第17話
■アルケ■
ハガネは休憩地点=ハーブ群生地まで熟睡してた。
川原も広くなってるし山肌の崩れた跡もある開けた土地だし種類も数もけっこうありそう、今夜のキャンプ予定地はここから1kmほどらしい、なので時間は日が傾くまで使えるかな?
後で売ることも考えて多めに採取したいところね。というか、街には帰らなきゃならないけど途中で小集落でもあれば食料と交換したいし。
食後のお茶の後でそれぞれの判断でとってくることにする、荷だけの馬は5頭もいるしその上に積める量となるとけっこうある。もっとも移動のたびに積みなおしがいるのと、3人で取れる量も限度があるのだけれど、肉の補充を積んでいく余裕も欲しいしね。
サマサとクルスはミントを収穫しに川原へ。
ということで、目先の違う物として木陰の方を攻めますか、川なのかにワサビが見えるけどハガネに取り込んでもらって保存できるかな?
というかあの子にまかせたらごっそり全部いけそうだけど、後のこと考えるとどうかな? ここに人が入ることはまず無いので回復可能なところまでは採取しても大丈夫そう、見せ荷は乾燥物が向いてるからワサビはなくていいし、山の中で安全な場所が限られるというか、分け入るだけでもかなり苦労するので超高級品だ。
うん、悪い手ではないねちょっと連れて行きますか。
わさび畑(跡地)ね、ずいぶん前に放棄されたのだろうけど、というか半分ぐらい埋まってるのかな? それでも本流の脇に水路を作ってあるのがわかる、不自然だし護岸部分にはショウガもあるみたいね。
森に呑まれた開拓村跡?
山奥に馬でこれるのがおかしいといえばおかしかったんだけどねぇ。
山脈の北のノスグランデが樹海で埋まる前とか? それだと60年は昔のことよね。
考察より収穫優先、ワサビのほうはハガネに任せて斜面を見ましょうか。シダがずいぶん覆ってるけど時期が早かったらワラビ取れてたな、っていうかニンニク?
うーむ、こういうとこにあるとは。
条件があえば自生できるらしいけど、あんまり見かけるモノじゃないし、産地で有名なのは北のグランバックだし交易品でけっこういい値段するし。とにかく半分、半分間引く感じでいただきましょう。
しばらくすると川原でハーブの収穫していたサマサが呼びにきた、なんでも対岸の山肌がどうやら畑跡らしくいろいろ採れそうだと。
こっちの収穫は適当に抜いてあとはハガネにお任せだったのでずいぶん掘り起こせてる、そろそろ切り上げ時でもあったのでハガネ抱えて移動。
川に浸かってたからだろうけど程よく冷えてて気持ちい、というか「食べたらおいしいかも?」
なんて言ったらぷるぷるふるえてるわ、逃がさないんだけどね。
シャツの中に抱え込んでにかかえてぎゅってしてあげる。
サマサに「妊婦さん見たい」って言われた、ちょっとショックかも。
川を渡り岸の草をかきわけていくと石で組んだ段々畑の跡。確かに、川原にハーブの範疇に入れていいものがいろいろ群生してはいたけどさ、木の侵食を受けてるとはいえ野菜の栽培地跡だよね、これ。
トマトにバジルに唐辛子にローズマリーと玉ねぎもあるわね、穀物と牛馬か羊の放牧できればすぐにでも移住できそう。
ということで根元から切り飛ばしたハーブ(雑草こみ)を纏めてたクルスにハガネを任せる。ハガネかかえて走ってれば勝手に収穫なのでいいでしょ、その代わりタマネギ掘りでもしてますか。サマサはミント束ねて持っていってるわね、見せ荷のぶんだけでいいのだけど、移動中にも干せるしミントティー用にもするのかしら?
