第20話
■クルス■
アルケに追いついたら早々に川原で解体準備にとりかかってた。
といってもキャンプ地より少し下流の広めで枝ぶりのいい木もある場所で寝かせてるだけ。
うーん、また生傷ついてますけどふさがっていってますか、本人気にしてないというより気づいてない? 治癒力あがってるならいいのか、とりあえず先に解体。
助手にサマサでなくハガネを連れてきたようですね? 手をかりるのでなしに何するつもりでしょうか。ま、手のほうは私がいるから大丈夫なのでしょうけど。
まだ血抜きすらしてないというか仕留めてから10分ほど?
山突っ切るとしても異常な速さですが後ろ足縛ってぶら下げて血抜きです、時間が勝負なので早いのはいいことだし。
ハガネに大鍋出してもらって血を受けて、ブルートヴルスト用?
大鍋やら木の板やら道具類はハガネががんばって作ってるみたい、反則。血のほうはもう抜けてますかね、さっさとおろしてお腹を上にしてナイフで切り裂いて、あの縞々のナイフでか、余程の切れ味なのか切り口開くのに間がありまね。
肛門まわりを大きめにさっくり切って食道と心臓掴んで引き出して、胃~腸を丁寧に内容物こぼさないように抜き取って。アルケさんはそのまま洗にいくのか、さすがに肛門付近は廃棄してます。心臓に肝臓や肺などの内臓はハガネが取りこむの?
大丈夫?
意識しなかったらきもちわるくない、慣れた?
まぁいいでしょう、腹まわりの掃除済ませたので皮剥ぎにうつりたいところだけど、ひとりで吊るし上げるのはちょっとしんどいね。アルケが戻ってきたので手伝ってもらおう。
胃と腸はというとフックで固定して川に漬けたまま、ロウトで水集めて中を洗えるようにしてある? とりあえずおいとけばいいなら楽です。
というかアルケの手際すごい、一緒になってから狩にいくのは私が主だったし、大物はあまり取らなかったというかウサギか鳥で十分だったし見る機会なかっただけなんでしょうけど足首に切れ目いれてひっぱて皮剥いて首もあっさり落としてますね、頭とか埋めます?
ハガネみて笑ってまるけどってそういうの全部取り込んでもらうのか、となるとあとは肉の切り分けとかですが適当に骨外して部位に分けて一食分にしてハガネに取り込んでもらえばOK?
保存食とか急いで作る必要がないのは楽ですね、反則ですね。
あぁ、屑肉とかは叩いて血の鍋へいれて取っておきの小麦粉入れて、内臓のうち、肺を出してもらって刻んでそれも追加で。
香辛料は入れませんか?
人間だけなら入れるけど子犬のおやつにもすると、なるほど、塩も入れないのですね。
アルケが腸の洗浄がんばってくれましたので詰め込み作業、ハガネがロウトと柄杓を出してくれてるのではかどります。サマサに鍋で湯をわかしてもらって詰め終わったものを破らないようにゆっくり湯がきます。ネギとかニンニクとかショウガの葉を一緒に入れたいとこですがちょっとガマン。ついでに屑肉や収穫したタマネギと米を煮込んで食事のしたくも任せる。黒パンなどの保存食は残しておくべきですし。
この森はいいけど平野部でどこに出るかにも寄りますが竜が多いとまともに食事できませんしね。行きとは既に別ルートですが川沿いに東へ出て、なんとか竜を避けて、ディファレイの北、ヘロナマウトに向かうべきですかね。
今の位置から真っ直ぐ南下して樹海の縁を移動するなら行きと同じようなルートですがちょっとしんどすぎ。
飼葉とか積んでたものは行きだけで無くなってますし、森のなか行くのはちょっと無理ですね。
そうそう、アルケは腸やらなにやら担いだりしてそれなりに血まみれなのでひん剥いてお湯ぶっかけてきました、今はハガネと湯船に浮いてます。
肌むき出しだった部分に生傷がそれ以外でも打ち身がけっこうあったけど既に治りかけてるみたい。回復力は上がってるけど体そのものは元のままなので、山駆け抜けてぶつかったダメージそのまま受けてるみたいですので注意だけはしておきます。
***
■クルス■
ごはん出来たのでフロで伸びてるアルケ引っ張ってくる。いくら気持ちよくても半裸はやめてください目のやり場に困ります。ハガネがなんかちらちら見てますよっておとこのこ?
子犬も起きられる様になってるのでハガネに鹿肉ちょっと出してもらって刻んであげて見ます。
さすがに回復はやいね。
で、のんびり食事も終盤にアルケが切り出したわけだけど。この後どうするか、はサマサも私も考えてはいた。結論なんて出てないんだけどね。ただまぁギルド長には話し通したほうがいいのは当然だし依頼の事後処理もできれば任せてしまいたいというのも。背後関係になんかあるんじゃない?っていうのは皆同じ意見。
「馬と積荷のことだけど、荷のほとんどはキャンプ用品とかが主なのでどうしちゃってもいいだろうけどハガネが取り込んだままの鎧とか、なんか死体ごととりこんでるらしいけどなんていうかね、一番肝心の呪い関係の装備、特にドラゴン死なせかけた槍は隠すべき?
倒せる、っていうことになると再襲撃ありえるかな?」
いっそのこと入り口から出たところで即やられちゃったとかでいいか。
洞窟出ることなく逃げ帰ったとかでドラゴンのウロコの装備は洞窟で拾って帰ったとかにして。なんか凄いの作ってもらったけど、普通に作れない以上もう一ひねりいるわ、もちろん手放すとかありえないから考えるんだけど。
ヘロナマウトでこっそり預かってくれるといいけど、なんかね、いい子たちだし馴染んでるし。私たちが連れ込んだとならなければ大丈夫かな?ヘロナマウト砦に入る前にどこかの開拓村へ預けるとか、北は軍が常駐してるようなとこの方が多いから無理かな?
やっぱりギルド長をどうにかして捕まえてはなししないとややこしいことになると思う。
「最悪は私が連れてディファレイまでいくから、そっちはアルケとサマサに任せる」
サマサの意見は。
「ハガネのこととかその能力に知識は完全に隠す、ドラゴンは死にかけたことなんかない、剣士とかあっさり処理した、私たちは余裕で見逃された。というか、後始末の報酬で装備もらったでいいんじゃない」
だそうだ。
他にでた意見としては、死体とか装備とかは森の中に埋る、移動ルートは適当に誤魔化す、帰りにヘロナマウト行くのは皆が賛成あそこは余計な勢力争いする人だといてられませんし、あたり。
***
■ハガネ■
なかなかむずかしー話題ですねー。
もっともここの事はさっぱりなので被保護者としてはくっついていく以外は無いわけですが。
「なんていうか出たとこ勝負なきもしますよ?いろいろあったこと無視したら巻き込まれただけともいえるし」
目立つのはボクだけ?
アルケさんの右手首とかわかっちゃうの?
ボクの作った装備もめだつのか、デザインがじゃない?
ドラゴンのウロコだから?
見せなきゃ大丈夫じゃないの?
「ていうかね、もっと大事なことあると思うのですよ?」