第5話 体の細胞はだいたい4ヵ月で入れ替わる
「ただいま」
自宅の戸を開ける。
あの後、桃に占い師が消えたと伝えると「超能力とか信じちゃうタイプなの?」とか言われた。
お前だって占い信じてキャッキャしてた癖に。
まあ、1度死ぬまでは超能力があると信じていなかったので、桃から見ても意外だったということだろう。
「おかえりお兄ちゃん。今日の晩ご飯は肉じゃがです」
妹のあきがエプロン姿で玄関に迎えに来た。表情から見るに今日の肉じゃがには自信があるだけじゃ無さそうだ。
「なんでそんなにニコニコしてるんだ?学校で好きな人と同じクラスにでもなったか?」
探りを入れてみた。
「そんなんじゃないって。ただ、日常の幸せを感じてただけだよ」
あきは手を顔の前で振りながら否定する。
「なんだよそれ。ちゃんと彼氏が出来たら母さんじゃなくて俺に言えよな。母さんに言ったらすぐ近所に広まっちゃうからさ」
「だから、彼氏なんか要らないっていつも言ってるでしょ?」
「どうだか」
そう、あきは彼氏なんていくらでも作れそうな整った顔立ちをしている。ちなみに俺はシスコンじゃない。本当だ。
手を洗い、カバンを部屋に置いてから食卓に着く。
「「いただきます」」
父親は単身赴任、母親は仕事で夜遅くに帰ってくるため、夕食はあきと2人で食べている。
ご飯を作るのは大半はあきだが稀に俺も料理作っている。チャーハンとかね。
「お兄ちゃんこそ、学校は どうだったの?」
「まあ、普通だったよ」
変な占い師に出会ったのは放課後だし学校は普通だった。
「ねぇー、いつもそれしか言わないじゃん。反抗期なの?」
「ちがうわい。そういえば、桃と同じクラスになったよ。これでいいか」
「桃ちゃんと?楽しそうだね」
あきと桃も仲がいい為、肯定的な感想が返ってきた。
「そういえば最近桃ちゃんと会ってないかも。今度誘ってみようかな」
「いいんじゃないか?」
そんな会話をしながら箸を進めた。
肉じゃがはとても美味しかった。
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洗った人が先にお風呂入っていいというルールの元、一番風呂に入る。
「あ〜気持ちいい〜」
今日の疲れが吹き飛ぶのを感じながら入浴剤が風呂に溶けだしていくのを眺める。
そして今日の出来事を思い出す。
西園寺さんのこと、占い師のこと。
あんなお嬢様がこの学校に居たなんて、今まで知りもしなかったな。それと、も知っていたけど忘れてしまっているのだろうか。あれもかれも何か知っていそうだったあの占い師に聞いてみるのが早いんだろうな。
占い師ともう一度話す方向性でこれから行動していくとしよう。
「ねぇ、起きてる?寝てるの?」
思っていたよりも長湯をしていたらしく心配したあきが声をかけてきた。
「寝てるよー」
「はいはい、新しいパジャマ届いたから着といてね」
「ういー」
風呂から上がると用意した着替えが無くなり、新しいパジャマが用意されていた。着替えて自分の部屋に向かい、横になりながら漫画を読んで時間を潰していると、
「じゃーん、どう?」
俺が元々着ようと思っていたパジャマを着た
あきが入ってきた。
「何してんだお前…」
「エコだよ、エコ、SDGSってやつだよ、それに、お下がりを着させられるのは妹の悲しい宿命なのさ」
体をクネクネさせながら世迷いごとを話すあきを見ていると少し楽しい気持ちになった。
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スーッ、、、ハー、、
兄の匂いを全身を包まれながら今日も兄のことを考える。
いつも優しい兄。あまり家に居ない両親に変わって世話を焼いてくれた。逆上がりの練習を一緒にしてくれた。勉強をいっぱい教えてくれた。怖いテレビ番組が放送されて1人で寝れなくなった時は一緒に寝てくれた。寒い日に温かい飲み物を作ってくれた。家のコップを割った時には庇ってくれた。落ち込んでる時には何も聞かずにそばにいてくれた。誕生日プレゼントを毎年くれた。ゲームを買ってきて一緒に遊んでくれた。学校の発表会にサプライズで見に来てくれた。風邪を引いたら付きっきりで看病してくれた。いきなり抱きついても受け入れてくれた。買い物に付き合ってくれた。新しい服を着るとすぐ褒めてくれた。ご飯を作ると美味しいと言ってくれた。
今日もご飯を全部食べてくれた。
私が兄の体細胞を構築させたと言っても過言ではない。今では、排泄物すら愛おしいと思える。
お気に入りのサイズが大きめボクサーパンツを身につけながら今日も欲望でいっぱいの妄想をしていた。
アドバイス、感想を書いてくれると力が湧いてきますありがとうございます。