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Program.04【ようこそ“HELL✕CIRCUS”へ!~成果~】

葉月十六夜の三作品目です!



 地獄には、明確な方角が存在しない。

 果ての無い地獄の中央地点だけが定められ、方角を表すものは各大罪の支配する領域を指す事で、地獄の悪魔達は方向を示している。

 簡単に言うと、地獄の中央地点から地獄王・サタンラースが支配する憤怒区を一本の線で結び、そこから時計回りに、色欲区・暴食区・嫉妬区・傲慢区・怠惰区・強欲区と、円を描くように区別されている。

 余談だが、憤怒区の凡そ対の位置に存在する暴食区と嫉妬区と傲慢区は、元はサタンラースと敵対し、その昔、地獄全土を悪魔達の地で真っ赤に染め上げた“地獄黒炎戦争インフェルノ”にて敗北した地獄の冥王・ハデスエンドの支配領域だった。

 その名残もあり、この三大罪区に暮らす悪魔達はサタンラースを忌み嫌っている。

 

 そんな全悪魔達から畏怖の念を一身に集める存在・地獄の王サタンワースはこの日、支配領域である憤怒区の中心に位置する活火山の中に建つ“憤怒ノ城(ラース・キャッスル)”の自身の書斎にて業務に勤しんでいた。

 黒一色の佇まいの城の中は、至って普通の配色と調度品で構成されていた。

 普通と言っても、当然ごく一般の家庭の物とは違う。

 落ち着いた色彩と形状で整えられた調度品は、人間の王族や貴族が使用する物とよく似ていた。

 外壁が真っ黒く染まっているのは、城を取り囲む溶岩によって、長い年月をかけて焦げ付いたのだ。

 焦げ付いているにも拘らず、その均一に染まった漆黒の佇まいは妙な貫禄を放ち、地獄の王が住まう城として申し分ない仕様となっている。


 と言うか、地獄の王・サタンラースはあまりそういった体裁を気にしない質なのだ。


「陛下」


 サタンラースの書斎の扉が数回ノックされ、その奥から一人の女性が入室した。

 長く絹の様な滑らかさの白銀色の髪を器用に纏め上げ、髪よりも更に白い肌に、青いタイトスーツを纏ったその美女は無駄の無い動作で扉を閉め、書斎のデスクで山積みになった書類に一枚ずつサインをしている地獄の王・サタンラースの側に歩み寄った。

 ウェイブのかかったセミロングの黒い髪を雑に束ね、目尻の下がった垂れ目から覗く金色の瞳は憂鬱そうに書類を眺め、くっきりと隈までこさえて居る。

更には黒くて分かり辛いが皺の入ったカッターシャツの第二ボタンまで開け、袖も適当な位置までまくり上げたその姿からは、とても地獄の悪魔達に畏怖の念を向けられるような威厳は感じられなかった。


「陛下。民の前でないからと、身だしなみを崩されるのは如何なものかと…」

「……あぁ、ヴィヴィかい?」

「はい。従者のヴィヴィアンバレットでございます」

「あー、いつからそこに居たの?」

「此方の書斎へ入室したのは1分前ですが、入室前にノックは20回程しました」

「え、なんで?」

「ご返答が無いので緊急事態なのかと、扉を突き破ろうかと思いましたが、そう言えば半年前にも同じ体験をしたので、きっと大丈夫だと思い止まりました」

「……あ、そうなんだ……?」


 この時、サタンラース陛下は眠気で朦朧とする意識の中で、半年前のその時の事を思い出した。

 美女・ヴィヴィアンバレットこと、ヴィヴィが体験した半年前のその時も、自分は山の様に積み重なった書類に機械的にサインをしていく時間を過ごし、ある種の集中状態に陥っていた。

 その所為で部屋の外から声をかけて来る従者達の声に応える事を忘れ、焦った従者達によって本当に扉を突き破って入って来られた事があった。

 

