ショテンシテン
今日も、人がまあまあいる。
こんな世の中でも、にぎわう書店だ。
私は、気になる人がいる。
他の客とは、雰囲気が違う。
まるで、店員だ。
ズレた文庫本を、直してくれる。
違う場所に置かれた雑誌を、元に戻してくれる。
背の高い棚から、他の背の高い棚に移る際、横断歩道並に、左右確認をする。
立ち読みはせず、直す以外触れることをしない。
ただ、見えている表紙だけを見て、楽しんでいる。
そして、ジャケット買いをする。
ゴミ拾いまで、してくれる。
そんな人を、気にならないわけがない。
好きになっている、自分がいる。
雑に扱う人もいるなか、優しさが際立っている。
私は、書店だ。
書店そのものだ。
喋れないし、特にその人に、意識されることもない。
大きい大きい、くくりだから。
本を引き立てる、役割だから。
だから、ひっそりと想うよ。
じっくりと想うよ。
あっ、ヤバい。
また、していた。
書店とか、スーパーマーケットとか。
建物になりきって、妄想する。
それを、自然としてしまう。
書店の視点で、恋をする。
それを、私はやめられない。