第2話 手の爪は足の爪よりも伸びるのが早い
ちなみにクラスの座席は真ん中の後ろあたりだった。
学期最初の授業は各々が新しいクラスでの友達作りを始めるための自己紹介やら委員会決めなどを行うらしい。
「こんちゃーす!!仲田でーす!!彼女募集中なので是非応募してくださーい!今なら定員割れしてるんで狙い目でーす!1年間よろしくお願いしまーす!!」
朝からエンジン全開の仲田にクラスのみんなは苦笑い。
このままだと今年も彼女ができないだろうな…
そして自己紹介が続き、自分の番が来た。
「永瀬圭です。好きな食べ物はみたらし団子です。1年間よろしくお願いします!」
個性がないがクラスで1番の人気者になりたい訳ではないので、無難な自己紹介をする。かと言ってひとりぼっちになりたい訳では無いので、ちょっと元気な感じをアピールする。完璧だ。
「桜井桃ですっ。趣味はお菓子作りで、将来の夢は素敵なお嫁さんになることですっ!皆さん仲良くしてくださいっ!」
………桃がこっちをガン見してる。。こわい
それはそうと、幼稚園の卒業アルバムにしか書いてないような将来の夢を高校生で言っちゃうのは大丈夫なのだろうか。
「え〜かわいい〜」
「好きなタイプ教えてよ!!」
「俺にモテ期が来たか…」
クラスメイトの反応は上々のようだ。
自己紹介が終わり、そのまま委員会決めが始まった。希望の委員会とか特にないし、なんでもいいかな。
「永瀬くんで合ってるかな?よろしくね」
隣に話しかけられた。確か名前は高田賢作だったはず。クラスの委員長になりそうな顔とメガネをしている。
「あぁ、よろしく。賢作って呼んでもいいかな?」
「もちろん」
とても爽やかな雰囲気…浄化されそうだ。
「ところで…永瀬くんは桜井さんと仲がいいのかな?」
少し気まずそうに賢作が聞いてきた。
「ただの幼なじみだよ、どうして急に?」
「いや…凄いこっち見てるから…」
うわ、桃が凄いこっち見てる…
こっち見てもなんにも無いぞ。
桃と目が合うとウィンクしてきた。
「別に付き合ってるとかじゃないんだけどな」
「付き合う寸前に見えるけどね」
「でも、なんでこんなに好意を持ってくれてるのか分からないんだよね」
そう、桜井桃に好かれているという自覚はあるものの、好かれている理由が分からないのだ。
中学校にいたイケメンからの告白も断っていたし、チョロそうな俺を狙っている訳ではないのだ。本人に聞いたら知らない約束が出てきそうで怖い。
「そ、そうなんだ」
賢作は俺のよく分からない発言に引いていた。
そんなことをしているうちに自分は図書委員会に入る事となった。賢作はクラス委員長になった。
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2時間目からは普通に授業が始まり、昼休みになった。
クラスでは、近くの人と一緒に学食に行ったり、弁当を食べる人が多いようだ。
「ケイちゃん、一緒にご飯食べよ??」
桃が当然のように昼食に誘ってくる。ここらでひとつ対策を打っとくか…結構危ないけど…
「あー、賢作も呼んでいいかな?」
ここでのポイントはしれっと伝えることだ。
「え?委員長の賢作くん??なんでかな???」
まずい、スっと受け入れてくれなかった…
今までそんなこと言ったことなかったから怪しまれてるか…?
「いや、今日友達になったからさ、桃も委員長と仲良くなればテスト勉強とか教えてくれるかもよ?」
これで行けるか?
「……………………………いいよ」
賢作には申し訳ないが、2人っきりで食べるのを阻止するために今日は3人で食べる。無闇に好感度を上げた影響で、ヤンデレレベルMAXになった可能性を考えているからだ。少しずつ距離を離して良識のあるヤンデレになって欲しい。
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教室棟とは違う場所にある教科棟の階段の踊り場に移動する。ここなら人が気にならない。
「はい、どうぞっ」
桃が家から適当な菓子パンを食べている俺に
でかいお弁当箱を差し出してくる。
「え?俺パンあるんだけど…?」
「菓子パンなんかじゃ食べ盛りの体はすぐエネルギー切れになっちゃうよ!?いっぱい作ってきたからいっぱい食べて欲しいの!」
キラキラとした目で俺に詰め寄る桃。
あまりの迫力に気圧される俺。
気まずい顔をしている賢作。
「僕、お邪魔だと思うんだけど…」
「全ぇん然!いや、俺もこんなに食べれないからさ!2人で分けようぜ!??なぁ!」
お弁当の中には、おいなりさん、厚焼き玉子、
アスパラベーコン、タコさんウィンナー、唐揚げが2人分くらい入っていた。一般人の俺にはしんどい量である。
「え、遠慮しておくよ…ほら、桜井さんは君に食べて欲しいと思っているみたいだしね…」
桃の邪気を感じ取った賢作は食べることを拒否。さすがは委員長だ。
そして、結局俺が全部食べることになった。時々ら卵の殻のような硬いなにが入っていたが、高校1年生の腕前なんてこんなものだろう。しょうがないよね。
アドバイス、感想を書いてくれると力が湧いてきますありがとうございます。