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転生特典で動物の心の声が聞こえる能力を授かりました ……え?神様っ!それは望んでませーん!!  作者: 春待瑞花


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「手際がいいね。女生徒で料理が出来るなんてほんと珍しいよね」

「アイリーン嬢は、聖力があるから同行したと思っていたから、料理が出来るとは全く思わなかったな」

「私もてっきり聖力があるのだと思っていたよ。聖力がないのに医療を学びたいという子は過去いなかったから。正直驚いたよ」

「すみません。聖力は全くないのですが、将来は獣医師の助手になりたいので、医療を学びたいのです。ギルバート先生、ご指導の程よろしくお願いいたします。

 お料理に関しては、昔からの趣味のひとつなんです。お役に立てるようで、嬉しいです」

 魔術師科の学生二人と、辺境伯に在住している医師のギルバート先生含めた4人で、テントの横で昼食の準備をしていた。


 遠征同行の許可を得てからは、ほぼ毎日図書館に通い医学や医療処置について勉強した。遠征期間は1ヶ月のため荷造りもしなければならず、忙しく過ごしているうちにあっという間に出発の日となり、お母様達に無事に戻ることを約束したのが4日前のこと。

 早速今日からは森での討伐が始まり、朝のうちに馬車に積まれた食材を使ってスープを作っていた。

 パンや干し肉といった携帯食はあるものの、身体が資本の騎士様方にきっちり栄養を摂っていただくためには、具沢山のスープが適している。

 辺境伯の邸宅では、朝と夜に料理人が作った貴族食が提供されるが、すでに作られたスープを馬車で運ぶとなると、匂いを嗅ぎつけて魔獣や動物が馬車を狙ってくる危険があるため、現地についてから魔道具で結界を張った後に作るのが一般的らしい。結界は張るとその場で固定されてしまうため、移動するものへの結界は張れない。作ったスープや馬車に結界を張れないため、現地で料理せざるを得ないとのこと。


 オーウェン様は伯爵家の五男で、卒業後は一人暮らしをされるため、一年前から料理を学び始めたとのことで、手際がとてもいい。

 同じ魔術師科のランデル様は伯爵家の三男で、卒業後は異国を一人で自由に旅行する予定らしく、そのためにはある程度自炊出来た方がいいだろうと、数ヶ月前から料理を始めたと話されていた。料理の基本は学んだとのことで、包丁捌きは安定している。


 三年生になると、魔獣の出現頻度が高く凶暴な魔獣も多くみられ、そのため配置されている騎士が多い辺境への遠征となるが、二年生のうちは森はあっても規模が小さく、魔獣も時折しか見かけない辺境での演習であるため、騎士様方による稽古を2日間行い、3日目に森へ赴く。これを1ヶ月の間繰り返して遠征は終了となる。森へ赴く騎士は4人、セドリック様達合わせて8人で森を巡回し、見つけたら魔獣を討伐するという流れらしい。12人分の昼食の用意は、4人で行うとさほど時間はかからなかったが、カトラリーや簡易椅子の設置などをしていると、いつの間にか昼食の時間で騎士達がテントに戻ってきていた。みんなで昼食をとり、一息ついたら再度森へ巡回へ向かう騎士達を見送り、後片付けに入る。討伐初日は中型の魔獣を2体討伐し、誰も怪我する事なく終わった。


 巡回3回目。林間が広い場所では騎乗したまま魔獣討伐に挑むが、木が密集している場所だと歩いて巡回を行う。後方支援の私達4人の主な役割は、午前中は休憩場所や料理の準備を行い、昼食が終わり再び騎士達が巡回へ向かうと、残された馬のお世話をしたり、後片付けを行うことだった。巡回は午前午後ともに2時間程度のため、体を動かしているとあっという間に帰邸となる。念の為ギルバート医師が同行しているが、中型の魔獣しか現れていないらしく、森での巡回で負傷者が出ることはなかった。だが、医療の学びに関しては、邸宅での稽古による軽い負傷者が耐えないため、実際の処置の場を間近で見学する事が出来ていた。

 寝る前のメランとの会話でも、この森は中型で繁殖の弱い魔獣しかいないため、殆ど危険はないと話していた。ただ、森の奥は隣国の森と繋がっていて、そちら側の森にはヒュドラやブラッドベアといった大型で凶暴な魔獣がいるため、こちら側にやってくる可能性もあるので警戒は怠らない方がいいこと。そのため、森に行く時は私のポケットの中に常に潜んでいることを宣言していた。



「そろそろ騎士達が戻ってくるな。この森は凶暴な魔獣はいないから、今日もみんな怪我なく帰ってくるだろう」

「ギルバート先生のご指導のおかげで、僕も安定した結界が張れるようになりましたし、最初は魔獣が近づいてくるのでは、との緊張感がありましたが、今はその緊張がだいぶ薄れましたね」

「だな。だけど、結界に綻びが出ると料理の匂いを嗅ぎつけて魔獣じゃなくても獣がやってきそうだから、警戒は常にしてないといけないよな」

「魔術師は安定した結界が張れるようになれば、どの魔道具でも魔力を上手く扱えるようになると聞く。二人とも、この数日でだいぶ魔力の扱いが上手くなったと思うぞ」

「嬉しいです。遠征にきてよかったです」

「ギルバート先生のご指導のおかげです。ありがとうございます」

「私も、ギルバート先生の流れるような処置を見学させていただいて、血を見る怖さがだいぶ薄れました。先生の手の動きがスムーズ過ぎて、怖い気持ちよりもその手技の素晴らしさに目を奪われてしまって。とても勉強になります。ありがとうございます」

