悪役令嬢ですが、ヒロインに泣きつかれています
放課後の校舎は、昼の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
長い廊下に差し込む夕陽が、床に淡い金色の帯を作る。
ローゼリア・ハーレストは、ゆっくりと歩いていた。
数日前に突然よみがえった前世の記憶――
この世界が乙女ゲームで、自分が悪役令嬢であり、婚約者ラゼン・ポートマンはヒロインに惹かれていく運命。
……破滅フラグを避ける方法を考えないと。
そう思いながら角を曲がった瞬間――
「ひっ……!」
小さな悲鳴とともに、柔らかい衝撃が胸元にぶつかった。
「ちょっと……大丈夫?」
見下ろすと、そこには小さな小動物のように震える少女がいた。
淡い栗色の髪、涙で濡れた睫毛、怯えた瞳。
アリア。
この世界のヒロイン。
……まさか、こんな形で出会うなんて。
アリアは必死に言葉を探していた。
「ご、ごめんなさい……!あの、逃げてきて……!」
「逃げてきた?誰から?」
ローゼリアが問いかけると、アリアはさらに肩を縮めた。
「し、知らない男の人たちが……急に、囲んできて……
『運命を感じた』とか、『手を取ってほしい』とか……
わ、私、怖くて……!」
攻略対象者たち……
そして、ラゼンも含まれているわね。
ローゼリアはすぐに理解した。
だがアリアはゲームを知らない。
ただ見知らぬ男子に囲まれた、という恐怖だけが残っている。
「あなた、泣いているの?」
「ご、ごめんなさい……!泣くつもりじゃ……でも、怖くて……!」
涙がぽろぽろと落ちる。
その姿は、ゲームの華やかなヒロイン像とはまるで違う。
ローゼリアは静かに息を吐いた。
呆れではなく、状況を把握した者の冷静な呼吸。
「……ここは人目があるわ。ついてきて」
アリアはこくこくと頷き、ローゼリアの袖をそっと掴んだ。
その手は驚くほど冷たく、弱い。
二人は人気のない温室へ移動した。
夕陽がガラス越しに差し込み、植物の影が揺れる。
ローゼリアは椅子を引き、アリアを座らせた。
「落ち着いて。深呼吸して」
アリアは震える息を整えながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「わ、私……ただ落としたハンカチを拾っただけなのに……そしたら、急に囲まれて……『君の涙は宝石だ』とか……そ、そんなこと言われても……意味が分からなくて……!」
イベントを無自覚に踏んでいる……
この子、本当に何も知らないのね。
ローゼリアは静かに目を閉じた。
前世の記憶が、冷たい現実を突きつける。
このままでは、アリアは攻略対象者たちに振り回され、自分は悪役令嬢として破滅する。
特に、婚約者ラゼンはヒロインに惹かれる運命。
だが――
目の前の少女は、ただ怯えて泣いているだけの、守られるべき存在だった。
ローゼリアはそっとアリアの手を取った。
「アリア。あなたが悪いわけじゃないわ。怖かったでしょう。でも――」
その瞳は、優しさと計算が同時に宿る。
「あなたを守る人が必要よ。そして……私にも、あなたの存在が必要なの」
アリアは瞬きをした。
「え……?」
「あなたを泣かせる連中を放っておくつもりはないわ。
私と一緒にいなさい。そうすれば、誰もあなたに勝手なことはできない」
アリアの瞳が揺れ、そして――
「……はい……!ローゼリア様が……守ってくれるなら……」
小さな声で、しかし確かに頷いた。
その瞬間、悪役令嬢とヒロインの同盟が結ばれた。
ローゼリアは微笑む。
優雅で、静かで、底知れない。
――これでいい。
この子を守り、同時に私の破滅も避ける。
