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Blood of Dragon  作者: 居反り
第1章
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第2話 (女戦士回想)

■女戦士■


 手持ち資金が底になりつつあるので、そろそろ次の仕事をとギルドで仕事探し。洞窟探査で回復役複数募集というのがあった、金額はそれほどでもないけど、お宝はあれば分配、入り口付近にはスライム程度は確認済み。

 募集している依頼主はこの金額の依頼にしては十分以上のパーティ、剣士のリーダーにガーディアン(回復兼務)x2、スカウトx2

 魔法系が手薄なこと以外だと無理しなければそこそこの迷宮でお宝さがしもできそうな面子。ポーションとか持ち込んでおけば堅牢なことこの上なさそう、魔法の回復役と補助役の余裕がほしいという依頼なのは安全策らしい。


 私たちのパーティは戦士である自分と魔法使いに神官。神官なんていうと怒られるが、かなりそれっぽい系統の魔法が得意なので説明がめんどうな時はそう言ってる、神の御恵と精霊の助けの違いがわかる人なんてそういないし。

 私たちのパーティは全員女性で普段はフィールドでの狩や採取がメイン、たまに討伐任務の末端に組み入れてもらったりもする。魔法使いも回復はけっこう得意分野なので二人の護衛ということで三人雇用を交渉してみた、回復や補助の魔法使いは希少だしね。

 渋られるかと思ったが簡単に実技チェックのあと一人分上乗せ、しかも半額先払いで装備充当しておいでというなかなかの高待遇。スカウトとガーディアンが付き添いで付いてきたけどかなりの紳士っぷりだったのでイヤな気はしなかった。


 道中はスカウトが先行、魔法使いと神官以外で夜の見張りを交代。女だからというあつかいでなく、回復役がなるべくベストの状態を保つためとのこと。

 討伐軍でありがちなセクハラもいっさいなく簡易天幕でザコ寝も気にならなくなるぐらい。ただ、剣士の装備は絶対触れるなってのだけは厳しかったのと、ガーディアンふたりの盾がかなりのモノだというのが気がかりではあった。もっともあまりの紳士っぷりに「どこかの元騎士と従士なのかな?」なんてこっそり話してたけど。


 問題の洞窟はかなり深い森奥、街から1週間ほど。樹海を深く入り込んだ先の山の中腹、ちょっと神秘的な感じさえする静かな山。ここまでくるのに獣には出くわす、というかスカウトが本領発揮でゴハンにとって来るぐらいはいたけど。

 魔獣の類はまったく、気配さえなかった。

 街の付近は何か出れば即討伐軍がでるのでおかしくはないんだけど、ずいぶん奥まで来ても一向にそういった気配がなかったのが不思議だった。


 ただ、入り口周辺にすこし争った後とちょっとヤな感じが。

 付近に馬を繋ぎ簡易結界を張ったりして拠点化、移動中にはつけなかった重装鎧を出してつけたり、装備を整えなおしてるあいだにスカウトが二人ですこし先行偵察、ものすごく段取りのいいパーティー。


 戻ってきた二人によると、別ルートからきたゴブリンの一隊が先行してるようだとのこと。周囲には残りの気配はないので、食事と休憩の後さっそくアタック開始、スカウト一人が先行、そのすぐ後ろにガーディアンと剣士、つぎに私たち3人、殿にガーディアンとスカウト、基本的に私たちを真ん中において、先行と殿は適時交代。ゴブリンに追いついたらガーディアンは前に出てスカウトと私で後衛の護衛ということに。


 洞窟というより何かの坑道のよう、自然にしては広いし歩きやすい。途中、山にしたゴブリンの死体があったけど邪魔にすらならない広さ、元の生物とかはコウモリにスライムぐらいなのかな? 何にせよほとんどいなかったみたい、前衛の戦闘も2~3度あったけどあっという間におわってたようで呼ばれることも無かった。


 最後が一番大きな音だったがそれも一蹴だった。

 さらに広い空間、というか空洞? その奥に山になったゴブリンの死体。蹴り上げ血のりを拭き、装備の確認を淡々とするガーディアンと剣士。


 ちょっと異様な雰囲気に飲まれていると、後ろから肩を押され死体の反対側の壁際に座らされ、右手だけ掴みあげられ、そこにきた剣士がナニか呟きながら私の手のひらに杭を打ち込んだ。手を貫きさらに岩盤があるというのに、何の抵抗もなさげに。更に、壁に2本、床に4本打ち込んだ後、私のお腹に剣を突き立て。


 あっさり切り裂かれた。


 血の付いた剣で杭の頭を呟きながら叩き、禍々しい結界が出来上がる。


 魔法使いと神官は後ろ手に拘束されていたが、その見開かれた目と大きく開いた口が何か叫んでいるようで、きっと全部見せ付けられ、それでも私を案じてくれて。






 たぶん私は人質なのだろう。

 この先にいるモノとの戦いから逃げ出さないための。

 全力で支援させるために。


 逃げ出したくなるような何か。

 二人が連れられた後から聞こえる雄たけびに咆哮。

 地響きだって凄い。

 天井部分から小石だって降ってきてる。


 本当にイヤになる。


 きっとここはドラゴンの巣だったのだろう。

 それも地脈に根ざす善とはいはないが決して悪ではない。

 この周囲の雰囲気もそう、凄くキレイだった。

 清らかだった。


 それは、この地を統べる龍が善きものであったから。

 きっとそう。


 悪龍ではけっしてない、たぶんお宝を溜め込んだりはしていない。


 欲?

 名誉?

 龍殺しの称号でも欲した?


 鱗をはぎ牙を抜き骨を採り肝を血を肉を奪い。


 金に換える?

 龍を食らって力とでもする?



 何にせよ、よからぬ思いだろう。

 でなければこんな禍々しい結界など使うはずが無い。

 人質にとって見せ付けたりなんてするはずが無い。





 たまたま私たち3人が応じたから。

 もしソロの回復技能持ちたちが参加していたらどうだったろう?

 欲がつよそうならエサで釣るだけだろうか?

 ガーディアンの盾もやけに重厚で、なんらかの魔法陣が仕込んである風だったな、そういえばスカウトの装備も普通じゃなかったな。


 ふたりに首輪つけて引っ張っていたようだったし。

 みな、ああいう呪いの扱いにたけていたのだろうか?

 ああやって縛り付けるつもりだったのだろうか?


 酷いことになってるんだろうな。

 私みたいに地面に縫いとめられてるのかな。

 首輪と鎖でつながれてたら逃げられないよね。


 助かりたければ。

 全力で前衛の回復を、補助を。

 そして剣士を死なせないこと。


 呪いの杭や首輪をどうやって外すか。たぶん、しっているのは剣士だけだから。


 私にかけられた結界もそう、足手まといだと判断されて、でも人質にはなるからということだったんだろう。



 ずいぶん長い間続いた音と振動が、気が付いたら無くなってた。

 二人は無事だったろうか。


 ちゃんと外してもらえただろうか。


 それなのに、何の音もしなくなってる。

 気配はある。


 大きなモノの気配。






 そういえば禍々しい結界は消えうせてた。

 相変わらず右手は縫い付けられているけれど。

 それと、これはなんだろう?

街から2週間を街から1週間に変更(15話にあわせます)

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