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第八話:新鮮

「ありがとう、ございます」


 シズクはそう言いながら、倒れた。


(ムムムムム?)


 俺は、顔をしかめる。


(……ムムム……?)


 俺の脳内を経由してサイコロの外の情報を把握していたブリドラも、不思議そうな言葉を漏らした。


「おい、大丈夫か?」


 俺は、シズクの肩を叩く。


 シズクは、気を失っているようだった。


「まぁ、いかつい頭三人衆に追われてたんだ。助かって気がゆるんだら、倒れもするか」


 俺はそう告げてから、胴体が凍っているいかつい頭三人衆を睨む。


「なぁ、そう思うだろう?」


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 いかつい頭三人衆はそう叫ぶがその身体は凍っており、俺から逃げれない。


「なんでお前らは、このいたいけな少女を襲ってたんだ?」


 俺はそもそもの疑問を、そいつらに対して投げかける。


「そ、そいつは、没落して滅んだ王国の、王女なんだよ。そしてその滅んだ王国の再建を目指すそいつは今、賞金首なんだ。そいつがその国を復興させることで、不利益を被る国があるらしくてな。俺達は特段そこらへんの事情は知らないが、賞金稼ぎだから狙ったんだよ」


 頷いた俺。ふざけた野郎どもだ。


「貴様らぁぁぁぁぁぁぁあ」


 俺はそいつらに対して、鬼の形相を見せた。


「事情も分からないのに、いたいけな少女を狙ったと言うのかぁぁぁぁ」


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 いかつい頭三人衆は、相変わらず怯えた表情を見せる。


 俺の鉄槌が、そのいかつい頭三人衆の頭に落ちた。そいつらの頭に大きなたんこぶができ、そいつらは涙目になった。


「俺はこのいたいけな少女を宿屋に連れていきたいんだが、俺には金がないときた。元はと言うとこの少女が倒れた原因はお前らにあるらしいから、この少女と俺が一晩宿屋に泊まる金をくれ。そうすれば、お前らは逃がしてやる」


 俺がそう告げた時、そのいかつい頭三人衆は、ほっとした顔を見せた。しかし俺は、畳みかける。


「だぁがぁ、お前らが今後、事情も分からぬのにいたいけな少女を狙うことを続けた場合、次はこうも優しくしないからなぁ。分かったかぁ!!!!」


 俺は、そいつらを睨んだ。


「わ、分かりましたぁぁぁぁぁぁぁ」


 そいつらは俺に一晩分の宿屋の代金と宿屋がある街の情報を提供し、氷を解かれ、その場から消え去った。


 俺はその背に、翼が生えている。ブリドラのものだ。だから俺はシズクをお姫様抱っこし、その翼で飛んだ。


 そして俺はとある街にたどり着き、その街の中に着地した。そしてきっと人里にいるなら邪魔になるその翼を消し、"宿屋"と書かれている表札のある場所に到達した。そしてその宿屋の店員にお金を払い、部屋に入った。


「なんか、RPGみたいな街だなぁ」


 俺はその街の街並みと、宿屋の部屋の中を見て、そう感じた。


 過去俺がやった中世ファンタジーロールプレイングゲームの世界観と、まさにそっくりなのだ。


 そして俺は、ベッドの上にシズクを置いた。


「ああ、時間っぽいな」


 俺の身体が、実体有りの状態から透明なものへと変わっていっている。


 そして数十秒後、俺は霊体に戻った。つまり今、俺にできることはなくなった。代わりにシズクの右手に、虹色のサイコロが二つ握られている。


「それじゃ、明日色々話を聞かせてもらうからな」


 俺は、そう告げた。


 二人分の代金を払ったが、俺はその布団では眠らない。サイコロの中に帰るのだ。


 俺は、サイコロの中に戻った。


 見慣れた、俺の部屋。


 1DKのベッド、テレビゲーム、乱雑になっている漫画等、本当に生前死ぬほど見たというその部屋。


 だが、見慣れない存在がそこにいた。


「……よっす……」


 俺のベッドに腰かける、一人の女がいる。


「よっす」


 俺は、そう告げた。


 ブリドラが俺のベッドに腰かけて、ちょこんと座っているのだ。


「……自分の部屋は退屈だし、来たの……。私達、友達だし……」


 ブリドラが嬉しそうに、そう告げた。


「ああ、そうだな」


 俺も、笑う。


(新鮮だ)


 俺は、そう感じる。仕事ばかりで女っ気のなかった俺の部屋に、女性が来ている。それも、とびきりの美少女だ。健全な青年おっさんとして、緊張の一つでもしてしまうというものだろう。


「……ねぇ、遊ぼ……」


 俺の気持ちを知らないブリドラが、そう告げる。


「ああ、遊ぶか」


(この部屋の中、何で遊ぶのがいいのだろう?)


 俺は、テレビゲームを見る。そして、テレビを見る。


「テレビ、つながるのかな?」


「……テレビ……?」


 テレビのことを知らぬブリドラが、俺の言葉を繰り返した。ブリドラはその足をバタバタとさせながら、俺の動向を見ていた。


 そして俺は、テレビの電源を入れる。

 

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