二人でなら、筋書きは変えられる。
温室に、夕陽が二人の影を重ねた。
――――――
翌朝の学園は、いつもよりざわついていた。
理由は簡単だ。
攻略対象者たちが、昨日アリアを囲んだ件で、妙に浮き足立っているからだ。
ローゼリアは、廊下を歩きながら静かに観察していた。
アリアは彼女の後ろを小さく歩く。
袖をつまむ指先が、まだ少し震えている。
……この子を守るためにも、まずは状況の把握からね。
ローゼリアは、前世の記憶で知っている。
この世界の男たちは、ヒロインに惹かれるよう設定されている。
だが、アリアはそれを知らない。
ただ怖がり、泣き、逃げるだけ。
そして、私の婚約者――ラゼン・ポートマン。
あなたはアリアに惹かれ、私を捨てる未来を辿る。
……そんな筋書き、許すつもりはないわ。
ローゼリアは微笑んだ。
優雅で、冷たく、しかしどこか楽しげな笑み。
教室に入ると、数人の男子生徒がアリアを見てざわついた。
「昨日の子だ……」
「泣いてたのに、可愛かったよな」
「今日こそ話しかけてみようか」
アリアはびくっと肩を震わせ、ローゼリアの背に隠れた。
ローゼリアはゆっくりと振り返り、微笑む。
「……何かご用かしら?」
その声は柔らかいのに、空気が一瞬で冷えた。
男子たちは顔を引きつらせ、慌てて視線を逸らす。
まずは、牽制。
アリアに近づくには、私を通らなければならないと理解させる。
アリアは小声で囁いた。
「ろ、ローゼリア様……すごい……」
「いいえ。あなたが怯える必要がないようにしているだけよ」
ローゼリアはアリアの頭を軽く撫でた。
アリアは小動物のように縮こまりながらも、安心したように目を細める。
昼休み。
中庭でアリアと軽食を取っていると、影が落ちた。
「ローゼリア。話がある」
第二王子ラゼン・ポートマン。
ローゼリアの婚約者であり、未来の破滅フラグ製造機。
ローゼリアは優雅に微笑んだ。
「まあ、ラゼン殿下。ご機嫌よう」
ラゼンはローゼリアではなく、アリアを見ていた。
その視線は、昨日のイベントの続きのように熱を帯びている。
「君……昨日泣いていた子だな。大丈夫だったか?」
アリアは怯え、ローゼリアの袖を掴んだ。
「ひっ……あ、あの……」
ローゼリアはすっと立ち上がり、ラゼンの前に出た。
「殿下。アリアは怖がっているのが見えませんか?」
ラゼンは眉をひそめた。
「怖がっている?なぜだ?」
「あなたが理由ですわ」
ローゼリアは微笑んだまま、淡々と言い放つ。
「昨日、彼女を囲んだ男性陣の中に殿下もいらしたでしょう?アリアは突然囲まれ、泣くほど怯えていたのです。……それを好意と勘違いされては困りますわ」
ラゼンの表情が固まる。
「な……っ」
アリアは小さく震えながら、ローゼリアの背に隠れた。
ローゼリアは続ける。
「殿下。アリアに近づく前に、まずは彼女の気持ちを理解なさって。……でなければ、ただの迷惑行為ですわ」
ラゼンは言葉を失い、拳を握りしめた。
――第一段階、完了。
殿下の自信を揺らし、アリアの恐怖を明確に示す。
これで、彼が軽々しくアリアに近づくことはできない。
ローゼリアはアリアの手を取り、優しく言った。
「行きましょう、アリア」
アリアはこくりと頷き、ローゼリアに寄り添う。
二人が歩き去る背中を、ラゼンは呆然と見つめていた。
殿下。
あなたが私を軽んじた瞬間から、もうざまぁは始まっているのよ。
ローゼリアの微笑みは、夕陽よりも冷たく美しかった。
――――――
数日が経った。
アリアは相変わらず小心者で、ローゼリアの後ろに隠れる癖は抜けない。
だが、ローゼリアの庇護下で過ごすうちに、ほんの少しだけ変化が生まれていた。