「ごめんよ。そろそろ一息つこうかと思ってたんだけど…」

「お茶をご用意いたします」

「うん。ありがと」


 ヴィヴィが手慣れた手つきでティーポットとカップの準備を始める。

 陛下は「んーっ」と声を出しながら両腕を高く上げて背筋を伸ばして立ち上がった。

 だらしない出で立ちだが、実際の身長は2メートルは超えて良そうな体格だ。

 若干縒れた白いズボンは細くスラリとした彼の足の長さを際立たせた。

 香り立つ紅茶を淹れ終えたヴィヴィが、陛下の書斎のデスクにカップを置くと、立ち上がっていた陛下が腰を曲げて、立ち昇る紅茶の湯気を嗅ぐ。

疲れ切った顔で笑みを浮かべて、満足気に鼻を鳴らした。


「ん~いい香りだ。やっぱりヴィヴィの淹れてくれる紅茶は絶品だね」

「恐れ入ります。冷めない内にどうぞお召し上がり下さい」

「うん。いただくよ」


 再びデスクの椅子に腰を下ろし、カップの取っ手に指を添えて掴み上げる。

 もう一度湯気の立つ紅茶の香りを堪能してから、ゆっくりと熱い紅茶を口にした。

 熱い紅茶を口の中で上手く調温し、適温になった紅茶を嚥下すると、陛下はホッと一息吐いた。


「時に、陛下。本日がどのような日か覚えておられますか?」

「今日?」

「ご息女であらせられるチャチャ……様の設立なされたサーカス団の初公演日ですよ。お忘れで?」

「あーその事かい? 勿論覚えているさ! 何せ僕のベイビーの晴れ舞台だ! 本当ならカメラ十台くらい使って色んな角度から愛らしい姿を撮影してあげたかったよ~!」


 さっきまでの憂鬱そうな瞳に、一気に生気が宿る。

 新しい玩具を買ってもらえた子供の様にキラキラとした目と高揚して頬を赤らめる陛下だったが、次の瞬間にはまた死んだ魚の様な目に戻って、デスクに山積みになった書類を忌々しそうに睨みつける。

 

「なのにこんな…こんなっ! どうして他の大罪達の領分の案件まで僕の所に来るんだ!」

「他の大罪様方がご自身の手に余ると判断された案件は、全て最高決定権を持つ陛下の判断に委ねるというのが、各領域を治められる“七大罪”の皆様の総意だったからです」

「いや! アイツ等絶対面倒臭がってるだけだからね!?」


遂に理性の箍が外れた陛下は感情任せに声を荒げた。

高身長の体を大きく逸らせてシャウトする主の姿をクールに見据えるヴィヴィ。

中身を飲み干した陛下のカップに再び紅茶を注ぎ淹れていると、カップに注がれた紅茶が『ブク…ブクブク…』と音を立てて沸騰し始めた。


「何で何で何で…毎度毎度毎度…僕は一応“七大罪(お前等)”の頂点だぞ…? 仕事サボってる上にコッチに来る案件は全部簡単なモノばかりじゃないか…何でこの程度の仕事も真面に熟せないんだ…? お前等の尻拭いの所為で娘の勇姿がぁあああ―――ッ!!!」


 奈落の底から響くような低い声が“怒り”の感情に比例して、獣の様な声に豹変していく。

 細身で高身長の身体が徐々に厚みを増やし、適当に束ねていた髪が量を増して逆立つ。

 薄い唇から鋭い犬歯が伸びて行き、同じ様に鋭い角が額から二本伸びる。

 その姿はまるで、狼と鬼を合わせた様な姿だった。


「陛下」

「そもそもアイツ等自分の立場ちゃんと理解出来てんのか!? 仮にも最高位の悪魔だろうが!」

「陛下」

「その辺の低級の方がよっぽど真面目に仕事してんぞオイ! 休暇取らせろ! 給料増やしてやれや!」

「陛下」

「百歩譲って“怠惰フィーゴ”は目ぇ瞑ってやるよだってアイツ“怠惰”だもん! 逆に仕事してるって言うかぁあ!? けど他の大罪テメェ等はダメだ!!!」

「陛下。お電話です」


 段々キャラが崩壊して来た陛下のデスクに指を指すクールビューティー・ヴィヴィ。

 陛下は豹変したままヴィヴィが指した先に視線を向けると、そこには着信音を鳴らしてバイブレーションしている自分のスマホがあった。

 荒い呼吸をしたままスマホを手にして通話相手を確認すると、そこにはよく知った人物の愛称が表示されていた。

 

