第3話 ソフトボールの一塁ベースは2倍の大きさ
昼休みが終わり、午後の授業も終わり、放課後となった。
待ってましたと言わんばかりに教室に様々な運動着を身につけている先輩たちがなだれ込んできて、激しい部活の勧誘合戦が始まった。凄い熱気だ。
傍目から見ていると、中学から種目を継続する人、珍しい部活を始めてみる人、でかい男の人に担がれて連れて行かれて行く人など三者三様である。
他人事のように見ている自分ではあるが、実の所、運動部に入る気はサラサラない。
普通の高校生ならば、若さからくるエネルギッシュな運動部活動に勤しむところだろうが、人生を通して関節や、体力は消耗品であると聞いたことがあり、密かにギネスブックに乗ろうとしているという大義名分があるため運動部に入らないという言い訳をいつも考えている。
では、なんの部活に入るのか、それは…………それは…まあ、そんなすぐに決めることじゃないし……仮入部期間だし……後ででいいでしょ…
でも、親に部活には目もくれずに直帰したと知られたら、小言を頂くんだろうな…
よし!図書室で時間を潰してから帰ろう!
椅子から静かに立ち上がり、誰にもバレないように気配を消して図書室に向かった。
ーーーーー
ガララ…
扉を開けると広い机がいくつか並んでいるものの、誰1人座っている人は居なかった。学校初日から図書室に居るやつなんで俺だけで十分である。
さて、本のラインナップでも見るか。お、意外とラノベとかもあるんだな、BL系もあるのか、ここの司書さんは腐女子だったりするのだろうか。
本を物色しながら、時間を潰していると、入口からも見えないところにも机があり、黒髪ロング女子が座っていた。後ろ姿だけでも凛としたオーラが伝わってくる。邪魔をしないようにしよう。
「こんにちは」
そそくさとその場から離れようとする俺に気づいたのか彼女は挨拶してきた。
本当に俺に話しかけているのか確認した後、
「こ、こんにちは…」
まずい、コミュ障が出ちゃった。
「そんな怖がらなくてもいいですよ。私は1年生ですから。」
そうなんだ。居たわ高校初日から図書室に居るやつ。
「自己紹介しますね、私は1年8組の西園寺凛花と申します。仲良くしてくださいね。」
「俺は1年7組の永瀬圭です。こちらこそ、よろしくお願いします。?」
西園寺さんの丁寧すぎる挨拶に少し引っ張られてしまった。
「あの、西園寺さんはどうして学校初日から図書室にいるの?」
「そうですね、私事になってしまうのですが、家の方からで他人と関わるのは控えるようにと言われておりまして…帰るために運転手の方を待っていたのです。」
もしかして、お嬢様か。こんな学校によく来たものだ。
「どうして、俺なんかに話しかけてくれたの?」
「あの、あまり他の人には言わないで欲しいのですが、お父様の紹介以外でのお友達を作って見たいのです…そんな所に永瀬くんがお見えになられて。その時、これはチャンスなのではないかと思ったのです。」
これは箱入り娘の反抗期なのだろうか。
「友達なんてクラスで作ればいいじゃないか」
そう、クラスメイトなら何十人も同級生がいる。まず友達を作ってみるのならクラスメイトからだろう。
「クラスメイトの皆さんは私が西園寺家の娘ということもあってか少し距離があるのです。話しかけに行っても、私の機嫌を気にしたような態度の方ばかりなのです。」
「もしかして…西園寺さんってあの西園寺グループの娘さんみたいな?」
そう、近所には世界に名を轟かせている西園寺グループの本社のでっかいビルが立っているのである。自身の行動を振り返って冷や汗をかいた。
「バレちゃいましたか、でも、もうお友達になってしまいましたから、これからも宜しくお願いいたしますね」
それからしばらくして、迎え人が来たらしく帰ってしまった。
俺も帰ろうかな。
そう思って下駄箱に向かうと、
「どこ行ってたのー?」
桃がいた。
「いや、部活勧誘から逃げ回ってただけだよ」
別に嘘は言っていない。
「そうなんだ」
桃はそう言って俺の胸元に顔を近づける。
途端に顔をしかめ不機嫌になってしまった。
「おい、どうしたんだよいきなり」
「ケイちゃんは私に隠し事なんてしないよね?」
ヤンデレセンサーに引っかかってしまったのだろうか。
「ああ」
動揺してるのがバレないように短い返事を返す。
「そうだよね! 一緒に帰ろっか!」
杞憂だったのか、元気いっぱいに歩いて行った。
「1アウト」
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