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転生特典で動物の心の声が聞こえる能力を授かりました ……え?神様っ!それは望んでませーん!!  作者: 春待瑞花


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 (あぁ……また今日もっ、セドリック様の声が聞こえちゃうっ!……聞くつもりは決してないんですっ、ごめんなさい〜っセドリック様っ!!言い訳だけど……つい気になってセドリック様を見ちゃうんです〜っ!目を逸らさなきゃって思っても、何の話をしているのかしら……とか考えてると、いつの間にか5秒経ってるから、聞く気がなくても聞こえてくるのよ〜っ!本当にごめんなさいっ!セドリック様っ!!)

 と、心の中で盛大に謝る。けれど、悪い事をしているとは思いつつも、セドリック様の考えを知りたいとの興味が勝り、ついつい聞こえてくる心の声に耳を傾けてしまう。


 しかし、令嬢達に囲まれてるセドリック様の心の声はほぼいつも同じだった。今も……

(あぁ…… 匂いがダメだ……辛い…… 早く休み時間終わらないだろうか……)

 と、笑顔を保ちながら内心で愚痴がこぼされている。

 休み時間には、セドリック様と仲良くなりたいクラスメイトや上級生の令嬢が側に押し寄せるので、匂いに敏感なセドリック様は、いつも香害に苦しんでいるようだった。だが、そんな思いは一才出さずに令嬢達の質問にそつなく笑顔で答えている。さすがは公爵令息である。


(この匂いに晒されるのもあと数ヶ月だ。あと数ヶ月なら耐えられるはず……頑張れ、俺)

 自身を励ますセドリック様に、私も『頑張って!セドリック様!』と内心で応援する。


 二年生からは一般科と魔術師科、騎士科にクラスが分かれる。セドリック様は公爵令息なので、従属爵位を引き継ぐのだろうと思われているが、どうやら騎士になりたいようで、騎士科に進む事を心の声で知った。騎士科に進むとなれば、確かに高位貴族の夫人を目指す令嬢達は波が引くようにセドリック様の側から離れるだろう。

 アイリーンは、平民となっても構わないと思っているくらいなので、セドリック様が騎士科に進んでライバルがいなくなる事は大歓迎だった。

 今はあの輪の中に入っていけないけれど、二年生になったら親しくなれるチャンスが巡ってくるかしら……騎士科のクラスに行く勇気はないけれど、ランチタイムとか放課後とか、お一人の時に話しかけてみれば、少しは親密になれるかもしれないわ!と、内心でセドリック様との関係発展を望む。香水が苦手な為、今のところ仲の良い令嬢はいないようだし、どうかこのまま、親密な関係となる令嬢が現れませんように!と毎日祈った。

 その祈りが通じたのか、ただ単にセドリック様が好む令嬢が周囲にいなかったからなのかはわからないけれど、長期休みに入る前のセドリック様の心の声は、相変わらず令嬢達に囲まれるのが辛いというもののみで、気になっている令嬢はいないようだった。



 長期休みに入った。アイリーンは基本引きこもりのため、夜会やお茶会には殆ど参加しなかったのだが、セドリック様の現状が気になり、数回夜会に参加した。そして、その都度セドリック様の姿を探し、相手を伴っていない事にほっとしていた。

 学院では明らかにセドリック様を気にしていたため、ダイアナとソフィアには、私がセドリック様に恋心を抱いた事がバレてしまっていた。多くのお茶会や夜会に参加しているダイアナとソフィアから、他の夜会でもセドリック様がどこかの令嬢をエスコートする事はなく、親密になっている令嬢がいるとの噂もないと聞き、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。


 長期休みも半ばが過ぎ、お母様の業務が落ち着いたため、お祖母様達との約束通り、家族3人で領地へ向かった。領地ではお母様とお姉様はお祖父様方から現状を聞いたり、領内の視察をしたりと常にスケジュールに追われていたが、私は特にする事がなかったため、毎日愛馬のケリーに乗って広い敷地を散歩していた。ケリーと会話しながら、のんびりと散歩を楽しんだ。

 散歩に出て3日目、いつの間にか敷地の奥にある森林近くまで来てしまっていた。護衛をつけない散歩のため危険な場所には近寄らない、との約束を家族としているのだが、ケリーと会話しながらなので、ついつい遠くまで来てしまったようだ。

(領地の森林に魔獣が出たとは聞いた事がないけれど……迷子になったら困るし入らない方がいいわよね)

「ケリー、引き返して屋敷に戻りましょう」

(はい。わかりました)

 ケリーが身体を捻ったその時、黒いボールのような物がケリーの足元に転がってきた。

(ん?何かしら?)

 と見つめると、その物体とバチッと目が合った。

 ……こ、これはっ!あ、あれじゃないっ!!ま、まっくろくろすけっ!!!


(やべっ。目が合っちまった。めんどいな……

 目を瞑って毛玉のフリするか)

 まっくろくろすけは目を閉じた。


 ……え?!まさか、こんなのの声も聞こえちゃうの?これ、動物なの!?


「あ、あの…… あなたは動物なんですか?

 ……さっき目がばっちり合っちゃったので、動かないフリしなくていいですよ……」


 まっくろくろすけは目を開けて

(なんだコイツ。人間のくせに生意気だな)


「人間のくせに生意気ですみません…」


(はっ?お前、俺の考えてる事がわかるのか?)