「あれ? 『ジェーン』だ」

「上手くいっていれば、今頃サーカスも最高潮に盛り上がっている事でしょう。本日職務に勤しまれている陛下へ、初成果のご報告では?」

「あぁ! そっかぁ!」


 ヴィヴィの予想を聞いて、打って変わって声のトーンが明るくなった陛下。


「流石はジェーンだ! 僕の事よく分かってくれてるじゃないか~!」


 鬼狼人間のような見た目が再びだらしないヒョロヒョロの高身長男に戻り、嬉しそうにスマホをタップする。


「もしもしジェーン! どうだいチャチャの晴れ舞台は? もっちろん大盛況だよね!」


 相手の確認も取らずに一方的に喋り倒す陛下。

 ヴィヴィは「やれやれ…」と小さく溜息を吐き、沸騰し過ぎた紅茶を下げ始める。

 そんな中、陛下が出たジェーンからの通話の音声が、やたらと騒がしい事に気付く。

 通話を聞く二人が同時に「よほど盛況だったのか?」と思ったのも束の間。

 その音声が悲鳴にも似た雄叫びと、激しいマシンガンの発砲音だと気付くのに、時間はかからなかった。


「えーっと……ジェーン?」

『―――………申し訳ありません。陛下』


 ようやく聞こえて来た信頼する元従者の、心底申し訳無さそうな声。

 一変して不穏な空気が漂う書斎に、暗いジェーンの声。


その原因は―――


「ヒャッハ―――!!!」


 一体何処から取り出したのか。

 来た時には所持していなかったはずのマシンガンを派手にぶっ放すエディ。

 頬を高揚させて逃げ惑うゴロツキ悪魔共を楽しそうに打ち抜いている。

 

