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Blood of Dragon  作者: 居反り
第1章
18/32

第18話

■サマサ■

 子犬は落ち着いてるみたいです。

 今日も朝から《癒しの手》をあてて煮戻して磨り潰した干し肉食べさせときました、体は両手のひらで掬えるぐらいのサイズなのに足は太いですね。犬だとしてもかなりの大型犬でしょうか?

 さわると骨が目立つけど毛はもふもふに戻ってます。そういえばダニとかついてなかったですわね? まぁ、いいことなので置いておきましょうか。


 そうそう、クルスさんは狩に行くとのことで暫くここにとどまる予定です。アルケさんはミントを干す柵を作ってくれてます。


 この間の探査によると森を抜けるのは川沿いに行くならあと2日ほど、斥候とか必要ないけど移動距離は短めにしてます。整備された街道だと1日といったとこかな、行きは最初森のなかを移動したり常に斥候だしてたりで慎重だったし。

 そもそも森と平原の境目付近は竜(大型爬虫類)が群れてるし。

 ハンマーテイルにレザークロウとか厄介すぎますわね。

 草食のハンマーテイルは繁殖期以外は大丈夫なのだそうですが体高2mで体長10m、けっこう硬いウロコと大きな瘤がある5mの尻尾を振り回すので近寄りたくない竜ランキングがあればTOP3の常連かしら、群れでいるから余計ですわね。

 レザークロウは体高1mほど、尻尾のばして全部で3mぐらい、肉食で10~15匹の群れで獲物を駆るハンター。小型種だけあって樹海の中まで追ってくることもあるけど、基本的に草原走り回ってますわね。脚が短い(距離的な意味)ので逃げれば助かる確率はたかいのが救いかな、でも生息地を抜けるまでキャンプできないのは痛いですわね。


 行きに竜を避けるために樹海を迂回して森を抜けたのは仕方ないこと、普通なら森の奥は馬で行くようなところではないんだけど、獣道だったのか森の中にしては歩きやすかったわ。

 畑跡が残ってることからしても、ちょっと昔はこのあたりまで人が入ってたって事だし今は忘れられてるけど昔はそれなりの街道だった可能性もあるわね。

 ドラゴンの山の入り口の洞窟も人の手が入ってるような感じもあったし、広さが一定でそこそこ広いのが何よりの証拠ですね。あそこへ行くためだけの街道ではなしに、ノスグランデ方面への街道かそのわき道だったのでしょう。

 樹海に埋まるまえにゴブリンとオークに落とされた国だけど、海を挟んだ向こうにあるドワーフの国との貿易拠点だったそうですから。

 陸路の山越えですがかなりの交通量はあったはずです。今となっては陥落の主原因はタブーだから近寄る人もないかしら?


 柵のほうは出来たようなのでアルケさんのところに行きましょうか。


***


■アルケ■

 ミント干す柵は竹があったので簡単にできた、干したり選別したりはサマサに任せ馬のブラッシング中、8頭いるのでけっこうな仕事。

 右手でやると力加減が大変かも。昔だと力入れてやらないとマッサージにならなかったんだけど、今は意識して軽くやらないと力が入りすぎる、癖になってる行動は注意しなきゃならないか。


ザッザッ


 筋肉にそって上から下へ。

 3頭ほどブラッシングして慣れてくると、力加減も無意識でOKになるね。私たちが乗っている馬、これは街の外のギルド系牧場で借りてきてるもの、一種の保証金で借りてるからそのままにしてもいいんだけど。

 生きて帰ってきて何の報告もなしだと廻状回される可能性もある、少なくともアルモレッドセルラ内では。



 アルモレッドセルラは今の落ち着き先、ヒレアスト平原北西部に位置する都市国家連合、街といってるディファレイはヒレアスト平原を蛇行し流れるクトレー川最上流の都市国家。

 そしてギルドは傭兵ギルド、というと物々しいけどわりと何でも屋の請負業者の元締め、他の業種のギルド=組合は頭にその業種をつけて呼ぶのが普通、何もなければ傭兵組合を指す。

 請け負っているのが交易ルートでの護衛や特定時期(竜の繁殖期等)の村の守備にはじまり薬草採取(微妙に危険)や夜間の警邏なんかも、引越しの手伝いなんてのもあったりする。


 このあたりの国では国民皆兵かそれに近い方針をとることが多い。

 もっとも兵役期間は3~5年で街道整備や城壁補修が主、主要街道の巡回警備が危険度高めな任務、ゴブリンやオークの襲撃はいつあるかわからないけど、運がよければ任期中に起こらないことも。