「……どなたかは存じませんが、私は動物の心の声が聞こえるので、あなたの心の声も聞こえています……魔獣さんですか?」


(ちっ、失礼だな。俺は魔獣じゃない。森の精霊だ)


「ご、ごめんなさい。精霊さんなんですね……

 っていうか、精霊も動物なのね……」


(まあ、いい。メランと呼べ。ちょっと他の精霊と喧嘩して森から追い出されたんだよ。ここにいたら腹立つからしばらく森の外で過ごすことに決めた。お前の髪の毛の中にいればバレないだろ。俺を匿え。もっと小さくなることは可能だからバレないはずだ)


 いや、まあ、確かに私の髪は黒髪だけれど……森の精霊なのに、森から出ていいのだろうか?


「あ、あの……森から出て大丈夫なんですか?お、お世話とか何をすればいいのでしょう?」


(ふん。他の精霊のやつらは、精霊の存在は隠すべきだ、と頑なに森から出ないだけで、別にどこでも暮らせるんだ。俺はずっと旅がしたいって言ってたのに、存在がバレたらまずいからダメだの一点張りで、腹立ったから木を数本枯らしてやったんだよ。そしたら、出て行けって弾かれて、森の外に追い出された。存在もバレたし、もうこの森には戻らん。お前としばらく行動をともにする。精霊だから飲み食いはしない。世話はいらん)


「え、あ、そ、そうなんですね…… (動物なのに、飲み食いしないんだ…… 動物って、どういう定義?神様、アバウト過ぎない?……)

 わ、わかりました…… これから、よろしくお願いします……」


 少し、いやかなり横柄だけれど……当初のペットと会話したいっていう願いが叶ったと思えば…… まあ、いいか。ケリーはタウンハウスに連れて行けないしね……


 ケリーをみると、

(お嬢様、こんな得体の知れない物を連れて帰るんですか?大丈夫ですか?)

 と心配顔で問いかけてきた。

「ケリー、ありがとう。精霊さんだし、悪いことはしないと思うの。だから大丈夫よ」と微笑む。


(当たり前だっ!植物に対する魔法は使えるが人間や他の者に害はなさないぞっ!旅して満足したらどこかの森に行く。だが、俺の存在がバレたら他の奴らが怒るだろうし、面倒だから、俺の存在は隠せ。頼んだぞ)

 と言って、まっくろくろすけサイズからしゅるしゅるとスーパーボールサイズまで縮み、私の髪の中に入った。まあ、これなら確かにバレなさそうではある……


 口の悪いペットを飼ったと思うことにしよう、と内心で溜め息をついて屋敷へ戻った。


 メランは、森の外に出たのは初めてのため、目にするもの全てが新鮮でとても楽しいとの事だった。人前では会話出来ないので、夜寝る前にたくさんの事を質問してきた。質問に答えながら眠りにつく事が数日続き、メランは屋敷内の事を把握すると、外も見させろと強要してきた。仕方がないので、お母様にお願いして領地の視察に同行させてもらったり、サーシャと護衛を連れて買い物をしたりと、引き篭もらずに活動的に過ごした。滞在予定の二週間があっという間に過ぎて、メランを頭に忍ばせてタウンハウスに戻った。


 メランは二人きりになるとテニスボールサイズになる。小ささを維持するにはそれなりの力を使うようで、疲れるからというのが理由だった。森の精霊らしく、マイナスイオン?的なものがエネルギー源のようで、王都はそれが少ないから力を蓄えずらいと嘆いている。

 精霊には自然が大事なのね……となんとなく理解した。

 図書室にある精霊に関する本も読んでみたところ、4大精霊の存在は昔から広く知られており、他国では精霊に気に入られた人は、精霊の愛し子と呼ばれて敬われている国もあった。愛し子がお願いすると、精霊が魔法を使ってくれる事が理由のようだった。


 メランはお願いしても魔法を使ってくれないだろうから……私は愛し子ではなない、と自覚する。なので、メランが私と行動している事は知られない方が絶対によい。ああ……秘密がまた一つ増えた……とやや落ち込んだ。


 まあでも、メランのために、と王都を出歩くのも、引き篭もりの私にとっても新鮮な出来事ではあったので、それなりにメランとの生活を楽しんだ。家族や使用人達は突然活動的になった私に驚いていたが、学院に入った事による変化だろうと勝手に納得してくれたようだった。家ではリラックスして過ごしているため、時折、みんなの心の声が聞こえてしまうので、それでそう思っている事を知ったのだけれど。悪気はないので…… ごめんなさいっ!と、その都度心の声が聞こえてきた相手に心の中で謝った。


 タウンハウスに戻ってからは、領地へ出向く前と同じように、時折夜会に参加したり、ダイアナとソフィアとお茶をして、セドリック様にお相手が出来ていない事を確認した。そして、新たな噂もなくエスコートしている相手もいない事に安堵する。

 メランとは常に一緒のため、

(お前、セドリックとやらが好きなんだな。精霊は恋愛とかしないが、森の動物は番を見つけて子を成している事を知ってるぞ。お前は、セドリックと番になりたいんだな。なら、さっさと好きだと伝えればいいじゃないか)

 と寝る前に告げられる。


「ええっと…… 番になりたいという程の気持ちではまだないのよ…… 好きではあるんだけど、セドリック様が受け入れてくれるかわからないし、断られたら気まずくなるじゃない。だから、まだ気持ちを伝える気は全くないの」


(ふぅーん、人間の恋愛とやらは面倒だな。まあ、頑張れ)

 と興味なさそうに答える。


「セドリック様に相手が出来るのは嫌だから……

 頑張るわよ……」

 と呟いた。



 そして、やっと進級の日がやってきた。


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