表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/24

01 外出

展開早い小説頑張ります

「エリア・・ヒール・・」


杖を支えになんとか立ち上がり、魔法を唱えた。

だがMPが足りていない。魔法は発動しなかった。


エンドの森にあるダンジョン、竜の祠。

パーティメンバーは十分な戦力を揃えたはずだった。

剣聖レイン、守護神カムド、賢者マーヤ、そして私、聖女シスタ。


最奥まで到達したが、パーティーは壊滅してしまった。全員息はあるようだが、私以外立ち上がることすらできないようだ。


最奥まではこれたが、ダンジョンボスの赤竜を前に歯がたたなかった。

今回、国家から受けた仕事は調査がメインであり、討伐は可能な範囲でとのことだった。

判断ミスと言わざるをえない。ダンジョンボスと闘う必要はなかった。

全員たおされてしまった。

魔力の尽きた私では無力だ。なにもできない。


赤竜が腕を振り上げた。私は目を閉じた。


ガキン!


・・・甲高い音がした。痛みはない。

目を開けると、黒髪の男が盾で赤竜の腕を受け止めていた。


「・・・え!?」


男は反対の手で剣を振り下ろし、赤竜を一刀両断にした。

赤竜の倒れた衝撃で地面が揺れる。


「えっ!?・・・えっ!?」


ここはエンドの森、東の果てのダンジョン。人がいるはずのない竜のダンジョン。

なぜここに人が!?今の一撃で赤竜が!?

頭がパニックになった。


「あ・・・あの・・」


なんとか声を発するも、黒髪の男はこちらを振り向きもせずに去っていった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――-


「フウリ陛下、エンドの森のダンジョンは、軒並みS級相当になっていると思われます」


ダンジョンボスが討伐されると、モンスターは消え去り数日間発生しない。あのあと私達は無事帰国することができた。

すぐさまイースト・カイの国王、フウリ陛下へと面会を申し出ていた。


「まさかあの地がそんな状態になっているとはな。不気味ではあるが、あの地でモンスターパレードが発生しようと、国民に被害はあるまい。調査ごくろうであった」


エンドの森は人里からかなり離れており、約20年前の調査ではE級ダンジョンしか見つかっていなかった。

さらにエンドの森のダンジョンモンスターはアイテムをドロップすらせず、誰からも注目されなかったエリアである。


占いにより、近いうちに国の東でモンスターパレードが発生するとの予言があった。

モンスターパレードとは、ダンジョンからモンスターが溢れだし周囲に危害をおよぼすことである。

東の町サガミ付近のダンジョンを調査・攻略していたが、モンスターパレードが発生する予兆はなかった。

そのため、ついでにエンドの森を20年振りに調査することとなった。

そもそもエンドの森は東の町からかなり離れており、モンスターパレードが発生しようと町に危険はなかったのだが。調査メンバーの実力からいって、簡単に調査は終わるはずだった。


「黒髪の男の件だが、お主達ですら倒せない敵を一刀両断するならば、名が知られていないはずは無い。捜しだし、礼をしなければなるまい」


「すぐに各教会に調査を依頼しました。あれほどの実力があるので、間違いなく神職を授かっているはずです。神職の人数は少ないので、すぐに見つかる

と思われます」


この世界では、全ての人が15歳になると教会で天職をさずかる。天職は基本的に一般職、戦闘職に分かれており、戦闘職の中でも下職、上職があり、そして数年に一人、神職に選ばれる者がいる。

私達が組んだパーティーの聖女・剣聖・守護神・賢者は全員神職だ。

当然職業によって使用できるスキルは異なる。神職でなければ、ドラゴンを一刀両断するスキルなど存在しないだろう。


だが世界中の神職を調べても、該当する男はいなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――-



「ふうっ・・・」


家に帰った俺は、武器を置いた。

今日も日課のE級ダンジョン巡りを終えてきた。

珍しいことがあった。

20年振りに人と出会った。

あまりにも人と会話をしてこなかったので、なにも話をできず、逃げてしまったが・・・。

だがダンジョンボスは倒したので、無事帰れているはずだ。


俺は15歳の時、天職に戦士を授かった。戦士の職は、戦闘職の下級職だ。

基本的に戦士の職を得たものは、そのまま国の兵隊となる。

しかし人嫌いだった俺は、エンドの森で一人暮らしをすることにした。

ここには誰もおらず、自然が豊かで食料に困らない。

戦闘に必要な武器・防具については、野生のゴブリン等モンスターからドロップできる。

ダンジョンが多数あるので復活したボスを倒し廻り、十分な運動もできている。

また、人間ではないが、話相手の相棒もいる。


「おっ!?帰ったか、グレン」

「ただいまフェン。飯すぐ用意するからな」


フェンは10年前に森で出会った犬だ。傷だらけのフェンを介抱したら、仲良くなった。

俺にとって大事な相棒で、唯一の話相手だ。


食事の際、今日あったことを話した。


「グレン・・・。お前、最低な奴だな。普通アフターフォローぐらいするだろ・・・」

「くっ・・・、しょうがないだろ!人と会ったのは20年振りなんだから!」

「いい年こいてなにやってんだ。まあお前らしいよ」


パーティーが損壊していたのは、俺のなじみのE級ダンジョン。まだみんな初心者だったのかもしれない。

きっとヒーラーの子も不安だっただろう。悪いことをした・・。

しかし”パーティー”。いい響きだ。


気になったので、食事のあと再度ダンジョンへ行った。

やはりボスを倒したことで、ダンジョンモンスターはすべて消えていた。

ボスの部屋へ行ったが、誰とも会えなかった。無事帰れたのだろう。


「・・・ん?」


部屋のすみに、ペンダントが落ちていた。

拾ってみると写真が付いていた。銀髪の母親と、娘が写っている。

娘は、あのヒーラーの子だろう。これは大事なペンダントではないのだろうか。

彼女はおそらくこの森にはもう来ない。

この森に俺がいる限り、このペンダントを渡すことはできない。


・・・実は最近ずっと考えていたことがある。今の生活は、自給自足はできていてフェンもいる。何も問題はない。だけど・・・。


翌朝、ペンダントを拾ったことをフェンに話した。


「・・・それで。どうすんだ?グレン」

「俺、最近ずっと考えてた。このままでいいのかって。お前と一緒にいられて楽しいけど、毎日が何も変わらない。お前以外誰とも会わず、話をせず、世界でなにが起きているかもなにも知らない。俺にとっての世界とはこの森だけで、すごく小さい」


フェンは何も言わず、じっと俺を見ている。


「・・・グレン。外の世界ってのはそんないいものじゃないぜ?人間ってのは綺麗なもんじゃない」


「わかってる。でも、俺はもう外にでたいんだ。この森をでて、ペンダントを渡しにいくよ。そして、森にはもう戻らない。人の町で暮らしていく」


「・・・まあ、なんか考えてんだなと思ってたけどよ。そうか・・・」


「フェン、最初に会ったときに、お前が人間を嫌ってたこともわかってる。だけど一緒にきてくれ。お前と一緒に行きたい。」


「はあ!?・・・お、おう。当たり前だろうが、相棒」


そして、俺の森での引きこもりは終わりを迎える。

まだ俺は世界になにが起きているのか、何に巻き込まれていくのか。なにもわかっていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