っていうかちょっと時間超えそう、キャンプ地探さなくていいからギリギリでもいいのだけど
その側に行かなきゃダメなとこもあるんだし。
***
■クルス■
結局日が落ちるまでかけて収穫とか積み込みとか、山間部で森なので日が落ちるのも暗くなるのも早いんだけど。
ここでキャンプも悪くない場所なのだけど、昨日の探査で精霊に薦められたのと、いってほしいって場所にも行かなきゃならないし。
来てみれば薦めるのもわかる、さっきの畑並みに開けたところなので月だけで十分明るい大きく枝を張り出した木とその下に平たい大岩。
かまどの一つでもつくればゴロ寝でじゅうぶん、さっそくアルケがそのあたりの準備始めてた。
周囲の安全確認は必要ないみたいだしけど、何があるかよく分からないので手が空いてるハガネも抱え、サマサに付き合って森に向かう。
問題の倒木、というかその下。
呼ばれるわけだ。
岩と倒木のスキマから出られなくなっていたのは真っ黒な犬。
とりあえず犬ね、オオカミかもしれないけど丸まっててよくわからない、何日こうしてたのかわからないけど衰弱してるだけのよう。
どける、というかハガネが倒木取り込むだけであっさり救出。便利すぎるね、慣れない様にしないと。他にはいないようだし周りに親の気配もないし。
《エレメンタル・ディテクト》
サマサが呟く声が聞こえる、周囲の探知をするのだろう、範囲1kmぐらいで犬?の親を探してみるけど見当たらないみたいだ。
群れの移動から置いていかれたとか?
この時間でこれ以上の距離はちょっとね、衰弱してるのもあるから、わかっても置いてくわけにもいかないか。
抱えて戻るとお湯沸いてた、ハガネがすぐに石の皿とかボウルとか出し始めたので一つに湯を入れて冷まし、残りのお湯で干し肉煮出して塩抜き、石のボウルと棒で磨り潰してお湯で溶いて
先に水分取らせた方がいいかな。
サマサが子犬かかえて、あぁ《癒しの手》ね、水の精霊もそばにいるみたいだから食べられれば落ち着くでしょう。
あいかわらずサマサの《水の精霊の癒しの手》は凄いわね、ギルドの常設天幕でやってる《癒しの手》だと疲労回復とかが精々。
初心者の回復魔法講習の一環でやってるから格安だけど効果しれてるしね、たまに上級者がいるときは腰痛とか関節痛が治まるからけっこう行列できるけど。
彼女のは毒消しもできるし、時間かければ骨折治したりもするからね。
アルケがごはん持ってきてくれた、タマネギとニンニクのスープに黒パンにトマト、ネギは犬にやっちゃダメだから気をつけないとね。
この子が犬とは限らないんだけどさ、新鮮な野菜が手に入ったのはありがたい。長期移動だとどうしても野菜や果物が不足しがちになるし、肉が少々不足気味だしこの子の分も必要なのでここを拠点にして狩に行くべき?
くどくなるのでこっちに
トマトは中球以下の品種の野生化でプチトマトサイズ
トウガラシは鷹の爪等の辛いやつ
タマネギ、ニンニクは条件合えば増えるので特に無し
ミントの品種はハッカかペパーミントで特に指定無し、シソが周辺にないとだけしときます
《癒しの手》
某手かざしではないです
手のひらをかざす事で魔力の集中をしやすくし、その魔力で対象の魔力に作用する
《癒しの手》では回復を念頭において実行されるので疲労回復や軽度の治癒効果になる
使用者の魔力量やコントロールの力量だけでなく、対象の魔力も結果に影響する
料金は薬学講座で販売する疲労回復ドリンクとほぼ同じだが効果次第で増額
喫茶店のドリンク類の値段~4倍ぐらいが目安
講師や上級者の場合は治癒内容によりさらに高くなるが医療系魔法師の治療費と変わらない
サマサの場合、本人はちょっと意識してナデナデしてるだけですが
水精霊が勝手に手伝ってくれるので疲労回復やケガの治癒だけでなく解毒なども自動で出来てしまってます
大怪我などではちゃんとした治癒魔法の方が効果高いので《癒しの手》はつかいません