第10話 あらためて能力解説
■ハガネ■:独白
まだ全部わかったとかじゃないんだけど説明できるかもわかんないけど話してみる。
まず吸収。
これは体が触れて一群の塊だと認識できれば、包み込まなくてもOKみたい。わかりやすく言うと、斧だと木の柄をさわれば斧全部取り込めるってこと。材質の違う部分とかお構いなし、その斧についてる汚れとか錆びぐらいならそのまま取り込めるみたい。何かに食い込んだ斧、ってことになるとその何か以外は取り込めるって感じ。
そして吸収したものは体の中にあるようなないような? どう考えてもどこか別のとこに送られてる、異空間? とりあえず取り込んだときのままの状態で保存されてるみたい
次に解析。
これは斧だと柄が木だとか刃が金属とかはすぐに。柄の木の種類とか材質見てもわからないから硬い木だった事がわかるぐらい、元と同じ植物があるのかわかんないしね。
金属の方はもう少しわかりやすい。たとえば鉄とアルミの塊があったとしたら、どっちが何かってのはすぐわかる。アルミはたぶん存在してないと思うけど、天然モノが手に入ればなんとかなるかも。ありふれてて色とか重さの感じの違いってのが結構あるから、金銀銅もいけるかな?真鍮とかブロンズも大丈夫だろうし。元の趣味の記憶の影響でなんとなくいろいろわかるようなのが多いんだけど。
分解
これはかなりややこしい事になるかも。斧を柄と刃にわけるとかでなしに分子レベル原子レベルでできるみたい。
たぶんね。
理解できて意識できればその先もいけるみたいなんだけどね。そこまで踏み込めたらほんとに”錬金術”も成立するかな。
ここまで細かい分解はさっきの解析に次の生成ともセット。
一個づつどうにかできなくもないけどもっとこうぶわーってやってるってのがホントのとこ。
なんていうかな。
インスタントコーヒーの粉に混ざった粉ミルクの粒をさくっとより分けられたり砂糖とかを好みの配分で均一に混ぜ込めたりって感じ? それぞれを更に分解して別物にするのは”理解が追いつかないから”できないけど。
生成、って改めて書くけど。
そういう物をさらに変質させて塊にしたりとかもできる。木を炭にしたり炭から炭素を分離していろいろくっつけたりってのは前にも言ったかな。特に燃やしたり酸化させたりっていうんじゃないんだけどね。
んー。
傾斜機能材料もOKだし均一に混ぜるのが困難なものでも混ぜれるし。聞く人が聞けば反則だって怒るよね、使いこなせないから意味ないけど。
でもまぁ混ぜて固めて変質させるだけで金属素材つくったり折り返し鍛錬の状態も再現してたり。これでも十分反則すぎるよね。
そうそう、見えやすい反則だとアルケさんにわたしたナイフの柄の紐の編みこみ。あれって編みこんだ状態で生成したひも状のもの、なので末端がないというか結び目がないというか? こういうののほうがわかりよいかな? 難しい事考えなくても大雑把でもしゃれにならないもの作れるよーなかんじです。
なんか難しく説明してみたっ。
けど結局”イメージできるかどうか”がポイントみたい。
ちなみに、ドラゴンのウロコは”ドラゴンのウロコ”としてしかどうにも把握できなかったけど変形は可能なのが分かりましたよ。素材としてどうなん?てのがあるけど、とりあえず糸と板は作ってみた。板の形変えれば”ドラゴンのウロコ”の剣とかになるけどそういうのってやっていいのかな?
***
■クルス■
小難しくせつめいされたけどわからないことがわかったのでいい事にする。要は、なんでもかんでも取り込めてイメージできればなんでも作れるということか。
というか”ドラゴンのウロコ”の剣は気になる。そもそも”ドラゴンのウロコ”なんて王室の宝物庫とかにしかないのでは?
物としてはどうなんだろう、魔法が効果なくて傷つく事がないということはとても硬いけどしなやかで? 魔よけとかお守りになるとか言われてたかな。
「板ちょっと貸して?」
■ハガネ■
ひとりで弄っててもげんかいあるよね。
ってことで30cm物差し状態にしたもの出してみる。ウロコ一枚からだと大体このぐらいだし、これも板といえるし。
■クルス■
なるほどね、エメラルドのそれを受け取るとほのかに光り始める。物自体はとても軽い、角の感じからすると研ぎあげれば刃にはなりそうだけど軽すぎて剣には無理かな。それに弾力もかなりあるみたい、軽く振るだけで揺れてるし。
んーちょっと集中、より一層輝き始めたね。
ってことはこれ魔力に反応してるのかな? 魔法の効果がないんじゃなくて、むちゃくちゃ通りがよくて魔法を吸収しちゃってるってことか?
おもむろに地面に突き刺して。
「ファイアボール」
分かりやすい火系初級攻撃魔法の定番を打ち込んでみる。
ぼすん
着弾した瞬間に吸い込まれてる感じですか。輝きも少し増したような?
「ファイアボール」x5
ぼすぅーーーーん
一気に5個のファイアボール連続投射もあっさり吸収。ひかってる感じも強くなってる。今ファイアボール6個分の魔力を貯めてることになるわけか。光ってるってことはある程度放出してるってことだし、どのぐらい持つのかな?
***
■ハガネ■
質問攻めだったクルスさんだけでなしにサマーサさんも”ドラゴンのウロコ”に釘付けですね。アルケさんはまだぱちぱちやってました。なのでナイフの切れ味とか試してもらおうかな?
とりあえず何回か話題に出した斧、ゴブリンの粗雑な感じのブツだったので材質ごとに分けて固めて置いたやつから木を取り出してみる。
木、なんだけど木の柄そのものじゃなくて年輪のある状態の木をそのままイメージしつつくっつけたらできちゃいました? というありえない状態の木のキューブ。
どうありえないかというと、上下は置いといて面に平行にスライスすると完璧な柾目かつるつるの合板が取れるというもの。うん、板目がとれないんだ。
分かりやすく言うと2種類の色紙を積み重ねて層にしたものを固めたキューブ。4面は縞がきれいに取れるけど2面は積層がはがれた状態? 良くできた合板? つまり年輪が輪になってないということ。生成する時に年輪の曲線に思い至らなかった結果なんだけどね。
ということなんだけどこれを削ってもらっても切れ味は分かりにくいかな? なので適当に作った紙も10枚ほど出してみる。木の繊維と白っぽい石の粉を混ぜて作って置いたもの。重曹とかないから強引にこねこねのイメージで、あってもイメージすればできるはずだしいいかな?
っていうか重曹ほしいよね、塩水の電気分解とかイメージで作れるかな? 塩素に水素も出来るからべんりだと思うんだけどなー。
分子どうこう弄るってのけっこう大変というかカーボンのほうはくっつき方だけなのでどうにかなったっぽいんだけどこっちはしんどそうだし。というか炭素の超高圧はイメージできるからダイヤならつくれるか。
準備終了なのでアルケさんに声かけてナイフを抜いてもらう。