 あったとしても討伐任務としてギルドにも出すし、軍からは志願者で編成となるため、不向きなものや、やる気ないものが混ざることはまずない。


 最低限の読み書きと武器の扱いや集団戦の基礎は叩き込まれるものの、余程でもない限り兵役拒否するものはいない。

 座学にせよ土木にせよ、勿論武術もそうだが何かに秀でていれば引き抜き専門教育を受けさせ取り立てられる。

 おかげで二男三男などはけっこう必死だったりする、軍属女子にいいとこ見せたいのは男子の性。報奨金を貯めたうえに、うまく行けば嫁連れて帰れるってのもある。

 これは女子にもいえること、おおよそ12~20歳のうちに集められて一緒に座学を受けたり軍務に励んだり、寮はとうぜん男女別で徴兵中にできちゃったとかだとかなり厳しい罰があるから自重はするが(むろん、主に男の責任が重く取られる)色気づくなと言う方が無理と言うもの。

長男や一人っ子などは税金増額で回避も可能だし、入隊年齢もかなり猶予がある。

 安定しない時期の村は免除されるというか、逆に軍から人員を派遣されてくるし、そのまま村民になる例もけっこうある。


 富国強兵が国の方針であり国全体の安全と富を底上げするのが目的である、兵役以外の税もとうぜんあるが、それで赤貧の奴隷労働などありえない。

 明確な外敵がある以上軍備はそれなりに必要になるものの、全周防御が不可能である。

 軍事訓練に馴染んだ人数が多ければ拠点=各村ごとの防護を上げることにつながる。

 それゆえの国民皆兵であるが弱兵でもあるので徴兵は人手が必要な事業、街道などの建設や維持にまわり、不足する軍事力を傭兵で補うことになる。


 傭兵は軍に残らなかったが武術専門になった者の受け皿の側面でもあるので、ギルド=傭兵組合は国が積極的に関与している半官半民な組織ともいえる。

 国をまたいで移動する者も多いけれど、連合国内であればどこでも受け入れられるので隊商の護衛なども気軽に受けられる。


 つまり、いろいろ投げっぱなしにすると敵を作りすぎて非常にめんどくさいことになる。

 身元保証とか仕事の請負ができなくなるのは痛いし、どこの村でも歓迎されなくなるのも痛い。


 それに今回の依頼主、あれの後ろが問題だよねぇ。

 今ブラシあててる馬もけっこういい馬だし、アヴァーム教会とその騎士団の関係者だとめんどくさすぎる。

 ヒレアスト平原にある国家や連合国の多くに支部があり、国政に食い込んでるところも少なくない。多少の派閥争いはあるが神敵認定されるとそれらの地域にいられなくなる。

 どこかのサリーネ(在来神の秘密結社)なんかのほうが厄介かもしれないけど、これだけの馬だと貴族のお抱えなんてばあいもあるので困ったところ。


 ディファレイはヒレアスト平原北西部の連合国、アルモレッドセルラのハゼルスワム郡でも最北端の都市国家、この先の村は砦でもあるヘロナマウトだけ。

 竜にゴブリンやオークの南下阻止と排除が目的の砦であり、開拓村でもある、周りに小集落もなくはないけど、そこより北は未開発の平原と森しかない。

 過去の都市国家跡や街道のなごりはあるにはあるが、修復したり再確保するだけの余力がないのが現状である。

 過去の大撤退戦、60年は昔の尻拭いをやってるのを皆わかってるからか、ディファレイでは教会勢力はそれほどでもない、それでもそのことが街の人の口に出ることはない、南の方では神敵認定とまでいかないが、批判者が中央広場に転がってたり川に流れてたりもあったと噂されてる。派閥の中には孤児院の運営や修学院(入信が義務だけど格安の学校)神学が必須だけど魔法も教えてもらえるのでここ出身のギルド登録者もけっこういる。

 知らない人にはけっこう人気、というか今だけ見ればすばらしく見えるのよね。


 ここいらのギルド長は大抵教会とは無関係というか距離とってるから、特にディファレイのギルド長はヘロナマウト出身かつ先の戦争の生き残りらしいからなんとか話し持ち込むか。

 みょーな縁のある爺さんだから話だけは聞いてくれると思うんだけど。

「セクハラ爺だしなぁ」

 なんかため息でるね。


 ハガネのことも私の身のこともいろいろ秘密にしなきゃならないかな、サマサとクリスもおおっぴらにできない力得ちゃってるし。ハガネ特製装備喜んで使ってるけどこれも隠すべきか?

 馬どうするかってのは些細な問題すぎるなぁ。

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