「ははっ、みんないい子達だな。この調子で各自のスキルをどんどん上げていってくれ。私に出来ることならいくらでも教えるから」

 ギルバート先生は素敵な笑顔で応じてくれ、和やかな雰囲気が漂ったその時、明るかった頭上に大きな影がさして、一瞬で視界が暗くなった。


 全員で上を見上げると、大きなワイバーンが上空を飛んでいた。

 驚いて全員がヒュッと息を呑んだ。と同時に、馬に騎乗した騎士達がこちらに向かって駆けてくる気配を感じた。

「みなさんっ!そのまま結界を張っていてください!」

「ワイバーンは私達で仕留めます!ギルバート先生!出来れば結界の強化をお願いします!」

「二年生はワイバーンの炎に当たらないように、出来るだけ散って注意が向かないようにしろ!」

「町へ行かれないように、倒せなくても足止めさせるぞっ!みんな弓を構えろっ!」

 セドリック様方含めた8人全員で弓の準備を始めた。

 その時、ポケットからメランが飛び出て私の腕にくっついた。驚いてメランをみると、

(攻撃するな。あれはただ、番を探してるだけだ。攻撃するから反撃されるんだ。この森を見定めたらすぐに他の森へ行く。危険はない)

 とやや焦りぎみに伝えてきた。


 メランを信じて大声を出した。

 ちょうど、全員が弓を構えたところだった。

「おやめくださいっ!!ワイバーンを攻撃しないでくださいっ!お願いします!!」

 騎士様の一人がこちらをちらっとみて叫ぶ。

「何を言っているっ!ここで足止めしないと町に被害が出る!民が怪我をするぞっ!」

「大丈夫ですっ!私を信じてくださいっ!あのワイバーンは番を探してるだけなのですわ!このまま次の森まで通り過ぎますっ!!」

 他の騎士が弓を構えながら叫んだ。

「その根拠はなんだっ!すまないが、君の言う事は聞けない!一刻を争うんだ!!」

 騎士達が弓矢を引き、魔力を込め始める。

「すみませんっ!攻撃をやめてくださいっ!彼女の言うことは信じられます!俺が保証します!!」

 セドリック様が叫び、

「僕からもお願いしますっ!!彼女を信じて弓を下ろしてくださいっ!」

「俺も攻撃しませんっ!彼女の言うことは信頼出来ます!」

「彼女の言う事をお聞きくださいっ!攻撃はいったんやめましょう!」

 モーリス様達も私の言葉を信じて騎士様達を止めようとしてくれる。

「無理だ!!よしっ!狙うぞっ!!」

 と、騎士様4人のうち2人の魔力が込められた弓矢が引かれた。威力を伴った弓矢がまっすぐにワイバーンへ向かった。ワイバーンは森を大きく旋回している。二人の弓矢がワイバーンの右翼を掠った。ワイバーンは旋回をやめてこちらをみた。

 残った二人の騎士様は魔力を込めた弓矢を、狙いを定めて引こうとしている。


 結界を飛び出て、ワイバーンへ向かって叫んだ。

「ごめんなさい!!聞こえますかっ?! もう攻撃しませんので、反撃しないでくださいっ!! 

 番をお探しですよね?! この森にはワイバーンはいませんっ!他をお探しくださいっ!!」

「おいっ!!何しているっ!!危ないから結界の中に入れっ!!」

 騎士様の一人が私に向かって怒鳴る。

 セドリック様がヘイゼルに乗ったまま近くまで駆け寄ってきた。

「彼女に任せましょうっ!大丈夫です!根拠はあります!なので、弓を下ろしてくださいっ!!」

 他の3人も駆け寄ってきてくれる。

「俺からもお願いしますっ!ここは、彼女に任せましょうっ!」

「お願いしますっ!弓矢はもう向けないでくださいっ!反撃されてしまいますっ」

「彼女の発言を信じましょう!攻撃しないでくださいっ!」

 弓を構えていた騎士様二人はワイバーンに視線を向けながらも、しぶしぶと弓矢を下ろしてくれる。

「あのっ!ワイバーンはどこの森に生息しているかわかりますか?」

「……一番近くだと、ここから西へ向かった先のアジュール国との辺境の森にいると聞いている」

「ありがとうございますっ

 あのっ!聞こえますか?ここから西へ向かった先のアジュール国との辺境の森にワイバーンがいるそうですっ!そちらに向かってみてくださいっ!」

 ワイバーンに向かって叫ぶと、ゆっくりと羽ばたきながらジッと私を見つめてきた。


(ほんとだな?油断させてるつもりじゃないだろうな?嘘なら火を吐くぞ)


「嘘ではありませんっ!攻撃ももうしませんっ!素敵な番が見つかることをお祈りいたしますわっ!!」

 ワイバーンは数秒私を見つめたあと、首を西へ向けて勢いよく羽ばたいた。高速で西へ向かった姿に安堵の息を吐く。


「これは……一体どういうことだ……?……ワイバーンが反撃せず去ったぞ……」

「ワイバーンと会話しているようにみえたが……」

「本当に町を通り過ぎて西へ向かうのか?」

「よくわからないが、ワイバーンに攻撃してくる気配はなかったな。本当に番を探しているだけなのか……」

 騎士様方のざわざわとした声が聞こえる。

 

 この状況をどうしよう……と内心で頭を抱えた。





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