陸にあるドワーフの本拠地をイメージしているのがハガネに伝わる、が今ひとつなようだ。
「なんとなく、思いつきでやったことだからねー」
酒の貯蔵庫ならともかく、人が篭らなきゃならない事態は避けたいところ。
横穴からでて更に螺旋階段を上がるとカマド側の口へ。正面に水槽と一体化した大テーブル。
「ここは何も言わなくても大丈夫そう」
「井戸への降り口も問題ないのでは? 見えるほうから降りそのまま進めばここに出るわけですし」
「横穴も任せとけばいいんじゃないかな」
中を軽く見ただけなので30分とかかっていない、外では相変わらずチビチビやってる男衆とあいかわらずかしましい女性陣。
「男はこのままでいいとして女性陣は屋根の下で寝てもらおうか、どこかの倉庫空いてるかな?焚き火もあれば人手もあるので倉庫脇でザコ寝でもかまわないのだけれど」
「箱作っちゃおうか」
ハガネがイメージで倉庫の内壁を囲った時のことを伝える。
「サマサ、この辺に注目集まらないように阻害して」
アルケが指示。ハガネからは建築物の3DCGっぽいイメージも伝わっている。
「倉庫の横に同じぐらいの大きさの物作る、時間はかからないから適当でいいよ」
「いいですよ、ちょっと霧だしときますね」
《ミスト・ウォール》
「精霊さん、ホドホドですよ?」
イメージと詠唱、規模に合わせた魔力が必要であるが、今までのことを鑑み魔法の名に倉庫の隣を囲む霧の具体的なイメージを特に詠唱することなく精霊に伝えるだけにする。
「ちょっとお願いするだけで精霊魔法になるとは思いましたがこれはこれですごいですね、精霊さんありがとう」
魔力はそれなりに使っているが詠唱がほぼ不要となる事は大きい。慣れればイメージ通りの結果を表すことも難しくないだろう。
倉庫の隣でサマサの魔法を待つアルケとハガネ。頭上にはいまだに《ライト》の精霊光球が6個舞っている。
「あんたたちはまだいけそう?」
そんなことをいいながら左手を精霊光球にかざす。なんとなく集まる精霊光球にやさしく魔力を分け与えると一段と輝きだす。サマサがお願いした妖精たちだがアルケとも相性がいいようだ。
程なくうっすらとした霧に囲われ始め、次第に見通せなくなってきた。
「これなら大丈夫そうね、ハガネ降ろしたほうがいい?」
「このままのほうが後が楽かな? 出すのはこんなかんじでぐるっと囲って真ん中にも置くけど」
イメージで伝えるのは1辺3mで構成されたU字ブロックを横倒しにしたもの。横6x縦10個並べて囲い、中央には背中合わせにしたブロックを8個。
「置いた後で地面を10cmほど掘り下げるとわかりやすいかな、それやると排水溝つくんなきゃならないけど」
アルケの言うとおりにすれば地面とレンガブロックの床の上面の高さが40cmとなる。そのままでは上がり難いが腰掛けるにはちょうどいい高さ。これだと土足で上がることは無いだろうからゴザでもひけば寝床としても充分だろう。
「んじゃさっくりいくよー」
右手にハガネを乗せたアルケが通路部分を歩き、その先へハガネがどんどんブロックを出していく。ドカッっと言う音とともに現れはするが落ちて来たわけでもないのでそれほどではない。
一通り設置するとブーツを脱いで外周部の床に上がり継ぎ目を接合、U字なために口の空いていた4箇所には板状のブロックを出したうえで接合して埋める。中央部分も同様に。
最後に床面の掘り下げと出入り口として一箇所1m幅で削除、壁にも1mx2mの穴をあける。外側に2mx1m、10cm厚のブロックを敷石がわりにし、外からの水の浸入を防ぐ。
「これするなら屋根も付けたいとこだけどね」
外周と中央部の間には3mほど屋根の無い部分がある。
「屋根も付ける?」
あっさり飛び上がるアルケ。
「三角屋根にすると重すぎるかもしれないからね」
と言いながら、10cm厚のブロックで蓋をしていくハガネ。継ぎ目も接合しておく。
「窓なしは息苦しいから壁に少し穴あけとこうか」
縦長の弓狭間風に細長い窓を2m間隔ほどで開けておく。
