澄み渡る白
「それで、クロードはどうして今生きているのかしら?」
―――あの後、雨の中じゃ何だからと、庭園にある小さな東屋まで移動した。どうやら俺の名前はクロードというらしく、彼女―アリシアの婚約者だったらしいが、アリシアを庇って一年前に死んだらしい。
「俺だって分からない。さっき目が覚めたんだ」
「へぇ。それにしても、瞳の色が変わったのね」
「色?」
「ええ。ほら」
隣に座っているアリシアが差し出した手鏡を覗くと、黒い髪に黄金の瞳を持った自分が写っていた。
「ちなみに、元の色は何だったんだ」
「黒よ」
記憶はないというのに、アリシアの隣にいるとなぜだか心が浮き立ってくる。本当に自分はアリシアの婚約者だったのかは分からないし、なぜアリシアを庇うことで死んだのかも分からない。何もかもが分からないことだらけだった。
「雨に濡れて寒いわね。なにか暖かいものでも飲みましょ」
アリシアはそう言って、空中で指を鳴らした。すると、小さな東屋の中心に丸テーブルがどこからともなく現れ、その上に湯気の立ったティーポットと二つのティーカップが出てきた。
「今、なにをしたんだ?」
今まで見たことのない(そもそも記憶がない)現象が起きて驚きを隠せないでいると、アリシアがくすくすと笑った。
「私ね、魔女になったの」
―――まただ。このどうしようもなく悲しそうな目。その目を見ているだけで、俺の心のざわつきが大きくなる。
「魔女ってなんだ」
心を落ち着けてからアリシアに問うと、魔女について教えてくれた。
魔女というのは、激しい感情の発露によって、自然界のエネルギーと身体が共鳴した際に発生する爆発的なエネルギーが宿った者のことだそうだ。「魔女」という名前の通り、生命力の強い女性だけにこの現象が起きるらしい。魔女は一人で国を滅亡させることができるので、万が一魔女が生まれた場合はその国が全力で保護することが通例だという。
「じゃあ、ここはどこなんだ」
「あぁ、ここは私の家よ。王城とかじゃないわ。」