「お、おはようございます……」
アリアが小さな声で挨拶すると、クラスの空気がわずかに揺れた。
「……あれ、なんか今日のアリアさん……」
「雰囲気、柔らかくなった?」
「昨日より、顔色がいいな」
アリア本人は気づいていない。
だが、ローゼリアには分かる。
私の庇護下で安心したことで、アリアの本来の魅力が滲み始めている。
アリアは怯えながらも、ローゼリアの隣に座り、ノートを開く。
その仕草は小動物のように慎ましく、守りたくなる。
そして――
その守りたくなる魅力こそが、攻略対象者たちを惹きつける最大の要因。
ローゼリアは横目でアリアを見ながら、静かに思う。
……この子は、意図せず人を惹きつける。
それは天性のもの。
だからこそ、私が制御しなければならない。
昼休み、中庭で二人が並んで座っていると、
アリアの周囲に、自然と視線が集まっていた。
「アリアさん、今日も可愛いな……」
「守ってあげたくなる感じ、すごいよな」
「昨日より表情が柔らかい……」
アリアは気づかず、パンをもぐもぐ食べている。
「ろ、ローゼリア様……?あの、なんだか視線が……」
「気にしなくていいわ。あなたが可愛いだけよ」
「か、可愛い……!?そ、そんな……!」
アリアは真っ赤になり、両手で頬を覆った。
その反応がまた周囲の男子の心を撃ち抜く。
ローゼリアはため息をついた。
……この子、本当に自覚がないのね。
しかし同時に、胸の奥に小さな満足感が生まれる。
私の庇護下で、アリアは安全に魅力を発揮できる。
それは、彼女のためでもあり……
私の破滅を避けるためでもある。
その日の放課後。
廊下で、ラゼンが二人を待ち構えていた。
「アリア。少し話がしたい」
アリアはびくっと震え、ローゼリアの背に隠れる。
「ひっ……!む、無理です……!」
ラゼンは困惑したように眉を寄せた。
「なぜそんなに怯える?俺はただ――」
「殿下」
ローゼリアは一歩前に出た。
その声は柔らかいのに、空気を切り裂くほど鋭い。
「アリアは、あなたが怖いと言っているのです。それ以上の理由が必要ですか?」
ラゼンは言葉を失う。
ローゼリアは続ける。
「殿下は、アリアの気持ちを理解しようとせず、自分の感情だけを押しつけている。……それでは、誰もついてきませんわ」
ラゼンの表情が揺れた。
自信が崩れ、焦りが滲む。
殿下。
あなたがアリアに惹かれれば惹かれるほど、アリアがあなたを怖がっているという事実が、あなたを追い詰める。
ローゼリアはアリアの手を取り、優しく言った。
「行きましょう、アリア」
アリアはこくりと頷き、ローゼリアに寄り添う。
二人が歩き去る背中を、ラゼンは呆然と見つめていた。
――第二段階、完了。
殿下の焦りを育て、アリアの魅力を手の届かないものにする。
これで、殿下は自滅の道を進むしかない。
ローゼリアの微笑みは、静かで、冷たく、美しかった。
――――――
ラゼン・ポートマンは、落ち着かなかった。
ここ数日、アリアが自分を避けている。
いや、避けているどころではない。
彼女はラゼンを見るだけで怯え、ローゼリアの背に隠れる。
なぜだ……
俺は、ただ心配して声をかけただけなのに。
だが、ラゼンには分からない。
アリアにとって、突然囲まれた昨日の出来事がどれほど恐怖だったか。
そして、ローゼリアがどれほど巧妙にアリアの恐怖を周囲に示しているか。
中庭に向かう途中、ラゼンは耳にした。
「アリアさん、最近ローゼリア様と一緒にいるよな」
「殿下が近づくと怯えるって噂、本当なのか?」
「だとしたら、殿下ちょっと……」
ラゼンは足を止めた。
……俺が、アリアを怯えさせている?
