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03 鉱山へ

ダンジョンから帰った翌日から、清掃等の簡単な依頼をこなしていった。

それに並行してネックレスの女性に関する情報を調べていたが、まだなにも見つかっていない。


E級ダンジョンの探索に"パーティー"で来ていたことから、冒険者ギルドに問い合わせすればすぐ見つかるものだと思っていた。

だがネックレスの写真を見せても該当者はいなかった。


冒険者でないとなると、国の軍人だろうか。

イースト・カイの首都、カイの国へ捜しに行くべきかもしれない。


「グレン、もうこの町ではなんの情報もないぜ?そろそろ別の町へ行ってもいいんじゃねえか?」

「ちょっと待ってくれ。朝、気になった依頼があったんだ。まだ残ってれば受注したい」

朝に良報酬の案件をみつけていたが、先に清掃の依頼を受けていたので受注できなかった。


フェンと一緒にギルドへ向かう。目当ての依頼は壁に貼り付けられたままだった。剥がして内容を確認する。


「なんだそれ。鉱山への護衛?」


依頼書の内容は、町の東北にある鉱山への護衛依頼だった。

鉱山までの道中は野良のモンスターが発生するし、鉱山自体に特殊なモンスターが発生している可能性もある。

ただダンジョンモンスターではなく野良モンスターなので、難易度は高くない。

条件の項目をみると、2人の護衛、Eランクから受注可能となっている。


「そうだよ。この依頼が終わったら町をでよう」


ギルドで受注の手続きを終えて、依頼者への元へと向かった。

依頼者は町はずれの工房にいた。


「あんたが依頼を受けてくれたのか。俺はベンター、よろしく頼む」


ベンターは年配の鍛冶士だった。剣に必要な鉄鉱石を取りにいきたいそうだ。


「鉱山には、俺ともう一人同行する。あんたには俺達の護衛を頼む。そっちの犬は?」


「フェンだ。俺も同行する。暇だからな」


「そうか、それは頼もしいな。出発は明日の朝だ。しっかり頼むぜ」


翌朝待ち合わせ場所へ着くと、ベンターと女の子が先に着いていた。


「この娘は俺の孫、リンだ。まだ先月剣士の職を授かったばかりだ。いい経験になると思って同行させることにした。まだまだ未熟だから、少し指導もしてくれたら助かる」


納得がいった。指導料も含まれていたから、報酬が高かったのか。


「リンです!よろしくお願いします!野良のモンスターは、できるだけ私が倒していこうと思います。どうかご指導のほど宜しくお願いします」


リンの腰には新品の刀があった。ベンターが作った刀だろう。

職のスキルから、戦士は剣、剣士は刀を使うのが基本だ。


「グレンだ。俺はE級だから人に指導する実力なんてないけど、場数はたくさん踏んでいる。気づいたところがあれば言わせてもらうよ」


「ありがとうございます!あの・・・。そちらの白い犬さんは?」


「フェンだ。俺も同行するぜ。よろしくな、リン」


リンの目が輝き、鼻息が荒くなった。


「はう~~。綺麗な毛並みですね~。わしわししてもいいですか~?」


フェンは光速で俺の背後へ逃げ出した。少し震えている。

まさかフェンに恐怖を抱かせるとは。リンの素質は凄まじいな。


「挨拶はすんだな。俺達の護衛は頼む。さあ、出発するぞ!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


私の母は、10年前の人魔大戦で命を落とした。

母は聖女として戦争の最前線で戦い続けたらしい。

私はその時まだ8歳で、何もすることができなかった。


15才になると、天職で聖女を授かった。母と同じ天職であることがとてもうれしかった。

私にとって魔族は母の仇であり、宿敵である。

魔族討伐に関する仕事は、特に優先的に受け付けてきた。


私はイースト・カイから帰国した後、国からの指令により魔族討伐の最前線、ノース・エチゴの最北の町、サドへとやってきている。

ノース・エチゴは魔界と接しており、10年前の人魔大戦では膨大な死傷者が生じた国である。

この10年で大分復興は進んでいるが、魔界との小競り合いが時折発生しており常に緊張が続いている。


そのためノース・エチゴには各国から戦力が派遣されている。

私達のように国に雇われている者だけでなく、トップランカーの冒険者も多い。

人の入れ替わりはあるが、常に最高水準の戦力が集まり防衛線を張っている。


「シスタ、いつも首から下げているペンダントはどうしたんだ?」


「クレア!ひさしぶり!・・・それがさ」


派遣されてきたSランク冒険者のクレアが話かけてきた。

私が大切にしていたペンダントは、先日のエンドの森の一件の際落としてしまったらしい。

すぐにでも探しにいきたいところだが、想定している場所は例のS級ダンジョン。

気軽に行ける場所ではなく、機会を待つしかなかった。


クレアにイースト・カイ、エンドの森の調査について説明する。


「へえ~、あんた達が倒せなかった竜を一撃なんて。そんなの、私達冒険者のトップにだって不可能だろうな。本当にそいつ人間なのか?」


確かに考えてみると、自信がない。後姿しかみえなかったし、話もできなかった。

そもそもあの場所に人がいたって変だし。

そんな実力の人間がいることも考えられないけど・・・。


「教会と冒険者ギルドに協力してもらって、神職だけでなく高ランクの人達を調べてもらったんだ。でも、該当しそうな人はいなかったよ」


「そうか、なら・・・もしかして、魔族じゃねえか?」


「っ!それはありえません!!」


それだけは考えたくもなかった。ついクレアを睨みつけてしまった。

魔族に助けられたなんて、絶対に違うはずだ。


「わりい・・・気がまわらなかった。まあ、もしそんな人間がいるならいずれ世にでてくるはずさ。ペンダントも拾ってくれているといいな。とにかく交代だぜ、国へ帰りな」


私は防衛業務をクレアと交代し、セントラル・シナノに帰国することになった。


この時の私は、再度イースト・カイへ向かうことになるとは思ってもいなかった。


あの黒髪の人にもう一度会いたい、会ってお礼を言いたい。


その想いが実現するのに、そう時間はかからなかった。



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