「オラオラどうしたァア!? もう終いかァア!!」

「ひぃいいぃいッ!!!」


 エディの攻撃から必死に逃げるゴロツキ悪魔達は、絡んで来た時の威勢が嘘の様に顔面が蒼白に染まっている。

 ―――と、その蒼白な顔面に「ドスッ」と鈍い音を立てて、よく研がれたクナイが突き刺さる。


「エディ…仕留め損ね多いよ」

「あぁあ? マシンガンの音で何言ってんのか聞こえませーん!」

「全く…」


 呆れて溜息を吐くオミー。

 しかしノールックで投げたクナイは見事に銃を構える悪魔の喉元に突き刺さっていた。

 二人の攻撃に、顔中の穴と言う穴から出る物が全部出して地べたを這う姿は何と言うか可哀そうに思えてくる…。


「クソが…! あの野郎共狂ってやがる…!」

「誰かアイツ等止めろぉお!」

「無理言うな! 武器はアイツ等に盗られてんだぞ!」

「いつの間に盗まれたんだぁあ!?」


 弾丸やクナイが届かない物陰に身を潜めるゴロツキ悪魔達は、互いにエディとオミーを止めに行くよう擦り付け合っている。

 そんな中、口論し合うゴロツキ悪魔達の視界の端で、鼠の集団が地面に転がる銃や刃物を拾い持ち去る。

弾丸が届かない場所で退屈そうに見物しているマッチの側に盗品を放り投げ、任務お終えた鼠から順番にマッチに頭を撫でてもらうために行列を成していた。


「よーしよし。偉いぞ~」

『チチー』

「呆気なかったナァ。もう終わりかヨ」

「…………」


 同じく退屈そうにマッチの隣で胡坐をかくアニー。

 鼠たちが盗って来た刃物を数本手に取り、その場で器用にジャグリングしてみせる。

 そしてその更に後ろで口を開いて棒立ちしているチャチャ。

 彼女は目の前で起きている事が信じられないと言いた気に目を見開いて引きつらせている。

 そしてそして、その様子を更に離れた場所から見つめるジェーンとマム。


「…………何で?」


 ジェーンはチャチャと同じ様に棒立ちで目を引きつらせた。

 片耳には陛下に繋げたままのスマホを構え、通話の途中にも関わらず湧き上がる疑問を口にする。

 いや今はそれよりも、この阿鼻叫喚を目にして一言も発さず自分の隣で立っているマムが心配だ。

 何が心配って?

 勿論、団員達の方への心配だ。

 『お粗末なサーカスを見せない』事が条件で“七大罪”自ら足を運んだというのに、待っていたのは自分の治める街中で乱闘騒ぎを巻き起こし、更には自分の領域の悪魔達を嬉々として虐殺しているサーカス団達の姿がそこにあるのだ。

 ジェーンは恐ろしくて隣のマムの顔を伺う事が出来ない。

 

(………いざとなったらチャチャだけ連れて逃げよう)


 そう決意した時、隣で黙りこくっていたマムが動きを見せた。


(来るか―――!)


 ジェーンは冷や汗を流し、すぐさまチャチャの元へ駆け寄ろうとした……が、どうにもマムの様子が思っていた事と違う。

彼女は長い爪が生えた両手を徐に胸元まで上げて行き、そして両手の掌同士を警戒に打ち付け合った。

所謂、拍手である。


「ンッホッホッホ! まぁまぁ愉快じゃないのぉ?」

「お…お気に召したかな…?」

「えぇ。ド派手で狂喜クレイジー。正直お話を聞いた時には『地獄にサーカスなんて…』なんて思っていたけれど、成程! こういった趣向のサーカスなのね! 確かにコレ(・・)ならば地獄の曲芸団(ヘル・サーカス)と名乗るに値するわね」

「は、はぁ…そうか…」


 少し…いや大いに解釈違いなのだが、ジェーンは敢えて飲み込んだ。

 折角気に入ってくれた様子のマムの機嫌を損ねるのは非常にマズい。

 直近の危機を回避しつつ、ジェーンは再び陛下と繋げたスマホに語り掛ける。


「………あの、陛下」

『あー、うん。それで……どういう状況かな?』


 スマホ越しの陛下の声も疑問と不安に色を帯びていた。

 

(こっちもマズイな…。職務滞納(他大罪の尻拭い)の所為で愛娘チャチャの晴れ舞台を見に来られなかった事へのストレスも相まって、この現状を“大失敗”としてご報告する訳にはいかない……)


 ―――何より俺の監督不行き届きで滅茶苦茶怒られる未来しか見えない…!!!


 愛娘チャチャの護衛兼世話係であり設立したサーカス団の相談役(一応の最高責任者)として一任された事へのプレッシャーで、ジェーンは吐きそうになっていた。

 

 ―――仕方ない…。せめて初日の公演は無事に終えたと……そう! 大成功(・・・)だったと言い切るしかない…!


 ジェーンは怒り狂う陛下に処罰される団員達の姿を思い浮かべつつ、『そうはさすまい!』と強い決意を持ってして、唖然とするチャチャの許へ近寄った。


「チャチャ」

「はっ―――お、お兄ちゃん! どどどどどどうしよう! こんな…こんな事になるなんて…!」


 案の定、チャチャも大パニックだ。

 ジェーンはスマホのマイクに手を添え、陛下に声が届かない様にしてチャチャに耳打ちする。

 

