第6話 虎視眈々、元々は上の立場の人間が寝首を掻かれないようにするという意味である
教育実習に行っていたので何も出来ませんでした。お待たせしてしまい、申しないです。
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
「…てお兄………」
「……ないと………ちゃ……ね」
なんか呼ばれてる気がする。
「うーん」
ゴソゴソと音が聞こえて静かになった……
「あっつい!」
暑苦しくなり飛び起きてしまった。布団の中にはブー垂れたあきがこちらを見ていた。
「なんで布団の中に入ってくるんだ!」
「だって、お兄ちゃんが布団の中に入っていいって」
こちらに非があるかの様な態度で話す妹。
「俺がいつそんなこと言ったんだよ」
「さっき返事しなかったら布団に入っちゃうからね〜って声かけたのに返事しないから」
「そりゃ返事出来ないだろうが!こっちは寝てんだから!」
非同意じゃねえかよ。このご時世そういうのには厳しいんだぞ!?
兄妹でわちゃわちゃしていると、朝ごはんの支度をしている母にドヤされ、大人しく朝ごはんを食べた。
朝ごはんを食べ、歯を磨き、制服の袖に腕を通す。制服の袖は成長期に備えて少し長めになっている。
「あ、制服のネクタイ曲がってるよ。ほら、貸して」
あきにネクタイを直して貰った。
「しょうがないだろ、まだ初心者なんだから」
ネクタイをするなんて人生で2回目である。中学校の制服のネクタイはクリップで引っ掛けるだけの簡単なやつだったから。
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
「ケイちゃーん、学校行こ!」
桃のお迎えが来たようなので玄関を出ようとすると
「お兄ちゃん、ちょっと待ってこれ持っていきなよ」
あきが小袋みたいな物を渡してきた。なんだこれ。
「お守りだよ、なんか持っておいた方がいい気がしたから」
ふーん。まあ貰って損は無いだろうしありがたく頂くとしよう。
「行ってきます」
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放課後を知らせるチャイムが鳴り、クラスに活気が溢れる。そこにまだ部活動に入っていない後輩を勧誘するために上級生が入ってきてさらに騒がしくなる。
あいにく自分は桃が作った家庭科部(仮)があるので勧誘を丁重に断り、活動場所となる調理室室へと向かった。
「ちょっと、先に行かないでよ」
桃が少し遅れて入ってきた。
「ごめん。それはそうと部員は2人だけ?」
気になったので聞いてみる。
「うん!2人だけだよ」
嬉しそうに微笑む桃。
「それって部活動として成立するの?」
部活動として成立するのは3人からだったはずだ。
「………」
気まずそうな空気が流れる。
「今日の活動は、ちゃんと部活動として活動できるようにすることでいいんじゃない?顧問の先生もいないし」
「……別によくない?2人の方が好きな物いっぱい食べたりできると思わない?」
桃から負のオーラが滲み出てきた…
「そ、それはそうだけど、部費とか出たほうが助かるでしょ」
2人っきりは正直怖いので負けじと応じる。
「そうかなぁ……隠し事があったらなんでも言ってね」
悩み事を聞くみたいなノリで隠し事を聞こうとしてくるんじゃない。
「話は聞かせて貰いました。」
振り返るとそこには凛花がいた。なんでこんな所に。
「私もこの部活に入ります。これも何かの縁ですし」
「「え?」」
急な凛花の入部に戸惑う桃と俺。
「ケイちゃん、知り合い?」
凛花と面識が無いため、より困惑してる桃。
「一応顔見知りというかなんというか」
しかし、昨日の図書室でしか話したことがない俺も何が起きているのか分からない。
「入ってくれるのは嬉しいんだけど、なんでこんな部活に入りたいのかな?」
ごもっとも質問だ。俺ですらあやふや活動内容のどこに魅力を感じで来たのだろうか。
「永瀬くんと友達になるためには、同じ部活動に入るのが手早いと思ったのです。」
まじか。そんなに友達になりたい要素あったか?
「西園寺さんってお嬢様でしょ?こういう家事みたいなのは使用人に任せればいいんじゃないかな?」
敵意剥き出しすぎるだろ。これから仲間になるであろう人に向かって。
「だからこそ、私が料理などの家事を学ぶ良い機会になるとは思いませんか?」
「………そうだね」
勝負ありか。
あからさまに不機嫌になった桃は続けて話す。
「でも、顧問の先生から許可取ってないよね?とりあえず許可を取れるまでは認められないね部長としては」
暴論と部長という職権乱用をする桃。そもそも顧問なんていない。無理難題だ。かぐや姫かな?
「顧問の先生がいないとの事でしたので、貴方たちの担任である、佐藤先生に顧問になることの許諾を得ておきました。その際に、私の入部届も受理して頂きました。部長さん、まだ何かありますか?」
「……」
完敗だ。
これで顧問、部員問題が一瞬にして解決した。
アドバイス、感想を書いてくれると力が湧いてきますありがとうございます。