第22話
■ハガネ■
たゆたってたらクルスさんに説明求められました。
取り込んだから元とはずいぶん違う物渡してるのはわかってたけど、元の記憶からよさそうな物を再現してみたってことで、分類上コダチでいいとかも適当に。
何でコダチx2にしたかって?
『金髪ロリっ娘くのいちがコダチ二刀流で森のなか駆け回るとかさいこー』
記憶の底の声がそんなかんじで涌いてきたのでやっちゃいましたよ。
刃がドラゴンのウロコなので引き切るもよし、叩ききるもよしだと思うんだけどね。まだ試し切りとかしてないみたいだったので、適当に木の太さとか変えたカカシをだして見た。
「モノがモノなので雑にあつかっても大丈夫だとおもうのよねー」
■クルス■
ふむ?コダチというのか。昔見た記憶のものとは違うような。まぁ似た物ではあるのだろう。
何やら細木で雑に組んだヒトガタの物を数個立ててくれている。試し切り、ということだろうね。とりあえず一振り片手で持ち、真上から横に伸びた腕木に叩きつける。
カンッ
連続して数回っ。
カッ、カカンッ
左右から縦の軸を。
カカンッ
振り回して当てるだけで気持ちよく切り飛ばしていく。直径5cmほどの木とはいえもう少し抵抗感じるものなのだけどね。分厚いけどその分適度な重さもあるからだろうか。
■ハガネ■
叩き切るのもいいけど引き切るのもいけると思う、なので
「クルスさん逆手で持ってすり抜けるような感じでやってみて?手首を軽めに、なんていうか小指側に曲げて抜くような?」
新たにカカシを出しながら言ってみる、木材も10cmにサイズアップして革鎧つけた物。
■クルス■
ハガネの言う逆手に変えてみる。
うーん、これだと重心が肘の方に来る感じ?
刃渡りのリーチとか関係なくて密着に近い状態か。振り回すのはかなり厳しいね、やるなら体軸をかなり捻らなきゃならないかな。この持ち方だとハガネの言うとおり移動してすり抜けざまの方がいいかな?
わざわざ革鎧つけてる以上あれを切れということよね。ただでさえリーチなくなる持ち方なんだけど試しに斜めに一歩、更に踏み込む感じで。
スパンッ
どうにも力入れて振りぬくようには無理なのだけど革鎧は綺麗に切れて大口開けている。もう一度順手に持ち直し腕木を刃で叩きながら考える。ドラゴンのウロコだからだろうけど、こんな力も入ってないような当て方でも5mm~1cmほど食い込んで当てるたびに削れている。刃は鉈みたいな感じなんだけどずいぶん鋭いというか立ってる。
カツ
そういえば引くとかすり抜けるとか抜くとか言ってたね、木に当てて止めたままの刃を滑らせて。
スゥ
簡単に1cmほど食い込んでいく。抵抗感は、刃の厚みの分だねこれ。
革鎧に斜めに刃を当てて今一度軽く引いてみる
スルゥ ストン
刃の半ばほどまで食い込むというか切り開くというか下の木もかなり切れてるね、これ。
逆手だと超接近戦かすり抜けざまに切っていく感じかな?順手でも叩き切るより当てて引く、元から滑らせるように当てる方がいいか。力で振り回し叩き付けるわけじゃないから短めの剣、微妙な曲線もその為か。それにしても刃はホローグラインドじゃなくコンベックスグラインドなのよね。叩ききる設定なのにここまで切れるとは、ドラゴンのウロコってすごい。
これ使うなら動きはかなり見直さなきゃならないわね。
それに、魔力を刃に載せるとたちまち縁に見えているウロコが輝きだす。
これで切るとどうなるか?
