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第七話:友達

 俺は、自らの境遇を語るのは好きじゃない。だが、俺はあえて、自らの境遇を口にする。


「俺も、家族がいなくて昔、すっげぇ暗かったんだ」


 俺は、ドラゴニュートの女性が聞いてても聞いていなくてもいいが、そう告げる。


「家族がいなくてさ、友達もいなかった。だから必死に社会に溶け込もうと、ひょうきんな性格になったんだ。だから君の辛さは、ちょっとは分かるつもりだ」


 俺はそう告げ、そして歩く。もう少しでこの部屋から出る俺の元に、声が届いた。


「……どこに行くの……?」


「サイコロの外に出る。とある少女が荒くれ者に襲われてるから、助けてやらないといけないんだ」


 ドラゴニュートの女性は、俺に対して続けざまに言葉を発する。


「……でも、外に出たら、やられちゃうでしょ? 貴方は外に出たら、なんの力もないんだから……」


 俺は頷く。


「はは、そうだな。だが、行かなきゃならない時ってのはあるんだ。何故ならそこに、困ってる少女がいるんだから」


 俺は笑う。結末は分かってる。また、ぼこぼこにされるだろう。次は命がある保証もない。だが、行かなきゃならない時はある。


 俺は、三十歳。その俺がいたいけな少女が襲われているのを知っているのに、"勝てそうにない"って理由だけで見過ごすって選択をとろうものならきっと、俺の今までの人生には何の意味もなかったってことだ。


 だから俺は、歩く。


「俺が無事に帰ってこれたら、もしよければ友達になってくれな。俺も実は、友達いねぇから」


 俺は笑いながら、そう告げた。そしてその部屋から出るための扉に、手をかけた。


「……ちょっと待って……」


 そんな声が、俺の元に届いてきた。


 ドラゴニュートの女性が、そう口にしたのだ。


「どうしたんだ?」


 俺は、振り返った。


 俺のすぐそばに、ドラゴニュートの女性が立っていた。


「…………………」


 ドラゴニュートの女性は、何も言葉を発さない。


「…………………」


 俺もだ。無言と無言の不思議な時間が、現れる。


 俺は、ただただ待った。


「……手伝ってあげる……」


 ドラゴニュートの女性は、そう告げた。


「そうか、ありがとう」


 俺は、お礼を言った。


 そしてそのドラゴニュートの女性に対して、微笑みを向ける。


「なら、一緒に行ってくれるか?」


「……うん……、その代わり……、これが終わったら……、こちらこそ友達になってね……」


 俺は笑う。


「ははははは、きっと俺と君はもうすでに、友達だよ」


 俺は、ドラゴニュートの女性に対して微笑んだ。


「ところで君、名前は?」


「……一応自分では、ブリザードドラゴニュートって種族の、"ブリドラ"って名乗ってる……」


「よし、ならよろしくな、ブリドラ。俺は神谷 祭だ。サイって呼んでくれい」


 ブリドラは、頷いた。そして俺とブリドラは、その部屋から出て、薄暗い廊下に立った。


 廊下に出ると、一つの扉が光っているのに気づく。


 "外"と記された表札の扉。その扉を抜ければ、外に出れるのだ。俺とブリドラは、その扉を開いた。


 そして、その光ってる扉の先に進んだ、俺とブリドラであった。




「おい、おとなしく掴まれ!!!!」


 いかつい頭三人衆が、シズクを追い詰めている。


 シズクの背後は崖であり、逃げ道はない。


 シズクは短剣を持ち、そのいかつい頭三人衆と対峙している。


 そのいかつい頭三人衆とシズクの間に、俺は立った。


 不思議とブリドラは、その場にいなかった。


「お前はさっき、俺達にぼこぼこにされた男じゃねぇか」


 いかつい頭三人衆が、笑う。


「ああ、そうだな。こん棒で殴られた痛み、忘れてねぇからな?」


 俺はそう告げた後、別の対象に向けて、言葉を発する。


「頼むぜ、ブリドラ」


 俺の言葉に呼応するかのように、脳内に声が届く。


(……うん、任せて……)


 付近の温度が、急激に冷える。


 俺の身体の一部が、凍り始めた。いいねぇ、この冷たさ、心地いい。


 俺は明らかに冷たいを通り越して自らの身体が凍っているのに、そう感じた。


「スキル”ブリドラ"」


 俺は、そう告げた。その瞬間、俺の周りだけだった凍結が、付近に拡がる。


 俺は吐く息白く、いかつい頭三人衆に問う。


「おい、このまま手を引くなら、見逃してやるぞ?」


 さすがに今の状況だったら、引くだろうと思った俺。だって今の俺、強そうすぎんだろ?


 だが、IQハチミツのそ奴らは、俺の方に走ってきた。


「冗談だろ? 普通ここで挑んでくるか?」


 さっき負けた時のデジャブのように感じるが、今はその結果として、全く別のことが起こった。


 そのいかつい頭三人衆の胴体が、カチカチに凍ったのだ。


「すごい」


 シズクが、感嘆の声を上げる。


(サンキュー、ブリドラ)


 俺は脳内で、そう告げた。


(……えっへん……)


 姿が見えないブリドラがドヤ顔をしたのを、感じた俺だった。

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