***
かしましかった女性陣も少しは落ち着いているようだ、というかそろそろ夜をどうするかといったところになってきているのかもしれない。他の倉庫を見に行っている人もいるようだ。村民Aさんを囲んでいたご婦人方もそういった人たちだったのだろう、結果解放された為に広場中央にしつらえられた石組みのカマド、その脇に置いてある鍋から汁物でもいただこうかというところで。
「村民Aちゃん発見、確保っ」
アルケに見つかり改装した倉庫の横まで連れ込まれる。
「ひょえ」
手に木の椀を持ったまま呆けてる村民Aさん。
「かわいそうに、このこお腹すいてるんじゃない?」
アスターを抱いたサマサが突っ込む。《ミスト・ウォール》は解除済み。
「ハガネ、なんか食べ物」
「ん? 何でもいいのかな」
といって出したのは鹿肉の串焼き、ハーブ(ローズマリーとニンニク)と岩塩をすり込んであるのでそそられる香り。湯気まで出ている。
なんだかんだで半分以上の荷物を取り込んだままなため、色々手持ちはある。岩塩もその一つ。そして刷り込んで馴染ませるのもイメージでなら焼き加減までイメージで加工可能。なんというか万能家政夫?
「それ私も欲しいかも」
「バウッ」
いい臭いに釣られてサマサさんどころかアスターまでお目覚め。こっちにはソーセージをだして食べさせてやる。串焼きは後2本だして一人1本、村民Aさんとアルケも夜食タイム。
「食べ終わってからでいいけど女性陣をこっちに案内して、倉庫の方は改装して炊事場になってる。暗いから今日は探検はなしね。それでこっちのだけど」
といいながら村民Aさんをブロックの入り口から押し込む、その後に続くアルケ。精霊光球はいい感じで先回り。
「とりあえずこんな感じなら寝床になるんじゃないかな?
なのでそういう感じで引率任せた」
「えーっと、何とかやってみます。っていうかいつも私ですよね?」
そのあたり諦めたが納得というか疑問な村民Aさんが尋ねる。
「んー? たまたまなんだけどなぁ。なんかちょうどいいとこに認識できる娘がいたからね、名前聞いてないけど聞いちゃったらもっと押し付けちゃうけど?」
誰でもいいとぶっちゃけるアルケ。実際、誰に任せても大差は無いだろうけど。
「そんなわけだからよろしくね」
とっくに食べ終わったのを見て更に2本串焼きを追加するハガネ、1本はアルケが掠め取る。
***
女性陣を任せたので北面の堀のU字ブロック化工事を済ませることに、その前に。
「道具で不足とかあった?」
倉庫前に積み上げられた鍋や鍬を残らず取り込み、さらに広場入り口に積み上げられた石材も取り込だハガネが聞く。
「シャベル、鍬、もっこが今の3倍は欲しいかも。今日も少し足りなかったし」
アルケが答える。
「んじゃ適当に出しとく、石製でどうにかなりそうだった?」
「シャベルは男性向きの重さだったみたいだけど他は使えてるね。全部3倍作っといて、アレは棍棒というか石斧としても使えるからどうにかなるし」
「そういうことなら鉄は温存しといていいかな」
といいながらバラバラゴロゴロと出し積みあがる道具類。
「あっさりできるのはいいけどなんというか豪快よねぇ」
ちょっとサマサが顔しかめている。ハガネとしては意外な反応。
堀を見ると壁面は斜面になっている以外はかなり綺麗に掘り進められていた。長さ的にはまだ80mほどではあるが5x5mの直線が綺麗に掘り進められている。
「底も押し固めてくれてるみたいだし、これならこのままでも後で酷いことにはなりにくいかな」
出来上がっている部分に一辺5mのU字ブロックを置き接合、脇にあった土砂を取り込み壁面との隙間み詰め、横倒しにしたU字ブロックで壁を作る、こちらは一辺3m。
「この形ってかなり使い勝手いいね」
出来上がった壁と堀を横から見て把握したサマサが言う。
「イメージしやすいから作るのも置くのも簡単だし、組み合わせるとか積み上げるのもわかりやすいしね」
狭間を5m間隔で開けて壁面は完成、一箇所だけU字ブロックを縦にふたつあわせて積み6mの塔を建てておく。底面に50cm厚のブロックを敷き圧力分散も期待してある。杭打ちはしてないがこのぐらいならもつかな?