軽く上段から振り下ろすように。
ブォン
刃を当てた手前のヒトガタは抵抗もなく両断。
さらに”何かが”飛んでその3mほど奥奥のヒトガタも両断されている。
「ハガネ、これなに?」
■ハガネ■
クルスさんに引き切る、を試してもらってたのを見る限り蛤刃もうまくつけれてるみたい。鉈とか斧みたいに叩きつけて使う刃物の刃のつけ方なんだけど日本刀はこっちの刃付けなのよね。
研ぎ上げればカミソリとまでいわれるぐらい切れるのはおなじみだけど、アレは観賞用と言われるのも事実、包丁でも鉋でも鑿でも、本職の人は上げ砥で研ぐからそういう刃だと綺麗に切れるとかいろいろあるけどね。
どーでもいいけど、一般家庭に一つ置くなら800~1000番の中砥で十分、赤いレンガみたいなやつね。酷い刃こぼれを研ぎなおすのは無理だろうから荒砥はいらないし、毎日研ぐことないだろうから上げ砥は意味ないし。そこまで研ぎ上げられないってのもあるか。中砥の方がかえって食いつきはいいから完熟トマトとかも綺麗に切れるしね。
ちなみに実戦向けだと”寝刃を合わせる”とかいってわざと刃を荒らします。この辺はせいぜい肉とか皮膚に布服、精々革鎧切るかどうかで鉄製甲冑切断とか関係ないけど。
大幅に脱線してましたよ。
で、何と言われても魔法がらみはさっぱりなわけで。
「さー?」
これ以外いいようないのよね。
***
■クルス■
ハガネに魔法がらみのこと聞いても答えかえってくるとは思わないけどさ。とりあえず離れたところにあるヒトガタ見据えて何度かきりつける、と言うか振り回す?
そのたびに緑の輝きが飛んでいって着くと同時に切れてる。
ほんとナニコレ。
リーチ短いとかおもったら飛び道具だった、何がどーなのかさっぱりすぎる。
魔力の込め方次第で距離とか変わりそうな感じもあるね。今のところ5mぐらいは”切れる”みたい。それ以上は叩きつけてるような感じかな?ある程度の距離で拡散しちゃってるっぽい。
とりあえず把握に努めて理解はあきらめよう。
とにかく”切れる”から使いこなせればこれほどいい物はないからね。短いのも狭いところで使えることを考えれば利点でもあるわけだし、飛び道具つきなら問題はないとも言える。
「ところで、これってどうやって持ち運ぶのがいいの?」
■ハガネ■
やはりそっちも引っかかってましたか、鞘はとくに何もつけてなかったし。
「とりあえず帯かベルトに挟むような感じかな?位置は腰の横か真後ろとか。クルスさんが剣を携帯してるのってベルトに挟んでるだけだよね、位置はいつも違ってたからどうするかわかんなかったし抜け防止に紐とかならつけますよ?」
■クルス■
とりあえずベルトつけてどう保持しようか考え中。二本使いたいからどうするかな?
両脇に一本ずつ、だと邪魔なような気もするね。
腰の後ろでクロスさせるか。しまう時は”鞘にひかれるような感じ”で勝手に収まってたから見にくくても大丈夫だろうし。
「ハガネ、紐かなにかで鞘が抜けないようにしてみて?」
■ハガネ■
ぷりん、とお尻を突き出すというかしゃがんで振り返るので見えそうなものは見えないというか。
お気づきでしたよね?
クルスさん湯上り全裸ですよ?
今は腰に太めのベルトをつけて小太刀を二本挿してますが月明かりの下白いスベスベの肌、茶色い革のベルトがアクセント。鞘が黒漆とかだとさらに引き立ったろうに惜しい状態ですよ?
お尻から腰骨のとこの窪み。
いいよね、ここ。
もーそーがー。
「えっと、あの、鞘ぬくとかはどうするの?」
あせりながら聞いてみるとベルトごと外すから固定しちゃってとか。なんとなく鯉口の下に紐巻きつけて固定してそれで括るというか巻きつけるように末端に根付みたいなのつけたから抜けたりはないかな。
「そろそろ服きないと風引かない?」
良心最大限発揮っ。