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第一話:メッセージ

いつも、言葉を慎重に選んでいた。

考えるよりも先に言葉が出るとは、思ってもみなかった。

その言葉が、すべての始まりだった。



夜。

白い蛍光灯の光に包まれた編集部には、(ひいらぎ)と数名の編集者が残っていた。

原稿の確認をしていた柊のもとに、担当作家・白雨紡(しらさめつむぎ)から、メッセージが届いた。


『普通に、過ごすために。手に、取った』


柊は目を細めた。

まだ担当して日が浅い、新人の作家だ。


短いメッセージを見つめる。

なぜ、この時間に、このメッセージを送ってきたのか。

これまでは、きちんと距離感のあるメッセージを送ってくる人物だった。


画面に、新着のメッセージが増えた。


『いつもよりも、手が動いて。物語が、紡がれていく』


柊は眉間にしわを寄せた。

キーボードを叩き、確認のメッセージを送った。


『白雨さん。これは「創作」のセリフ、ですよね?』


数秒ののち、返信が表示された。

それを見た瞬間、柊は立ち上がった。


『どうして、わたしは、キッチンに、座っていたんだろう』


柊は、社内システムで白雨紡の住所を確認する。

車で15分程度の距離。


「…まさか、とは思いますが」


柊は車を走らせた。

赤信号で止まり、柊はハンドルを指で叩く。


「……どうか、杞憂であってください」


また、メッセージが届いた。


『部屋で、小さな小瓶を見つけた』

『中身は、(から)なのに。わたしは、それを捨てずに、引き出しの奥に入れた』


連続したメッセージは、柊の嫌な想像を補強していく。

青信号になり、柊はアクセルを踏み込んだ。


たどり着いたマンション、白雨紡の部屋の前。

インターホンの音が、静まり返った廊下に響く。


数秒の、永遠のような静寂の後。

扉の向こうで、かすかに物音がした。


「白雨さん! 大丈夫ですか?!」


それきり、反応がない。

物音がしない。

管理会社を呼ぼうかと、手元の端末に目を落とした時。

ドアが細く開かれた。


「……白雨さん」


とりあえず、顔が見えたことにほっと息をつき。

柊は白雨の状態を確認する。


寝起きのような、少しぼんやりとした雰囲気。

柊をちらりと見上げて、すぐに視線を落とす。

そして、白雨が口を開いた。


「…えっと、……何か、ご用ですか……?」


柊は、開きかけた口を一度閉じた。

目を閉じ、一つ息をついて。

白雨の目を、見た。


「……あなたの安全確認に、来ました」


白雨は眉を下げ、じっと柊を見つめ。

ゆるりと首を傾げた。


「……すみません。だれ、でしたっけ」


凍り付くような沈黙が落ちた。

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