「チャチャ。いいかよく聞け。この現状をそのまま陛下に報告する訳にはいかない。分かるよな?」

「そんな事しちゃったら即サーカス団解体だよ!」

「その通りだ。マムもこの状況を気に入ってしまっている。今更やり直し何て認めはしないだろう。だから納得いかないかもしれないが、この状況を陛下には成功したと言う事でお伝えしなければならない訳だ」

「こ、こんな状況……どうやってパパに成功したって伝えればいいの!?」

「簡単だ。今から言う通りにすれば良い。いいかい―――」


 ジェーンはチャチャに耳打ちする。

 彼の指示を受けたチャチャは顔を青ざめさせるが、ジェーンは彼女の肩を叩いて『やるんだ!』と促す。

 ジェーンの力強い視線を向けられ、チャチャは蒼い顔のまま、諦めた様に首を縦に振って、未だに乱闘騒ぎが止まない広場を背にして仁王立ちになる。

 その様子をジェーンはビデオ通話に切り替えたスマホで撮影を開始した。

 準備が整った合図をチャチャに送るジェーン。

 チャチャはジェーンの合図を受け、大きく深呼吸して、そして無理矢理笑顔になってみせた。


「ほっ……本日! わわ…我がサーカス団の初公演にお集まり下さいました多くのお客様へ! お、雄叫びの様な歓声と、だだ…弾丸の如く鳴り響く拍手に支えられ! だ…だだ…だい…大成功を! 収める事が! でで、出来ました!」


 命一杯の笑顔と大きな動作で、あたかも大成功を収めた様に振舞うチャチャ。

 その様子をビデオ通話でしっかりと陛下に届けるジェーン。


 そう。

ジェーンがチャチャに出した指示とはズバリ―――


((大成功してみせたという……“嘘”のゴリ押し!!!))


 これぞ正しく前代未聞と言えるだろう。 

 だが、そんなこと気にしていられるほどの余裕は、今のこの二人(チャチャとジェーン)にはには無い…!


「でででででは皆様! じじ、次回の公演もおた、おたた、お楽しみに~~~!!!」


 お辞儀をしながら最後に盛大に声が裏返ったチャチャ。

 しかし指示通り見事にやりきった事へは賞賛を贈りたいと、ジェーンは内心で謎に感動を覚えていた。

 そしてチャチャは他の団員達(主にエディとオミー)の首根っこを掴んで、逃げる様にその場を後にする。

 閉幕の挨拶の後、すぐさまビデオ通話を普通の通話に切り替えたジェーン。

 

「………い、如何でしたか?」


 恐る恐る陛下に感想を聞くと、通話の向こうの陛下の声は思いの外明るく興奮した様子だった。


『すっ―――ばらしい! 晴れ舞台で大盛況だなんて私の娘はなんて才能に溢れた子なんだ! 今度またお祝いを持って行くと伝えておくれ! 次の公演は絶対にパパも見に行くよ~ってさ!』

「あ…ハハ…さ、左様ですか。畏まりました。彼女には、その様に伝えますね?」

『あぁ、うん。キミもご苦労だったね』

「いいえ、そんな―――」


 『良かった。何とか誤魔化せた』と安堵したジェーン。


 しかし―――


『本当にお疲れ―――色々と(・・・)


 そう通話の最後に残った陛下の言葉に、ジェーンは血の気が一気に引いた。


 所戻って『憤怒ノ城(ラース・キャッスル)』の書斎では―――


「―――………」

「陛下?」

「………うん。まぁ、あれだね」


 陛下は自身のスマホの待ち受けに映る愛娘の写真を見つめ、困ったように、けれども愛おしそうに笑みを浮かべる。


頑張った(・・・・)ご褒美はしてあげようじゃないか」

「そうですね」


 その後『ヘル・サーカス』の次回公演が一ヶ月も先延ばしになった。

 一番の原因とも言えるエディとオミーは、その間に宣伝活動を義務付けられた。

 尚、二人が暫くの間ジェーンに怯えて子犬の様に震え上がっていたというのは、後のサーカス団の笑い話となって語り告げられるのであった。


最後までご覧頂きありがとうございます!

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