2mごとに30cm厚の天板を挟み、最上階には柵だけつけてあるので実際は7mほど。屋上部分に柵をつければもう1mは高くなる。
内側に階段をつけそれぞれの階に狭間もつける。鉄筋なし、繊維のみでどこまで持つか不明であるのだが。
「とりあえず見本はこんな感じでいいかな、これ見たら延長上のほうもそれなりにやってくれるんじゃないかと思うんだけど」
「村長と顔役とは話したけれど、ここの倉庫群の南は川沿いの湾曲部、それを生かして大きめに囲うことにしてあるよ」
とアルケ。湾曲部で2面、橋とそこにつながる道で一面―広場の入り口はここ―、今作業した北面と川とをつなぐ北西の計5面。少し南北に押しつぶした形の5角形になるように掘る予定。
南の2面は後回しにして川を利用する形にすることもできる。
「形もいいしわかりやすい、なにより出来なくてもどうにかなりそうなところもいいですね」
感心しているサマサ。
「それじゃぁ明日以降はここは任せていい? ハガネ連れて北西と北東見に行くから」
とアルケ。伝令出してはいるけど実際見てみたいのもあるし、なにより顔を見てまわった方がいいと思っている。いや、顔を見せてまわった方が、か。ここまでの工事をするかどうかはともかく道具類の作成だけでもしてまわるつもりでいる。
「また村民Aさん捕まえていくの?」
勝手に行くより道案内他で村民つけたほううがいいし、わかってる相手の方が説明省けて楽なのもある。ただ、偏ることを心配するサマサ。
「いっそ名前聞いちゃおうかな? いい娘だし既に祭り上げられちゃってもいたしねぇ」
わりあい人事のように言うアルケ。
「首飾りを普通なのに交換したらそういうのも収まると思うけど」
***
皆が寝静まった後、やっぱり気になるから起き出したハガネが向かうのはブロックを積み上げただけの塔。見上げる限り壊れそうには無いが。
「地盤とかも気になるし壁面の強度も気になるしなぁ」
自分で作り出しただけに詳細まで把握済み。ならば、触れて取り込むと一体化した塔の全てが取り込まれる。
「できるとは思ったけどできるとさすがに驚きますね」
折角なのでイメージで徹底的に強化、というより一体成型とカーボン繊維の増化。カーボンの物干し竿のようなものを芯にする。
「建物の強化として思いつくのはこのぐらいかな、他にもあるけど材料がもったいないし」
残るは地盤。地下10mからレンガブロックの柱を立ち上げ接合。とりあえずは安心できるか。
塔の設置予定地の四隅、ちょうど壁の下を掘り下げていく。体の下を大きめに取り込みモルタル噴き付けの要領で抑えていくので生き埋めの心配は無い。10m取り込んだところでいっきに柱を体の下に出す、これもカーボンの物干し竿を芯にして強化したもの。計4箇所済んだところで一体化した塔を置きなおす。土台側面から掘り進んで杭との接合面を一体化もしておく。
ついでに一階にタワーシールドにモーニングスター、3mの槍を各30置いておく。全部柄は木製で先は石製カーボン強化済み。
U字ブロック
イメージとしては用水路(三面水路)に使われているような物。
2m角や3m角、5m角は外寸で正立方体の3面切りとったような形。厚みは30cmほどを想定。
サイズ変更し規格統一します。(10/18変更)
建築物内壁の補強:外寸2m角、30cm厚
堀:外寸5m角、30cm厚
壁:外寸3m角、30cm厚