そんなはずはない。
だが、周囲の視線は確かに冷たくなっていた。
その日の午後。
ラゼンは偶然、廊下でアリアを見かけた。
アリアはローゼリアと並んで歩いていた。
以前より表情が柔らかく、声も少しだけ明るい。
「ローゼリア様、今日の授業……ちょっと分かりました……!」
「ええ、よく頑張ったわ。アリア」
アリアは嬉しそうに笑った。
その笑顔は、ラゼンが見たことのないものだった。
……俺には、そんな顔を見せたことがない。
胸の奥がざわつく。
ラゼンは思わず声をかけた。
「アリア!」
アリアはびくっと震え、ローゼリアの背に隠れた。
「ひっ……!」
その反応は、ラゼンの心を鋭く刺した。
「アリア、どうしてそんなに怯えるんだ……?俺は、君に何も――」
「殿下」
ローゼリアが一歩前に出た。
その声は柔らかいのに、空気を凍らせる。
「アリアはあなたが怖いと言っているのです。それ以上の説明が必要ですか?」
ラゼンは息を呑んだ。
「お、俺は……ただ……」
「ただ、ですか?」
ローゼリアは微笑んだ。
優雅で、冷たく、完璧な笑み。
「殿下が『ただ』と思っている行動が、アリアにとっては恐怖なのです。……それを理解できないのなら、殿下は彼女に近づくべきではありません」
周囲の生徒たちがざわめく。
「殿下、アリアさんを怖がらせてたのか……?」
「ローゼリア様の言う通りだよな」
「殿下、ちょっと強引すぎるんじゃ……」
ラゼンの顔が青ざめた。
なぜだ……なぜ、こんなことに……
ローゼリアはアリアの手を取り、優しく言った。
「行きましょう、アリア」
アリアはこくりと頷き、ローゼリアに寄り添う。
二人が歩き去る背中を、ラゼンは呆然と見つめていた。
胸の奥で、何かが崩れ落ちる音がした。
ローゼリア……
お前が……
だが、ラゼンはまだ気づいていない。
――ローゼリアは何もしていない。
ただアリアの恐怖を、そのまま見える形にしただけ。
破滅フラグは、ラゼン自身の手で立ち上がっている。
ローゼリアは振り返らない。
だが、その横顔は静かに微笑んでいた。
殿下。
あなたが私を軽んじた瞬間から、もう『ざまぁ』は始まっているのよ。
夕陽が、ローゼリアの影を長く伸ばした。
――――――
王城の大広間。
貴族たちが見守る中、第二王子ラゼンは堂々と立っていた。
「本日、私は――ローゼリア・ハーレストとの婚約を破棄する!」
ざわめきが広がる。
だが、ローゼリアは微笑んだまま、微動だにしない。
……来たわね。
予定通り。
ラゼンは続ける。
「理由は明白だ。ローゼリアは冷たく、婚約者としての務めを果たしていない。その一方で――」
視線が、ローゼリアの後ろに隠れるアリアへ向く。
「アリアは純粋で、優しく……俺は彼女を守りたいと思った!」
アリアはびくっと震え、ローゼリアの袖を掴んだ。
「ひっ……!」
その怯えた声が、大広間に響く。
ラゼンは困惑した。
「アリア……?どうしてそんな……」
ローゼリアが一歩前に出た。
その動きだけで、空気が変わる。
「殿下。アリアが、あなたを怖がっていることに、まだお気づきにならないのですか?」
ざわめきがさらに大きくなる。
「怖がって……?俺が……?」
ラゼンは信じられないという顔をした。
ローゼリアは静かに、しかし確実に追い詰める。
「殿下は、アリアが泣いて逃げた日、彼女を囲んだ男性陣の中にいらっしゃいましたね?」
「そ、それは……!」
「アリアは突然囲まれ、泣くほど怯えていたのです。殿下の好意は、彼女にとって恐怖でしかありませんでした」
アリアは震える声で、絞り出すように言った。
「……こ、怖かったんです……ラゼン殿下が……近づいてくると……息が苦しくて……」
