密着最終日
祠を修復するため、●●県にある「ペロンチュラの森」へ再び向かったはずの鈴原さん。ですが、五日経った今も自宅には帰ってきていません。何度インターホンを鳴らしても留守で、夜になってもベランダから見える部屋には灯りがつかないまま。大家さんに事情を説明して玄関の鍵を開けてもらいましたが、やはりいません。電話やメッセージアプリも不通の状態です。●●県までは距離がありますし、修復作業には時間がかかると思われますが、さすがに五日は長すぎます。
友人のNさんのほうに鈴原さんから連絡が届いていないか、彼の行方について何か知っていないか確認するために、電話でお話を伺いました。
N『あっ、まだ聞いてませんでした? 僕も心配になって、鈴原の実家に連絡してみたんですよ。そしたら、お母さんと話ができて。なんかあいつ、●●県警に捕まったみたいです」
鈴原さんは逮捕されていました。警察からご家族には、彼が逮捕されたことが通達されていたそう。
Nさんの話によると、鈴原さんは器物損壊の容疑で捕まってしまったのだとか。
N『あいつ、森にある由緒正しい祠を壊したらしくて。地元の人たちがものすごく大切にしてた祠だったそうなんです。よりにもよってそんなものを……。だから、地元の有志とか警察とかが祠の近くで犯人を探してたみたいなんですね。で、そこにあいつがのこのことやって来たから、逮捕したって流れらしいです。『自分が壊した祠を直しに来た』って、白状したそうですよ。犯人は現場に戻るってやつですかね」
先日「ペロンチュラの森」で鈴原さんが祠を壊したことは、現地周辺で知れ渡っていたようです。現在、鈴原さんは拘置所の中にいるそう。どおりで自宅に帰ってこないわけです。
鈴原さんが祠を壊した証拠は、おそらく残っています。祠の中にあった石像、彼はそれに唾を吐きかけていました。その痕跡を調べれば、鈴原さんのDNAが検出されるはずです。その上、本人も罪を認めているのならば、ほぼ確実に裁判になって有罪判決が下ると思われます。
ヤンキーを目指した挙げ句、逮捕された今の鈴原さんについて、Nさんはどう思っているのでしょうか。
N『救いようがないほどのアホですね。この先の僕の人生で、鈴原以上のアホに出会うことはないと思います。おとなしく銀行員をやってれば、間違いなく勝ち組の人生だっただろうに。いい年こいてヤンキーになるとか、おかしなこと言い出して……。でもまあ、あいつにとっては本望なんじゃないですか? 逮捕されて拘置所にぶち込まれるなんて、そこらのヤンキーでもなかなか経験してないことでしょうから。ヤンキーの中でもかなり悪いやつになれたと思いますよ」
確かに拘置所に入ることは、ヤンキーとしてこの上ない経験でしょう。しかし、最後に会った鈴原さんはヤンキーをやめると言っていました。もう彼は、ヤンキーらしくあることを望んでいないはずです。
それに、幻覚に襲われていた鈴原さんが拘置所の中でまともな精神状態を維持できるのかどうかも心配なところ。狭い独房の中で、幻覚に苦しめられ続けることになるのでしょうか。
いろいろと不安は尽きませんが、拘置所に入った彼に、これ以上密着することはできません。ここで取材は完全に打ち切りとなりました。
鈴原さんが然るべき処罰を受けた後で、無事に社会復帰できることを祈ります。
<了>