その言葉が、大広間の空気を凍らせた。
ラゼンは青ざめる。
「ま、待ってくれ……俺は……そんなつもりじゃ……!」
ローゼリアは微笑んだ。
優雅で、冷たく、完璧な笑み。
「『そんなつもりじゃない』――それは、加害者が最もよく使う言葉ですわ」
貴族たちがざわつく。
「殿下がアリアに向けた言葉や行動は、彼女にとって恐怖でしかなかった。それを理解しないまま、私を悪者にして婚約破棄?……滑稽ですわ」
ラゼンは震える声で叫んだ。
「俺は……アリアを守りたかっただけだ!」
「守りたい相手が怯えているのに、その声を聞こうとしない殿下が……?」
ローゼリアはゆっくりとアリアの肩を抱いた。
「アリアは、殿下を見るだけで震えるのです。――それが、すべての答えですわ」
アリアは小さく頷いた。
「……ごめんなさい……わ、私……殿下が……怖いんです……」
大広間が静まり返る。
ラゼンは崩れ落ちるように膝をついた。
「な……ぜだ……どうして……」
ローゼリアは最後に、静かに告げた。
「殿下。あなたが私を軽んじ、アリアを追い詰めた瞬間から――あなたの破滅は、もう決まっていたのです」
その言葉は、刃よりも冷たく、美しかった。
ラゼンは何も言えない。
周囲の貴族たちは、彼に冷たい視線を向けていた。
婚約破棄は成立。
だが、破滅したのはローゼリアではなく――
ラゼンだった。
ローゼリアはアリアの手を取り、優雅に歩き去る。
これで、殿下の『ざまぁ』は完了。
次は――
アリアの未来を整える番ね。
アリアはローゼリアの袖を握りながら、小さく微笑んだ。
「ローゼリア様……ありがとう……」
「ええ。あなたはもう、誰にも怯える必要はないわ」
二人の影が重なり、ゆっくりと大広間を後にした。
――――――
婚約破棄から数日後。
学園の空気は、以前とはまるで違っていた。
ラゼンは表舞台から姿を消し、周囲の貴族たちはローゼリアに対して一転して敬意を示すようになった。
アリアに向けられていた不用意な視線も、すっかり影を潜めている。
その日の放課後。
温室には柔らかな夕陽が差し込み、花々の香りが静かに満ちていた。
ローゼリアは椅子に座り、紅茶を口に運ぶ。
向かいには、アリアが小さく座っていた。
「ローゼリア様……その……本当に、ありがとうございました」
アリアは両手でカップを包み込みながら、小動物のようにおずおずと頭を下げた。
ローゼリアは微笑む。
「礼を言う必要はないわ。私はただ、あなたを守りたかっただけ」
アリアは顔を上げる。
その瞳は、以前よりずっと澄んでいた。
「……私、ローゼリア様と出会って……初めて、安心っていう気持ちを知りました」
ローゼリアの胸が、わずかに揺れた。
この子は、本当に……
まっすぐで、脆くて、愛しい。
アリアは続ける。
「怖いことがあっても……ローゼリア様がそばにいてくれたら、大丈夫って思えるんです」
その言葉は、ローゼリアの心の奥に静かに染み込んだ。
ローゼリアは席を立ち、アリアの前に膝をついた。
そっとアリアの手を取る。
「アリア。あなたはもう、誰にも怯える必要はないわ」
アリアの瞳が揺れる。
「……ローゼリア様……?」
「これからは、私があなたを守る。あなたが望む限り、ずっと」
アリアは小さく息を呑み、そして――
ローゼリアの手をぎゅっと握り返した。
「……はい。私も……ローゼリア様と一緒にいたいです」
温室に、夕陽が二人の影を重ねる。
その影は、もう二度と離れないように寄り添っていた。
ローゼリアは静かに微笑む。
殿下のざまぁは終わった。
でも――
私とアリアの物語は、ここから始まる。
風が花弁を揺らし、二人の未来を祝福するように温室を満たした。




